労働安全衛生法の一部を改正する法律

法律第八十九号(平八・六・一九)

 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第十九条の二」を「第十九条の三」に改める。

 第十三条の見出しを「(産業医等)」に改め、同条中「を行なわせ」を「(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせ」に改め、同条に次の三項を加える。

2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

3 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。

4 事業者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

 第十三条の次に次の一条を加える。

第十三条の二 事業者は、前条第一項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。

 第三章中第十九条の二の次に次の一条を加える。

 (国の援助)

第十九条の三 国は、第十三条の二の事業場の労働者の健康の確保に資するため、労働者の健康管理等に関する相談、情報の提供その他の必要な援助を行うように努めるものとする。

 第六十六条第七項を削り、同条の次に次の四条を加える。

 (健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)

第六十六条の二 事業者は、前条第一項から第四項まで又は第五項ただし書の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

 (健康診断実施後の措置)

第六十六条の三 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備その他の適切な措置を講じなければならない。

2 労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

3 労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。

 (一般健康診断の結果の通知)

第六十六条の四 事業者は、第六十六条第一項の規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

 (保健指導等)

第六十六条の五 事業者は、第六十六条第一項の規定による健康診断又は当該健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師、保健婦又は保健士による保健指導を行うように努めなければならない。

2 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。

 第百六条第一項中「国は」の下に「、第十九条の三」を加える。

 第百七条中「衛生推進者」の下に「、産業医」を加える。

 第百二十条第一号中「第十三条」を「第十三条第一項」に改め、「若しくは第六項」の下に「、第六十六条の四」を加える。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成八年十月一日から施行する。

 (産業医の要件に係る経過措置)

第二条 事業者は、平成十年九月三十日までの間は、この法律による改正後の労働安全衛生法第十三条第二項の規定にかかわらず、同項に規定する要件を備えた者以外の医師を産業医とすることができる。

 (検討)

第三条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の実施状況等を勘案し、労働者の健康の保持増進等を図る観点から、当該規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正)

第四条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第四十五条第一項中「第十三条まで」を「第十三条(第二項を除く。)まで、第十三条の二」に、「第六十六条第七項」を「第六十六条の三第一項」に、「同法第十三条」を「同法第十三条第一項」に、「定める事項」」を「定める事項(以下」」に、「除く。)」と、」を「除く。第三項及び次条において」と、」に改め、同条第二項中「第十三条」を「第十三条第一項」に、「定める事項」」を「定める事項(以下」」に、「限る。)」と、」を「限る。第三項及び次条において」と、」に改め、同条第三項中「第六十八条」を「第六十六条の二、第六十八条」に改め、「と、同法」の下に「第三十条第一項第五号及び」を加え、「とする」を「と、同法第六十六条の二中「前条第一項から第四項まで又は第五項ただし書」とあるのは「前条第二項前段若しくは後段(派遣先の事業を行う者が同項後段の政令で定める業務に従事させたことのある労働者(派遣中の労働者を含む。)に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第三項、第四項(同条第二項前段及び後段並びに第三項の規定に係る部分に限る。以下この条において同じ。)又は第五項ただし書(同条第二項前段及び後段、第三項並びに第四項の規定に係る部分に限る。)」とする」に改め、同条中第十六項を第十七項とし、第十五項を第十六項とし、同条第十四項中「第六十三条」の下に「、第六十六条の三第三項」を加え、同項を同条第十五項とし、同条第十三項の次に次の一項を加える。

 14 第十項の者は、当該派遣中の労働者に対し第三項の規定により適用される労働安全衛生法第六十六条の二の規定により医師又は歯科医師の意見を聴いたときは、遅滞なく、労働省令で定めるところにより、当該意見を当該派遣元の事業の事業者に通知しなければならない。

z(大蔵・労働・内閣総理大臣署名) 

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