船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律

法律第八十四号(平八・六・一四)

 (船員法の一部改正)

第一条 船員法(昭和二十二年法律第百号)の一部を次のように改正する。

  第百十七条の二及び第百十七条の三を次のように改める。

  (航海当直部員)

 第百十七条の二 船舶所有者は、命令の定める船舶に航海当直をすべき職務を有する部員(第五項において「航海当直部員」という。)として部員を乗り組ませようとする場合には、次項の規定により証印を受けている者を、命令の定めるところにより乗り組ませなければならない。

   行政官庁は、命令の定めるところにより航海当直をするために必要な知識及び能力を有すると認定した者に対し、その者の船員手帳に当該認定をした旨の証印をする。

   行政官庁は、次項の規定により証印を抹消され、その日から一年を経過しない者に対しては、前項の証印をしないことができる。

   行政官庁は、第二項の規定により証印を受けている者が、その職務に関してこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、その者に対し船員手帳の提出を命じ、その証印を抹消することができる。

   前各項に定めるもののほか、航海当直部員及び第二項の規定による証印に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

  (危険物等取扱責任者)

 第百十七条の三 船舶所有者は、命令の定めるタンカー(主務大臣の定める危険物又は有害物であるばら積みの液体貨物を輸送するために使用される船舶をいう。)には、危険物又は有害物の取扱いに関する業務を管理すべき職務を有する者(第三項において「危険物等取扱責任者」という。)として、次項の規定により証印を受けている者を、命令の定めるところにより乗り組ませなければならない。

   行政官庁は、命令の定めるところにより危険物又は有害物の取扱いに関する業務を管理するために必要な知識及び能力を有すると認定した者に対し、その者の船員手帳に当該認定をした旨の証印をする。

   前条第三項から第五項までの規定は、危険物等取扱責任者及び前項に規定する証印について準用する。

  第百十八条第四項中「前項に規定するものの外」を「前各項に定めるもののほか」に改め、同条第三項の次に次の二項を加える。

   行政官庁は、次項の規定により救命艇手適任証書の返納を命ぜられ、その日から一年を経過しない者に対しては、救命艇手適任証書の交付を行わないことができる。

   行政官庁は、救命艇手が、その職務に関してこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、その救命艇手適任証書の返納を命ずることができる。

  第百十八条の次に次の二条を加える。

  (旅客船の乗組員)

 第百十八条の二 船舶所有者は、命令の定める旅客船には、命令の定めるところにより旅客の避難に関する教育訓練その他の航海の安全に関する教育訓練を修了した者以外の者を乗組員として乗り組ませてはならない。

  (高速船の乗組員)

 第百十八条の三 船舶所有者は、命令の定める高速船(最大速力が主務大臣の定める速力以上の船舶をいう。)には、命令の定めるところにより船舶の特性に応じた操船に関する教育訓練その他の航海の安全に関する教育訓練を修了した者以外の者を乗組員として乗り組ませてはならない。

  第百二十条の二第一項を次のように改める。

   行政官庁は、その職員に、日本船舶以外の船舶(第一条第一項の命令の定める船舶及び同条第二項各号に定める船舶を除く。)で命令の定めるものが国内の港にある間、その船舶に立ち入り、その船舶の乗組員が次に定める要件を満たしているかどうかについて検査を行わせることができる。

  一 その船舶が国籍を有する国が定める船舶の航海の安全を確保するための作業を適切に実施するために必要な海員の定員に従つた員数の海員が乗り組んでいること。

  二 千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約に定める航海当直の基準に従つた航海当直を実施していること。

  三 操 舵設備又は消防設備の操作その他の航海の安全の確保に関し命令の定める事項を適切に実施するために必要な知識及び能力を有していること。

  第百二十条の二第二項中「航海当直基準に従つた航海当直を実施する」を「第一項各号の一に定める要件を満たす」に改め、同条第三項中「船員労務官」を「主務大臣があらかじめ指定するその職員」に改め、同条第四項を次のように改める。

   第百一条第三項の規定は第四項の場合について、第百七条第三項及び第四項の規定は第一項の場合について準用する。この場合において、第百一条第三項中「前項」とあるのは「第百二十条の二第四項」と、「第一項に規定する事実がなくなつた」とあるのは「同条第一項各号に定める要件を満たすための措置がとられた」と、第百七条第三項中「前二項」とあるのは「第百二十条の二第一項」と、「船員労務官」とあるのは「同条第一項の規定により立入検査をする職員」と、同条第四項中「第一項又は第二項」とあるのは「第百二十条の二第一項」と読み替えるものとする。

  第百二十条の二第一項の次に次の二項を加える。

   行政官庁は、前項の検査を行う場合において必要があると認めるときは、その必要と認める限度において、その船舶の帳簿書類その他の物件を検査し、その船舶の乗組員に質問し、又はその船舶の乗組員が同項第三号に定める知識及び能力を有するかどうかについて審査を行うことができる。

   行政官庁は、第一項の規定による検査の結果、その船舶の乗組員が同項各号の一に定める要件を満たしていないと認めるときは、その船舶の船長に対し、その要件を満たすための措置をとるべきことを文書により通告するものとする。

  第百三十条中「第百十七条の二若しくは第百十七条の三」を「第百十七条の二第一項、第百十七条の三第一項、第百十八条第一項、第百十八条の二若しくは第百十八条の三」に改める。

  第百三十一条第一号中「、第百十三条又は第百十八条第一項」を「又は第百十三条」に改める。

  第百三十二条第二号中「第百二十条の二第二項」を「第百二十条の二第四項」に改める。

  第百三十三条第十一号中「(第百二十条の二第四項において準用する場合を含む。)」を削り、同条に次の二号を加える。

  十四 第百二十条の二第一項の規定による立入りを拒み、妨げ、又は忌避した者

  十五 第百二十条の二第二項の規定による検査若しくは審査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

  第百三十五条第一項中「(第百二十条の二第四項において準用する第百七条第一項に係る場合を除く。第三項において同じ。)」を削る。

 (海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部改正)

第二条 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。

  目次及び第三章の二の章名中「検査」を「検査等」に改める。

  第十七条の十七第一項中「除く。」の下に「次項において「監督対象外国船舶」という。」を加え、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め,同項に後段として次のように加える。

   この場合において、同条第二項中「船舶所有者が」とあるのは「船長が」と、「船舶所有者又は船長」とあるのは「船長」と、同条第四項中「第一項」とあるのは「第十七条の十七第一項又は第二項」と読み替えるものとする。

  第十七条の十七中第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。

 2 運輸大臣は、監督対象外国船舶の乗組員のうち油又は有害液体物質の取扱いに関する作業を行うものが、当該取扱いに関し遵守すべき事項のうち運輸省令で定めるもの(以下この項において「特定遵守事項」という。)に関する必要な知識を有しないと認めるときその他特定遵守事項に従つて作業を行うことができないと認めるときは、当該船舶の船長に対し、当該乗組員に特定遵守事項に関する必要な知識を習得させることその他特定遵守事項に従つて作業を行わせるため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

  第四十八条第五項中「検査させる」を「検査させ、又は関係者に質問させる」に改める。

  第五十六条第三号中「第十七条の十七第二項」を「第十七条の十七第三項」に改める。

  第五十七条第五号中「第十七条の十七第一項」の下に「若しくは第二項」を加える。

  第五十八条第十四号中「又は忌避した」を「若しくは忌避し、又は同条第五項の規定による質問に対し陳述をせず若しくは虚偽の陳述をした」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第一条中船員法第百十七条の二及び第百十七条の三の改正規定(同法第百十七条の二第二項及び第五項、第百十七条の三第二項並びに同条第三項において準用する第百十七条の二第五項に係る部分に限る。) 公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日

 二 第一条中船員法第百十七条の二及び第百十七条の三の改正規定(前号に掲げる部分を除く。)、同法第百十八条の改正規定、同条の次に二条を加える改正規定、同法第百三十条及び第百三十一条の改正規定並びに附則第三条の規定 公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日

 (船員法の改正に伴う経過措置)

第二条 この法律の施行前に第一条の規定による改正前の船員法(以下この条において「旧船員法」という。)第百二十条の二第一項の規定により行政官庁がした通告は、第一条の規定による改正後の船員法(以下この条において「新船員法」という。)第百二十条の二第三項の規定により行政官庁がした通告とみなし、この法律の施行前に旧船員法第百二十条の二第二項の規定により行政官庁がした処分は、新船員法第百二十条の二第四項の規定により行政官庁がした処分とみなす。

 (罰則に関する経過措置)

第三条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (運輸省設置法の一部改正)

第四条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条の二第一項第六十九号を次のように改める。

  六十九 船舶の航行の安全の確保及び海洋の汚染の防止に係る外国船舶の監督に関すること。

  第四条第一項中第二十号の二を削り、第二十四号の七の次に次の一号を加える。

  二十四の八 外国船舶に立ち入り、船舶の航行の安全の確保及び海洋の汚染の防止に関し乗組員に質問をし、及び必要な処分をすること。

  第四十条第一項第四十二号を次のように改める。

  四十二 船舶の航行の安全の確保及び海洋の汚染の防止に係る外国船舶の監督に関すること。

z(運輸・内閣総理大臣署名) 

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