酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法

法律第三十四号(平一五・五・一)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 緊急調整地域における酒類小売業免許の付与の制限等(第三条―第七条)

 第三章 公正取引委員会への措置請求等(第八条・第九条)

 第四章 罰則(第十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、酒類小売業免許に係る規制緩和の進展に伴い、多数の酒類小売業者の経営の維持が困難となる等の急激な社会経済状況の変化が生じている現状にかんがみ、緊急の措置として、緊急調整地域における酒類小売業免許の付与を制限するとともに、酒類小売業者の経営の改善及び転廃業の円滑化のための措置その他の措置をとることにより、規制緩和の円滑な推進に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「酒類」とは、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類をいう。

2 この法律において「酒類小売業免許」とは、酒税法第九条第一項の規定による酒類の販売業免許(販売の代理業又は媒介業に係るものを除く。)のうち同法第十一条の規定により販売方法として酒類販売業者(同法第九条第一項の規定により酒類の販売業免許を受けた者をいう。以下同じ。)又は酒類製造業者(同法第七条第一項の規定により酒類の製造免許を受けて酒類の製造を業とする者及び同法第二十八条第六項の規定により酒類製造者とみなされた者でその酒類に自己の商標を表示して販売することを業とする者をいう。以下同じ。)に対する販売に限る旨の条件を付されたもの以外のものをいう。

3 この法律において「酒類小売業者」とは、酒類小売業免許を受けた者をいう。

4 この法律において「酒類小売販売場」とは、酒類小売業者が酒類小売業免許を受けて酒類の販売業を営む場所をいう。

   第二章 緊急調整地域における酒類小売業免許の付与の制限等

 (緊急調整地域の指定)

第三条 税務署長は、次に掲げる要件に該当する地域を、緊急調整地域として指定することができる。

 一 当該地域において酒類の需要に対してその供給能力が著しく過剰であり、当該地域に存する酒類小売販売場(酒類小売業免許について酒税法第九条第二項の規定により期限が付されている酒類小売販売場その他の政令で定める酒類小売販売場を除く。以下この項において同じ。)のうちに酒類の販売数量の減少が著しいこと等により酒類の販売業の継続が困難な酒類小売販売場が占める割合が著しく高い場合として政令で定める要件に該当すること。

 二 当該地域に存する酒類小売販売場の過半数について、財務省令で定めるところにより、次に掲げる事項について定められた経営の改善のための計画が酒類小売業者から税務署長に提出されていること。

  イ 経営の改善の目標

  ロ 仕入れ又は配送の共同化、経営形態の転換、経営管理の合理化、設備の近代化その他の経営の改善のために実施する措置の内容

  ハ 経営の改善を実現するための期間

  ニ その他財務省令で定める事項

2 緊急調整地域の区域は、一の市町村(特別区及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市の区を含む。)の区域を超えないものとする。

3 第一項の規定による緊急調整地域の指定の有効期間は、一年とする。

4 税務署長は、第一項の規定により緊急調整地域を指定する場合には、関係市町村長(特別区の区長を含む。)の意見を聴かなければならない。

5 税務署長は、第一項の規定により緊急調整地域を指定する場合には、その旨及びその区域を公告しなければならない。

 (酒類小売業免許の付与の制限等)

第四条 税務署長は、緊急調整地域においては、酒類小売業免許の付与及び酒税法第十六条第一項の規定による他の地域からの酒類小売販売場の移転の許可を行ってはならない。ただし、同法第十一条の規定により販売方法として通信販売に限る旨の条件を付して酒類小売業免許を付与する場合その他の政令で定める場合については、この限りでない。

 (緊急調整地域の指定の解除)

第五条 税務署長は、緊急調整地域についてその指定の必要がなくなったと認めるときは、当該指定を解除しなければならない。

2 第三条第四項及び第五項の規定は、前項の規定により緊急調整地域の指定を解除する場合について準用する。

 (報告の徴収等)

第六条 税務署長は、第三条の規定により緊急調整地域を指定し、又は前条の規定によりその指定を解除する場合において必要があると認めるときは、その必要な限度において、酒類小売業者に対し、報告を求め、又は当該職員に、関係者に対し質問させ、若しくはその事務所若しくは事業所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (酒類小売業者の経営の改善及び転廃業の円滑化のための措置)

第七条 国は、酒類小売業者による第三条第一項第二号の経営の改善のための計画の実施及び酒類小売業者の転廃業の円滑化に資するため、必要な措置を講ずるものとする。

   第三章 公正取引委員会への措置請求等

 (公正取引委員会への措置請求)

第八条 国税局長又は税務署長は、酒類販売業者の取引に関し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第九項に規定する不公正な取引方法に該当する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

 (酒類の取引の条件に関する規準)

第九条 酒類製造業者及び酒類卸売業者(酒類販売業者又は酒類製造業者に対する酒類の販売(販売の代理又は媒介を含む。)を業とする酒類販売業者をいう。)は、酒類の販売数量に応じてする酒類販売業者への金銭の供与その他酒類販売業者との酒類の取引の条件について規準を定めるとともに、これを取引関係その他これに類する関係のある酒類販売業者に対し提示するよう努めなければならない。

   第四章 罰則

第十条 第六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくはその職務の執行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (適用区分)

第二条 第四条の規定は、この法律の施行前にされた酒類小売業免許の付与の申請又は酒税法第十六条第一項の規定による他の地域からの酒類小売販売場の移転の許可の申請についての処分については、適用しない。

 (検討)

第三条 政府は、この法律の施行の状況、酒類の特性、青少年の健全な育成の重要性、地域社会における酒類小売業者の役割等を勘案し、酒類の販売業免許の制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (この法律の失効)

第四条 この法律は、平成十七年八月三十一日限り、その効力を失う。

 (公正取引委員会への措置請求に関する経過措置)

第五条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二条第九項に規定する不公正な取引方法に該当する事実がこの法律の失効前にあった場合における第八条の規定による措置請求については、この法律の失効後も、なお従前の例による。

 (罰則に関する経過措置)

第六条 この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第七条 前二条に規定するもののほか、この法律の失効に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

(財務・内閣総理大臣臨時代理署名) 

法令一覧(年度別)に戻る