国鉄再建監理委員会答申

*******鉄道の未来を築くために*******

第4章 改革の推進体制及び移行時期等 

U.移行時期

 国鉄事業の分割・民営化は昭和62年4月1日に実施する。

〔付記〕

本意見中の旅客輸送の需要見通し、旅客鉄道会社の引継ぎ資産、債務の額、旅客鉄道会社の経営見通し、処理すべき債務等の金額は、現時点において得られる諸資料に基づき推計したものであり、今後取りまとめられる数値等を織り込むと多少異動することがあり得る。

おわりに

  1. 以上が、2年余にわたる審議を重ねて得た改革案の内容である。このような改革案を実施していくためには、極めて多くの困難が伴う。しかし、あらゆる角度からの検討を通じて、国鉄事業の再生を可能とする方策は、この改革案を除いては他にあり得ないものと考えており、いかなる困難を乗り越えても、これを実施していかなけれぱならない。

  2. この改革案の内容となっている施策は、一体かつ不可分のものとして、同時に実施されなけれぱならない。効率的な経営形態の確立は、分割・民営化が、同時に行われることによってはじめて達成されるものである。巨額の債務の処理は、効率的な経営形態が確立され、国民の将来の負担をこれ以上増加させないという保障が与えられるのでなげれぱ国民の理解を得ることができない。また、本意見で述べた新しい事業体の経営基盤を確立するための収益調整の仕組みは、分割と民営化が同時に行われる場合にのみ可能となるものである。民営化だけをまず実施し分割を先送りするようなことがあれぱ、その間に再び新たな国民負担を発生させ、改革の時期を失して手遅れとなりかねない。

  3. この改革案が一体のものとして速やかに実施されることにより、国鉄事業は健全な姿で再生することが期待される。これによって鉄道事業は本来の特性をとり戻し、より効率的な交通体系の形成に展望が開けるものと考えている。ただ、今後の効率的な交通体系の形成のためには、例えぱ道路、空港等の整備に関連して、経営に影響を受けると予想される鉄道をどうするかといった点についてあらかじめ間係者が相互に十分な鋼整を図る等総合的な観点からの配慮も必要であると考えられる。

  4. また、この改革案が実施されることによって国鉄事業の再生が可能となるが、新しい経営形態の下では、経営者は、そして職員は、今までの何倍もの努カを傾注して事業を運営していかなけれぱならない。国鉄改革が多くの関係者の多大な労苦と全国民の並々ならぬ協力によって成し遂げられるものであることを忘れてはならないし、新しい事業体の未来は自ら切り拓いていくことによってはじめて開けるものである。

  5. 国民各位も、この改革案が実施され国鉄が新しい事業体として生まれ変わった暁には、将来にわたって健全に歩み続けていくことができるよう暖かい目で見守っていただきたい。

〔付論〕

技術上の具体的問題に付いての考え方

  1. 利用者の利便が損なわれることはない
    (1)運賃の負担増にはならない
    (2)境界駅での乗り換えは増えない

  2. 業務能率が低下することはない
    (1)列車ダイヤの設定は十分調整できる
    (2)運賃収入は適切に配分・清算できる
    (3)乗務員の運用は適切に行なうことができる
    (4)企画商品の開発・販売がおろそかになることはない
    (5)列車が遅延した場合の修復に時間がかかることはない
    (6)運転取り扱いのルールが会社間で異なっても、安全上の問題は生じない

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