国鉄再建監理委員会答申
*******鉄道の未来を築くために*******
第2章 効率的な経営形態の確立
V.旅客鉄道会社の具体的内容
2.旅客会社の収益調整措置
考え方
全国6旅客鉄道会社について、分割の際の運賃水準は従前のままとした上で、資産を簿貨で移転し、原則としてこれに見合う債務を引き継ぐこととした場合、会社間で著しく格差が出ることとなり、特に3島は、営業損益でも赤字を計上することが見込まれる。
このため、先に述べたように、当委員会が最も適切であると考えた分割案に基づく会社を、健全な姿で発足させるためには、発足時においていずれの会社も採算が取れるように何らかの形で収益調整措置を講じ、旅客鉄道会社が将来にわたって安定的な経営を継続し得る基盤を整備する必要がある。
- 本州の旅客鉄道会社の調整措置
ア・上に述べた極旨を緒まえた収益措置を検討する場合、会社間で毎年度の収益の一部を直接やりとりする方法は、会社の経営責任が不明確になるなど民営化の趣旨から考えて問題がある。
また会社に移転する資産について、ある時点の収益をもとに再評価を行う方法は、結果として会社間で資産の増減幅が大きくなりすぎることが見込まれる上、将来の収益予測値のみ基づいて資産額ひいては引継ぎ債務額を決定することも容観性の点て難点があり、危険度が大きいという問題かあることから、いずれの方法も採用し離い。イ・このため、当委員会は種々の検討を行った結果、
- 本州の旅客鉄道会社の収支アンバランスの主要な原因が4新幹線の資本費格差にあるため、これに着目して収益調整を行うことが適当であること
- 新幹線が、わが国の基幹的交通機関として、国土の均衡ある発展などに呆たす役割から見て、分割後も新幹線利用者間の負担の均衡ができるだけ図られることが望ましいこと
- 余剰人員対策を円滑に行い得るよう配慮することが適当であること
- 長期債務等の処理に際して、最終的に求めざるを得ない国民負担をできる限り軽減することが望ましいこと
から、これらを総合的に勘案して、4新幹線の資産については旅客鉄道会社とは別の主体が一括保有し、各旅客鉄道会社は別に定める基準で算定した使用料を支払ってこれを借り受け、自ら営業を行う方式をとることが妥当であるという結論に達した。ウ・なお、以上の調整措置を講じることによって、本州の旅客鉄道会社間の収益格差は相当小さくなることが見込まれるが、新会社の発足時においては、各会社の収益性はできるだけ同じ程度であることが望ましい。このためには、いずれの会社も採算がとれるように微調整する必要があるので、その具体的方法を政府において検討の上決定する。
- 3島の旅客鉄道会杜の調整措置
3島の旅客鉄道会社については、いずれも営業損益で赤字が生じることが見込まれる。このため、発足時において長期債務を引き織がないこととした上で、将来における維持更新投資にも疑慮して、なお生じる営業損失に対して何らかの措置を講じることが、安定的な経営を維持していくためには必要である。
その方法として、毎年生じる営業損失を公的助成により補填し続けることも考えられるが、これでは旅客鉄道会社の自立性を阻害し、経営責任を峻昧にすることになるため、とるべき方策ではない。このため、これらの営業損失を補填し得る収益が生み出されるような基金を、3島会社の発足時に設けることによづて経営基盤の確立を図ることとする。