第2章 効率的な経営形態の確立

*******鉄道の未来を築くために*******

V.旅客鉄道会社の具体的内容

    1.事業範囲

     旅客鉄道会社は、現在国鉄が行っている鉄道旅客事業を引き継ぎ、主としてこれを経営するほか関連事業等を行う。

    1. 鉄道旅客事業

      ア・旅客鉄道会社が国鉄から経営を引き継ぐ鉄 道路線は、特定地方交通線を除く全線区とする。

      イ・輸送密度が少なく、バス輸送に転換することが適切な路線である特定地方交通線については、旅客鉄道会社が将来にわたりその事業を健全に経営し得る基盤を整備するためにも、また地域にとってより適切な交通体系を構築するという見地からもバス転換等を図ることが必要である。このため、現在法律に基づき実施され、また実施が予定されている対策を引き続き強力に進めるべきである。
      特定地方交通線以外の地方交通線は、幹線とともに旅客鉄道会社が引き継ぐこととするが、旅客鉄道会社は、これら線区について、会社の 健全経営を阻害することのないよう地域の実情に即した運営による活性化、要員の徹底した合理化等に努める。

      ウ・現在国鉄が建設中の通勤別線(宮原〜赤羽) については東日本会社が、日本鉄道建設公団(以下「鉄建公団」という)が建設中の京葉線(東京〜蘇我)については東日本会社が、瀬戸線(勝川〜枇杷島)についてほ東海会社が、内山線(向井原〜内「子)についてほ四国会社がそれぞれ完成後経営を行う。
      また、鉄建公団が建設中の津軽海峡線(木古内〜中小国)については北海道会社が、本州四国連絡橋公団(以下「本四公団」という)が建設中の本四備讃線のうち宇多津〜児島間については四国会社が、児島〜茶屋町間についてほ西日本会 社がそれぞれ完成後経営を行う。

      エ.以上により、各旅客鉄道会社の昭和62年度 の旅客営業キロ及び輸送量見込みは下記別表1のとおりとなる。

    2. 関連事業

      新経営形態への移行により関連事業のより自由な天海が可能となるので、企業としての経営基盤の強化を目指すとともに企業の活力を維持する上からその進展を図っていく必要がある。
       このため、経営者自らの採算見通しと責任の下に、これまでの駅ビル等の事業のみならず、例えば駅の集客機能や鉄道事業用用地の高度利用の可能性に着目して、流通業や通信事業に至るまで新でたな着想の下に多角的弾力的な事業活
      動を展開する。
    3. バス事業

      @国鉄バスの現状

      国鉄バスは、都市間路線や観光路線のような長矩離路線を比較的多く抱えるなどの特色が見受けられるものの、全国79営業所において、地域の生活路線を中心に民営バスとほとんど変わらない事業運営が行われている。
      わが国のバス事業は、昭和40年代以降、マイカー利用の急激な増大に加え、都市部における道路混雑による定時性の喪失や地方における過疎化の進展等により年々需要が減少し、全体として苦しい経営を強いられてきた。こうした中で、国鉄バスは、全国画一的な経営の下で合理化や路線縮の再編成が遅れがちとなるなど輸送環境の変化への適切な対応を欠いた結果、極めて悪化した経営実態となっている。このような状況のまま事業を続けていくこととなれぱ、輸送サービスの一層の低下や、維持可能な路線の範囲の縮小が避けられず、利用者にとっても更に深刻な事態を招来するおそれがある。

      A国鉄が行っているバス事業の経営体制の変更

      バス事業は地域における基礎的な公共交通機関として今後とも重要な役割を果たしていかなければならない。国鉄が行っているバス事業においても、民営バス事業者との適正な競争・協調関係の下で民営バス並みにその生産性を高め、地元の理解と協力を得つつ地域に密着したきめ細かな事業運営を行っていけば、経営も大幅に改善され地域住民の期待に十分応えていくことが可能である。
      これを実現するためには、現在の体制を抜本的に改め、バス事業にふさわしい一定の区域・規模でもってその経営を鉄道事業から分離・独立させることが必要てあり、具体的には、路線網としての一体性が確保されていること、極力収支の均衡が図られる等の観点から例えば、次回のように営業所単位で全図を13のグループにまとめ、それぞれを独立のバス会社とすることが適切である。

      B新しいバス会社の設立について

      バス事業については、鉄道事業との関係を踏まえつつ会社設立を行うことが望ましいことから、新経営形態移行時には一旦旅客鉄道会社がそれぞれの事業区域に存する営業所単位て引き継ぐ、しかし、鉄道事業と一体的に経営すべき特段の事情が認められる場合を除き、上で述べた理由から原則としてバス事業は速やかに分離・独立すべきであり、その具体的内容は旅客鉄道会社設立の計画の中において明らかにする。
    4. 鉄道連絡船事業

      鉄道事業に関連する連絡船事業のうち、青函については北海道会社が、宇高についてほ四国会社がそれぞれ引き継ぐ。しかし、新会社発足後に青函トンネル及び本四連絡橋児島・坂出ルートの完成が予定されているので、これらの完成時に、その利用の実態から見て競合することとなる場合には、鉄道事業に関連する連絡船事業は廃止することとする。
      また、宮島についてほ西日本会社が引き継ぐ。
    5. 病院

      病院については、職員の福利厚生を図る観点から、各旅客鉄道会社が原則として1か所ずつ引き継ぐが、各病院は一層の経営の効率化によって新経営形態への移行時点までに収支均衡を目指すべきである。
      また、中央鉄道病院はいまだ一般開放されていないことから、関係機関間の調整を行い、速やかにその実現を図る必要がある。
    6. 地域内通信

      通信施設のうち、後述する基幹的通信網以外に主として地域内の用に供されるものは各旅客鉄道会社が引き継ぐ。
    7. 工場

      大手私鉄を見ると自社所有の車両ほとんどが自社の直営工場において責任ある検修を行っているところから、工場については、分割後も自社所有車両の責任ある管理を行うため、各旅客鉄道会社が引き継ぐ。

    別表1 (単位:km、億人キロ)

    区分 北海道 東日本 東海 西日本 四国 九州
    営業キロ 2600 7300 1900 5200 900 2200 20100
    輸送量 37 956 360 432 15 67 1867

    (注1) 旅客鉄道会社が国鉄から経営を引き継ぐ鉄道路線は、特定地方交通線を除く全線区であるが、第3次特定地方交通線についてはいまだ選定されていないので、上記の営業キロでは一応第1次、第2次特定地方交通線(保留分を含む)のみを除外した。まだ、岡多線(現愛知環状鉄道については、第三セクターの検討が行われていることから除外した。

    (注2) 営業キロの計算では、新幹線は並行在来線の線増ととらえ独立した線区としては取り扱われないのが通常であるが、上記の営業キロでほ新幹線を並行在来線とは別の独立した線区として取り扱い計算した。


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