建設労働者の雇用の改善等に関する法律
法律第三十三号(昭五一・五・二七)
(目的)
第一条 この法律は、建設労働者について、その雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置を講ずることにより、その雇用の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「建設事業」とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(国又は地方公共団体の直営事業を除く。)をいう。
2 この法律において「建設労働者」とは、建設事業に従事する労働者をいう。
3 この法律において「事業主」とは、建設労働者を雇用して建設事業を行う者をいう。
(建設雇用改善計画の策定)
第三条 労働大臣は、建設労働者(船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員を除く。以下第八条まで及び第十一条において同じ。)の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関し重要な事項を定めた計画(以下「建設雇用改善計画」という。)を策定するものとする。
2 建設雇用改善計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 建設労働者の雇用の動向に関する事項
二 建設労働者に係る雇用状態の改善並びにその能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
三 建設労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
3 労働大臣は、建設雇用改善計画を策定する場合には、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、中央職業安定審議会の意見を聴くものとする。
4 労働大臣は、建設雇用改善計画を策定したときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、建設雇用改善計画の変更について準用する。
(勧告等)
第四条 労働大臣は、建設雇用改善計画の円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業主、事業主の団体その他の関係者に対し、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる。
(雇用管理責任者)
第五条 事業主は、建設事業(建設労働者を雇用して行うものに限る。第八条において同じ。)を行う事業場ごとに、次に掲げる事項のうち当該事業場において処理すべき事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならない。
一 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。
二 建設労働者の技能の向上に関すること。
三 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、建設労働者に係る雇用管理に関する事項で労働省令で定めるもの
2 事業主は、雇用管理責任者を選任したときは、当該雇用管理責任者の氏名を当該事業場に掲示する等により当該事業場の建設労働者に周知させるように努めなければならない。
3 事業主は、雇用管理責任者について、必要な研修を受けさせる等第一項各号に掲げる事項を管理するための知識の習得及び向上を図るように努めなければならない。
(募集に関する事項の届出)
第六条 事業主は、その被用者に、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十五条に規定する方法以外の方法で、通常通勤することができる地域から建設労働者を募集させようとするときは、労働省令で定めるところにより、当該被用者の氏名その他建設労働者の募集に関する事項で労働省令で定めるものを公共職業安定所長に届け出なければならない。ただし、建設労働者の募集の適正化を図るため特に必要があると認められる区域として労働省令で定める区域以外の区域において建設労働者を募集させる場合は、この限りでない。
(雇用に関する文書の交付)
第七条 事業主は、建設労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該建設労働者に対して、当該事業主の氏名又は名称、その雇入れに係る事業場の名称及び所在地、雇用期間並びに従事すべき業務の内容を明らかにした文書を交付しなければならない。
(書類の備付け等)
第八条 一の場所において行う建設事業の仕事(以下この条において「建設工事」という。)の一部を請負人に請け負わせている事業主(当該建設工事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうち最も先次の請負契約における注文者とする。以下この条において「元方事業主」という。)は、当該建設工事について、その請負人(当該建設工事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含むものとし、当該建設工事につき常態として建設労働者を雇用する請負人に限る。以下この条において「関係請負人」という。)ごとに、その氏名又は名称、その雇用する建設労働者を当該建設工事に従事させようとする期間及びその選任に係る雇用管理責任者の氏名を明らかにした書類を、労働省令で定めるところにより、当該建設工事に係る事業場に備えて置かなければならない。ただし、当該建設工事に係る事業場において元方事業主及び関係請負人が雇用する建設労働者の数が労働省令で定める数未満である場合は、この限りでない。
2 元方事業主は、関係請負人に対して、第五条第一項に規定する事項の適正な管理に関し助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。
(建設労働者の福祉等に関する事業)
第九条 政府は、建設労働者(雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第六十二条第一項に規定する被保険者等に該当するものに限る。以下この条及び次条において同じ。)の能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るため、同法第六十三条の能力開発事業又は同法第六十四条の雇用福祉事業として、次の事業を行うことができる。
一 事業主、事業主の団体又はその連合団体(以下この項において「事業主等」という。)に対して、建設労働者の技能の向上を推進するために必要な助成を行うこと。
二 事業主等に対して、雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修を実施するために必要な助成を行うこと。
三 事業主等に対して、作業員宿舎の整備改善その他建設労働者の福祉の増進を図るために必要な助成を行うこと。
2 政府は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)及びこれに基づく命令で定めるところにより、前項各号に掲げる事業の全部又は一部を雇用促進事業団に行わせるものとする。
(費用)
第十条 雇用保険法第六十六条第三項第一号に規定する一般保険料徴収額(以下この条において「一般保険料徴収額」という。)に同項第三号に規定する三事業率を乗じて得た額のうち、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第十二条第四項第三号に掲げる事業に係る一般保険料徴収額に、千分の一の率を雇用保険法第六十六条第三項第一号イに規定する雇用保険率で除して得た率を乗じて得た額に相当する額は、前条第一項各号に掲げる事業に要する費用並びに同法第六十三条第一項各号及び第六十四条第一項各号に掲げる事業のうち建設労働者に係る事業(雇用促進事業団の業務として行われるものに限る。)で労働省令で定めるものに要する費用に充てるものとする。
(報告)
第十一条 公共職業安定所長は、労働省令で定めるところにより、第六条の事業主又は第八条第一項の元方事業主に対して、建設労働者の募集又は同項の関係請負人に係る書類の備付けに関し必要な報告を求めることができる。
(罰則)
第十二条 事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、十万円以下の罰金に処する。
一 第六条の規定による届出をせず、又は偽りの届出をしたとき。
二 第八条第一項の規定に違反したとき。
三 第十一条の規定による報告をせず、又は偽りの報告をしたとき。
第十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和五十一年十月一日から施行する。ただし、第十条及び附則第四条から第六条までの規定は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(雇用促進事業団法の一部改正)
第二条 雇用促進事業団法の一部を次のように改正する。
第八条中「七人」を「八人」に改める。
第十条第一項中「、副理事長」を削り、同条第二項中「理事」を「副理事長及び理事」に改める。
第十三条第三項中「理事」を「副理事長又は理事」に改める。
第十九条第一項第十一号を同項第十三号とし、同項第十号を同項第十二号とし、同項第九号の次に次の二号を加える。
十 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)第九条第一項各号に掲げる事業を行うこと。
十一 建設業の事業主及びその雇用する労働者に対して、労働者の雇入れ、配置その他の雇用に関する事項の管理に関し必要な知識を習得させるための研修を行い、及びこれらの事項の管理の改善について助言すること。
第三十七条第二項中「第十九条第一項第三号に掲げる業務」を「第十九条第一項第三号若しくは第十号に掲げる業務、同項に規定する業務のうち建設労働者の雇用の改善等に関する法律第十条の労働省令で定める事業に係る業務」に改める。
(社会保険労務士法の一部改正)
第三条 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
別表第一第二十号の七の次に次の一号を加える。
二十の八 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正)
第四条 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を次のように改正する。
第十二条第四項ただし書中「次の各号」の下に「(第三号を除く。)」を加え、「、千分の十五とする」を「千分の十五とし、第三号に掲げる事業については千分の十六とする」に改め、同条第五項中「前項ただし書に規定する事業」の下に「(同項第三号に掲げる事業を除く。)」を加え、「、千分の十三から千分の十七まで」を「千分の十三から千分の十七まで、同号に掲げる事業については千分の十四から千分の十八まで」に改める。
第三十条第一項第一号ロ中「千分の三の率」の下に「(第十二条第四項第三号に掲げる事業については、千分の四の率)」を加える。
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第五条 前条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律第十二条第四項ただし書及び第五項並びに第三十条第一項の規定は、附則第一条ただし書に規定する日以後の期間に係る労働保険料について適用し、同日前の期間に係る労働保険料については、なお従前の例による。
2 前項に規定するもののほか、前条の規定による労働保険の保険料の徴収等に関する法律の改正に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(雇用保険法の一部改正)
第六条 雇用保険法の一部を次のように改正する。
第六十六条第三項第三号中「千分の三の率」の下に「(徴収法第十二条第四項第三号に掲げる事業については、千分の四の率)」を加える。
(労働省設置法の一部改正)
第七条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十一号の三の次に次の一号を加える。
四十一の四 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)に基づいて、建設雇用改善計画を策定すること。
第十条第一項第七号の三の次に次の一号を加える。
七の四 建設雇用改善計画の策定に関すること。
第十条第一項第八号中「及び沖縄振興開発特別措置法(第六章(職業訓練に関する部分を除く。)の規定に限る。)」を「、沖縄振興開発特別措置法(第六章(職業訓練に関する部分を除く。)の規定に限る。)及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律」に改める。
第十三条第一項の表中央職業安定審議会の項中「及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」を「、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律」に改める。
第十八条第一項中「及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(これに基づく命令を含む。)」を「、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(これに基づく命令を含む。)及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律(これに基づく命令を含む。)」に改める。
(厚生・労働・建設・内閣総理大臣署名)