防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律
法律第百一号(昭四九・六・二七)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 防衛施設周辺の生活環境等の整備(第三条−第十二条)
第三章 損失の補償(第十三条−第十八条)
第四章 雑則(第十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、自衛隊等の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「自衛隊等」とは、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第一項に規定する自衛隊(以下「自衛隊」という。)又は日本国とアメリカ合衆国との問の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊をいう。
2 この法律において「防衛施設」とは、自衛隊の施設又は日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域をいう。
第二章 防衛施設周辺の生活環境等の整備
(障害防止工事の助成)
第三条 国は、地方公共団体その他の者が自衛隊等の機甲車両その他重車両のひん繁な使用、射撃、爆撃その他火薬類の使用のひん繁な実施その他政令で定める行為により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、次に掲げる施設について必要な工事を行うときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。
一 農業用施設、林業用施設又は漁業用施設
二 道路、河川又は海岸
三 防風施設、防砂施設その他の防災施設
四 水道又は下水道
五 その他政令で定める施設
2 国は、地方公共団体その他の者が自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施その他政令で定める行為により生ずる音響で著しいものを防止し、又は軽減するため、次に掲げる施設について必要な工事を行うときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校
二 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条第一項に規定する病院、同条第二項に規定する診療所又は同法第二条第一項に規定する助産所
三 前二号の施設に類する施設で政令で定めるもの
(住宅の防音工事の助成)
第四条 国は、政令で定めるところにより自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛施設庁長官が指定する防衛施設の周辺の区域(以下「第一種区域」という。)に当該指定の際現に所在する住宅(人の居住の用に供する建物又は建物の部分をいう。以下同じ。)について、その所有者又は当該住宅に関する所有権以外の権利を有する者がその障害を防止し、又は軽減するため必要な工事を行うときは、その工事に関し助成の措置を採るものとする。
(移転の補償等)
第五条 国は、政令で定めるところにより第一種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が特に著しいと認めて防衛施設庁長官が指定する区域(以下「第二種区域」という。)に当該指定の際現に所在する建物、立木竹その他土地に定着する物件(以下「建物等」という。)の所有者が当該建物等を第二種区域以外の区域に移転し、又は除却するときは、当該建物等の所有者及び当該建物等に関する所有権以外の権利を有する者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償することができる。
2 国は、政令で定めるところにより、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときは、予算の範囲内において、当該土地を買い入れることができる。
3 国は、地方公共団体その他の者が第二種区域内から住居を移転する者の住宅等の用に供する土地に係る道路、水道、排水施設その他の公共施設を整備するときは、予算の範囲内において、その整備に関し助成の措置を採ることができる。
(緑地帯の整備等)
第六条 国は、政令で定めるところにより第二種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が新たに発生することを防止し、あわせてその周辺における生活環境の改善に資する必要があると認めて防衛施設庁長官が指定する区域(以下「第三種区域」という。)に所在する土地で前条第二項の規定により買い入れたものが緑地帯その他の緩衝地帯として整備されるよう必要な措置を採るものとする。
2 国は、前項の土地以外の第三種区域に所在する土地についても、できる限り、緑地帯その他の緩衝地帯として整備されるよう適当な措置を採るものとする。
(買い入れた土地の無償使用)
第七条 国は、第五条第二項の規定により買い入れた土地を、地方公共団体が広場その他政令で定める施設の用に供するときは、当該地方公共団体に対し、当該土地を無償で使用させることができる。
2 国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十二条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により土地を使用させる場合について準用する。
(民生安定施設の助成)
第八条 国は、防衛施設の設置又は運用によりその周辺地域の住民の生活又は事業活動が阻害されると認められる場合において、地方公共団体が、その障害の緩和に資するため、生活環境施設又は事業経営の安定に寄与する施設の整備について必要な措置を採るときは、当該地方公共団体に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の一部を補助することができる。
(特定防衛施設周辺整備調整交付金)
第九条 内閣総理大臣は、次に掲げる防衛施設のうち、その設置又は運用がその周辺地域における生活環境又はその周辺地域の開発に及ぼす影響の程度及び範囲その他の事情を考慮し、当該周辺地域を管轄する市町村がその区域内において行う公共用の施設の整備について特に配慮する必要があると認められる防衛施設があるときは、当該防衛施設を特定防衛施設として、また、当該市町村を特定防衛施設関連市町村として、それぞれ指定することができる。この場合には内閣総理大臣は、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。
一 ターボジェット発動機を有する航空機の離陸又は着陸が実施される飛行場
二 砲撃又は航空機による射撃若しくは爆撃が実施される演習場
三 港湾
四 その他政令で定める施設
2 国は、特定防衛施設関連市町村に対し、政令で定める公共用の施設の整備を行うための費用に充てさせるため、特定防衛施設の面積、運用の態様等を考慮して政令で定めるところにより、予算の範囲内において、特定防衛施設周辺整備調整交付金を交付することができる。
(資金の融通等)
第十条 国は、第三条の工事を行う者又は第八条の措置を採る地方公共団体に対し、必要な資金の融通又はあつせんその他の援助に努めるものとする。
(国の普通財産の譲渡等)
第十一条 国は、第三条の工事、第八条の措置又は第九条第二項の整備に係る事業の用に供するため必要があると認めるときは、地方公共団体その他の者に対し、普通財産を譲渡し、又は貸し付けることができる。
(関係行政機関の協力等)
第十二条 関係行政機関の長は、その所掌事務の遂行に当たつては、防衛施設の周辺における生活環境及び産業基盤の整備について、計画的に推進するよう努めるものとする。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長による前項の整備に係る事務の遂行について、当該関係行政機関の長に対し、意見を述べることができる。
第三章 損失の補償
(損失の補償)
第十三条 自衛隊の次に掲げる行為により、従来適法に農業、林業、漁業その他政令で定める事業を営んでいた者がその事業の経営上損失を受けたときは、国がその損失を補償する。
一 航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施、機甲車両その他重車両のひん繁な使用又は艦船若しくは舟艇のひん繁な使用で政令で定めるもの
二 射撃、爆撃その他火薬類の使用のひん繁な実施で政令で定めるもの
三 その他政令で定める行為
2 前項の規定は、他の法律により国が損害賠償又は損失補償の責めに任ずべき損失については、適用しない。
3 第一項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。
(損失補償の申請)
第十四条 前条の規定による損失の補償を受けようとする者は、総理府令で定めるところにより、その者の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、損失補償申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の申請書を受理したときは、その意見を記載した書面を当該申請書に添えて、これを内閣総理大臣に送付しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の書類を受理したときは、補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請者に通知しなければならない。
(異議の申出)
第十五条 前条第三項の規定による決定に不服がある者は、同項の通知を受けた日の翌日から起算して三十日以内に、総理府令で定める手続に従い、内閣総理大臣に対して異議を申し出ることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出があつたときは、その申出のあつた日から三十日以内に改めて補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償の額を決定し、これを申出人に通知しなければならない。
(補償金の交付)
第十六条 国は、前条第一項の規定による異議の申出がないときは、同項の期間の満了の日から三十日以内に、同項の規定による異議の申出があつた場合において同条第二項の規定による決定があつたときは、同項の通知の日から三十日以内に、補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付する。
(増額請求の訴え)
第十七条 第十五条第二項の規定による決定に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から三月以内に、訴えをもつてその増額を請求することができる。
2 前項の訴えにおいては、国を被告とする。
(争訟の方式)
第十八条 第十四条第三項の規定による決定に不服がある者は、第十五条第一項及び前条第一項の規定によることによつてのみ争うことができる。
第四章 雑則
(自衛隊等の航空機以外の航空機の離着陸に対する適用)
第十九条 第三条第二項及び第四条の規定の適用については、自衛隊等の航空機以外の航空機の離陸及び着陸で防衛施設たる飛行場を使用して行われるものは、自衛隊等の航空機の離陸及び着陸とみなし、第十三条第一項の規定の適用については、自衛隊等の航空機以外の航空機の離陸及び着陸で自衛隊の設置する飛行場を使用して行われるものは、自衛隊の航空機の離陸及び着陸とみなす。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(防衛施設周辺の整備等に関する法律の廃止)
2 防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(旧法の廃止に伴う経過措置)
3 昭和四十八年度以前の年度の予算に係る国の補助金又は補償金等で昭和四十九年度以降に繰り越されたものに係る旧法第三条若しくは旧法第四条の助成又は旧法第五条の移転の補償等については、なお従前の例による。
4 この法律の施行の際、現に旧法第五条第一項の規定により指定されている区域は、第五条第一項の規定により指定された区域とみなす。この場合において、同項の規定の適用については、当該区域の指定の時は、旧法第五条第一項の規定により当該区域が指定された時とする。
5 第六条第一項及び第七条の規定の適用については、旧法第五条第三項の規定により買い入れた土地は、第五条第二項の規定により買い入れた土地とみなす。
6 この法律の施行前に旧法第三章の規定によつてした処分、手続その他の行為は、第三章の相当規定によつてしたものとみなす。
(沖縄県の区域における第八条の規定の適用の特例)
7 第八条の規定の沖縄県の区域における適用については、当分の間、同条中「一部」とあるのは「全部又は一部」とする。
(防衛庁設置法の一部改正)
8 防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第四十五条第六号を次のように改める。
六 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第三条から第九条までの規定による措置及び同法第十三条第一項の規定による損失の補償に関すること。
第五十条第一項第三号中「防衛施設周辺の整備等に関する法律第九条第一項」を「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第十三条第一項」に改め、同項第四号中「運用」を「設置又は運用」に改める。
(租税特別措置法の一部改正)
9 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第二項第二号中「防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)第五条第三項」を「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第五条第二項」に改め、
第三十七条第一項の表中
「 |
ロ 防衛施設周辺の整備等に関する法律第五条第一項の規定により防衛施設庁長官が指定した区域 |
」 |
を
「 |
ロ 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第五条第一項に規定する第二種区域 |
」 |
に改め、第六十五条の三第一項第二号中「防衛施設周辺の整備等に関する法律第五条第三項」を「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第五条第二項」に改め、
第六十五条の七第一項の表中
「 |
ロ 防衛施設周辺の整備等に関する法律第五条第一項の規定により防衛施設庁長官が指定した区域 |
」 |
を
「 |
ロ 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第五条第一項に規定する第二種区域 |
」 |
に改める。
(公害紛争処理法の一部改正)
10 公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)の一部を次のように改正する。
第五十条中「防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)」を「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)」に改める。
(沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律の一部改正)
11 沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律(昭和四十七年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
第四条を次のように改める。
第四条 削除
(内閣総理・大蔵大臣署名)