防衛施設周辺の整備等に関する法律
法律第百三十五号(昭四一・七・二六)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 防衛施設周辺の整備(第三条―第八条)
第三章 損失の補償(第九条―第十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、自衛隊等の行為又は防衛施設の運用により生ずる障害の防止等のため必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「自衛隊等」とは、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第一項に規定する自衛隊(以下「自衛隊」という。)又は日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊をいう。
2 この法律において「防衛施設」とは、自衛隊の施設又は日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域をいう。
第二章 防衛施設周辺の整備
(障害防止工事の助成)
第三条 国は、地方公共団体その他の者が自衛隊等の機甲車両その他重車両のひん繁な使用、射撃、爆撃その他火薬類の使用のひん繁な実施その他政令で定める行為により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、次に掲げる施設について必要な工事を行なうときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。
一 農業用施設、林業用施設又は漁業用施設
二 道路、河川又は海岸
三 防風施設、防砂施設その他の防災施設
四 水道又は下水道
五 その他政令で定める施設
2 国は、地方公共団体その他の者が自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施その他政令で定める行為により生ずる音響で著しいものを防止し、又は軽減するため、次に掲げる施設について必要な工事を行なうときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校
二 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条第一項に規定する病院
三 前二号の施設に類する施設で政令で定めるもの
(民生安定施設の助成)
第四条 国は、防衛施設の周辺地域を管轄する市町村で当該防衛施設の運用によりその周辺地域の住民の生活又は事業活動が著しく阻害されていると認められるものが、その障害の緩和に資するため、生活環境施設又は事業経営の安定に寄与する施設の整備について必要な措置をとるときは、当該市町村に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の一部を補助することができる。
(特定飛行場周辺の移転の補償等)
第五条 防衛施設庁長官は、自衛隊等が使用する飛行場で政令で定めるものの周辺における住民のこうむる障害の軽減に資するため、当該飛行場の周辺の一定の区域を、政令で定めるところにより、指定することができる。
2 国は、政令で定めるところにより、前項の指定の際現にその指定に係る区域(以下この条において「指定区域」という。)に所在する建物、立木竹その他土地に定着する物件(以下この項において「建物等」という。)の所有者が当該建物等を指定区域以外の区域に移転し、又は除却するときは、当該建物等の所有者及び当該建物等に関する所有権以外の権利を有する者に対し、予算の範囲内において、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償することができる。
3 国は、政令で定めるところにより、指定区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときは、予算の範囲内において、当該土地を買い入れることができる。
(資金の融通等)
第六条 国は、第三条の工事を行なう者又は第四条の措置をとる市町村に対し、必要な資金の融通又はあつせんその他の援助に努めるものとする。
(国の普通財産の譲渡等)
第七条 国は、第三条の工事又は第四条の措置に係る事業の用に供するため必要があると認めるときは、地方公共団体その他の者に対し、普通財産を譲渡し、又は貸し付けることができる。
(関係行政機関の協力)
第八条 関係行政機関の長は、その所掌事務の遂行に当たつては、防衛施設の周辺における生活環境及び産業基盤の整備を図るように努めるものとする。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長による前項の整備に係る事務の遂行について、当該関係行政機関の長に対し、意見を述べることができる。
第三章 損失の補償
(損失の補償)
第九条 自衛隊の次に掲げる行為により、従来適法に農業、林業、漁業その他政令で定める事業を営んでいた者がその事業の経営上損失をこうむつたときは、国がその損失を補償する。
一 航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施、機甲車両その他重車両のひん繁な使用又は艦船若しくは舟艇のひん繁な使用で政令で定めるもの
二 射撃、爆撃その他火薬類の使用のひん繁な実施で政令で定めるもの
三 その他政令で定める行為
2 前項の規定は、他の法律により国が損害賠償又は損失補償の責めに任ずべき損失については、適用しない。
3 第一項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。
(損失補償の申請)
第十条 前条の規定による損失の補償を受けようとする者は、総理府令で定めるところにより、その者の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、損失補償申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の申請書を受理したときは、その意見を記載した書面を当該申請書に添えて、これを内閣総理大臣に送付しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の書類を受理したときは、補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請者に通知しなければならない。
(異議の申出)
第十一条 前条第三項の規定による決定に不服がある者は、同項の通知を受けた日の翌日から起算して三十日以内に、総理府令で定める手続に従い、内閣総理大臣に対して異議を申し出ることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出があつたときは、その申出のあつた日から三十日以内にあらためて補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償の額を決定し、これを申出人に通知しなければならない。
(補償金の交付)
第十二条 政府は、前条第一項の規定による異議の申出がないときは、同項の期間の満了の日から三十日以内に、同項の規定による異議の申出があつた場合において同条第二項の規定による決定があつたときは、同項の通知の日から三十日以内に、補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付する。
(増額請求の訴え)
第十三条 第十一条第二項の規定による決定に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から三箇月以内に、訴えをもつてその増額を請求することができる。
2 前項の訴えにおいては、国を被告とする。
(争訟の方式)
第十四条 第十条第三項の規定による決定に不服がある者は、第十一条第一項及び前条第一項の規定によることによつてのみ争うことができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第四十五条中第七号を第八号とし、第六号を第七号とし、第五号の次に次の一号を加える。
六 防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)第三条から第五条までの規定による措置及び同法第九条第一項の規定による損失の補償に関すること。
(内閣総理・大蔵大臣署名)