義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律
法律第百八十二号(昭三八・一二・二一)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 無償給付及び給与(第三条―第九条)
第三章 採択(第十条―第十七条)
第四章 発行(第十八条―第二十二条)
第五章 罰則(第二十三条・第二十四条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、教科用図書の無償給付その他義務教育諸学校の教科用図書を無償とする措置について必要な事項を定めるとともに、当該措置の円滑な実施に資するため、義務教育諸学校の教科用図書の採択及び発行の制度を整備し、もつて義務教育の充実を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「義務教育諸学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校並びに盲学校、 聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。
2 この法律において「教科用図書」とは、学校教育法第二十一条第一項(同法第四十条及び第七十六条において準用する場合を含む。)及び第百七条に規定する教科用図書をいう。
3 この法律において「発行」とは、教科用図書を製造供給することをいう。
第二章 無償給付及び給与
(教科用図書の無償給付)
第三条 国は、毎年度、義務教育諸学校の児童及び生徒が各学年の課程において使用する教科用図書で第十三条から第十六条までの規定により採択されたものを購入し、国立の義務教育諸学校の児童及び生徒に係るものを除き、義務教育諸学校(国立の義務教育諸学校を除く。)の設置者に無償で給付するものとする。
(契約の締結)
第四条 文部大臣は、教科用図書の発行者と、前条の規定により購入すべき教科用図書を購入する旨の契約を締結するものとする。
(教科用図書の給与)
第五条 公立及び私立の義務教育諸学校の設置者は、第三条の規定により国から無償で給付された教科用図書を、それぞれ当該学校の校長を通じて児童又は生徒に給与するものとする。
2 国は、第三条の規定により購入した教科用図書のうち国立の義務教育諸学校の児童及び生徒に係る教科用図書を、当該学校の校長を通じて児童又は生徒に給与するものとする。
3 学年の中途において転学した児童又は生徒については、その転学後において使用する教科用図書は、前二項の規定にかかわらず、文部省令で定める場合を除き、給与しないものとする。
(都道府県の教育委員会の責務)
第六条 都道府県の教育委員会は、政令で定めるところにより、教科用図書の無償給付及び給与の実施に関し必要な事務を行なうものとする。
(給付の完了の確認の時期の特例)
第七条 第四条の規定による契約に係る政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第四条第一号に掲げる時期については、同法第五条第一項中「十日以内の日」とあるのは「二十日以内の日」と読み替えて同項の規定を適用する。
(都に関する特例)
第八条 この章の規定の適用については、特別区の設置する義務教育諸学校は、都の設置する義務教育諸学校とみなす。
(政令への委任)
第九条 この章に規定するもののほか、教科用図書の無償給付及び給与に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 採択
(都道府県の教育委員会の任務)
第十条 都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の、義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択の適正な実施を図るため、義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究に関し、計画し、及び実施するとともに、市町村(市町村の組合を含む。以下この章において同じ。)の教育委員会並びに国立及び私立の義務教育諸学校の校長の行なう採択に関する事務について、適切な指導、助言又は援助を行なわなければならない。
(教科用図書選定審議会)
第十一条 都道府県の教育委員会は、前条の規定により指導、助言又は援助を行なおうとするときは、あらかじめ教科用図書選定審議会(以下「選定審議会」という。)の意見をきかなければならない。
2 選定審議会は、毎年度、政令で定める期間、都道府県に置く。
3 選定審議会は、二十人以内において条例で定める人数の委員で組織する。
(採択地区)
第十二条 都道府県の教育委員会は、当該都道府県の区域について、市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域に、教科用図書採択地区(以下この章において「採択地区」という。)を設定しなければならない。
2 都道府県の教育委員会は、採択地区を設定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ市町村の教育委員会の意見をきかなければならない。
3 都道府県の教育委員会は、採択地区を設定し、又は変更したときは、すみやかにこれを告示するとともに、文部大臣にその旨を報告しなければならない。
(教科用図書の採択)
第十三条 都道府県内の義務教育諸学校(都道府県立の義務教育諸学校を除く。)において使用する教科用図書の採択は、第十条の規定によつて当該都道府県の教育委員会が行なう指導、助言又は援助により、種目(教科用図書の教科ごとに分類された単位をいう。以下同じ。)ごとに一種の教科用図書について行なうものとする。
2 都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択は、あらかじめ選定審議会の意見をきいて、種目ごとに一種の教科用図書について行なうものとする。
3 第一項の場合において、採択地区が二以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。
4 前三項の採択は、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号。以下「臨時措置法」という。)第六条第一項の規定により文部大臣から送付される目録に登載された教科用図書のうちから行なわなければならない。ただし、学校教育法第百七条に規定する教科用図書については、この限りでない。
(同一教科用図書を採択する期間)
第十四条 義務教育諸学校において使用する教科用図書については、政令で定めるところにより、政令で定める期間、毎年度、種目ごとに同一の教科用図書を採択するものとする。
(特別区に関する特例)
第十五条 都の教育委員会は、特別区の存する区域については、特別区の区域又はその区域をあわせた地域に、採択地区を設定しなければならない。
2 第十二条第二項及び第三項の規定は、都の教育委員会が行なう前項の採択地区の設定又は変更について準用する。この場合において、同条第二項中「市町村」とあるのは、「特別区」と読み替えるものとする。
3 都の教育委員会は、特別区の存する区域については、第一項の採択地区ごとに、当該採択地区内の特別区立の小学校及び中学校において使用する教科用図書として、種目ごとに一種の教科用図書を採択する。
4 第十三条第四項の規定は、前項の採択について準用する。
(指定都市に関する特例)
第十六条 指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下この条において同じ。)については、当該指定都市を包括する都道府県の教育委員会は、第十二条第一項の規定にかかわらず、指定都市の区の区域又はその区域をあわせた地域に、採択地区を設定しなければならない。
2 指定都市の教育委員会は、第十条の規定によつて都道府県の教育委員会が行なう指導、助言又は援助により、前項の採択地区ごとに、当該採択地区内の指定都市の設置する小学校及び中学校において使用する教科用図書として、種目ごとに一種の教科用図書を採択する。
3 第十三条第四項の規定は、前項の採択について準用する。
(政令への委任)
第十七条 この章に規定するもののほか、選定審議会の所掌事務、組織及び運営並びに採択地区の設定、採択の時期その他採択に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 発行
(発行者の指定)
第十八条 文部大臣は、義務教育諸学校において使用する教科用図書(学校教育法第百七条に規定する教科用図書を除く。以下この章において同じ。)の発行を担当する者で次の各号に掲げる基準に該当するものを、その者の申請に基づき、教科用図書発行者として指定する。
一 次のいずれかに掲げる者でないものであること。
イ 破産者で復権を得ないもの
ロ 次条の規定により指定を取り消された日から三年を経過していない者
ハ 禁 錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反し、若しくは義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択に関し刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条若しくは第二百三十三条の罪を犯して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わつた日又は執行を受けることがなくなつた日から三年を経過していない者
ニ 法人で、その役員のうちにイからハまでのいずれかに該当する者があるもの
ホ 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者で、その法定代理人がイからハまでのいずれかに該当するもの
二 その事業能力及び信用状態について政令で定める要件を備えたものであること。
2 前項の指定を受けようとする者は、文部省令で定めるところにより、申請書に必要な書類を添えて、文部大臣に提出しなければならない。
(指定の取消し)
第十九条 文部大臣は、教科用図書発行者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、前条第一項の指定を取り消さなければならない。
一 前条第一項各号のいずれかに掲げる基準に適合しなくなつたとき。
二 虚偽又は不正の事実に基づいて前条第一項の指定を受けたことが判明したとき。
(報告及び資料の提出)
第二十条 文部大臣は、教科用図書発行者について、第十八条第一項各号に掲げる基準に適合しているかどうかを調査するため必要があると認めるときは、教科用図書発行者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。
(発行の指示の取消し)
第二十一条 文部大臣は、教科用図書発行者が第十九条の規定により指定を取り消されたときは、その者に係る臨時措置法第八条の規定による発行の指示を取り消さなければならない。
(臨時措置法との関係)
第二十二条 教科用図書の発行及び教科用図書発行者については、この章に規定するもののほか、臨時措置法の定めるところによる。
第五章 罰則
第二十三条 第二十条の規定による報告若しくは資料の提出の要求に応ぜず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出した者は、三万円以下の罰金に処する。
第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、小学校(盲学校、 聾学校及び養護学校の小学部を含む。)において使用する教科用図書については昭和三十九年三月三十一日、中学枚(盲学校、 聾学校及び養護学校の中学部を含む。)において使用する教科用図書については昭和四十年三月三十一日までの間は、適用しない。
(適用除外)
2 昭和三十八年度に義務教育諸学枚において使用される教科用図書の無償給付及び給与については、第二章の規定は、適用しない。
(経過規定)
3 昭和三十九年度に義務教育諸学校において使用される教科用図書の購入については、第三条中「第十三条から第十六条までの規定により採択されたもの」とあるのは、「当該義務教育諸学校について採択されたもの」とする。
4 当分の間、第五条の規定により教科用図書の給与を受ける児童及び生徒の範囲は、同条の規定にかかわらず、政令で定める。
(教科書の発行に関する臨時措置法の一部改正)
5 教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第六条第一項中「目録」の下に「(義務教育諸学校の教科書については、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)第十八条第一項に規定する教科用図書発行者の届出に基づくものに限る。)」を加える。
第七条第一項中「私立の学校の長は、」の下に「採択した」を加える。
第九条に次の一号を加える。
五 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)第二十一条の規定により発行の指示を取り消したとき。
(教科書の発行に関する臨時措置法の一部改正に伴う経過規定)
6 昭和三十九年度に義務教育諸学校において使用される教科用図書については、この法律による改正後の教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第六条第一項の規定中「目録(義務教育諸学校の教科書については、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律「(昭和三十八年法律第百八十二号)第十八条第一項に規定する教科用図書発行者の届出に基づくものに限る。)」とあるのは「目録」と読み替えて同項の規定を適用する。
(文部省設置法の一部改正)
7 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第十二号の二の次に次の二号を加える。
十二の三 義務教育諸学校(学校教育法に規定する小学校、中学校並びに盲学校、 聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。以下同じ。)において使用する教科用図書の発行者の指定を行なうこと。
十二の四 義務教育諸学校において使用する教科用図書の購入、無償給付及び給与を行なうこと。
第八条中第十三号の二の次に次の二号を加える。
十三の三 義務教育諸学校において使用する教科用図書の発行者の指定に関すること。
十三の四 義務教育諸学校において使用する教科用図書の購入、無償給付及び給与に関すること。
第二十七条第一項の表中
「 |
教科用図書検定調査審議会 |
検定申請の教科用図書を調査し、及び教科用図書に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
臨時義務教育教科用図書無償制度調査会 |
義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律(昭和三十七年法律第六十号)に基づき文部大臣の諮問に応じて義務教育諸学校(学校教育法に規定する小学校、中学校並びに盲学校、 聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。)において使用する教科用図書を無償とする措置に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を文部大臣に建議すること。 |
を
「 |
教科用図書検定調査審議会 |
検定申請の教科用図書を調査し、及び教科用図書に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
に改める。
(文部省著作教科書の出版権等に関する法律の一部改正)
8 文部省著作教科書の出版権等に関する法律(昭和二十四年法律第百四十九号)の一部を次のように改正する。
第十四条第一項の次に次の一号を加える。
四 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)第十九条の規定により文部大臣が教科用図書発行者の規定を取り消したとき。
(盲学校、 聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部改正)
9 盲学校、 聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律(昭和二十九年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項各号列記以外の部分中「次の各号」を「第二号から第六号まで」に改める。
(盲学校、 聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部改正に伴う経過規定)
10 当分の間、盲学校、 聾学校及び養護学校の小学部又は中学部の児童又は生徒で義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律(昭和三十七年法律第六十号)附則第二項及びこの法律の附則第四項の規定に基づく政令で定めるところにより教科用図書の給与を受けないこととなるものについては、この法律による改正後の盲学校、 聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律(昭和二十九年法律第百四十四号)第二条第一項各号列記以外の部分中「第二号から第六号まで」とあるのは「次の各号」と読み替えて同項の規定を適用する。
(就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律の一部改正)
11 就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律(昭和三十一年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
第一条中「教科用図書」を「学用品」に改める。
第二条各号列記以外の部分中「、同法第二十一条第一項(同法第四十条で準用する場合を含む。)の教科用図書(以下「教科用図書」という。)若しくはその購入費」を削り、同条第一号中「教科用図書若しくはその購入費、」を削る。
(就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律の一部改正に伴う経過規定)
12 当分の間、この法律による改正後の就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律(昭和三十一年法律第四十号)第二条に規定する学齢児童又は学齢生徒で義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律(昭和三十七年法律第六十号)附則第二項及びこの法律の附則第四項の規定に基づく政令で定めるところにより教科用図書の給与を受けないこととなるものの保護者については、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律第二条各号列記以外の部分中「学用品若しくはその購入費」とあるのは「同法第二十一条第一項(同法第四十条で準用する場合を合む。)の教科用図書(以下「教科用図書」という。)若しくはその購入費、学用品若しくはその購入費」と、同条第一号中「学用品若しくはその購入費」とあるのは「教科用図書若しくはその購入費、学用品若しくはその購入費」と、それぞれ読み替えて同条の規定を適用する。
(大蔵・文部・内閣総理大臣署名)