所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律
法律第百六十一号(昭三八・七・二四)
(趣旨)
第一条 この法律は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約(以下「条約」という。)を実施するため、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)及び法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の特例その他必要な事項を定めるものとする。
(配当に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)
第二条 所得税法第一条第六項の規定に該当する法人(同条第七項の規定により法人とみなされる社団又は財団を含む。以下同じ。)で条約第二条第一項(h)に規定するタイの居住者であるものが支払を受ける条約第六条第二項ただし書の規定に該当する配当で同法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある条約第二条第一項(1)に規定する恒久的施設(以下「恒久的施設」という。)に帰せられるものを除く。)に対する同法第十八条第二項又は第四十一条第一項若しくは第二項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十五」とする。ただし、当該配当に対する所得税額をその支払を受けるべき金額の百分の十五に相当する金額以下とする他の法律の規定の適用を妨げない。
(利子に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)
第三条 所得税法第一条第六項の規定に該当する法人で条約第二条第一項(f)に規定するタイの法人であるものが支払を受ける条約第七条第四項の規定に該当する利子で同法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを除く。)に対する同法第十八条第二項又は第四十一条第一項若しくは第二項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十」とする。ただし、当該利子に対し所得税を課さず、又は当該利子に対する所得税額をその支払を受けるべき金額の百分の十に相当する金額以下とする他の法律の規定の適用を妨げない。
(使用料等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)
第四条 所得税法第一条第二項の規定に該当する個人又は同条第六項の規定に該当する法人で条約第二条第一項(h)に規定するタイの居住者であるもの(以下「タイの居住者」という。)が支払を受ける条約第八条第一項又は第四項に規定する使用料又は所得で同法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを除く。)に対する同法第十七条第一項、第十八条第二項又は第四十一条第一項若しくは第二項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十五」とする。ただし、これらの所得に対する所得税額をその支払を受けるべき金額の百分の十五に相当する金額以下とする他の法律の規定の適用を妨げない。
(配当、利子、使用料等に対する申告納税に係る所得税等の軽減)
第五条 所得税法第一条第八項第一号又は法人税法第一条第四項第一号に掲げる事業を有するタイの居住者が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の所得税額又は法人税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、第一号から第四号までに規定する配当及び利子の金額並びに第五号に掲げる所得に係る総収入金額にそれぞれ当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の所得税額又は法人税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。
一 条約第六条第一項に規定する配当(法人税法の施行地にその源泉があるものに限るものとし、第三号の配当に該当するもの及びその者の同法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを除くものとする。以下次号において同じ。)に係る所得 百分の二十五
二 条約第六条第二項に規定する配当に係る所得 百分の二十
三 第二条に規定する配当に係る所得 百分の十五
四 第三条に規定する利子に係る所得 百分の十
五 前条に規定する使用料に係る所得又は同条に規定する所得 百分の十五
2 前項に規定する所得税額又は法人税額のうち当該所得に対応する部分の金額は、当該所得の生じた年分又は事業年度分につき、同項の規定の適用がないものとして計算した場合における所得税額又は法人税額に相当する金額から、当該所得が生じなかつたものとして計算した場合における所得税額又は法人税額に相当する金額を控除して得た金額とする。
(タイの租税の徴収)
第六条 政府は、条約第二条第一項(d)に規定するタイの租税につき、タイ政府から条約第十五条第二項の規定による徴収の嘱託を受けたときは、国税徴収の例によりこれを徴収する。この場合において、当該租税及びその滞納処分費の徴収の順位は、それぞれ国税及びその滞納処分費と同順位とする。
(実施規程)
第七条 第二条から前条までに定めるもののほか、条約の実施及びこの法律の適用に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
附 則
1 この法律は、条約の効力発生の日から施行する。
2 第二条から第四条までの規定中所得税法第十七条第一項及び第十八条第二項の規定に係る部分は、この法律の施行の日の属する年の一月一日以後に支払を受けるべき第二条に規定する配当、第三条に規定する利子又は第四条に規定する使用料若しくは所得について、第二条から第四条までの規定中所得税法第四十一条第一項及び第二項の規定に係る部分は、同日以後に支払を受けるべき当該配当、利子又は使用料若しくは所得でこの法律の施行の日以後に支払われるものについて適用する。
3 第五条の規定は、この法律の施行の日の属する年の一月一日(同条第一項に規定する者が法人である場合には、当該法人の同日以後に最初に開始する事業年度の開始の日)以後に支払を受けるべき同項に規定する所得について適用する。
(大蔵・内閣総理大臣署名)