学校保健法
法律第五十六号(昭三三・四・一〇)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 健康診断及び健康相談(第四条―第十一条)
第三章 伝染病の予防(第十二条―第十四条)
第四章 学校保健技師並びに学校医、学校歯科医及び学校薬剤師(第十五条・第十六条)
第五章 地方公共団体の援助及び国の補助(第十七条・第十八条)
第六章 雑則(第十九条―第二十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、学校における保健管理に関し必要な事項を定め、児童、生徒、学生及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図り、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする。
(学校保健計画)
第二条 学校においては、児童、生徒、学生又は幼児及び職員の健康診断その他その保健に関する事項について計画を立て、これを実施しなければならない。
(学校環境衛生)
第三条 学校においては、換気、採光、照明及び保温を適切に行い、清潔を保つ等環境衛生の維持に努め、必要に応じてその改善を図らなければならない。
第二章 健康診断及び健康相談
(就学時の健康診断)
第四条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第二十二条第一項の規定により翌学年の初めから小学校又は盲学校若しくは 聾学校の小学部に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当つて、その健康診断を行わなければならない。
第五条 市町村の教育委員会は、前条の健康診断の結果に基き、治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第二十二条第一項に規定する義務の猶予若しくは免除又は盲学校、聾学校若しくは養護学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならない。
(児童、生徒、学生及び幼児の健康診断)
第六条 学校においては、毎学年定期に、児童、生徒、学生(通信による教育を受ける学生を除く。)又は幼児の健康診断を行わなければならない。
2 学校においては、必要があるときは、臨時に、児童、生徒、学生又は幼児の健康診断を行うものとする。
第七条 学校においては、前条の健康診断の結果に基き、疾病の予防処置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない。
(職員の健康診断)
第八条 学校の設置者は、毎学年定期に、学校の職員の健康診断を行わなければならない。
2 市町村立の義務教育諸学校(小学校、中学校又は盲学校、 聾学校若しくは養護学校の小学部若しくは中学部をいう。以下同じ。)の校長(盲学校、聾学校又は養護学校の小学部又は中学部にあつては、当該部の属する学校の校長)及び教員の結核に関する定期の健康診断は、前項の規定にかかわらず、都道府県の教育委員会が行う。
3 学校の設置者は、必要があるときは、臨時に、学校の職員の健康診断を行うものとする。
第九条 学校の設置者は、前条第一項又は第三項の健康診断の結果に基き、治療を指示し、及び勤務を軽減する等適切な措置をとらなければならない。
2 都道府県の教育委員会は、市町村の教育委員会に対し、前条第二項の健康診断の結果を通知し、かつ、その結果に基き必要な指示をしなければならない。
(健康診断の方法及び技術的基準等)
第十条 健康診断の方法及び技術的基準については、文部省令で定める。
2 第四条から前条までに定めるもののほか、健康診断の時期及び検査の項目その他健康診断に関し必要な事項は、前項に規定するものを除き、第四条の健康診断に関するものについては政令で、第六条及び第八条の健康診断に関するものについては文部省令で定める。
(健康相談)
第十一条 学校においては、児童、生徒、学生又は幼児の健康に関し、健康相談を行うものとする。
第三章 伝染病の予防
(出席停止)
第十二条 校長は、伝染病にかかつており、かかつておる疑があり、又はかかるおそれのある児童、生徒、学生又は幼児があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる。
(臨時休業)
第十三条 学校の設置者は、伝染病予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。
(省令への委任)
第十四条 前二条(第十二条の規定に基く政令を含む。)及び伝染病予防法(明治三十年法律第三十六号)その他伝染病の予防に関して規定する法律(これらの法律に基く命令を含む。)に定めるもののほか、学校における伝染病の予防に関し必要な事項は、文部省令で定める。
第四章 学校保健技師並びに学校医、学校歯科医及び学校薬剤師
(学校保健技師)
第十五条 都道府県の教育委員会の事務局に、学校保健技師を置くものとする。
2 学校保健技師は、学校における保健管理に関する専門的事項について学識経験がある者でなければならない。
3 学校保健技師は、上司の命を受け、学校における保健管理に関し、専門的技術的指導及び技術に従事する。
(学校医、学校歯科医及び学校薬剤師)
第十六条 学校には、学校医を置くものとする。
2 大学以外の学校には、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。
3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医師又は薬剤師のうちから、任命し、又は委嘱する。
4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する。
5 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則は、文部省令で定める。
第五章 地方公共団体の援助及び国の補助
(地方公共団体の援助)
第十七条 地方公共団体は、その設置する義務教育諸学校の児童又は生徒が、伝染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病で政令で定めるものにかかり、学校において治療の指示を受けたときは、当該児童又は生徒の保護者(学校教育法第二十二条第一項に規定する保護者をいう。)で次の各号の一に該当するものに対して、その疾病の治療のための医療に要する費用について必要な援助を行うものとする。
一 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第六条第二項に規定する要保護者
二 生活保護法第六条第二項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮している者で政令で定めるもの
(国の補助)
第十八条 国は、地方公共団体が前条の規定により援助を行う場合には、予算の範囲内において、その援助に要する経費の一部を補助することができる。
2 国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、公立の義務教育諸学校の校長(盲学校、聾学校又は養護学校の小学部又は中学部にあつては、当該部の属する学校の校長)及び教員の結核に関する定期の健康診断に要する経費の一部を補助することができる。
3 前二項の規定により国が補助を行う場合の補助の基準については、政令で定める。
第六章 雑則
(保健室)
第十九条 学校には、健康診断、健康相談、救急処置等を行うため、保健室を設けるものとする。
(保健所との連絡)
第二十条 学校の設置者は、この法律の規定による健康診断を行おうとする場合その他政令で定める場合においては、保健所と連絡するものとする。
(学校の設置者の事務の委任)
第二十一条 学校の設置者は、他の法律に特別の定がある場合のほか、この法律に基き処理すべき事務を校長に委任することができる。
附 則
(施行期日)
1 この法律中第十七条及び第十八条第一項の規定は昭和三十三年十月一日から、その他の規定は同年六月一日から施行する。
(学校薬剤師の設置の特例)
2 学校薬剤師は、第十六条第二項の規定にかかわらず、昭和三十六年三月三十一日までの間は、置かないことができる。
(学校教育法の一部改正)
3 学校教育法の一部を次のように改正する。
第十二条を次のように改める。
第十二条 学校においては、別に法律で定めるところにより、学生、生徒、児童及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない。
第二十六条中「伝染病にかかり、若しくはその虞のある児童又は」を削る。
(結核予防法の一部改正)
4 結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「職員、」を削り、同条第四項中「使用者又は学校若しくは施設の長が」を「第一項の健康診断の対象者に対して」に、「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)」を「学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)」に、「を行つた場合」を「が行われた場合」に改め、「ときは」の下に「、当該対象者に対してそれぞれ使用者又は学校若しくは施設の長が」を加える。
第十一条に次の一項を加える。
2 前項の規定は、他の法律又はこれに基く命令若しくは規則の規定による健康診断実施者が、第四条第四項の規定により同条第一項の規定による健康診断とみなされる健康診断を行つた場合に準用する。
第十三条第一項中「健康診断を行つた者」の下に「(同条第四項の規定により同条第一項の規定による健康診断を行つた者とみなされた者を含む。次項において同じ。)」を加える。
第二十条中「第十一条」を「第十一条第一項」に改める。
(地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正)
5 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第五十七条第一項中「学校身体検査」を「健康診断」に改める。
(内閣総理・大蔵・文部・厚生大臣署名)