旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律

法律第二百八十九号(昭二六・一二・三)

 (目的)

第一条 この法律は、旧外貨債処理法(昭和十八年法律第六十号。以下「旧法」という。)による外貨債の借換に際し、不当な取扱がされたと認められる者等の権利を回復するため、その不当な取扱により借り換えられた外貨債の証券の一部を有効なものとする等の措置を講ずることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「外貨債」とは、旧法第一条に規定する外貨債及び名古屋市五分利付英貨八十万ポンド公債をいう。

2 この法律において「邦貨債」とは、旧法第二条第一項に規定する借換のため同項の規定により当該外貨債に代えて発行された国債、地方債及び社債をいう。

 (借り換えられた外貨債証券の一部の有効)

第三条 旧法第二条第一項の規定により邦貨債に借り換えられた外貨債であつて左の各号の一に該当するものの証券のうち、当該借換に際し、当該証券につき穴あけ、記載事項のまつ消その他当該証券を無効とする行為がされなかつたもので大蔵大臣の指定するものは、当該外貨債の元金の支払義務については、当該借換の日にさかのぼつて有効なものとする。

 一 当該借換について、当該外貨債の証券の所有者の承諾を得なかつたもの

 二 当該借換の日において質権の目的となつていたもので、当該借換について当該質権の権利者の承諾を得なかつたもの

 三 昭和十六年十二月八日以後日本国と外国との間の戦争状態の発生に伴い、当該外国の法令に基き清算に付され、又は敵産として管理に付されたもの

2 大蔵大臣は、前項の指定をしたときは、当該外貨債の証券の銘柄、額面金額、記号及び番号を告示する。

 (外貨債の利札の一部の有効)

第四条 前条第一項の外貨債の証券の利札で旧法第四条第二項の規定により無効となつたものは、当該利札に係る利子の支払義務については、当該外貨債の旧法第二条第一項の規定による借換(以下「借換」という。)の日にさかのぼつて有効なものとする。

2 前条第一項の外貨債の証券の利札で、これにつき旧外国為替管理法(昭和十六年法律第八十三号)に基く命令による支払(利札と引換による支払を除く。)がされ、旧法第十八条第一項の規定により無効となつたものは、当該利札に係る利子の支払義務については、当該支払の日にさかのぼつて有効なものとする。

3 外貨債の利札で、これにつき旧敵産管理法(昭和十六年法律第九十九号)に基く命令による支払がされ、旧法第十八条第一項の規定により無効となつたものは、当該利札に係る利子の支払義務については、当該支払の日にさかのぼつて有効なものとする。

 (地方債又は社債である外貨債の元利支払義務の政府承継)

第五条 第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債が地方債又は社債であるときは、その元利支払義務(利子の支払義務については、前条第一項又は第二項の規定により有効なものとされる利札に係る利子の支払義務に限る。)は、当該外貨債の借換の日(前条第二項の規定により有効なものとされる利札に係る利子の支払義務については、当該利札についての同項に規定する支払の日)にさかのぼつて、政府が承継する。

2 前条第三項の規定により有効なものとされる利札が地方債又は社債の利札であるときは、これに係る利子の支払義務は、当該利札についての同項に規定する支払の日にさかのぼつて、政府が承継する。

3 元金の償還のためのくじびきに当せんし、昭和十八年三月三十一日において当該元金がまだ支払われていなかつた大阪市築港公債で、その償還金又は利子の支払金が旧敵産管理法に基く命令により政府の指定する者に払い込まれ、同法第三条の規定によりその発行者がその債務を免かれたものについては、その発行者は、その債務を免かれなかつたものとし、当該公債の元利支払義務は、当該払込の日にさかのぼつて、政府が承継する。

 (借換価額相当額等の政府への納付)

第六条 第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債(閉鎖機関株式会社横浜正金銀行又は株式会社大阪銀行が旧敵産管理法施行令(昭和十六年勅令第千百七十九号)第四条第一項の規定により選任された敵産管理人として旧法第二条第一項の規定により借り換えたものを除く。)の借換により邦貨債を取得した者(その者の包括承継人を含む。)は、大蔵大臣の指定する日までに、左の各号に掲げる金額の合計額に相当する金額を政府に納付しなければならない。

 一 当該外貨債の借換価額

 二 当該邦貨債の利子のうち、当該日(当該邦貨債が台湾電力株式会社又は東洋拓殖株式会社の発行した社債であるときは、それぞれ昭和二十年四月十五日又は同年九月十五日)までに支払期日の到来したものの金額から、その百分の三十に相当する金額を控除した金額

2 前項の規定により納付しなければならない者は、その者が同項に規定する外貨債の借換により取得した邦貨債及び同項に規定する大蔵大臣の指定する日までに支払期日の到来したその利札(その利札が台湾電力株式会社又は東洋拓殖株式会社の発行した社債の利札であるときは、それぞれ昭和二十年四月十五日又は同年九月十五日までに支払期日の到来した利札)をもつて同項の規定により納付すべき金額の全部又は一部を納付することができる。

3 前項の規定による納付に充てる邦貨債の収納価額は、その発行価額(その邦貨債について利札が附されている場合において、当該利札(第一項に規定する大蔵大臣の指定する日までに支払期日の到来したもの(当該利札が台湾電力株式会社又は東洋拓殖株式会社の発行した社債の利札であるときは、それぞれ昭和二十年四月十五日又は同年九月十五日までに支払期日の到来したものに限る。)を除く。)のうち欠けたものがあるときは、これに相当する金額を控除した額)によるものとし、同項の規定による納付に充てる利札の収納価額は、その券面金額からその百分の三十に相当する金額を控除した金額による。

4 第二項の規定による納付に充てるものの収納の手続に関し必要な事項は、政令で定める。

5 第四条第二項の規定により有効なものとされる利札(第一項に規定する外貨債の利札に限る。)について同項に規定する支払を受けた者(その者の包括承継人を含む。)は、大蔵大臣の指定する日までに、その支払を受けた金額からその百分の三十に相当する金額を控除した金額に相当する金額を政府に納付しなければならない。

6 第一項又は前項の規定により納付しなければならない者が閉鎖機関令(昭和二十二年勅令第七十四号)第一条に規定する閉鎖機関である場合において、その者が同令第十一条に基く命令の規定の適用により第一項又は前項の規定による納付金額の一部を納付することができないときは、その者が第一項又は前項の規定により納付すべき金額は、これらの規定にかかわらず、これらの項の規定による納付金額からその納付することができない金額を控除した金額とし、この場合においては、その納付すべき金額を分割して納付することができるものとする。

7 第一項及び第五項において「その者の包括承継人」とは、当該者が死亡し、又は合併に因り解散した場合におけるその相続人、受遺者、合併後存続する法人及び合併に因り設立された法人をいい、本項中「当該者」とあるのを「本項に規定する相続人、受遺者、合併後存続する法人及び合併に因り設立された法人」と読み替えた場合において該当する者を含む。

 (横浜正金銀行等からする政府への譲渡及び納付)

第七条 第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債が、前条第一項に規定する銀行が旧敵産管理法施行令第四条第一項の規定により選任された敵産管理人として旧法第二条第一項の規定により借り換えたものであるときは、当該銀行及び株式会社東京銀行は、連合国財産の返還等に関する政令(昭和二十六年政令第六号)の規定にかかわらず、政令で定める手続により、大蔵大臣の指定する日までに、当該借換により邦貨債を取得した者(前条第七項に規定するその者の包括承継人を含む。)のためにその管理する当該邦貨債及びその利札(当該邦貨債について利札が附されていないときは、当該邦貨債に係る利子債権)を、当該邦貨債を取得した者に代り、政府に無償で譲渡し、且つ、当該邦貨債を取得した者のためにその管理する左の各号に掲げるものの金額に相当する金額を、当該邦貨債を取得した者に代り、政府に納付しなければならない。

 一 当該外貨債の借換に際し旧法第二条第三項の規定により支払われた金銭

 二 当該邦貨債について償還を受けた元金及び支払を受けた利子(その支払の際課せられた所得税の額を含まないものとする。)

 三 当該外貨債の証券に附属する利札について旧外国為替管理法に基く命令により支払を受けた利子(その支払の際課せられた所得税の額を含まないものとする。)

 四 当該銀行が前三号に掲げるものを管理している間にそのものから生じた果実

2 前条第六項の規定は、前項の場合について準用する。

3 前条第一項から第四項までの規定は、第一項に規定する銀行が、同項に規定する邦貨債を取得した者のために当該邦貨債及びその利札(当該邦貨債について利札が附されていないときは、当該邦貨債に係る利子債権)並びに同項第一号、第二号及び第四号に掲げるもの(同項第四項に掲げるものについては、同項第一号及び第二号に掲げるものに係るものに限る。以下本条において同じ。)の全部又は一部を管理していない場合における当該邦貨債を取得した者について準用する。この場合において、前条第一項中「第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債(閉鎖機関株式会社横浜正金銀行又は株式会社大阪銀行が旧敵産管理法施行令(昭和十六年勅令第千百七十九号)第四条第一項の規定により選任された敵産管理人として旧法第二条第一項の規定により借り換えたものを除く。)」とあるのは、「第七条第一項に規定する外貨債」と読み替えるものとする。

4 前項の場合において、第一項に規定する銀行が、同項に規定する邦貨債を取得した者に代り、同項の規定による譲渡又は同項第一号、第二号及び第四号に掲げるものの金額に相当する金額の納付をしたときは、当該譲渡に係る邦貨債若しくはその利札(前項において準用する前条第一項に規定する大蔵大臣の指定する日までに支払期日の到来しているものに限る。)の第六条第三項に規定する収納価額、当該譲渡に係る邦貨債の利子債権の債権金額からその百分の三十に相当する金額を控除した金額又は当該納付金額に相当する金額については、当該邦貨債を取得した者が、これを前項において準用する前条第一項の規定による政府に納付したものとみなす。

5 前条第五項の規定は、第一項に規定する銀行が、同項に規定する邦貨債を取得した者のために同項第三号及び第四号に掲げるもの(同項第四号に掲げるものについては、同項第三号に掲げるものに係るものに限る。以下本条において同じ。)の全部又は一部を管理していない場合における同項第三号に規定する利子の支払を受けた者について準用する。この場合において、前条第五項中「利札(第一項に規定する外貨債の利札に限る。)」とあるのは、「第七条第一項に規定する外貨債の利札」と読み替えるものとする。

6 前項の場合において、第一項に規定する銀行が、同項に規定する邦貨債を取得した者に代り、同項の規定による同項第三号及び第四号に掲げるものの金額に相当する金額の納付をしたときは、当該納付金額に相当する金額については、当該邦貨債を取得した者が、これを前項において準用する前条第五項の規定により政府に納付したものとみなす。

 (国債整理基金特別会計への繰入等)

第八条 政府は、第六条第一項(前条第三項において準用する場合を含む。以下本条において同じ。)の規定による納付が同条第二項(前条第三項において準用する場合を含む。以下本条において同じ。)の規定により国債でされたときは、当該国債を国債整理基金特別会計の所属に移さなければならない。

2 政府は、第六条第一項若しくは第五項(前条第五項において準用する場合を含む。)若しくは前条第一項の規定による納付が現金でされたとき、第六条第一項の規定による納付が同条第二項の規定により国債の利札でされたとき、又は前条第一項の規定により国債の利札(当該国債について利札が附されていないときは、当該国債に係る利子債権)が譲渡されたときは、当該現金、当該利札の第六条第三項に規定する収納価額及び当該利子債権の債権金額からその百分の三十に相当する金額を控除した金額に相当する金額を、一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。

3 政府は、第六条第一項の規定による納付が同条第二項の規定により地方債、社債若しくはこれらの利札でされた場合又は前条第一項の規定により地方債、社債若しくはこれらの利札(当該地方債又は社債について利札が附されていないときは、これらのものに係る利子債権)が譲渡された場合において、当該地方債、社債、利札又は利子債権を処分したときは、当該処分に因る収入金額に相当する金額を、一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。

4 前二項の規定による繰入があつた場合においては、その繰り入れられた金額について、国債整理基金特別会計法(明治三十九年法律第六号)第二条第一項の規定による一般会計からの繰入があつたものとみなす。

5 国債整理基金特別会計において、第一項の規定により国債を受け入れた場合においては、直ちに当該国債を、第二項又は第三項の規定による繰入を受けた場合においては、直ちにその繰入を受けた金額に相当する額の一般会計の負担に属する国債を、それぞれ償却しなければならない。

 (質権の保護)

第九条 第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債を目的とした質権で、旧法第二条第四項の規定により当該外貨債に代えて発行された邦貨債又は同条第三項の規定により支払われる金銭の上に存せしめられているものは、当該外貨債に係る第三条第二項の告示があつた日において消滅し、当該質権の権利者が当該外貨債の証券を占有しているときは、当該外貨債の上に存する。

 (特別経理会社等の経理の特例)

第十条 企業再建整備法(昭和二十一年法律第四十号)第二十四条に規定する特別経理株式会社で同条又は同法第二十五条に規定する仮勘定を設けているものは、第六条第一項又は第五項の規定により当該会社が政府に納付すべき金額については、これを仮勘定として貸借対照表の資産の部に計上し、第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債でその借換の際当該会社が有していたものについては、その価額を零として評価するものとし、当該外貨債の評価額が確定した場合(当該評価額が零として確定した場合を除く。)においては、当該会社が第六条第一項又は第五項の規定により政府に納付すべき金額を限度として、その確定した評価額を、仮勘定として貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。

2 前項の規定の適用を受ける特別経理株式会社については、企業再建整備法第二十六条第一項中「前二条」とあるのを「前二条又は旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律第十条第一項」と読み替えて、同項の規定を適用する。

3 金融機関再建整備法(昭和二十一年法律第三十九号)第三十七条第一項に規定する調整勘定を設けている金融機関は、第六条第一項又は第五項の規定により当該金融機関が政府に納付すべき金額については、これを当該調整勘定において経理し、第三条第一項の規定によりその証券が有効なものとされる外貨債でその借換の際当該金融機関が有していたものについては、当該金融機関が金融機関経理応急措置法(昭和二十一年法律第六号)第一条第一項に規定する指定時において有していた旧勘定に属する資産として、これを当該調整勘定において経理しなければならない。

 (他の法令との関係)

第十一条 第七条第一項の規定により政府に譲渡された邦貨債及びその利札(当該邦貨債について利札が附されていないときは、利子債権)並びに同項の規定により政府に納付されたもので連合国財産の返還等に関する政令第二条第三項に規定する連合国財産であるものは、同令の規定にかかわらず、当該譲渡又は納付の日から連合国財産でなくなるものとする。

2 第六条又は第七条の規定によりしなければならない取引又は行為については、外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第二十七条、第二十八条、第三十条から第三十三条まで及び第四十五条並びにこれらの規定に基く命令の規定は、適用しない。

 (報告義務)

第十二条 大蔵大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、旧法第二条第一項に規定する外貨債の発行者、邦貨債の元利支払事務の委託を受けていた者及び第七条第一項に規定する銀行から報告を徴することができる。

   附 則

 この法律中第一条から第五条まで、第九条及び第十二条の規定は、公布の日から、その他の規定は、昭和二十七年四月一日から施行する。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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