3 国鉄があった時代(企画・監修 加藤公共交通研究所)

博物館法

法律第二百八十五号(昭二六・一二・一)

目次

第一章 総則(第一条―第九条)

第二章 登録(第十条―第十七条)

第三章 公立博物館(第十八条―第二十六条)

第四章 私立博物館(第二十七条・第二十八条)

附則

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人若しくは宗教法人が設置するもので第二章の規定による登録を受けたものをいう。

2 この法律において、「公立博物館」とは、地方公共団体の設置する博物館をいい、「私立博物館」とは、民法第三十四条の法人又は宗教法人の設置する博物館をいう。

3 この法律において「博物館資料」とは、博物館が収集し、保管し、又は展示する資料をいう。

 (博物館の事業)

第三条 博物館は、前条第一項に規定する目的を達成するため、おおむね左に掲げる事業を行う。

 一 実物、標本、模写、模型、文献、図表、写真、フイルム、レコード等の博物館資料を豊富に収集し、保管し、及び展示すること。

 二 分館を設置し、又は博物館資料を当該博物館外で展示すること。

 三 一般公衆に対して、博物館資料の利用に関し必要な説明、助言、指導等を行い、又は研究室、実験室、工作室、図書館等を設置してこれを利用させること。

 四 博物館資料に関する専門的、技術的な調査研究を行うこと。

 五 博物館資料の保管及び展示等に関する技術的研究を行うこと。

 六 博物館資料に関する案内書、解説書、目録、図録、年報、調査研究の報告書等を作成し、及び領布すること。

 七 博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、及びその開催を援助すること。

 八 当該博物館の所在地又はその周辺にある文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の適用を受ける文化財について、解説書又は目録を作成する等一般公衆の当該文化財の利用の便を図ること。

 九 他の博物館、国立博物館、国立科学博物館等と緊密に連絡し、協力し、刊行物及び情報の交換、博物館資料の相互貸借等を行うこと。

 十 学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること。

2 博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。

 (館長、学芸員その他の職員)

第四条 博物館に、館長を置く。

2 館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。

3 博物館に、専門的職員として学芸員を置く。

4 学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

5 学芸員は、そのつかさどる専門的事項の区分に従い、人文科学学芸員又は自然科学学芸員と称する。

6 博物館に、館長及び学芸員のほか、学芸員補その他の職員を置くことができる。

7 学芸員補は、学芸員の職務を助ける。

 (学芸員及び学芸員補の資格)

第五条 左の各号の一に該当する者は、文部省令の定めるところにより人文科学学芸員又は自然科学学芸員となる資格を有する。

一 学士の称号を有する者で、大学において博物館に関する科目の単位を修得したもの

二 学士の称号を有する者で、第六条の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の単位を修得したもの

三 大学に二年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含めて六十二単位以上を修得した者で、三年以上学芸員補の職にあつたもの

四 大学に二年以上在学し、六十二単位以上を修得し、三年以上学芸員補の職にあつた者で、第六条の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の単位を修得したもの

五 六年以上学芸員補の職にあつた者で、第六条の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の単位を修得したもの

2 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十六条第一項の規定により大学に入学することのできる者は、学芸員補となる資格を有する。

3 第一項各号の規定により大学又は学芸員の講習において修得すべき博物館に関する科目の単位は、文部省令で定める。

 (学芸員の講習)

第六条 学芸員の講習は、文部大臣の委嘱を受けた大学が行う。

2 前項の講習に関し必要な事項は、文部省令で定める。

 (指導、助言)

第七条 文部大臣は、都道府県の教育委員会に対し、都道府県の教育委員会は、市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会及び私立博物館に対し、その求めに応じて、博物館の設置及び運営に関して、専門的、技術的な指導又は助言を与えることができる。

 (設置及び運営上望ましい基準)

第八条 文部大臣は、博物館の健全な発達を図るために、博物館の設置及び運営上望ましい基準を定め、これを教育委員会に提示するとともに一般公衆に対して示すものとする。

 (博物館資料の輸送運賃及び料金)

第九条 博物館資料の日本国有鉄道による輸送に関する運賃及び料金については、国有鉄道運賃法(昭和二十三年法律第百十二号)第八条の規定の適用があるものとする。

第二章 登録

 (登録)

第十条 地方公共団体又は民法第三十四条の法人若しくは宗教法人が、博物館を設置しようとするときは、当該博物館の所在する都道府県の教育委員会に備える博物館登録原簿に登録を受けるものとする。

 (登録の申請)

第十一条 前条の規定による登録を受けようとする者は、設置しようとする博物館について、左に掲げる事項を記載した登録申請書を都道府県の教育委員会に提出しなければならない。

一 設置者の名称及び民法第三十四条の法人又は宗教法人にあつてはその住所

二 名称

三 所在地

2 前項の登録申請書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。

一 公立博物館にあつては、設置条例の写、館則の写、直接博物館の用に供する建物及び土地の面積を記載した書面及びその図面、当該年度における事業計画書及び予算の歳出の見積に関する書類、博物館資料の目録並びに館長の氏名及び学芸員の種別ごとの氏名を記載した書面

二 私立博物館にあつては、当該法人の定款若しくは寄附行為の写又は当該宗教法人の規則の写、館則の写、直接博物館の用に供する建物及び土地の面積を記載した書面及びその図面、当該年度における事業計画書及び収支の見積に関する書類、博物館資料の目録並びに館長の氏名及び学芸員の種別ごとの氏名を記載した書面

 (登録要件の審査)

第十二条 都道府県の教育委員会は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、当該申請に係る博物館が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、備えていると認めたときは、同条第一項各号に掲げる事項及び登録の年月日を博物館登録原簿に登録するとともに登録した旨を当該登録申請者に通知し、備えていないと認めたときは、登録しない旨をその理由を附記した書面で当該登録申請者に通知しなければならない。

一 第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な博物館資料があること。

二 第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な学芸員その他の職員を有すること。

三 第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な建物及び土地があること。

四 一年を通じて百五十日以上開館すること。

 (登録事項等の変更)

第十三条 博物館の設置者は、第十一条第一項各号に掲げる事項又は同条第二項に規定する添付書類の記載事項について変更があつたときは、その旨を都道府県の教育委員会に届け出なければならない。

2 都道府県の教育委員会は、第十一条第一項各号に掲げる事項に変更があつたことを知つたときは、当該博物館に係る登録事項の変更登録をしなければならない。

 (登録の取消)

第十四条 都道府県の教育委員会会は、博物館が第十二条各号に掲げる要件を欠くに至つたものと認めたとき、又は虚偽の申請に基いて登録した事実を発見したときは、当該博物館に係る登録を取り消さなければならない。但し、博物館が天災その他やむを得ない事由により要件を欠くに至つた場合においては、その要件を欠くに至つた日から二年間はこの限りでない。

2 都道府県の教育委員会は、前項の規定による登録の取消をするに当つては、あらかじめ、当該博物館の設置者に対し、陳述する機会を与えなければならない。

3 都道府県の教育委員会は、第一項の規定により登録の取消をしたときは、当該博物館の設置者に対し、すみやかにその旨を通知しなければならない。

 (博物館の廃止)

第十五条 博物館の設置者は、博物館を廃止したときは、すみやかにその旨を都道府県の教育委員会に届け出なければならない。

2 都道府県の教育委員会は、博物館の設置者が当該博物館を廃止したときは、当該博物館に係る登録をまつ消しなければならない。

 (規則への委任)

第十六条 この章に定めるものを除くほか、博物館の登録に関し必要な事項は、都道府県の教育委員会の規則で定める。

 (報告の義務)

第十七条 都道府県の教育委員会は、文部大臣に対し、その求めに応じて、当該教育委員会において登録した博物館に関し必要な事項について報告しなければならない。

第三章 公立博物館

 (設置)

第十八条 公立博物館の設置に関する事項は、当該博物館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。

2 前項の条例に関する議案の作成及び提出については、教育委員会法(昭和二十三年法律第百七十号)第六十一条に規定する事件の例による。

 (所管)

第十九条 公立博物館は、当該博物館を設置する地方公共団体の教育委員会の所管に属する。

 (博物館協議会)

第二十条 公立博物館に、博物館協議会を置くことができる。

2 博物館協議会は、博物館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、館長に対して意見を述べる機関とする。

第二十一条 博物館協議会の委員は、学校教育及び社会教育の関係者並びに学識経験のある者の中から、当該博物館を設置する地方公共団体の教育委員会が任命する。

第二十二条 博物館協議会の設置、その委員の定数及び任期その他博物館協議会に関し必要な事項は、当該博物館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。

2 前項の条例については、第十八条第二項の規定を準用する。

3 博物館協議会の委員については、社会教育法第十五条第三項及び第四項並びに第十九条の規定を準用する。

 (入館料等)

第二十三条 公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。

 (補助金の交付その他の援助)

第二十四条 国は、博物館の健全な発達を奨励するため必要があると認めるときは、博物館を設置する地方公共団体に対し、予算の範囲内で、その維持運営に要する経費について補助金を交付し、その他必要な援助を行う。

第二十五条 前条の規定による補助金の交付は、博物館を設置する地方公共団体の各年度における博物館の維持運営に要する経費等の前年度における精算額を勘案して行うものとする。

2 前項の経費の範囲及び補助金交付の手続に関し必要な事項は、政令で定める。

 (補助金の交付中止及び補助金の返還)

第二十六条 国は、博物館を設置する地方公共団体に対し第二十四条の規定による補助金の交付をした場合において、左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、第一号の場合の取消が虚偽の申請に基いて登録した事実の発見に因るものである場合には、既に交付した補助金を、第三号及び第四号に該当する場合には、既に交付した当該年度の補助金を返還させなければならない。

一 当該博物館について、第十四条の規定による登録の取消があつたとき。

二 地方公共団体が当該博物館を廃止したとき。

三 地方公共団体が補助金の交付の条件に違反したとき。

四 地方公共団体が虚偽の方法で補助金の交付を受けたとき。

   第四章 私立博物館

 (都道府県の教育委員会との関係)

第二十七条 都道府県の教育委員会は、博物館に関する指導資料の作成及び調査研究のために、私立博物館に対し必要な報告を求めることができる。

 (国及び地方公共団体との関係)

第二十八条 国及び地方公共団体は、私立博物館に対し、その求めに応じて、必要な物資の確保につき援助を与えることができる。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して三箇月を経過した日から施行する。

 (経過規定)

2 第五条第一項第二号に規定する学士の称号を有する者には、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による学士の称号を有する者及び文部省令でこれらの者と同等以上の資格を有するものと定めた者を含むものとする。

3 第五条第一項第四号に規定する大学に二年以上在学し、六十二単位以上を修得した者には、旧大学令、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)、旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)又は旧教員養成諸学校官制(昭和二十一年勅令第二百八号)の規定による大学予科、高等学校高等科、専門学校及び教員養成諸学校を修了し、又は卒業した者及び文部省令でこれらの者と同等以上の資格を有するものと定めた者を含むものとする。

4 第五条第一項第三号から第五号までに規定する学芸員補の職には、文部大臣の指定する博物館に相当する施設における学芸員補の職に相当する職又はこれと同等以上の職を含むものとする。

5 第五条第二項に規定する者には、旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)、旧高等学校令又は旧青年学校令(昭和十四年勅令第二百五十四号)の規定による中等学校、高等学校尋常科又は青年学校本科を卒業し、又は修了した者及び文部省令でこれらの者と同等以上の資格を有するものと定めた者を含むものとする。

6 左の各号に掲げる者は、第五条の規定にかかわらず、この法律施行後三年間は、文部省令の定めるところにより人文科学学芸員又は自然科学学芸員となる資格を有するものとする。

 一 旧大学令による学士の称号を有する者又は文部省令でこれらの者と同等以上の資格を有するものと定められた者で、博物館において学芸員補の職務に従事し、又は文部大臣の指定する博物館に相当する施設において学芸員補の職務に相当する職務若しくはこれと同等以上の職務に従事し、その従事期間が通じて一年以上であるもの

 二 旧大学令、旧高等学校令、旧専門学校令又は旧教員養成諸学校官制の規定による大学予科、高等学校高等科、専門学校又は教員養成諸学校を修了し、又は卒業した者及び文部省令でこれらの者と同等以上の資格を有するものと定められた者で、博物館において学芸員補の職務に従事し、又は文部大臣の指定する博物館に相当する施設において学芸員補の職務に相当する職務若しくはこれと同等以上の職務に従事し、その従事期間が通じて三年以上であるもの

 三 博物館において学芸員補の職務に従事し、又は文部大臣の指定する博物館に相当する施設において学芸員補の職務に相当する職務若しくはこれと同等以上の職務に従事し、その従事期間が通じて十年以上であるもの

 四 都道府県の教育委員会の推薦に基いて、文部大臣が前三号に掲げる者と同等以上の資格を有するものと認定した者

7 前項第三号又は第四号の規定により学芸員となる資格を有する者は、この法律施行後三年以内に第六条の規定による学芸員の講習において第五条第一項第五号及び第三項に規定する博物館に関する科目の単位を修得した場合においては、この法律施行後三年を経過した日以後においても、第五条の規定にかかわらず、文部省令の定めるところにより人文科学学芸員又は自然科学学芸員となる資格を有するものとする。

8 この法律施行の際、現に教育委員会の置かれていない市町村にあつては、教育委員会が設置されるまでの間、第七条中「市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会」と、第八条中「教育委員会」とあるのは、それぞれ「市町村長(特別区の区長を含む。)」と読み替え、第十九条及び第二十一条中「地方公共団体の教育委員会」とあるのは、「地方公共団体の長」と読み替えるものとする。

 (地方税法の改正)

9 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十五条第三項中「これらに類する場所」の下に「(博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条第一項の博物館を除く。)」を加える。

  第二百九十六条中「私立学校法第六十四条第四項の法人、」の下に「博物館法第二条第一項の博物館を設置することを主たる目的とする民法第三十四条の法人、」を加える。

  第三百四十八条第二項第八号中「並びに民法第三十四条の法人」を「、民法第三十四条の法人」に改め、「図書館において直接その用に供する固定資産」の下に「及び同条の法人又は宗教法人がその設置する博物館法第二条第一項の博物館において直接その用に供する固定資産」を加える。

(内閣総理・大蔵・文部大臣署名) 

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