外務省設置法
法律第二百八十三号(昭二六・一二・一)
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 本省
第一節 内部部局(第五条―第十三条)
第二節 附属機関(第十四条―第十六条)
第三節 地方支分部局(第十七条―第十九条)
第三章 外局(第二十条・第二十一条)
第四章 在外公館(第二十二条―第二十五条)
第五章 職員(第二十六条・第二十七条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、外務省の所掌事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基いて、外務省を設置する。
2 外務省の長は、外務大臣とする。
(外務省の任務)
第三条 外務省は、左に掲げる国の行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。
一 外交政策の企画立案及びその実施
二 通商航海に関する利益の保護及び増進
三 外交官及び領事官の派遣及び接受
四 条約その他の国際約束の締結
五 国際機関及び国際会議への参加並びに国際協力の促進
六 外国に関する調査
七 内外事情の報道及び外国との文化交流
八 海外における邦人の保護並びに海外渡航及び移住のあつ旋
九 連合国最高司令官総司令部その他連合国最高司令官の下にある官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関の事務の総合調整
十 前各号に掲げるものの外、対外関係事務の処理及び総括
(外務省の権限)
第四条 外務省は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、条約、確立された国際法規及び法律(法律に基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 予算の範囲内で、所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 収入金を徴収し、所掌事務の遂行に必要な支払をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所等の施設を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な事務用品等を調達すること。
五 不用財産を処分すること。
六 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
七 職員の厚生及び保健のため必要な施設をし、及び管理すること。
八 職員に貸与する宿舎を設置し、及び管理すること。
九 所掌事務に関する文書、調査資料及び統計を領布し、又は刊行すること。
十 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
十一 外務省の公印を制定すること。
十二 日本国政府を代表して外国政府と交渉し、国際機関及び国際会議に参加すること。
十三 全権委任状、大使及び公使の信任状及び解任状並びに領事官の委任状を作成してこれを交付すること。
十四 外国の外交使節の全権委任状、信任状及び解任状並びに外国の領事官の委任状を受理し、並びに外国の領事官の認可状を作成してこれを交付すること。
十五 条約その他の国際約束を締結し、解釈し、及び実施し、並びに渉外法律事項を処理すること。
十六 通商航海に関する利益を保護し、及び増進するために外国官憲との交渉、商取引のあつ旋等を行うこと。
十七 海外における邦人の生命、身体及び財産を保護するために外国官憲と交渉し、日本人相互及び日本人と外国人との間に生じた民事上の事件に関し和解をさせ、又は仲裁をし、並びに身分関係事項の届出を受理し、及び登録すること。
十八 日本人の海外渡航及び移住に関しあつ旋、保護その他必要な措置をとること。
十九 旅券を発給し、及び査証すること。
二十 出入国管理令(昭和二十六年政令第三百十九号)及び外国人登録令(昭和二十二年勅令第二百七号)による出入国の管理、外国人登録令による外国人の登録並びに出入国管理令、外国人登録令及び北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令(昭和二十五年政令第二百二十七号)による退去強制に関する事務を行うこと。
二十一 在日外国人等の待遇に関する事務を行うこと。
二十二 日本と外国にわたる身分関係事項その他の事実について日本及び外国の官公署が発給した文書を証明すること。
二十三 外交に関する事項の発表を行うこと。
二十四 外国人及び外国に在住する日本人に対する栄典の授与について推薦をすること。
二十五 所掌事務に係る社団法人又は財団法人につき許可又は認可を与えること。
二十六 朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島その他の地域における日本の公私の財産及び負債並びに企業その他の諸施設の整理につき必要な措置をとること。
二十七 邦人の引揚に関する事務を行うこと。
二十八 国又は地方公共団体の機関に対して、所掌事務の遂行に必要な調査、報告及び資料の提出を求めること。
二十九 前各号に掲げるものの外、法律(法律に基く命令を含む。)に基き外務省に属させられた権限並びに条約の実施及び確立された国際法規の履行のために必要な権限
第二章 本省
第一節 内部部局
(内部部局)
第五条 本省に、大臣官房及び左の六局を置く。
アジア局
欧米局
経済局
条約局
国際協力局
情報文化局
(特別な職)
第六条 大臣官房に、官房長を置く。
2 官房長は、大臣官房の事務を統括する。
3 経済局に、次長一人を置く。
4 次長は、局長を助け、局務を整理する。
5 本省に、顧問及び参与を置く。
6 顧問は、外交上の機務に参画し、参与は、外交政策の実施に参画する。
(大臣官房の事務)
第七条 大臣官房においては、外務省の所掌事務に関し、左の事務をつかさどる。
一 所管行政の総合調整を行うこと。
二 所管行政の考査を行うこと。
三 法令案の審査を行うこと。
四 機密に関すること。
五 職員の職階、任免、分限、懲戒、服務その他の人事並びに教養及び訓練に関すること。
六 外交官及び領事官の派遣及び接受その他儀典に関すること。
七 外国人に対して栄典を授与すること及び外国勲章又は外国記章を日本人が受領することに関しあつ旋を行うこと。
八 公文書類を接受し、発送し、編集し、及び保存すること。
九 大臣の官印及び省印を管守すること。
十 文書の証明を行うこと。
十一 条約書その他の外交文書を保管すること。
十二 外交史料を編さんすること。
十三 翻訳を行うこと。
十四 図書を保管すること。
十五 電信を接受し、及び発送すること。
十六 経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関すること。
十七 行政財産及び物品を管理すること。
十八 職員の衛生、医療その他福利厚生に関すること。
十九 前各号に掲げるものの外、外務省の所掌事務で他局及び他の機関の所掌に属しない事務に関すること。
(アジア局の事務)
第八条 アジア局においては、左の事務をつかさどる。
一 アジア諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整に関すること。
二 アジア諸国に関する政務の処理並びにこれに必要な情報の収集及び調査研究に関すること。
三 アジア諸国における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること。
四 朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島その他の地域に関する整理事務を行うこと。
五 邦人の引揚に関すること。
六 在外公館等借入金の審査確認事務を行うこと。
(欧米局の事務)
第九条 欧米局においては、左の事務をつかさどる。
一 アジア諸国以外の諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整に関すること。
二 アジア諸国以外の諸国に関する政務の処理並びにこれに必要な情報の収集及び調査研究に関すること。
三 アジア諸国以外の諸国における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること。
四 海外渡航、移住、旅券の発給及び査証に関すること。
(経済局の事務)
第十条 経済局においては、左の事務をつかさどる。
一 通商航海に関する利益を保護し、及び増進すること。
二 国際経済機関との協力及び通商航海条約その他の通商経済上の協定に関すること。
三 国際経済事情の調査並びに国際経済に関する統計の作成及び資料の収集を行うこと。
(条約局の事務)
第十一条 条約局においては、左の事務をつかさどる。
一 条約その他の国際約束の締結に関すること。
二 国際法及び渉外法律事項に関すること。
(国際協力局の事務)
第十二条 国際協力局においては、左の事務をつかさどる。
一 国際機関及び国際会議への参加並びに国際行政に関すること。
二 連合国最高司令官総司令部その他連合国最高司令官の下にある官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関の事務の総合調整に関すること。
三 連合国による日本の管理に関する文書及び記録の収集及び研究を行うこと。
四 連絡調整事務局に関すること。
(情報文化局の事務)
第十三条 情報文化局においては、左の事務をつかさどる。
一 新聞、通信、放送その他の方法により、対外政策及び国際情勢の対内報道、対外政策及び国内情勢の対外報道並びにこれに必要な情報の収集を行うこと。
二 各国との文化交流及び国際文化機関との協力に関すること。
第二節 附属機関
(附属機関)
第十四条 本省に、左の附属機関を置く。
外務省研修所
在外公館等借入金整理準備審査会
(外務省研修所)
第十五条 外務省研修所は、外務省の職員に対して、その職務を行うに必要な訓練を行う機関とする。
2 外務省研修所は、東京都に置く。
3 外務省研修所に、所長を置く。
4 所長は、所務を掌理する。
5 前各項に規定するものを除く外、外務省研修所に関し必要な事項は、外務省令で定める。
(在外公館等借入金整理準備審査会)
第十六条 在外公館等借入金整理準備審査会に関しては、在外公館等借入金整理準備審査会法(昭和二十四年法律第百七十三号)の定めるところによる。
第三節 地方支分部局
(地方支分部局)
第十七条 本省に、地方支分部局として、連絡調整事務局を置く。
(所掌事務)
第十八条 連絡調整事務局は、本省の所掌事務のうち、左に掲げる事務を分掌する。
一 連合国最高司令官総司令部その他連合国最高司令官の下にある官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関の事務の調整に関すること。
二 連合国による日本の管理に関する文書及び記録の収集に関すること。
三 引揚に関する調査及び旅券に関すること。
四 国際情勢の対内報道に関すること。
2 連絡調整事務局は、前項に掲げる事務の外、賠償庁の所掌に属する事務を分掌する。
3 連絡調整事務局の長は、前項に掲げる事務につき賠償庁長官の指揮監督を受ける。
(名称、位置及び管轄区域)
第十九条 連絡調整事務局の名称、位置及び管轄区域は、左の通りとする。
名称 |
位置 |
管轄区域 |
札幌連絡調整事務局 |
札幌市 |
北海道 |
仙台連絡調整事務局 |
仙台市 |
青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 新潟県 |
横浜連絡調整事務局 |
横浜市 |
東京都 神奈川県(横須賀米国海軍基地司令部の管轄区域を除く。)埼玉県 千葉県 群馬県 茨城県 栃木県 山梨県 長野県 静岡県 |
横須賀連絡調整事務局 |
横須賀市 |
横須賀米国海軍基地司令部の管轄区域 |
大阪連絡調整事務局 |
大阪市 |
愛知県 岐阜県 三重県 富山県 石川県 福井県 大阪府 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山県 兵庫県 鳥取県 岡山県 島根県 広島県 香川県 徳島県 愛媛県 高知県 |
福岡連絡調整事務局 |
福岡市 |
山口県 福岡県 佐賀県 長崎県 大分県 宮崎県 熊本県 鹿児島県 |
第三章 外局
(外局)
第二十条 国家行政組織法第三条第二項の規定に基いて外務省に置かれる外局は、左の通りとする。
入国管理庁
(組織、所掌事務及び権限)
第二十一条 入国管理庁の組織、所掌事務及び権限は、入国管理庁設置令(昭和二十六年政令第三百二十号)の定めるところによる。
第四章 在外公館
(在外公館)
第二十二条 外務省の機関として、在外公館を置く。
2 在外公館は、大使館、公使館、総領事館、領事館、総領事館分館、領事館分館、名誉総領事館及び名誉領事館とする。
(所掌事務及び権限)
第二十三条 在外公館は、外国において本省の所掌事務を行い、且つ、条約、確立された国際法規及び法律(法律に基く命令を含む。)に基いて在外公館に属させられた権限を行使する。
(名称及び位置)
第二十四条 在外公館の名称及び位置は、別に法律で定める。
2 特別の必要がある場合においては、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、前項の法律に定めるものの外、在外公館を増置することができる。
3 既に設置されている在外公館の種類を変更する必要がある場合において、特別の事情があるときは、政令で定めるところにより、当該在外公館の種類を変更することができる。
(在外公館長)
第二十五条 在外公館に、長(以下「在外公館長」という。)を置く。
2 大使館、公使館、総領事館、領事館、名誉総領事館及び名誉領事館の長は、それぞれ特命全権大使、特命全権公使、総領事、領事、名誉総領事及び名誉領事とする。
3 在外公館長は、外務大臣の命を受けて、在外公館の事務を統括する。
4 在外公館長に事故があり、又は在外公館長が欠けた場合においては、あらかじめ外務大臣が指定する職員が、その事務を代理する。
第五章 職員
(職員)
第二十六条 外務省に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところによる。
(定員)
第二十七条 外務省に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 外務省設置法(昭和二十四年法律第百三十五号)は、廃止する。但し、従前の機関及び職員は、この法律に基く相当の機関及び職員となり、同一性をもつて存続するものとする。
3 在外公館として、第二十二条第二項に定めるものの外、当分の間、日本政府在外事務所を置く。
4 日本政府在外事務所については、日本政府在外事務所設置法(昭和二十五年法律第百五号)の定めるところによる。
5 在外公館等借入金整理準備審査会法(昭和二十四年法律第百七十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項中「外務省管理局長」を「外務省アジア局長」に改め、同条第四項中「外務省管理局」を「外務省アジア局」に改める。
6 国家公務員のための国設宿舎に関する法律(昭和二十四年法律第百十七号)の一部を次のように改正する。
第十条に次の一号を加える。
十三 在外公館の長
(外務・内閣総理大臣署名)