児童福祉法の一部を改正する法律

法律第二百二号(昭二六・六・六)

 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第四節 児童相談所」を「第四節 児童相談所、福祉事務所及び保健所」に改める。

 第六条中「親権者(親権者のないときは、後見人とする。以下同じ。)」を「親権を行う者、後見人」に改める。

 第十一条第二項中「必要な注意を与える」を「専門的技術に基いて必要な指導を行う」に改め、同条第四項を次のように改める。

 児童福祉司は、第二項の職務に関し、児童相談所長の指揮監督を受ける。

第十一条の次に次の一条を加える。

第十一条の二 児童福祉司は、事務吏員又は技術吏員とし、左の各号の一に該当する者の中から、これを任用しなければならない。

一 厚生大臣の指定する児童福祉司又は児童福祉施設の職員を養成する学校その他の施設を卒業し、又は厚生大臣の指定する講習会の課程を修了した者

二 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基く大学又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基く大学において、心理学、教育学又は社会学を専修する科目を修めて卒業した者

三 医師

四 社会福祉主事として、二年以上児童福祉事業に従事した者

五 前各号に準ずる者であつて、児童福祉司として必要な学識経験を有するもの

 第十二条第二項中「児童福祉司」の下に「又は社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)の社会福祉主事」を加える。

 「第四節 児童相談所」を「第四節 児童相談所、福祉事務所及び保健所」に改める。

 第十五条第二項を削り、同条の次に次の一条を加える。

第十五条の二 児童相談所は、児童の福祉に関する事項について、主として左の業務を行うものとする。

一 児童に関する各般の問題につき、家庭その他からの相談に応ずること。

二 児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神衛生上の判定を行い、並びにこれらに附随して必要な指導を行うこと。

三 児童の一時保護を行うこと。

  児童相談所は、必要に応じ、巡回して、前項第一号及び第二号の業務を行うことができる。

 第十六条第四項中「相談又は鑑別」を「業務」に改め、同条第二項を削り、同条の次に次の一条を加える。

第十六条の二 児童相談所の所長及び所員は、事務吏員又は技術吏員とする。

  所長は、左の各号の一に該当する者でなければならない。

一 医師であつて、精神衛生に関して学識経験を有する者

二 学校教育法に基く大学又は旧大学令に基く大学において、心理学を専修する科目を修めて卒業した者

三 二年以上児童福祉司として勤務した者又は児童福祉司たる資格を得た後二年以上所員として勤務した者

四 前各号に準ずる者であつて、所長として必要な学識経験を有するもの

  判定を掌る所員の中には、前項第一号に該当する者又はこれに準ずる資格を有する者及び同条第二号に該当する者又はこれに準ずる資格を有する者が、それぞれ一人以上含まれなければならない。

  相談及び調査を掌る所員は、児童福祉司たる資格を有する者でなければならない。

第一章中第十八条の次に次の二条を加える。

第十八条の二 福祉事務所は、この法律の施行に関し、主として左の業務を行うものとする。

一 児童及び妊産婦の福祉に関し、必要な実情の把握に努めること。

二 児童及び妊産婦の福祉に関する事項について、相談に応じ、必要な調査を行い、及び個別的に又は集団的に、必要な指導を行うこと並びにこれらに附随する業務を行うこと。

  児童相談所長は、その管轄区域内の福祉事務所の長(以下「福祉事務所長」という。)に必要な調査を委嘱することができる。

第十八条の三 保健所は、この法律の施行に関し、主として左の業務を行うものとする。

一 児童及び妊産婦の保健について、正しい衛生知識の普及を図ること。

二 児童及び妊産婦の健康相談に応じ、又は健康診査を行い、必要に応じ、保健指導を行うこと。

三 身体に障害のある児童の療育について、指導を行うこと。

四 児童福祉施設に対し、栄養の改善その他衛生に関し、必要な助言を与えること。

第二十一条の次に次の二条を加える。

第二十一条の二 保健所長は、身体に障害のある児童につき、診査を行い、又は相談に応じ、必要な療育の指導を行わなければならない。

  保健所長は、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第十五条第四項の規定により身体障害者手帳の交付を受けた児童(身体に障害のある十五歳未満の児童については、身体障害者手帳の交付を受けたその保護者とする。以下同じ。)につき、同法第十六条第二項第一号又は第二号に掲げる事由があると認めるときは、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。

第二十一条の三 都道府県知事は、身体障害者手帳の交付を受けた児童に対し、盲人安全つえを交付し、又は補聴器、義し、車椅子等の補装具を交付し、若しくは修理することができる。

  都道府県知事は、必要があるときは、前項に規定する補装具の交付又は修理に代えて、その購入又は修理に要する金銭を、本人又はその扶養義務者が負担することのできる額を控除して支給することができる。

 第二十二条中「市町村長は、保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができない妊産婦を」を「都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長は、それぞれその管理する福祉事務所の所管区域内における妊産婦が、保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができないと認めるときは、その妊産婦を」に改める。

 第二十三条中「市町村長は、保護者が、」を「都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長は、それぞれその管理する福祉事務所の所管区域内における保護者が、」に改める。

 第二十五条中「児童相談所又はその職員」を「福祉事務所又は児童相談所」に改め、同条の次に次の一条を加える。

第二十五条の二 福祉事務所長は、前条の規定による通告又は第二十六条第一項第三号の規定による送致を受けた児童及び相談に応じた児童、その保護者又は妊産婦について、必要があると認めたときは、左の各号の一の措置をとらなければならない。

一 第二十七条の措置を要すると認める者並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神衛生上の判定を要すると認める者は、これを児童相談所に送致すること。

二 児童又はその保護者をその福祉事務所の社会福祉主事に指導させること。

三 第二十二条から第二十四条までの措置を要すると認める者は、これをそれぞれその措置権者に報告し、又は通知すること。

 第二十六条第一項前段中「前条の規定による通告又は少年法第十八条第一項の規定による送致を受けた児童」を「第二十五条の規定による通告を受けた児童、前条第一号又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第十八条第一項の規定による送致を受けた児童及び相談に応じた児童、その保護者又は妊産婦」に改め、同項後段を削り、同項に次の二号を加える。

三 前条第二号の措置が適当であると認める者は、これを福祉事務所に送致すること。

四 第二十二条から第二十四条までの措置を要すると認める者は、これをそれぞれその措置権者に報告し、又は通知すること。

 第二十七条第一項中「少年法第十八条」を「少年法第十八条第二項」に改め、同項第二号中「児童福祉司」の下に「、社会福祉主事」を加え、同項第三号中「里親(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を養育することを希望する者であつて、都道府県知事が適当と認める者をいう。以下同じ。)」の下に「若しくは保護受託者(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童で学校教育法に定める義務教育を終了したものを自己の家庭に預り、又は自己のもとに通わせて、保護し、その性能に応じ、独立自活に必要な指導をすることを希望する者であつて、都道府県知事が適当と認めるものをいう。以下同じ。)」を加え、同項に次の一号を加える。

四 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。

 第二十七条第三項中「親権者があるときは、」を「親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は後見人があるときは、」に、「その親権者」を「その親権を行う者又は後見人」に改め、同条に次の三項を加える。

  第一項第三号の保護受託者に委託する措置は、あらかじめ、児童の同意を得、且つ、一年以内の期間を定めて、これをとらなければならない。

  都道府県知事は、委託の期間が満了したときは、更に、児童の同意を得、且つ、一年以内の期間を定めて、児童の保護を保護受託者に委託することができる。

  都道府県知事は、第一項第二号若しくは第三号の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更し、又は前項の措置をとる場合には、児童相談所長の意見を聞かなければならない。

 第二十七条の二中「又は児童相談所長」を削る。

 第二十八条第一項中「親権者」を「親権を行う者又は後見人」に改める。

 第三十条第一項中「親権者」を「親権を行う者又は後見人」に改め、同条第三項中「児童相談所、」の下に「福祉事務所、」を加え、同条第四項中「里親」の下に「、保護受託者」を加える。

 第三十一条本文中「厚生大臣又は」を削り、同条但書を次のように改める。

  この場合においては、都道府県知事は、児童相談所長の意見を聞かなければならない。

第三十二条に次の一項を加える。

  都道府県知事又は市町村長は、第二十二条から第二十四条までの措置をとる権限の全部又は一部を、それぞれその管理する福祉事務所の長に委任することができる。

第三十三条の次に次の三条を加える。

第三十三条の二 児童の親権者が、その親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百三十四条の規定による親権喪失の宣告の請求は、同条に定める者の外、児童相談所長も、これを行うことができる。

第三十三条の三 児童相談所長は、親権を行う者及び後見人のない児童について、その福祉のため必要があるときは、家庭裁判所に対し後見人の選任を請求しなければならない。

第三十三条の四 児童の後見人に、不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、民法第八百四十五条の規定による後見人の解任の請求は、同条に定める者の外、児童相談所長も、これを行うことができる。

 第三十四条第三項を削る。

 第三十九条第一項中「その乳児又は幼児」を「保育に欠けるその乳児又は幼児」に、同条第二項中「その他の児童」を「保育に欠けるその他の児童」に改める。

 第四十三条中「指導」を「指導又は援助」に改める。

 第四十五条中「並びに里親の行う養育」を「、里親の行う養育並びに保護受託者の行う保護」に改める。

 第四十六条第一項中「及び里親」を「、里親及び保護受託者」に改め、同条の次に次の一条を加える。

第四十六条の二 児童福祉施設の長は、都道府県知事又は市町村長からこの法律の規定に基く措置のための受託を受けたときは、正当な理由がない限り、これを拒んではならない。

 第四十七条を次のように改める。

第四十七条 児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は後見人のないものに対し、親権を行う者又は後見人があるに至るまでの間、親権を行う。但し、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、命令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。

  児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。

 第四十八条を次のように改める。

第四十八条 養護施設、精神薄弱児施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設及びし体不自由児施設の長は、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中の児童を就学させなければならない。

  教護院の長は、在院中学校教育法の規定による小学校又は中学校に準ずる教科を修めた児童に対し、修了の事実を証する証明書を発行することができる。

  教護院の長は、前項の教科に関する事項については、文部大臣の勧告に従わなければならない。

  第二項の証明書は、学校教育法により設置された各学校と対応する教育課程について、各学校の長が授与する卒業証書その他の証書と同一の効力を有する。但し、教護院の長が第三項の規定による文部大臣の勧告に従わないため、当該教護院における教科に関する事項が著しく不適当である場合において、文部大臣が厚生大臣と協議して当該教護院を指定したときは、当該教護院については、この限りでない。

第五十条中第五号の次に次の一号を加える。

五の二 第二十一条の三の措置に要する費用

 第五十条中第六号の次に次の一号を加え、第七号中「入所に要する費用」を「入所又は委託(保護受託者に委託する場合を除く。以下同じ。)に要する費用」に、「入所後の保護」を「入所後の保護又は委託後の養育」に改め、第八号中「相談及び鑑別」を「相談、調査、判定及び指導」に改める。

六の二 都道府県知事が、第二十二条及び第二十三条本文に規定する措置をとつた場合において、入所に要する費用及び入所後の保護につき、第四十五条の最低基準を維持するために要する費用(国の設置する助産施設又は母子寮に入所させた者につき、その入所後に要する費用を除く。)

 第五十三条の二中「第五十条第六号若しくは第七号」を「第五十条第六号から第七号まで」に改める。

 第五十六条第一項中「第五十条第六号及び第七号」を「第五十条第五号の二(第二十一条の三第二項に規定する費用を除く。)及び第六号から第七号まで」に、同条第二項中「児童福祉司」を「児童福祉司、社会福祉主事」に改める。

 第四章中第五十六条の次に次の二条を加える。

第五十六条の二 都道府県は、左の各号に該当する場合においては、第三十五条第二項の規定により、市町村以外の者が設置した児童福祉施設について、その修理、改造、拡張又は整備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。

一 その児童福祉施設が、社会福祉事業法第二十九条第一項の規定により設立された社会福祉法人又は民法第三十四条の規定により設立された法人の設置するものであること。

二 その児童福祉施設が主として利用される地域において、この法律の規定に基く措置を必要とする児童、その保護者又は妊産婦の分布状況からみて、同種の児童福祉施設が必要とされるにかかわらず、その地域に、国、都道府県又は市町村の設置する同種の児童福祉施設がないか、又はあつてもこれが十分でないこと。

  前項の規定により、児童福祉施設に対する補助がなされたときは、厚生大臣及び都道府県知事は、その補助の目的が有効に達せられることを確保するため、当該児童福祉施設に対して、第四十六条及び第五十八条に規定するものの外、左の各号に掲げる権限を有する。

一 その児童福祉施設の予算が、補助の効果をあげるために不適当であると認めるときは、その予算について必要な変更をすべき旨を指示すること。

二 その児童福祉施設の職員が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したときは、当該職員を解職すべき旨を指示すること。

  国庫は、第一項の規定により都道府県が補助した金額の三分の二以内を補助することができる。

第五十六条の三 都道府県は、左に掲げる場合においては、補助金の交付を受けた児童福祉施設の設置者に対して、既に交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。

一 補助金の交付条件に違反したとき。

二 詐欺その他の不正な手段をもつて、補助金の交付を受けたとき。

三 児童福祉施設の経営について、営利を図る行為があつたとき。

四 児童福祉施設が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したとき。

第五十九条の次に次の二条を加える。

第五十九条の二 町村が一部事務組合を設けて福祉事務所を設置した場合には、この法律の適用については、その組合を福祉事務所を設置する町村とみなし、その組合の長を福祉事務所を管理する町村長とみなす。

第五十九条の三 町村の福祉事務所の設置又は廃止により第二十二条及び第二十三条に規定する措置権者に変更があつた場合においては、この法律又はこの法律に基いて発する命令の規定により、変更前の措置権者がした処分その他の行為は、変更後の措置権者がした処分その他の行為とみなす。但し、変更前に行われ、又は行われるべきであつた措置に関する費用の支弁及び負担については、変更がなかつたものとする。

第七十一条を次のように改める。

第七十一条 都の区の存する区域においては、当分の間、第八条第三項及び第四項の規定にかかわらず、第二十四条中「市町村長」とあるのは、これを「都知事」と読み替えるものとし、且つ、同条の措置に関する費用については、第五十六条第一項及び第二項中「市町村長」とあるのは、これを「都知事」と、第五十一条及び第五十六条第三項中「市町村」とあるのは、これを「都」と読み替えるものとする。

附 則

 (施行期日)

1 この法律は、昭和二十六年十月一日から施行する。但し、第四十八条、第五十六条の二及び第五十六条の三に関する改正規定並びにこの法律の附則第七項の規定は、公布の日から施行し、この法律の附則第七項の規定は、同年四月一日から適用する。

 (この法律の施行による措置権者の変更に関する準用規定)

2 第五十九条の三の規定は、この法律の施行により第二十二条及び第二十三条に規定する措置権者に変更があつた場合に準用する。

 (社会福祉事業法附則第七項に関する特例)

3 社会福祉事業法附則第七項の規定に基き置かれた組織の長は、この法律の適用については、福祉事務所長とみなす。

 (児童福祉司に関する経過規定)

4 この法律の施行の際現に任用されている児童福祉司は、第十一条の二の規定により任用された児童福祉司とみなす。

 (児童相談所の所長に関する経過規定)

5 この法律の施行の際現に任用されている児童相談所の所長については、第十六条の二第二項の規定は、適用しない。

 (関係法律の廃止)

6 救育所に在る孤児の後見職務に関する法律(明治三十三年法律第五十一号)は、廃止する。

 (予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律の一部改正)

7 予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律(昭和二十五年法律第二百十二号)の一部を次のように改正する。

  第一条第六号中「第五十条第二号」を「第五十条第一号及び第二号」に、「第六号及び第七号並びに」を「第六号から第七号まで及び」に、「及び第五十五条」を「、第五十五条及び第五十六条第三項」に改め、同条に次の一号を加える。

八 寄生虫病予防法(昭和六年法律第五十九号)第五条及び第七条(住血吸虫病に関する部分を除く。)

(内閣総理大臣・法務総裁・大蔵・文部・厚生大臣署名) 

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