青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法
法律第二号(平七・二・一五)
(目的)
第一条 この法律は、農村における高齢化の進展その他の農業を取り巻く環境の変化に伴い、青年農業者の確保の重要性が著しく増大していることにかんがみ、就農支援資金の貸付け等の特別措置を講ずることにより、青年の就農促進を図り、もって農業の健全な発展と農村の活性化に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「青年」とは、農林水産省令で定める範囲の年齢の者をいう。
2 この法律において、「就農支援資金」とは、第四条第一項の認定を受けた者(以下「認定就農者」という。)が同項の認定に係る就農計画(同条第四項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定就農計画」という。)に従って就農するのに必要な農業の技術又は経営方法を実地に習得するための研修その他の就農の準備に必要な資金で政令で定めるものをいう。
(就農促進方針)
第三条 都道府県知事は、当該都道府県における青年の就農促進に関する方針(以下「就農促進方針」という。)を定めるものとする。
2 就農促進方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 青年の就農促進に関する基本的な方向
二 就農支援資金の貸付けその他の青年の就農促進を図るための措置に関する事項
三 青年の就農促進に関する業務を行う団体及び機関の相互の連携に関する事項
3 都道府県知事は、情勢の推移により必要が生じたときは、就農促進方針を変更するものとする。
4 都道府県知事は、就農促進方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(就農計画)
第四条 新たに就農しようとする青年は、農林水産省令で定めるところにより、就農計画を作成し、これを都道府県知事に提出して、当該就農計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 前項の就農計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 就農時における農業経営又は農業従事の態様に関する目標
二 前号の目標を達成するために必要な農業の技術又は経営方法を実地に習得するための研修その他の就農の準備に関する事項
三 第一号の目標を達成するために必要な施設の設置、機械の購入その他の就農時においてとるべき措置に関する事項
四 その他農林水産省令で定める事項
3 都道府県知事は、第一項の認定の申請があった場合において、その就農計画が就農促進方針に照らし適切なものであることその他の農林水産省令で定める基準に適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
4 認定就農者は、認定就農計画を変更しようとするときは、都道府県知事の認定を受けなければならない。
5 第三項の規定は、前項の規定による認定就農計画の変更の認定について準用する。
(法人の指定)
第五条 都道府県知事は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県に一を限って、都道府県青年農業者育成センター(以下「センター」という。)として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしたときは、当該センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
3 センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に属け出なければならない。
4 都道府県知事は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第六条 センターは、当該都道府県の区域内において、次に掲げる業務を行うものとする。
一 就農支援資金の貸付けを行うこと。
二 新たに就農しようとする青年に対し、農業の技術又は経営方法の習得に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
三 青年農業者が共同して行う農業の技術に関する研究その他の自主的な活動に対する援助を行うこと。
四 青年農業者と農業に関連する事業を行う者、消費者等との交流を促進すること。
五 青年の就農促進に関する調査及び啓発活動を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、青年農業者の育成を図るために必要な業務を行うこと。
(就農支援資金の利率、償還期間等)
第七条 前条第一号の就農支援資金は、無利子とする。
2 前条第一号の就農支援資金の償還期間(据置期間を含む。)は、十二年を超えない範囲内で、その種類ごとに、政令で定める期間とする。
3 前条第一号の就農支援資金の据置期間は、必要と認められる種類の資金につき四年を超えない範囲内で、その種類ごとに、政令で定める期間とする。
4 前条第一号の就農支援資金の一認定就農者ごとの限度額は、その種類ごとに、農林水産省令で定める。
(就農支援資金の償還期間の特例)
第八条 センターは、認定就農者が地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域として農林水産大臣が指定するものにおいて、農林水産省令で定めるところにより就農した場合には、就農支援資金について、その償還期間(据置期間を含む。)を八年を超えない範囲内で、その据置期間を五年を超えない範囲内で、それぞれ延長することができる。
(一時償還)
第九条 センターは、就農支援資金の貸付けを受けた者が次の各号の一に該当する場合には、前二条の規定にかかわらず、当該貸付けを受けた者に対し、農林水産省令で定めるところにより、就農支援資金の全部又は一部につき、一時償還を請求するものとする。
一 認定就農計画に係る研修の終了後就農しなかったとき。
二 就農支援資金を貸付けの目的以外の目的に使用したとき。
三 償還金の支払を怠ったとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、正当な理由がなくて貸付けの条件に違反したとき。
(違約金)
第十条 センターは、就農支援資金の貸付けを受けた認定就農者が支払期日に償還金又は前条の規定により一時償還をすべき金額を支払わなかった場合には、延滞金額につき年十二・二五パーセントの割合をもって支払期日の翌日から支払当日までの日数により計算した違約金を徴収するものとする。
(事務の委託)
第十一条 センターは、政令で定めるところにより、その行う第六条第一号に掲げる業務(以下「貸付業務」という。)に係る事務の一部(貸付けの決定を除く。)を農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第一号及び第二号の事業を併せ行う農業協同組合連合会に委託することができる。
2 前項の農業協同組合連合会は、農業協同組合法第十条の規定にかかわらず、同項の規定による事務の委託を受け、当該事務を行うことができる。
(業務規程)
第十二条 センターは、貸付業務を行うときは、当該業務の開始前に、当該業務の実施に関する規程(次項において「業務規程」という。)を作成し、都道府県知事の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 業務規程に記載すべき事項は、農林水産省令で定める。
(事業計画等)
第十三条 センターは、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画及び収支予算を作成し、都道府県知事の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 センターは、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
(区分経理)
第十四条 センターは、貸付業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならない。
(監督等)
第十五条 都道府県知事は、第六条各号に掲げる業務の適正かつ確実な実施を確保するため必要があると認めるときは、センターに対し、その業務に関し必要な報告をさせることができる。
2 都道府県知事は、センターが第六条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施していないと認めるときは、センターに対し、その業務の運営の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
3 都道府県知事は、センターが前項の規定による命令に違反したときは、第五条第一項の指定を取り消すことができる。
4 都道府県知事は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
5 第三項の規定により第五条第一項の指定を取り消した場合における貸付業務に関する所要の経過措置は、合理的に必要と判断される範囲内において、政令で定めることができる。
(負担金についての必要経費算入の特例等)
第十六条 センターが行う第六条第二号から第五号までに掲げる業務に係る基金に充てるための負担金を支出した場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、必要経費算入の特例及び損金算入の特例の適用があるものとする。
(都道府県の貸付け)
第十七条 都道府県は、センターが貸付業務を行うときは、センターに対し、当該業務に必要な資金を貸し付けることができる。
2 都道府県が前項の規定により貸し付ける資金は、無利子とし、その償還方法は、政令で定める。
(国の貸付け)
第十八条 国は、都道府県が前条第一項に規定する資金を貸し付ける事業(以下「貸付事業」という。)を行うときは、当該都道府県に対し、予算の範囲内において、当該事業に必要な資金の一部を貸し付けることができる。
2 国が前項の規定により貸し付ける資金(以下この条において「国の貸付金」という。)の額は、各年度において、都道府県が行う貸付事業の貸付財源として必要な資金の額に三分の二を乗じて得た額から、前年度までの国の貸付金の額を基礎として農林水産大臣が算定する額を控除して得た額以内の額とする。
3 国の貸付金は、無利子とし、その償還方法は、政令で定める。
(都道府県の特別会計)
第十九条 前条第一項の規定により国から資金の貸付けを受けて貸付事業を行う都道府県は、その経理を農業改良資金助成法(昭和三十一年法律第百二号)第十八条第一項の規定により設置する特別会計において併せて行うことができる。この場合においては、当該都道府県は、当該経理を他の経理と区分して行うものとする。
(一般会計から特別会計に繰り入れた資金の処理)
第二十条 都道府県は、第十八条第三項の規定により国からの借入金を償還したときは、当該償還金の額に対応する一般会計からの繰入金の額として算定される額以内の額を特別会計から一般会計に繰り入れることができる。
(農業改良資金助成法の特例)
第二十一条 農業改良資金助成法第二条第四項の青年農業者等育成確保資金のうち政令で定める種類の資金であって、認定就農者が認定就農計画に従って就農するのに必要なものの償還期間は、同法第五条第一項の規定にかかわらず、十二年を超えない範囲内で、その種類ごとに、政令で定める期間とする。
2 前項の資金の据置期間は、農業改良資金助成法第五条第二項の規定にかかわらず、必要と認められる種類の資金につき五年を超えない範囲内で、その種類ごとに、政令で定める期間とする。
3 第一項の資金の一認定就農者ごとの限度額は、農業改良資金助成法第四条の規定にかかわらず、その種類ごとに、農林水産省令で定める。
(農用地の利用関係の調整)
第二十二条 農業委員会は、耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(次項において「農用地」という。)について、所有権の移転又は使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転のあっせんを行うに当たっては、認定就農者が認定就農計画に従って就農できるよう努めるものとする。
2 都道府県農業会議は、認定就農者の円滑な就農に資するため、広域の見地から農用地の利用関係の調整を行う必要があると認められる場合には、関係農業委員会に対し、就農に必要な農用地に関する資料及び情報の提供を行うよう努めるものとする。
(援助)
第二十三条 国及び都道府県は、認定就農計画の達成のために必要な助言、指導、資金の融通のあっせんその他の援助を行うように努めるものとする。
(協力)
第二十四条 センター、都道府県農業会議、都道府県農業協同組合中央会及び都道府県の区域を事業実施地域とする農地保有合理化法人は、青年の就農促進を図るため、必要な情報を交換して、相互に協力するよう努めるものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(農業経営基盤強化措置特別会計法の一部改正)
第二条 農業経営基盤強化措置特別会計法(昭和二十一年法律第四十四号)の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「及び農業改良資金助成法」を「、農業改良資金助成法」に改め、「貸付け」の下に「及び青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法(平成七年法律第二号)第十八条第一項の規定による貸付け」を加える。
第二条第一項中「同じ。)」の下に「、青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法第十八条第三項の規定による償還金」を加え、「同法第三条」を「農業改良資金助成法第三条」に改め、「対する貸付金」の下に「、青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法第十八条第一項の規定による都道府県に対する貸付金」を加え、同条第二項中「都道府県に」を「同法第三条の規定による都道府県に」に、「同法第三条」を「同条」に改め、同項の次に次の一項を加える。
第一項に規定する青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法第十八条第三項の規定による償還金の額に相当する金額は、第一項に規定する同法第十八条第一項の規定による都道府県に対する貸付金の財源に充てるものとする。ただし、都道府県が行う同法第十七条第一項に規定する事業の実施状況に照らしてその必要がないと認められるに至ったときは、当該必要がないと認められる範囲内の金額については、この限りでない。
(農業改良資金助成法の一部改正)
第三条 農業改良資金助成法の一部を次のように改正する。
第二条第四項中「必要な資金」の下に「(青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法(平成七年法律第二号)第二条第二項の就農支援資金を除く。)」を加える。
(大蔵・農林水産・内閣総理大臣署名)