民事保全法
法律第九十一号(平元・一二・二二)
目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 保全命令に関する手続
第一節 総則(第九条―第十一条)
第二節 保全命令
第一款 通則(第十二条―第十九条)
第二款 仮差押命令(第二十条―第二十二条)
第三款 仮処分命令(第二十三条―第二十五条)
第三節 保全異議(第二十六条―第三十六条)
第四節 保全取消し(第三十七条―第四十条)
第五節 保全抗告(第四十一条・第四十二条)
第三章 保全執行に関する手続
第一節 総則(第四十三条―第四十六条)
第二節 仮差押えの執行(第四十七条―第五十一条)
第三節 仮処分の執行(第五十二条―第五十七条)
第四章 仮処分の効力(第五十八条―第六十五条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(民事保全の機関及び保全執行裁判所)
第二条 民事保全の命令(以下「保全命令」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。
2 民事保全の執行(以下「保全執行」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
3 裁判所が行う保全執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもって、執行官が行う保全執行の執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもって保全執行裁判所とする。
(任意的口頭弁論)
第三条 民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
(担保の提供)
第四条 この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
2 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第百十三条、第百十五条及び第百十六条の規定は、前項の担保について準用する。
(事件の記録の閲覧等)
第五条 保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りでない。
2 前項本文の規定にかかわらず、裁判所の執務に支障があるときは、事件の記録の閲覧又は謄写を請求することができない。
(専属管轄)
第六条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
(民事訴訟法の準用)
第七条 特別の定めがある場合を除き、民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第八条 この法律に定めるもののほか、民事保全の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第二章 保全命令に関する手続
第一節 総則
(釈明処分の特例)
第九条 裁判所は、争いに係る事実関係に関し、当事者の主張を明瞭にさせる必要があるときは、口頭弁論又は審尋の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で、裁判所が相当と認めるものに陳述をさせることができる。
(受命裁判官による審尋)
第十条 裁判所は、審尋をする場合には、受命裁判官にこれを行わせることができる。
(証人等の尋問の順序)
第十一条 裁判長は、証人を尋問する場合において適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、民事訴訟法第二百九十四条第一項及び第二項の尋問の順序を変更することができる。この場合においては、同法第二百九十五条の規定を準用する。
2 前項の規定は、鑑定人又は当事者本人を尋問する場合について準用する。
第二節 保全命令
第一款 通則
(管轄裁判所)
第十二条 保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。
3 仮に差し押さえるべき物又は係争物が債権(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百四十三条に規定する債権をいう。以下この条において同じ。)であるときは、その債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶(同法第百十二条に規定する船舶をいう。以下同じ。)又は動産(同法第百二十二条に規定する動産をいう。以下同じ。)の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。
4 前項本文の規定は、仮に差し押さえるべき物又は係争物が民事執行法第百六十七条第一項に規定する財産権(以下「その他の財産権」という。)で第三債務者又はこれに準ずる者があるものである場合(次項に規定する場合を除く。)について準用する。
5 仮に差し押さえるべき物又は係争物がその他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものであるときは、その財産権は、その登記又は登録の地にあるものとする。
(申立て及び疎明)
第十三条 保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
2 保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。
3 前項の規定による疎明は、保証金の供託又は主張が真実である旨の宣誓をもって、これに代えることができない。
(保全命令の担保)
第十四条 保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。
2 前項の担保を立てる場合において、遅滞なく第四条第一項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。
(裁判長の権限)
第十五条 保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。
(決定の理由)
第十六条 保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
(送達)
第十七条 保全命令は、当事者に送達しなければならない。
(保全命令の申立ての取下げ)
第十八条 保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない。
(却下の裁判に対する即時抗告)
第十九条 保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
2 前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
3 第十六条本文の規定は、第一項の即時抗告についての決定について準用する。
第二款 仮差押命令
(仮差押命令の必要性)
第二十条 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。
(仮差押命令の対象)
第二十一条 仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。
(仮差押解放金)
第二十二条 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。
2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
第三款 仮処分命令
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
(仮処分の方法)
第二十四条 裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。
(仮処分解放金)
第二十五条 裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。
2 第二十二条第二項の規定は、前項の金銭の供託について準用する。
第三節 保全異議
(保全異議の申立て)
第二十六条 保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。
(保全執行の停止の裁判等)
第二十七条 保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第三項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。
2 抗告裁判所が保全命令を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。
3 裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第一項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。
4 第一項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5 第十三条第三項の規定は第一項の疎明について、第十五条の規定は第一項の規定による裁判について準用する。
(事件の移送)
第二十八条 裁判所は、保全異議事件につき著しい損害又は遅滞を避けるために必要があるときは、申立てにより又は職権で、当該保全命令事件につき管轄権を有する他の裁判所に事件を移送することができる。
(保全異議の審理)
第二十九条 裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。
(参考人等の審尋)
第三十条 裁判所は、当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日において参考人又は当事者本人を審尋することができる。ただし、参考人については、当事者が申し出た者に限る。
(審理の終結)
第三十一条 裁判所は、審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。
(保全異議の申立てについての決定)
第三十二条 裁判所は、保全異議の申立てについての決定においては、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければならない。
2 裁判所は、前項の決定において、相当と認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第十四条第一項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨を定めることができる。
3 裁判所は、第一項の規定による保全命令を取り消す決定について、債務者が担保を立てることを条件とすることができる。
4 第十六条本文及び第十七条の規定は、第一項の決定について準用する。
(原状回復の裁判)
第三十三条 仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第一項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若しくは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の返還を命ずることができる。
(保全命令を取り消す決定の効力)
第三十四条 裁判所は、第三十二条第一項の規定により保全命令を取り消す決定において、その送達を受けた日から二週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければその決定の効力が生じない旨を宣言することができる。ただし、その決定に対して保全抗告をすることができないときは、この限りでない。
(保全異議の申立ての取下げ)
第三十五条 保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。
(判事補の権限の特例)
第三十六条 保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができない。
第四節 保全取消し
(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
第三十七条 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
2 前項の期間は、二週間以上でなければならない。
3 債権者が第一項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
4 第一項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかつたものとみなす。
5 第一項及び第三項の規定の適用については、本案が家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十八条第一項に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案に関し仲裁契約があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)第二条に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法第四十二条の十二第一項に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「責任裁定」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。
6 前項の調停の事件、同項の仲裁手続又は同項の責任裁定の手続が調停の成立、仲裁判断又は責任裁定(公害紛争処理法第四十二条の二十四第二項の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から第一項の規定により定められた期間と同一の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。
7 第三項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、第四項の規定は前項の本案の訴えが提起された後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。
8 第十六条本文及び第十七条の規定は、第三項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。
(事情の変更による保全取消し)
第三十八条 保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。
2 前項の事情の変更は、疎明しなければならない。
3 第十三条第三項の規定は前項の規定による疎明について、第十六条本文、第十七条並びに第三十二条第二項及び第三項の規定は第一項の申立てについての決定について準用する。
(特別の事情による保全取消し)
第三十九条 仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。
2 前項の特別の事情は、疎明しなければならない。
3 第十三条第三項の規定は前項の規定による疎明について、第十六条本文及び第十七条の規定は第一項の申立てについての決定について準用する。
(保全異議の規定の準用等)
第四十条 第二十七条から第三十一条まで及び第三十三条から第三十六条までの規定は、保全取消しに関する裁判について準用する。ただし、第二十七条から第三十一条まで、第三十三条、第三十四条及び第三十六条の規定は、第三十七条第一項の規定による裁判について、この限りでない。
2 前項において準用する第二十七条第一項の規定による裁判は、保全取消しの申立てが保全命令を発した裁判所以外の本案の裁判所にされた場合において、事件の記録が保全命令を発した裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
第五節 保全抗告
(保全抗告)
第四十一条 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(第三十三条(前条第一項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から二週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについて裁判に対しては、この限りでない。
2 原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。
3 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
4 第十六条本文、第十七条並びに第三十二条第二項及び第三項の規定は保全抗告についての決定について、第二十七条第一項、第四項及び第五項、第二十九条から第三十一条まで並びに第三十三条の規定は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法第四百二十九条の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
5 前項において準用する第二十七条第一項の規定による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
(保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判)
第四十二条 保全命令を取り消す決定に対して保全抗告があった場合において、原決定の取消しの原因となることが明らかな事情及びその命令の取消しにより償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、保全抗告についての裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずることができる。
2 第十三条第三項の規定は前項の疎明について、第十五条、第二十七条第四項及び前条第五項の規定は前項の規定による裁判について準用する。
第三章 保全執行に関する手続
第一節 総則
(保全執行の要件)
第四十三条 保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。
2 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から二週間を経過したときは、これをしてはならない。
3 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。
(追加担保を提供しないことによる保全執行の取消し)
第四十四条 第三十二条第二項(第三十八条第三項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により担保を立てることを保全執行の続行の条件とする旨の裁判があったときは、債権者は、第三十二条第二項の規定により定められた期間内に担保を立てたことを証する書面をその期間の末日から一週間以内に保全執行裁判所又は執行官に提出しなければならない。
2 債権者が前項の規定による書面の提出をしない場合において、債務者が同項の裁判の正本を提出したときは、保全執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分を取り消さなければならない。
3 民事執行法第四十条第二項の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合について準用する。
(第三者異議の訴えの管轄裁判所の特例)
第四十五条 高等裁判所が保全執行裁判所としてした保全執行に対する第三者異議の訴えは、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
(民事執行法の準用)
第四十六条 この章に特別の定めがある場合を除き、民事執行法第五条から第十四条まで、第十六条、第十八条、第二十三条第一項、第二十六条、第二十七条第二項、第二十八条、第三十条第二項、第三十二条から第三十四条まで、第三十六条から第三十八条まで、第三十九条第一項第一号から第四号まで、第六号及び第七号、第四十条並びに第四十一条の規定は、保全執行について準用する。
第二節 仮差押えの執行
(不動産に対する仮差押えの執行)
第四十七条 民事執行法第四十三条第一項に規定する不動産(同条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。)に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。
4 強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は、次項において準用する民事執行法第百七条第一項の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を保全執行裁判所に届け出なければならない。
5 民事執行法第四十六条第二項、第四十七条第一項、第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第四十四条、第四十五条第二項及び第三項、第四十六条第一項、第四十七条第一項、第二項、第四項本文及び第五項、第四十八条、第五十三条、第五十四条、第九十三条から第百四条まで、第百六条並びに第百七条第一項の規定は強制管理の方法による仮差押えの執行について準用する。
(船舶に対する仮差押えの執行)
第四十八条 船舶に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は執行官に対し船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下この条において「船舶国籍証書等」という。)を取り上げて保全執行裁判所に提出すべきことを命ずる方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行は仮差押命令を発した裁判所が、船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行は船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 前条第三項並びに民事執行法第四十六条第二項、第四十七条第一項、第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第四十五条第三項、第四十七条第一項、第五十三条、第百十六条及び第百十八条の規定は船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行について準用する。
(動産に対する仮差押えの執行)
第四十九条 動産に対する仮差押えの執行は、執行官が目的物を占有する方法により行う。
2 執行官は、仮差押えの執行に係る金銭を供託しなければならない。仮差押えの執行に係る手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求を要するものについて執行官が支払を受けた金銭についても、同様とする。
3 仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、民事執行法の規定による動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を供託しなければならない。
4 民事執行法第百二十三条から第百二十九条まで、第百三十一条、第百三十二条及び第百三十六条の規定は、動産に対する仮差押えの執行について準用する。
(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行)
第五十条 民事執行法第百四十三条に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。
2 前項の仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 第三債務者が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が第二十二条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。
4 第一項及び第二項の規定は、その他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。
5 民事執行法第百四十五条第二項から第五項まで、第百四十六条から第百五十三条まで、第百五十六条、第百六十四条第四項及び第五項並びに第百六十七条の規定は、第一項の債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。
(仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し)
第五十一条 債務者が第二十二条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。
2 前項の規定による決定は、第四十六条において準用する民事執行法第十二条第二項の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。
第三節 仮処分の執行
(仮処分の執行)
第五十二条 仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。
2 物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。
(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第五十三条 不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。
3 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は、前二項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第五十四条 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)
第五十五条 建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)
第五十六条 法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所の所在地の登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。
(仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し)
第五十七条 債務者が第二十五条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。
2 第五十一条第二項の規定は、前項の規定による決定について準用する。
第四章 仮処分の効力
(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第五十八条 第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。
2 前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
3 第五十三条第二項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による。
4 第五十三条第二項の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第一項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。
(登記の抹消の通知)
第五十九条 仮処分の債権者が前条第二項又は第四項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から一週間を経過した時に到達したものとみなす。
(仮処分命令の更正等)
第六十条 保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、第五十三条第二項の処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならない。
2 前項の規定による更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 第一項の規定による更正決定が確定したときは、裁判所書記官は、保全仮登記の更正を嘱託しなければならない。
(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第六十一条 前三条の規定は、第五十四条に規定する処分禁止の仮処分の効力について準用する。
(占有移転禁止の仮処分の効力)
第六十二条 物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するため、債務者に対し、その物の占有の移転を禁止し、及びその占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずるとともに、執行官にその物の保管をさせ、かつ、債務者がその物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官がその物を保管してしている旨を執行官に公示させることを内容とする仮処分の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その執行がされたことを知ってその物を占有した者に対し、その物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。仮処分の執行後にその執行がされたことを知らないで債務者の占有を承継した者に対しても、同様とする。
2 前項の仮処分の執行後に当該物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。
(執行文の付与に対する異議の申立ての理由)
第六十三条 前条第一項の本案の債務名義につき同項の債務者以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により当該物を占有していること、又はその仮処分の執行がされたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。
(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力)
第六十四条 第五十五条第一項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。
(詐害行為取消権を保全するための仮処分における解放金に対する権利の行使)
第六十五条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第一項の規定による詐害行為取消権を保全するための仮処分命令において定められた第二十五条第一項の金銭の額に相当する金銭が供託されたときは、同法第四百二十四条第一項の債務者は、供託金の還付を請求する権利(以下「還付請求権」という。)を取得する。この場合において、その還付請求権は、その仮処分の執行が第五十七条第一項の規定により取り消され、かつ、保全すべき権利についての本案の判決が確定した後に、その仮処分の債権者が同法第四百二十四条第一項の債務者に対する債務名義によりその還付請求権に対し強制執行をするときに限り、これを行使することができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(民事訴訟法の一部改正)
第二条 民事訴訟法の一部を次のように改正する。
民事訴訟法目録中
「 |
第五編ノ三 判決ノ確定及ビ執行停止 |
|
第六編 仮差押及ビ仮処分 |
」 |
を「第六編 判決ノ確定及ビ執行停止」に改める。
第三百九十三条第三項及び第四百九条ノ二第二項を削る。
第四百九条ノ三ただし書中「前条第一項」を「同条」に改める。
第四百十九条ノ三中「第四百九条ノ二第一項」を「第四百九条ノ二」に改める。
第五百十三条第一項中「及ビ次編」を削り、「負ハシメ又ハ保証ヲ立テ若クハ供託ヲ為スコトヲ許シタル場合」を「負ハシメタル場合」に改める。
第六編の編名を削り、第五百十四条から第七百六十三条までを次のように改める。
第五百十四条乃至第七百六十三条 削除
第七百六十三条ノ二を削る。
第五編ノ三を第六編とする。
(民事執行法の一部改正)
第三条 民事執行法の一部を次のように改正する。
目次中
「 |
第二章 強制執行(第二十二条―第百七十三条) |
|
第三章 仮差押え及び仮処分の執行(第百七十四条―第百八十条) |
||
第四章 担保権の実行としての競売等(第百八十一条―第百九十五条) |
||
第五章 罰則(第百九十六条―第百九十八条) |
」 |
を
「 |
第二章 強制執行(第二十二条―第百八十条) |
|
第三章 担保権の実行としての競売等(第百八十一条―第百九十五条) |
||
第四章 罰則(第百九十六条―第百九十八条) |
」 |
に改める。
第一条中「、仮差押え及び仮処分の執行」を削り、「並びに」を「及び」に改める。
第三十条第二項中「公文書により証明した」を「証する文書を提出した」に改める。
第八十七条第一項第四号中「登記された」を「登記(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第二項に規定する仮処分による仮登記を含む。)がされた」に改める。
第九十一条第一項第三号中「第三十九条第一項第七号」の下に「又は第百八十三条第一項第六号」を加え、同項第五号中「先取特権等が仮登記された」を「先取特権等につき仮登記又は民事保全法第五十三条第二項に規定する仮処分による仮登記がされた」に改める。
第百四十一条第一項第三号中「第三十九条第一項第七号」の下に「又は第百九十二条において準用する第百八十三条第一項第六号」を加える。
第百六十二条の見出し中「引渡請求権」の下に「の差押命令」を加える。
第三章の章名を削り、第百七十四条から第百八十条までを次のように改める。
第百七十四条から第百八十条まで 削除
第百八十三条第一項中第五号を第七号とし、第四号の次に次の二号を加える。
五 不動産競売の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
六 不動産競売の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
第百八十三条第二項中「第四号」を「第五号」に改める。
第百九十三条第二項中「担保権の実行及び行使について」の下に「、第百四十六条第二項」を加え、「同項」を「前項」に改める。
第四章を第三章とし、第五章を第四章とする。
(民事訴訟法及び民事執行法の一部改正に伴う経過措置)
第四条 この法律の施行前にした仮差押え又は仮処分の命令の申請に係る仮差押え又は仮処分の事件については、なお従前の例による。
(人事訴訟手続法の一部改正)
第五条 人事訴訟手続法(明治三十一年法律第十三号)の一部を次のように改正する。
第十六条中「民事訴訟法第七百五十六条乃至第七百六十三条」を「仮ノ地位ヲ定ムル仮処分ニ関スル民事保全法(平成元年法律第九十一号)」に改める。
(人事訴訟手続法の一部改正に伴う経過措置)
第六条 この法律の施行前にした人事訴訟手続法第十六条に規定する仮処分の命令の申請に係る仮処分の事件については、なお従前の例による。
(不動産登記法の一部改正)
第七条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の一部を次のように改正する。
第百三十五条の次に次の一条を加える。
第百三十五条ノ二 第七条第二項、第五十四条及ビ第五十五条ノ規定ハ民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第二項ノ仮処分ニ因ル仮登記(以下保全仮登記ト称ス)ニ之ヲ準用ス
第百四十六条の次に次の四条を加える。
第百四十六条ノ二 所有権ニ付キ民事保全法第五十三条第一項ノ仮処分ノ登記(保全仮登記ト共ニ為シタルモノヲ除ク本条及ビ次条ニ於テ之ニ同ジ)ヲ為シタル後其仮処分ノ債権者ガ其仮処分ノ債務者ヲ登記義務者トシテ所有権ノ登記(仮登記ヲ除ク)ヲ申請スル場合ニ於テハ其債権者ノミニテ其仮処分ノ登記二後レル登記ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ登記ノ抹消ヲ申請スルニハ申請書ニ民事保全法第五十九条第一項ノ通知ヲ為シタルコトヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依リ仮処分ノ登記ニ後レル登記ヲ抹消シタルトキハ其仮処分ノ登記ヲ抹消スルコトヲ要ス
第百四十六条ノ三 前条第一項及ビ第二項ノ規定ハ所有権以外ノ権利ニ付キ民事保全法第五十三条第一項ノ仮処分ノ登記ヲ為シタル後其仮処分ノ債権者ガ其仮処分ノ債務者ヲ登記義務者トシテ其権利ノ移転又ハ消滅ニ付キ登記(仮登記ヲ除ク)ヲ申請スル場合ニ之ヲ準用ス
前条第三項ノ規定ハ前項ニ於テ準用スル同条第一項ノ規定ニ依リ仮処分ノ登記ニ後レル登記ヲ抹消シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百四十六条ノ四 不動産ノ使用又ハ収益ヲ為ス権利ニ付キ保全仮登記ヲ為シタル後本登記ヲ申請スル場合ニ於テハ其保全仮登記ニ係ル仮処分ノ債権者ノミニテ所有権以外ノ不動産ノ使用若クハ収益ヲ為ス権利又ハ其権利ヲ目的トスル権利二関スル登記ニシテ其仮処分ノ登記二後レルモノノ抹消ヲ申請スルコトヲ得此場合ニ於テハ第百四十六条ノ二第二項ノ規定ヲ準用ス
第百四十六条ノ五 保全仮登記ヲ為シタル後本登記ヲ為シタルトキハ其保全仮登記ト共ニ為シタル処分禁止ノ登記ヲ抹消スルコトヲ要ス
(不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)
第八条 前条の規定による改正後の不動産登記法第百四十六条ノ二第三項の規定は、この法律の施行前にした仮処分の命令の申請に基づき発せられた不動産に関する権利についての登記を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分(家事審判法第十五条の三第一項の仮処分にあっては、附則第十二条の規定する審判前の保全処分であるものに限る。)の債権者がする申請に基づき、その仮処分の登記に後れる登記を抹消する場合について準用する。
(法人において租税及び葉煙草専売に関し事犯ありたる場合に関する法律の一部改正)
第九条 法人において租税及び葉煙草専売に関し事犯ありたる場合に関する法律(明治三十三年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項中「民事訴訟法第六編」を「民事執行法(昭和五十四年法律第四号)其ノ他強制執行ノ手続ニ関スル法令」に改める。
(信託法の一部改正)
第十条 信託法(大正十一年法律第六十二号)の一部を次のように改正する。
第十六条第二項中「第三十八条」の下に「及民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四十五条」を加える。
(家事審判法の一部改正)
第十一条 家事審判法の一部を次のように改正する。
第十五条の二中「審判又は」を「審判で最高裁判所の定めるものが効力を生じた場合又は」に改め、「若しくは第二項」及び「若しくはこれを取り消す裁判」を削り、「生じた」を「生じ、若しくは効力を失つた」に改める。
第十五条の三第六項及び第七項を次のように改める。
審判前の保全処分(前項の裁判を含む。次項において同じ。)の執行及び効力は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)その他の仮差押え及び仮処分の執行及び効力に関する法令の規定に従う。この場合において、同法第四十五条中「仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは、「本案の審判事件が係属している家庭裁判所(その審判事件が高等裁判所に係属しているときは、原裁判所)」とする。
民事保全法第四条、第十四条及び第二十条から第二十四条までの規定は審判前の保全処分について、同法第三十三条及び第三十四条の規定は審判前の保全処分を取り消す審判について準用する。
第二十九条第二項中「民事執行法」の下に「(昭和五十四年法律第四号)」を加える。
(家事審判法の一部改正に伴う経過措置)
第十二条 この法律の施行前にした家事審判法第十五条の三第一項の規定による審判(同条第五項の裁判を含む。)に係る審判前の保全処分の事件については、なお従前の例による。
(道路運送車両法等の一部改正)
第十三条 次に掲げる法律の規定中「地方裁判所が執行裁判所」の下に「又は保全執行裁判所」を加え、「地方裁判所以外の裁判所が執行裁判所」を「地方裁判所以外の裁判所が保全執行裁判所」に改める。
一 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第九十七条第一項
二 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第八条の四第一項
三 建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)第二十六条第一項
2 次に掲げる法律の規定中「処分を禁止する仮処分の執行又は」を削る。
一 道路運送車両法第九十七条第三項
二 航空法第八条の四第三項
三 建設機械抵当法第二十六条第三項
(土地収用法の一部改正)
第十四条 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第九十六条第七項中「民事執行法」の下に「又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)」を加える。
(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法の一部改正)
第十五条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(昭和二十七年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
第五条中「執行裁判所」の下に「又は保全執行裁判所」を加える。
(企業担保法の一部改正)
第十六条 企業担保法(昭和三十三年法律第百六号)の一部を次のように改正する。
第五十二条中「前条」を「第五十一条」に改める。
(国税徴収法の一部改正)
第十七条 国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の一部を次のように改正する。
第五十五条第三号中「執行裁判所」を「保全執行裁判所」に改める。
第百三十三条第三項中「仮登記」の下に「(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第二項(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)(同法第五十四条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)において準用する場合を含む。)の規定による仮処分による仮登記を含む。)」を加える。
(行政事件訴訟法の一部改正)
第十八条 行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)の一部を次のように改正する。
第四十四条中「民事訴訟法」を「民事保全法(平成元年法律第九十一号)」に改める。
(執行官法の一部改正)
第十九条 執行官法(昭和四十一年法律第百十一号)の一部を次のように改正する。
第一条第一号中「(昭和五十四年法律第四号)」の下に「、民事保全法(平成元年法律第九十一号)」を加え、同条第二号中「規定による民事執行」の下に「、民事保全法の規定による保全執行」を加える。
第五条中「民事執行法」の下に「(これを準用する場合を含む。)」を加える。
第十条第一項第三号中「第七条」の下に「(これを準用する場合を含む。)」を加える。
(都市再開発法の一部改正)
第二十条 都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)の一部を次のように改正する。
第九十四条第八項中「(昭和五十四年法律第四号)」の下に「又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)」を加える。
(公害紛争処理法の一部改正)
第二十一条 公害紛争処理法の一部を次のように改正する。
第四十二条の二十二(見出しを含む。)中「保証」を「担保」に改める。
第四十二条の二十三を次のように改める。
第四十二条の二十三 削除
(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
第二十二条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
第一条中「民事執行手続」の下に「、民事保全手続」を加える。
第十九条中「説明者」の下に「、民事保全法(平成元年法律第九十一号)第三十条(同法第四十条第一項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による審尋をした参考人」を加える。
別表第一の一一の二の項の上欄ロを次のように改める。
ロ 民事保全法の規定による保全命令の申立て |
別表第一の一七の項の上欄イ中「、同法の規定による強制執行」を「又は同法の規定による強制執行」に改め、「、同法の規定による仮差押決定若しくは仮処分決定に対する異議の申立て又は仮差押え若しくは仮処分の取消しの申立て」を削り、同欄中へをトとし、ホをへとし、ニをホとし、ハをニとし、ロの次に次のように加える。
ハ 民事保全法の規定による保全異議の申立て、保全取消しの申立て、同法第二十七条第一項の規定による保全執行の停止若しくは執行処分の取消しを命ずる裁判を求める申立て、同法第四十二条第一項の規定による保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずる裁判を求める申立て又は保全執行裁判所の執行処分に対する執行異議の申立て |
別表第一の一八の項中
「 |
(3) (1)及び(2)以外のもの |
六百円 |
」 |
を
「 |
(3) 民事保全法の規定による保全抗告 |
一一の二の項ロに掲げる申立手数料の額の一・五倍の額 |
||
(4) (1)から(3)まで以外のもの |
六百円 |
」 |
に改める。
(外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部改正)
第二十三条 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。
第六十三条第一号中「民事執行事件」の下に「、民事保全事件」を加える。
(民法の一部改正)
第二十四条 民法の一部を次のように改正する。
第四十六条に次の一項を加える。
理事ノ職務ノ執行ヲ停止シ若クハ之ヲ代行スル者ヲ選任スル仮処分又ハ其仮処分ノ変更若クハ取消アリタルトキハ主タル事務所及ビ其他ノ事務所ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テハ前項後段ノ規定ヲ準用ス
(非訟事件手続法の一部改正)
第二十五条 非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)の一部を次のように改正する。
第百三十九条中第五号を削り、第六号を第五号とし、第七号から第九号までを一号ずつ繰り上げる。
(商法の一部改正)
第二十六条 商法(明治三十二年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
第二編第二章第一節中第六十七条の次に次の一条を加える。
第六十七条ノ二 社員ノ業務ノ執行ヲ停止シ若ハ之ヲ代行スル者ヲ選任スル仮処分又ハ其ノ仮処分ノ変更若ハ取消アリタルトキハ本店及支店ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ為スコトヲ要ス
第二百七十五条ノ二第二項中「保証」を「担保」に改める。
(農業協同組合法の一部改正)
第二十七条 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第七十七条の次に次の一条を加える。
第七十七条の二 組合の理事、農事組合法人の理事、中央会の会長若しくは中央会を代表する副会長若しくは理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(農業災害補償法の一部改正)
第二十八条 農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)の一部を次のように改正する。
第六十二条の次に次の一条を加える。
第六十二条の二 理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(証券取引法の一部改正)
第二十九条 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の一部を次のように改正する。
第百四十一条の次に次の一条を加える。
第百四十一条の二 理事長若しくは証券取引所を代表すべき理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(損害保険料率算出団体に関する法律の一部改正)
第三十条 損害保険料率算出団体に関する法律(昭和二十三年法律第百九十三号)の一部を次のように改正する。
第十七条の次に次の一条を加える。
(理事の職務執行停止等の登記)
第十七条の二 理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(消費生活協同組合法の一部改正)
第三十一条 消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)の一部を次のように改正する。
第七十七条の次に次の一条を加える。
(理事の職務執行停止等の登記)
第七十七条の二 組合の理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(水産業協同組合法の一部改正)
第三十二条 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)の一部を次のように改正する。
第百四条の次に次の一条を加える。
(理事の職務執行停止等の登記)
第百四条の二 組合の理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(中小企業等協同組合法の一部改正)
第三十三条 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)の一部を次のように改正する。
第八十六条の次に次の一条を加える。
(組合の代表理事又は中央会の会長の職務執行停止等の登記)
第八十六条の二 組合を代表する理事若しくは中央会の会長の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(商品取引所法の一部改正)
第三十四条 商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)の一部を次のように改正する。
第百五条の次に次の一条を加える。
(理事長の職務執行停止等の登記)
第百五条の二 理事長若しくは取引所を代表すべき理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(宗教法人法の一部改正)
第三十五条 宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。
第五十六条を次のように改める。
(代表役員の職務執行停止等の登記)
第五十六条 代表役員若しくはその代務者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(信用金庫法の一部改正)
第三十六条 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)の一部を次のように改正する。
第六十八条の次に次の一条を加える。
(代表理事の職務執行停止等の登記)
第六十八条の二 金庫を代表する理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(漁船損害等補償法の一部改正)
第三十七条 漁船損害等補償法(昭和二十七年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第六十六条の次に次の一条を加える。
(理事の職務執行停止等の登記)
第六十六条の二 理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
第百三十八条第六項中「第六十六条」を「第六十六条の二」に改める。
(輸出入取引法等の一部改正)
第三十八条 次に掲げる法律の規定中「第八十七条」を「第八十六条の二」に改める。
一 輸出入取引法(昭和二十七年法律第二百九十九号)第十九条第一項
二 中小企業団体の組織に関する法律(昭和三十二年法律第百八十五号)第五十四条
三 鉱工業技術研究組合法(昭和三十六年法律第八十一号)第十六条
(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部改正)
第三十九条 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号)の一部を次のように改正する。
第六十三条の次に次の一条を加える。
(代表理事の職務執行停止等の登記)
第六十三条の二 酒類業組合を代表する理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(労働金庫法の一部改正)
第四十条 労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の次に次の一条を加える。
(代表理事の職務執行停止等の登記)
第七十二条の二 金庫を代表する理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあつたときは、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(登録免許税法の一部改正)
第四十一条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第一第十九号(一)ワ中「喪失」の下に「、業務執行の停止若しくは業務代行者の選任」を加える。
(内閣総理・法務・大蔵・文部・厚生・農林水産・通商産業・運輸・労働・
建設大臣署名)