民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律
法律第六十四号(平元・六・三〇)
(目的)
第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展並びに地域及び家庭を取り巻く環境の変化等に伴い、国民の老後に係る多様な保健サービス及び福祉サービスヘの需要が増大していることにかんがみ、民間事業者が公的な保健サービス及び福祉サービスとの連携の下に地域において保健サービス及び福祉サービスを総合的に提供する一群の施設の整備を行うことを促進する措置を講じ、もって老後における健康の保持及び老人の福祉の増進を図り、あわせて老人が生きがいを持ち健康で安らかな生活を営むことができる地域社会の形成に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定民間施設」とは、老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)第十二条に規定する保健事業及び老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に基づく福祉サービス(以下「公的保健福祉サービス」という。)との連携の下に地域において保健サービス及び福祉サービスを総合的に提供する一群の施設であって、民間事業者が整備する次に掲げる施設から構成されるものをいう。
一 住民の老後における疾病予防のため有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。)を行わせるとともに、老人に対して機能訓練を行う施設であって、診療所が附置されていることその他の政令で定める要件に適合するもの
二 老人に対して、各種の相談に応ずるとともに、教養の向上及びレクリエーションのための便宜を総合的に供与する施設(老人福祉法第十四条第五項に規定する老人福祉センターを除く。)
三 イに掲げる施設であってロに掲げる施設が併せて設置されるもの
イ 身体上若しくは精神上の障害があって日常生活を営むのに支障がある老人又はその者を現に養護する者を通わせ、入浴若しくは給食又は介護方法の指導の実施その他の厚生省令で定める便宜を供与する施設
ロ 身体上又は精神上の障害があって日常生活を営むのに支障がある老人につきその者の居宅において入浴、排せつ、食事等の介護を行う事業その他のその者が居宅において日常生活を営むのに必要な便宜を供与する事業であって政令で定めるもののために必要な施設
四 老人を入所させ、給食その他日常生活上必要な便宜を供与する施設(老人福祉法第十四条第二項から第四項までに規定する施設を除く。)であって政令で定めるもの
(基本方針)
第三条 厚生大臣は、特定民間施設の整備に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 特定民間施設の整備に関する基本的な事項
二 特定民間施設の立地並びに規模及び配置に関する事項
三 特定民間施設の整備の事業を行う者に関する事項
四 特定民間施設の施設及び設備に関する事項
五 特定民間施設の運営に関する事項
六 他の医療施設又は社会福祉施設との連携に関する事項
七 公的保健福祉サービスとの連携に関する事項
八 その他特定民間施設の整備に際し配慮すべき重要事項
3 厚生大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、自治大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 厚生大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(整備計画の認定等)
第四条 特定民間施設の整備の事業を行おうとする者(当該事業を行う法人を設立しようとする者を含む。)は、当該特定民間施設の整備の事業に関する計画(以下「整備計画」という。)を作成し、これを厚生大臣に提出して、当該整備計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 整備計画においては、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 特定民間施設の位置
二 特定民間施設の概要、規模及び配置
三 特定民間施設が立地する市町村(特別区を含む。以下同じ。)又はその周辺の市町村に含まれる地域であって、その住民が当該特定民間施設を利用することが想定されるもの(以下「対象地域」という。)の区域
四 特定民間施設の整備の事業を行う者に関する事項
五 特定民間施設の運営に関する事項
六 他の医療施設又は社会福祉施設との連携に関する事項
七 公的保健福祉サービスとの連携に関する事項
八 特定民間施設の整備の事業の実施時期
九 特定民間施設の整備の事業を行うのに必要な資金の額及びその調達方法
十 その他厚生省令で定める事項
3 第一項の認定(以下「計画の認定」という。)の申請は、その計画に係る特定民間施設の所在地を管轄する都道府県知事を経由してするものとする。
(認定の基準)
第五条 厚生大臣は、計画の認定の申請があった場合において、当該申請に係る整備計画が次の各号に適合すると認めるときは、計画の認定をするものとする。
一 前条第二項第一号から第七号まで及び第十号に掲げる事項が基本方針に照らし当該特定民間施設の整備の目的を達成し、当該特定民間施設の機能を発揮させるため適切なものであること。
二 前条第二項第四号、第八号及び第九号に掲げる事項が当該特定民間施設の整備の事業を確実に遂行するため適切なものであること。
(関係都道府県等の意見の聴取)
第六条 厚生大臣は、計画の認定をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県(対象地域の全部又は一部が地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の区域内である場合には、当該指定都市を含む。以下同じ。)の意見を聴かなければならない。
2 前項の場合において、都道府県が意見を述べようとするときは、あらかじめ、関係市町村(指定都市を除く。以下同じ。)の意見を聴かなければならない。
(認定の通知)
第七条 厚生大臣は、計画の認定をしたときは、速やかに、その旨を関係都道府県に通知しなければならない。
2 前項の通知を受けた都道府県は、速やかに、当該通知に係る事項を関係市町村に通知しなければならない。
(整備計画の変更)
第八条 計画の認定を受けた者(その者の設立に係る第四条第一項の法人を含む。)は、当該計画の認定を受けた整備計画の変更をしようとするときは、厚生大臣の認定を受けなければならない。
2 第四条第三項及び前三条の規定は、前項の変更の認定の申請があった場合について準用する。
(報告の徴収)
第九条 厚生大臣は、計画の認定を受けた整備計画(前条第一項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)に係る特定民間施設の整備の事業を行う者(以下「認定事業者」という。)に対し、当該認定計画に係る特定民間施設の整備の事業の実施状況に関し報告をさせることができる。
(改善命令)
第十条 厚生大臣は、認定事業者による特定民間施設の整備の事業の実施が認定計画に適合しないおそれがあると認めるときは、当該認定事業者に対し、その改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができる。
(認定の取消し)
第十一条 厚生大臣は、認定事業者が認定計画に従って特定民間施設の整備の事業を実施しないとき、又は前条の規定による厚生大臣の処分に違反したときは、計画の認定を取り消すことができる。
2 第七条の規定は、前項の規定による取消しについて準用する。
(課税の特例)
第十二条 認定事業者が認定計画に従って新たに取得し、又は製作した機械及び装置並びに器具及び備品であって当該認定計画に係る特定民間施設においてその事業の用に供されるもののうち、当該特定民間施設の機能を発揮させるのに著しく資するものについては、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、特別償却をすることができる。
(資金の確保)
第十三条 国及び地方公共団体は、認定事業者が認定計画に従って特定民間施設の整備の事業を実施するのに必要な資金の確保に努めるものとする。
(指導及び助言)
第十四条 国及び地方公共団体は、認定事業者に対し、認定計画に従って行われる特定民間施設の整備の事業の実施に関し必要な指導及び助言を行うものとする。
(認定事業者に係る軽費老人ホームの設置についての特例)
第十五条 老人福祉法第十四条第四項に規定する軽費老人ホームを設置しようとする認定事業者(民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人に限る。)は、あらかじめ厚生省令で定める事項をその設置し、経営しようとする地を管轄する都道府県知事に届け出たときは、老人福祉法第十五条第四項及び社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)第五十七条第二項の規定にかかわらず、同項の許可を受けないで、当該軽費老人ホームを設置し、経営することができる。
2 前項の規定による届出に係る軽費老人ホームを設置し、経営する者に関しては、同項の規定による届出を社会福祉事業法第五十七条第一項の規定による届出とみなして、同法第五十八条第一項、第五十九条、第六十六条及び第六十七条第一項の規定を適用する。
(罰則)
第十六条 第九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(租税特別措置法の一部改正)
第二条 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第四十五条の二第二項を次のように改める。
2 青色申告書を提出する法人で次の表の各号の上欄に掲げるものが、昭和五十四年四月一日から平成三年三月三十一日までの間に、当該各号の中欄に掲げる減価償却資産のうちその製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないもの(第四十三条から前条まで若しくは前項若しくは同表の他の号又はこれらの規定に係る第五十二条の三第一項の規定の適用を受けるものを除く。以下この項において「医療用機器等」という。)を取得し、又は医療用機器等を製作し、若しくは建設して、これを当該法人の営む当該各号の上欄に規定する事業の用に供した場合には、その用に供した日を含む事業年度の当該医療用機器等の償却限度額は、法人税法第三十一条第一項の規定にかかわらず、当該医療用機器等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該医療用機器等の取得価額に当該各号の下欄に掲げる割合を乗じて計算した金額をいう。)との合計額とする。
法人 |
資産 |
割合 |
一 医療保健業を営む法人 |
次に掲げる減価償却資産 イ 医療用の機械及び装置並びに器具及び備品で政令で定めるもの(以下この号において「医療用機器」という。) ロ 昭和六十三年四月一日前に建築されたものとして政令で定める医療施設に係る消火又は防火に資する減価償却資産で政令で定めるもの(以下この号において「特定消防用資産」という。) |
百分の十五(医療用機器のうち医療法第三十条の六の規定により同条に定める利用に供されるもので政令で定めるものについては百分の十八とし、特定消防用資産については百分の八とする。) |
二 民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号)第九条に規定する認定事業者で同法第二条に規定する特定民間施設の設置及び運営に係る事業を営む法人 |
当該特定民間施設の機能の発揮に資する機械及び装置並びに器具及び備品で政令で定めるもの |
百分の十八 |
(租税特別措置法の一部改正に伴う経過措置)
第三条 前条の規定による改正後の租税特別措置法第四十五条の二第二項の規定は、法人(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第八号に規定する人格のない社団等を含む。以下この条において同じ。)がこの法律の施行の日以後に取得等(取得又は製作若しくは建設をいう。以下この条において同じ。)をしてその事業の用に供する同項に規定する医療用機器等について適用し、法人が同日前に取得等をした前条の規定による改正前の租税特別措置法第四十五条の二第二項に規定する医療用機器等をその事業の用に供した場合については、なお従前の例による。
(地方税法の一部改正)
第四条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
附則第三十一条の二第九項中「第六項」を「第七項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項中「第六項」を「第七項」に改め、同項を同条第九項とし、同条第七項を同条第八項とし、同条第六項の次に次の一項を加える。
7 市町村は、民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号)第九条に規定する認定事業者が、同法の施行の日から平成三年三月三十一日までの間に、同条に規定する認定計画に従つて整備される同法第二条に規定する特定民間施設のうち政令で定めるものの用に供する家屋(政令で定める要件を満たすものに限る。)で、その建設の後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は建設してこれを当該認定事業者の事業の用に供した場合には、当該家屋の敷地である土地で、当該認定事業者が当該期間内に取得し、かつ、保有するものに対しては、第五百八十五条第一項の規定にかかわらず、特別土地保有税を課することができない。
(厚生省設置法の一部改正)
第五条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第六十五号中「及び災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)」を「、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)及び民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号)」に改める。
第六条第五十七号の次に次の一号を加える。
五十七の二 民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律の定めるところにより、基本方針を定め、及び整備計画の認定を行うこと。
(大蔵・厚生・自治・内閣総理大臣署名)