特定農産加工業経営改善臨時措置法

法律第六十五号(平元・七・一)

 (目的)

第一条 この法律は、最近における農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化に対処して、特定農産加工業者の経営の改善を促進するための措置を講ずることにより、その新たな経済的環境への適応の円滑化を図り、もって農業及び農産加工業の健全な発展に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「農産加工品」とは、農産物(畜産物を含む。以下同じ。)を原料又は材料として生産される飲食料品その他の農産物の加工品をいい、「農産加工業」とは、農産加工品を生産する事業をいう。

2 この法律において「特定農産加工業」とは、その業種に属する事業が農産加工業であり、かつ、当該事業により生産される農産加工品又はこれと競争関係にある農産加工品(これらの原料又は材料たる農産物を含む。)の輸入に係る事情の著しい変化により、当該事業を行う相当数の事業者の事業活動に支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認められる業種として農林水産省令で定めるものをいい、「特定農産加工業者」とは、特定農産加工業に属する事業を行う者をいう。

 (計画の承認)

第三条 特定農産加工業者又は事業協同組合その他の政令で定める法人で特定農産加工業者を直接若しくは間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とするもの(以下「特定事業協同組合等」という。)は、特定設備(特定農産加工業に属する事業において農産加工品を生産する設備で、その生産能力が著しく過剰となり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれるものとして農林水産省令で定めるものをいう。第六条第一項において同じ。)の廃棄、事業の転換(他の農産加工業への転換に限る。第五条第一項において同じ。)、新商品又は新技術の研究開発又は利用(農産加工業に係るものに限る。)、事業の合理化その他の経営の改善を図るための措置(特定事業協同組合等にあっては、その構成員の経営の改善を図るための措置。以下「経営改善措置」という。)に関する計画を作成し、これを当該計画に係る事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して、当該計画が適当である旨の承認を受けることができる。

2 特定農産加工業者又は特定事業協同組合等は、他の特定農産加工業者、他の特定事業協同組合等、関連業種(その業種に属する事業が農産加工業であり、かつ、特定農産加工業との関連性が高いことその他の政令で定める基準に該当するものとして農林水産省令で定める業種をいう。)に属する事業を行う者(以下「関連農産加工業者」という。)又は事業協同組合その他の政令で定める法人で関連農産加工業者を構成員とするもの(以下「関連事業協同組合等」という。)と共同して、その行う事業(特定事業協同組合等又は関連事業協同組合等にあっては、その構成員のために行う事業)について事業提携(生産、保管、販売若しくは新商品若しくは新技術の研究開発(農産加工業に係るものに限る。)の共同化又は合併若しくは営業の全部若しくは重要部分の譲渡若しくは譲受けその他これらに準ずる行為をいう。以下同じ。)に関する計画を作成し、これを当該計画に係る事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して、当該計画が適当である旨の承認を受けることができる。

3 第一項の計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 経営改善措置の目標

 二 経営改善措置の内容及び実施時期

 三 経営改善措置の実施に伴い必要となる資金の額及びその調達方法

 四 特定事業協同組合等が新商品又は新技術の研究開発に必要な試験研究費に充てるためその構成員に対し負担金の賦課をしようとする場合にあっては、その賦課の基準

 五 その他農林水産省令で定める事項

4 第二項の計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 事業提携の目標

 二 事業提携の内容及び実施時期

 三 事業提携の実施に伴い必要となる資金の額及びその調達方法

 四 特定事業協同組合等が新商品又は新技術の研究開発の共同化に必要な試験研究費に充てるためその構成員又は関連農産加工業者に対し負担金の賦課をしようとする場合にあっては、その賦課の基準

 五 その他農林水産省令で定める事項

5 都道府県知事は、第一項又は第二項の承認の申請があった場合において、その計画が、次の各号に適合するものであると認めるときは、その承認をするものとする。

 一 当該計画に係る特定農産加工業者が農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化に対応して新たな経済的環境に円滑に適応するために有効かつ適切なものであること。

 二 地域の農業の健全な発展に資するものであること。

 三 その他政令で定める基準に適合するものであること。

 (計画の変更等)

第四条 前条第一項又は第二項の承認を受けた者(以下「承認特定農産加工業者等」という。)は、当該承認に係る計画を変更しようとするときは、都道府県知事の承認を受けなければならない。

2 都道府県知事は、承認特定農産加工業者等が承認に係る計画(前項の規定による変更の承認があったときは、その変更後のもの。以下「承認計画」という。)に従って経営改善措置又は事業提携を行っていないと認めるときは、その承認を取り消すことができる。

3 前条第五項の規定は、第一項の承認について準用する。

 (農林漁業金融公庫からの資金の貸付け)

第五条 農林漁業金融公庫は、農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)第十八条第一項、第四項及び第五項、第十八条の二第一項、第十八条の三第一項並びに附則第二十三項に規定する業務のほか、承認特定農産加工業者等(第三条第二項の承認に係る合併により設立した法人又は当該承認に係る出資に基づいて設立された法人を含む。)に対し、承認計画に従って経営改善措置又は事業提携を行うのに必要な資金のうち、新商品若しくは新技術の研究開発若しくは利用(これらのために施設を改良し造成し若しくは取得し若しくは特別に費用を支出して行うもの又はこれらの利用に関する権利を取得するものに限る。)に必要な長期かつ低利の資金又は事業の転換、事業の合理化若しくは事業提携を行うのに必要な製造若しくは加工のための施設の改良、造成若しくは取得に必要な長期かつ低利の資金であって、他の金融機関が融通することを困難とするものの貸付けの業務を行うことができる。

2 前項に規定する資金の貸付けの利率、償還期限及び据置期間については、政令で定める範囲内で、農林漁業金融公庫が定める。

3 第一項の規定により農林漁業金融公庫が行う同項に規定する資金の貸付けについての農林漁業金融公庫法第二十九条第二項、第三十条第二項第一号及び第三十六条第三号の規定の適用については、同法第二十九条第二項及び第三十条第二項第一号中「融通法」とあるのは「特定農産加工業経営改善臨時措置法」と、同法第三十六条第三号中「附則第二十三項」とあるのは「附則第二十三項並びに特定農産加工業経営改善臨時措置法第五条第一項」とする。

 (課税の特例)

第六条 第三条第一項の承認を受けた特定農産加工業者が承認計画に従って特定設備の廃棄を行った場合において、当該特定設備の廃棄を行った当該特定農産加工業者について当該特定設備の廃棄により欠損金を生じたときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、法人税に係る欠損金の繰越しについて特別の措置を講ずる。

2 第三条第一項又は第二項の承認を受けた特定農産加工業者が承認計画に従って新たに取得し、又は製作した機械及び装置については、租税特別措置法で定めるところにより、特別償却をすることができる。

3 第三条第一項又は第二項の承認を受けた特定事業協同組合等(以下「承認特定事業協同組合等」という。)が、承認計画で定める賦課の基準に基づいて、その構成員に対し、当該承認計画で定める新商品又は新技術の研究開発に係る試験研究(以下「承認計画に係る試験研究」という。)に必要な機械装置(工具、器具及び備品を含む。)を取得し、又は製作するための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その構成員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について特別償却を行うことができる。

4 承認特定事業協同組合等が、承認計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員又は関連農産加工業者に対し承認計画に係る試験研究のための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その構成員又は関連農産加工業者が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について試験研究費の額が増加した場合等の課税の特例の適用があるものとする。

5 承認特定事業協同組合等が、承認計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員又は関連農産加工業者に対し賦課した負担金の全部又は一部をもって、承認計画に係る試験研究の用に直接供する固定資産を取得し、又は製作したときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得の金額の計算について特別の措置を講ずる。

 (資金の確保)

第七条 国及び都道府県は、承認特定農産加工業者等が承認計画に従って経営改善措置又は事業提携を行うのに必要な資金の確保に努めるものとする。

 (指導及び助言)

第八条 国及び都道府県は、承認特定農産加工業者等に対し、経営改善措置又は事業提携の円滑な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。

 (合理化施策の推進)

第九条 国及び都道府県は、特定農産加工業者が行う経営改善措置又は事業提携と併せて、特定農産加工業者の新たな経済的環境への適応を円滑にするため、農業の生産性の向上、技術の研究開発の推進その他の農産加工業の合理化の促進に必要な措置を適切に講ずるよう努めるものとする。

 (雇用の安定等)

第十条 国は、特定農産加工業者が農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化により事業活動の縮小を余儀なくされた場合においては、その特定農産加工業者の雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 国及び都道府県は、特定農産加工業者が事業の転換を行う場合又は事業活動の縮小を余儀なくされた場合においては、その特定農産加工業者に雇用されていた労働者について、職業訓練の実施、就職のあっせんその他その者の職業及び生活の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (報告の徴収)

第十一条 都道府県知事は、承認特定農産加工業者等に対し、承認計画の実施状況について報告を求めることができる。

 (罰則)

第十二条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、この法律の施行の日から起算して五年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その時までにした行為に対する罰則の適用については、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。

 (地方税法の一部改正)

第三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第五百八十六条第二項第十四号の次に次の一号を加える。

  十四の二 特定農産加工業経営改善臨時措置法(平成元年法律第六十五号)第三条第一項又は第二項の規定による承認を受けた同法第二条第二項に規定する特定農産加工業者又は同法第三条第一項に規定する特定事業協同組合等(同条第二項の承認に係る合併により設立した法人又は当該承認に係る出資に基づいて設立された法人で政令で定めるものを含む。)が同法第四条第二項に規定する承認計画に従つて実施する同法第三条第一項に規定する経営改善措置又は同条第二項に規定する事業提携に係る事業(政令で定める施設をその用に供するものに限る。)の用に供する土地

  附則第十一条の四に次の二項を加える。

 15 道府県は、特定農産加工業経営改善臨時措置法第三条第二項の規定による承認を受けた同法第二条第二項に規定する特定農産加工業者が同法第四条第二項に規定する承認計画に従つて営業の譲渡(当該譲渡が同法の施行の日から平成六年三月三十一日までの間にされたものに限る。)をした場合において、当該譲渡を受けた者が当該譲渡に係る不動産(政令で定めるものに限る。)を取得し、かつ、当該不動産の取得の日から引き続き三年以上当該不動産を政令で定めるところにより当該承認計画に係る事業(これに係るものとして政令で定める事業を含む。)の用に供したときは、当該不動産の取得に対して課する不動産取得税については、当該取得が当該承認(同条第一項の規定による変更の承認を含む。)の日から一年以内に行われたときに限り、当該税額から価格の十分の一に相当する額に税率を乗じて得た額を減額するものとする。

 16 第七十三条の二十五から第七十三条の二十七までの規定は、前項に規定する不動産の取得に対して課する不動産取得税の税額の徴収猶予及びその取消し並びに当該不動産取得税に係る地方団体の徴収金の還付について準用する。この場合において、第七十三条の二十五第一項中「、土地の取得」とあるのは「、附則第十一条の四第十五項に規定する不動産(以下第七十三条の二十七までにおいて「不動産」という。)の取得」と、「当該土地」とあるのは「当該不動産」と、「前条第一項第一号又は第二項第一号」とあるのは「同項」と、「同条第一項第一号の規定の適用を受ける土地の取得にあつては当該取得の日から二年以内、同条第二項第一号の規定の適用を受ける土地の取得にあつては当該取得の日から一年以内」とあるのは「当該取得の日から三年以内」と、「これら」とあるのは「同項」と、同条第二項中「土地」とあるのは「不動産」と、第七十三条の二十六第一項中「第七十三条の二十四第一項第一号又は第二項第一号」とあるのは「附則第十一条の四第十五項」と、第七十三条の二十七第一項中「土地」とあるのは「不動産」と、「第七十三条の二十四第一項第一号又は第二項第一号」とあるのは「附則第十一条の四第十五項」と、「これら」とあるのは「同項」と読み替えるものとする。

  附則第三十二条の三の二第九項中「次項」を「第十一項」に、「第十二項」を「第十三項」に改め、同条中第十三項を第十五項とし、第十二項を第十三項とし、同項の次に次の一項を加える。

 14 事業所用家屋で第十項に規定する施設に係るものの新築又は増築で当該施設に係る事業を行う者が建築主であるものに対して課する新増設に係る事業所税の課税標準となるべき新増設事業所床面積の算定については、当該新築又は増築が平成六年三月三十一日までに行われたときに限り、当該新築又は増築に係る新増設事業所床面積(第七百一条の三十四(新増設に係る事業所税に関する部分に限る。)の規定の適用を受けるものを除く。)から当該面積の二分の一に相当する面積を控除するものとする。この場合においては、第七百一条の四十一第八項の規定を準用する。

  附則第三十二条の三の二第十一項を同条第十二項とし、同条第十項中「前項」を「第九項」に改め、同項を同条第十一項とし、同条第九項の次に次の一項を加える。

 10 特定農産加工業経営改善臨時措置法第三条第一項又は第二項の規定による承認を受けた同法第二条第二項に規定する特定農産加工業者又は同法第三条第一項に規定する特定事業協同組合等(同条第二項の承認に係る合併により設立した法人又は当該承認に係る出資に基づいて設立された法人で政令で定めるものを含む。)が同法第四条第二項に規定する承認計画に従つて実施する同法第三条第一項に規定する経営改善措置又は同条第二項に規定する事業提携に係る事業の用に供する施設で政令で定めるものに係る事業所等において行う事業に対して課する事業に係る事業所税のうち資産割又は従業者割の課税標準となるべき事業所床面積又は従業者給与総額の算定については、当該事業が法人の事業である場合には平成六年三月三十一日までに終了する事業年度分、当該事業が個人の事業である場合には平成五年分までに限り、当該施設に係る事業所等に係る事業所床面積又は従業者給与総額(第七百一条の三十四(事業に係る事業所税に関する部分に限る。)の規定の適用を受けるものを除く。以下本項において同じ。)から当該施設に係る事業所床面積又は従業者給与総額にそれぞれ二分の一を乗じて得た面積又は金額を控除するものとする。この場合においては、第七百一条の四十一第八項の規定を準用する。

(大蔵・農林水産・自治・内閣総理大臣署名) 

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