特定外航船舶解撤促進臨時措置法

法律第八十三号(昭六一・六・一二)

 (目的)

第一条 この法律は、外航海運をめぐる経済的事情の著しい変化にかんがみ、特定外航船舶の解撤を促進するための措置を臨時に講ずることにより、外航海運の健全な振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に資するとともに、国際経済の発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定外航船舶」とは、外航船舶(船舶安全法(昭和八年法律第十一号)にいう遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶で、専ら外国航路に就航するものをいう。次項において同じ。)であつて、特定船種に属するものをいう。

2 前項の特定船種とは、その船種に属する外航船舶の船腹量が過剰であり、かつ、船齢の高い船舶その他の効率の低い船舶がその相当数を占めているとともに、その状態が長期にわたり継続することが見込まれるため、当該外航船舶の解撤を促進することによりその状態を改善することが外航海運の健全な振興を図るために必要であると認められる船種として運輸省令で定めるものをいう。

3 この法律において「特定海運事業者」とは、海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第十九条の五第一項若しくは第二十条第一項の規定による届出をした者又は同法第三十三条において準用する同法第二十条第一項の規定による船舶貸渡業の届出をした者であつて、特定外航船舶をその事業の用に供するものをいう。

 (解撤促進基本指針)

第三条 運輸大臣は、政令で定める審議会の意見を聴いて、特定外航船舶の解撤を促進するための基本的な指針(以下「解撤促進基本指針」という。)を定めなければならない。

2 解撤促進基本指針においては、船種ごとに、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 特定外航船舶の船腹の需給に関する見通し

 二 目標時期までの間における特定外航船舶の解撤量の目標

 三 解撤を促進すべき特定外航船舶に関する基準

 四 船員の雇用の安定に関する事項その他特定外航船舶の解撤に当たつて配慮すべき事項

3 運輸大臣は、解撤促進基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 運輸大臣は、外航海運に係る経済的事情の変化のため必要があると認めるときは、第一項の政令で定める審議会の意見を聴いて、解撤促進基本指針を変更しなければならない。

5 第三項の規定は、前項の場合に準用する。

 (特定海運事業者の努力)

第四条 特定海運事業者は、前条第三項の規定により解撤促進基本指針が公表されたときは、その解撤促進基本指針(同条第四項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に定めるところに従つて、特定外航船舶の解撤を行うよう努めなければならない。

 (解撤計画の認定)

第五条 特定海運事業者は、特定外航船舶の解撤に関する計画(以下「解撤計画」という。)を作成し、これを運輸大臣に提出して、その解撤計画が適当である旨の認定を受けることができる。

2 解撤計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 その所有する特定外航船舶の船種ごとの隻数及び合計総トン数その他の状況並びに解撤の方針

 二 解撤しようとする特定外航船舶の名称、船種その他の事項及び解撤の実施時期

 三 特定外航船舶の解撤のため心要な資金及び特定外航船舶の解撤に伴い必要な資金の額並びにその調達方法

 四 船員の雇用の安定に関する措置その他特定外航船舶の解撤に当たつて講ずる措置

3 運輸大臣は、第一項の認定の申請があつた場合において、その解撤計画が解撤促進基本指針に照らし適切なものであり、かつ、当該解撤計画が確実に実施される見込みがあると認めるときは、同項の認定をするものとする。

 (解撤計画の変更等)

第六条 前条第一項の認定を受けた特定海運事業者(以下「認定事業者」という。)は、当該認定に係る解撤計画を変更しようとするときは、運輸大臣の認定を受けなければならない。

2 前条第三項の規定は、前項の認定に準用する。

3 運輸大臣は、認定事業者が当該認定に係る解撤計画(第一項の規定による変更の認定があつたときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)に従つて特定外航船舶の解撤を行つていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

 (産業基盤信用基金の行う解撤促進業務)

第七条 産業基盤信用基金(以下「基金」という。)は、民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(昭和六十一年法律第七十七号。以下「特定施設整備法」という。)第四十条第一項に規定する業務のほか、特定外航船舶の解撤の促進するため、次の業務を行う。

 一 認定計画に係る特定外航船舶の解撤のため必要な資金及び当該特定外航船舶の解撤に伴い必要な資金の借入れに係る債務の保証

 二 前号の業務に附帯する義務

 (特定施設整備法の特例)

第八条 前条の規定により基金の業務が行われる場合には、特定施設整備法第四十条第二項中「前項第一号の業務」とあるのは「前項第一号の業務及び特定外航船舶解撤促進臨時措置法(以下「解撤促進法」という。)第七条第一号の業務」と、同法第五十二条及び第六十三条第五号中「大蔵大臣及び通商産業大臣」とあるのは「大蔵大臣、通商産業大臣及び運輸大臣」と、同法第五十二条第二項並びに第五十三条第一項及び第二項中「この法律」とあるのは「この法律又は解撤促進法」と、同法第五十三条第一項及び第二項中「大蔵大臣又は通商産業大臣」とあるのは「大蔵大臣、通商産業大臣又は運輸大臣」と、同法第六十三条第三号中「第四十条第一項」とあるのは「第四十条第一項及び解撤促進法第七条」とする。

2 大蔵大臣及び通商産業大臣は、特定施設整備法第四十二条第一項又は第四十四条の認可をしようとするときは、前条に規定する業務に係る事項に関し、運輸大臣に協議しなければならない。

 (雇用の安定)

第九条 特定海運事業者は、解撤が行われる特定外航船舶に係る船員について、解撤促進基本指針に定めるところに従つて、失業の予防その他の雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 国は、解撤促進基本指針に定めるところに従つて解撤が行われる特定外航船舶に係る船員について、失業の予防、再就職の促進その他の雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (特定外航船舶の解撤に関する勧告)

第十条 運輸大臣は、特定外航船舶の解撤を促進するため特に必要があると認めるときは、特定外航船舶の解撤を行つていない特定海運事業者に対し、解撤促進基本指針に定めるところに従つて特定外航船舶の解撤を行うべき旨の勧告をすることができる。

 (報告の徴収)

第十一条 運輸大臣は、認定事業者に対し、認定計画の実施状況について報告を求めることができる。

 (罰則)

第十二条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。


   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第七条及び第八条並びに附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、前条ただし書の政令で定める日から起算して三年を経過した日に、その効力を失う。

2 この法律の失効前に契約が締結された第七条第一号の債務の保証に係る基金の業務については、同条及び第八条の規定は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する日以後も、なおその効力を有する。

3 この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、第一項の規定にかかわらず、同項に規定する日以後も、なおその効力を有する。

 (基金の持分の払戻しの禁止の特例)

第三条 日本開発銀行以外の出資者は、基金に対し、附則第一条ただし書の政令で定める日から起算して一月を経過した日までの間に限り、その持分の払戻しを請求することができる。

2 基金は、前項の規定による請求があつたときは、特定施設整備法第十八条第一項の規定にかかわらず、当該持分に係る出資額に相当する金額により払戻しをしなければならない。この場合において、基金は、その払戻しをした金額により資本金を減額するものとする。

 (印紙税法の一部改正)

第四条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。

  別表第三中「(特定産業構造改善臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)第三十九条第一項第一号の業務に限る。)」の下に「並びに特定外航船舶解撤促進臨時措置法(昭和六十一年法律第八十三号)第七条第一号(産業基盤信用基金の行う解撤促進業務)の業務」を加える。

(大蔵・通商産業・運輸・内閣総理大臣署名) 

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