エネルギーの使用の合理化に関する法律
法律第四十九号(昭五四・六・二二)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 工場に係る措置(第三条─第十二条)
第三章 建築物に係る措置(第十三条─第十六条)
第四章 機械器具に係る措置(第十七条―第二十一条)
第五章 雑則(第二十二条─第二十七条)
第六章 罰則(第二十八条─第三十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、燃料資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない我が国のエネルギー事情にかんがみ、燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場、建築物及び機械器具についてエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置等を講ずることとし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「エネルギー」とは、燃料及びこれを熱源とする熱並びに電気をいう。
2 この法律において「燃料」とは、原油及び揮発油、重油その他通商産業省令で定める石油製品、可燃性天然ガス並びに石炭及びコークスその他通商産業省令で定める石炭製品であつて、燃焼の用に供するものをいう。
第二章 工場に係る措置
(事業者の努力)
第三条 工場又は事業場(以下単に「工場」という。)においてエネルギーを使用して事業を行う者(以下「事業者」という。)は、次の各号に掲げる事項を適確に実施することにより、工場におけるエネルギーの使用の合理化に努めなければならない。
一 燃料の燃焼の合理化
二 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
三 放射、伝導等による熱の損失の防止
四 廃熱の回収利用
五 熱の動力等への変換の合理化
六 抵抗等による電気の損失の防止
七 電気の動力、熱等への変換の合理化
(事業者の判断の基準となるべき事項)
第四条 通産産業大臣は、工場におけるエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため、前条各号に掲げる事項に関し事業者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
2 前項に規定する判断の基準となるべき事項は、エネルギー需給の長期見通し、エネルギーの使用の合理化に関する技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。
(指導及び助言)
第五条 主務大臣は、工場におけるエネルギーの使用の合理化の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、前条第一項に規定する判断の基準となるべき事項を勘案して、第三条各号に掲げる事項の実施について必要な指導及び助言をすることができる。
(工場の指定)
第六条 通商産業大臣は、製造業その他の政令で定める業種に属する事業の用に供する工場であつて燃料及びこれを熱源とする熱(以下「燃料等」という。)の使用量について政令で定める要件に該当するものを燃料等の使用の合理化を特に推進する必要がある工場として、当該業種に属する事業の用に供する工場であつて電気の使用量について政令で定める要件に該当するものを電気の使用の合理化を特に推進する必要がある工場として、それぞれ指定することができる。
2 前項の規定により燃料等の使用の合理化を特に推進する必要がある工場として指定された工場(以下「熱管理指定工場」という。)又は同項の規定により電気の使用の合理化を特に推進する必要がある工場として指定された工場(以下「電気管理指定工場」という。)を設置している者(以下「特定事業者」という。)は、当該工場につき次の各号の一に掲げる事由が生じたときは、通商産業省令で定めるところにより、通商産業大臣に、同項の規定による指定を取り消すべき旨の申出をすることができる。
一 前項の政令で定める業種に属する事業を行わなくなつたとき。
二 燃料等の使用量又は電気の使用量について前項の政令で定める要件に該当する見込みがなくなつたとき。
3 通商産業大臣は、前項の申出があつた場合において、その申出に理由があると認めるときは、遅滞なく、第一項の規定による指定を取り消すものとする。前項の申出がない場合において、当該工場につき同項各号の一に掲げる事由が生じたと認められるときも、同様とする。
4 通商産業大臣は、第一項の規定による指定又は前項の規定による指定の取消しをしたときは、その旨を当該工場に係る事業を所管する大臣に通知するものとする。
(エネルギー管理者)
第七条 特定事業者は、通商産業省令で定めるところにより、熱管理指定工場及び電気管理指定工場(以下「エネルギー管理指定工場」という。)ごとに、政令で定める基準に従つて、エネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちから、エネルギー管理者を選任しなければならない。
2 特定事業者は、エネルギー管理者を選任したときは、その選任の日から三十日以内に、通商産業省令で定めるところにより、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。エネルギー管理者が死亡し、又はこれを解任したときも、同様とする。
(エネルギー管理士免状)
第八条 エネルギー管理士免状の種類は、熱管理士免状及び電気管理士免状とし、次の各号の一に該当する者に対し、通商産業大臣がこれを交付する。
一 通商産業大臣が行うエネルギー管理士試験に合格した者
二 前号に掲げる者と同等以上の学識及び経験を有していると通商通業大臣が認定した者
2 前項第一号のエネルギー管理士試験の課目、受験手続その他エネルギー管理士試験の実施細目及びエネルギー管理士免状の交付に関する手続は、通商産業省令で定める。
3 エネルギー管理士試験を受けようとする者、第一項第二号の規定による認定を受けようとする者及びエネルギー管理士免状の再交付を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める金額の手数料を納付しなければならない。
(エネルギー管理者の職務)
第九条 エネルギー管理者は、熱管理指定工場にあつては燃料等の使用の合理化に関し燃料等を消費、設備の維持、燃料等の使用の方法の改善及び監視その他通商産業省令で定める業務を、電気管理指定工場にあつては電気の使用の合理化に関し電気を消費する設備の維持、電気の使用の方法の改善及び監視その他通商産業省令で定める業務を管理する。
(エネルギー管理者等の義務)
第十条 エネルギー管理者は、その職務を誠実に行わなければならない。
2 特定事業者は、エネルギーの使用の合理化に関し、エネルギー管理者のその職務を行う上での意見を尊重しなければならない。
3 エネルギー管理指定工場の従業員は、エネルギー管理者がその職務を行う上で必要であると認めてする指示に従わなければならない。
(記録)
第十一条 特定事業者は、エネルギー管理指定工場に帳簿を備え、通商産業省令で定めるところにより、熱管理指定工場にあつては燃料等の使用量その他燃料等の使用の状況並びに燃料等を消費する設備及び燃料等の使用の合理化に関する設備の設置及び改廃の状況に関し、電気管理指定工場にあつては電気の使用量その他電気の使用の状況並びに電気を消費する設備及び電気の使用の合理化に関する設備の設置及び改廃の状況に関し記録しなければならない。
(勧告及び指示)
第十二条 主務大臣は、エネルギー管理指定工場におけるエネルギーの使用の合理化が第四条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該エネルギー管理指定工場に係る特定事業者に対し、その判断の根拠を示して、エネルギーの使用の合理化に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2 主務大臣は、前項の勧告に係る措置の確実な実施を図るため特に必要があると認めるときは、特定事業者に対し、当該エネルギー管理指定工場に係るエネルギーの使用の合理化に関する計画(以下「合理化計画」という。)を作成し、これを提出すべきことを指示することができる。
3 主務大臣は、合理化計画が当該エネルギー管理指定工場に係るエネルギーの使用の合理化の適確な実施を図る上で適切でないと認めるときは、特定事業者に対し、合理化計画を変更すべき旨の指示をすることができる。
4 主務大臣は、特定事業者が合理化計画を実施していないと認めるときは、当該特定事業者に対し、合理化計画を確実に実施すべき旨の指示をすることができる。
第三章 建築物に係る措置
(建築主の努力)
第十三条 建築物の建築をしようとする者(以下「建築主」という。)は、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止(空気調和設備を有する建築物にあつては、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び空気調和設備に係るエネルギーの効率的利用。以下同じ。)のための措置を適確に実施することにより、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めなければならない。
(建築主の判断の基準となるべき事項)
第十四条 通商産業大臣及び建設大臣は、建築物に係るエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止のための措置に関し建築主の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
2 第四条第二項の規定は、前項に規定する判断の基準となるべき事項に準用する。
(建築物に係る指導及び助言等)
第十五条 建設大臣は、建築物(住宅を除く。以下この項において同じ。)について第十三条に規定する措置の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは、建築主に対し、前条第一項に規定する判断の基準となるべき事項を勘案して、建築物の設計及び施工に係る事項について必要な指導及び助言をすることができる。
2 建設大臣は、住宅について第十三条に規定する措置の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは、前条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に準拠して、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止について住宅の設計及び施工に関する指針を定め、これを公表するものとする。
(建築材料に係る指導及び助言)
第十六条 通商産業大臣は、第十四条第一項に規定する判断の基準となるべき事項又は前条第二項に規定する指針に適合する建築物が建築されることを確保するため特に必要があると認めるときは、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止の用に供される建築材料を製造する事業を行う者に対し、当該判断の基準となるべき事項又は当該指針を勘案して、当該建築材料の断熱性に係る品質の向上及び当該品質の表示に関し必要な指導及び助言をすることができる。
第四章 機械器具に係る措置
(製造事業者等の努力)
第十七条 エネルギーを消費する機械器具の製造又は輸入の事業を行う者(以下「製造事業者等」という。)は、その製造又は輸入に係る機械器具につき、エネルギーの消費量との対比における機械器具の性能の向上を図ることにより、機械器具に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めなければならない。
(製造事業者等の判断の基準となるべき事項)
第十八条 エネルギーを消費する機械器具のうち、自動車(前条に規定する性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものに限る。以下同じ。)その他我が国において大量に使用され、かつ、その使用に際し相当量のエネルギーを消費する機械器具であつて当該性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるもの(以下「特定機器」という。)については、通商産業大臣(自動車にあつては、通商産業大臣及び運輸大臣。以下この章及び第二十五条第三項において同じ。)は、特定機器ごとに、当該性能の向上に関し製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
2 第四条第二項の規定は、前項に規定する判断の基準となるべき事項に準用する。
(性能の向上に関する勧告)
第十九条 通商産業大臣は、製造事業者等が製造し又は輸入する特定機器につき、前条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして第十七条に規定する性能の向上を相当程度行う必要があると認めるときは、当該製造事業者等に対し、その目標を示して、その製造又は輸入に係る当該特定機器の当該性能の向上を図るべき旨の勧告をすることができる。
(表示)
第二十条 通商産業大臣は、特定機器(家庭用品品質表示法(昭和三十七年法律第百四号)第二条第一項第一号に規定する家庭用品であるものを除く。以下この条及び次条において同じ。)について、特定機器ごとに、次に掲げる事項を定め、これを告示するものとする。
一 特定機器のエネルギー消費効率(エネルギーの消費量との対比における特定機器の性能として通商産業省令(自動車にあっては、通商産業省令、運輸省令)で定めるところにより算定した数値をいう。以下同じ。)に関し製造事業者等が表示すべき事項
二 表示の方法その他エネルギー消費効率の表示に際して製造事業者等が遵守すべき事項
(表示に関する勧告)
第二十一条 通商産業大臣は、製造事業者等が特定機器について前条の規定により告示されたところに従つてエネルギー消費効率に関する表示をしていないと認めるときは、当該製造事業者等に対し、その製造又は輸入に係る特定機器につき、その告示されたところに従つてエネルギー消費効率に関する表示をすべき旨の勧告をすることができる。
第五章 雑則
(金融上及び税制上の措置)
第二十二条 国は、エネルギーの使用の合理化等を促進するために必要な金融上及び税制上の措置を講ずるよう努めなければならない。
(科学技術の振興)
第二十三条 国は、エネルギーの使用の合理化等の促進に資する科学技術の振興を図るため、研究開発の推進及びその成果の普及等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(国民の理解を深める等のための措置)
第二十四条 国は、教育活動、広報活動等を通じて、エネルギーの使用の合理化等に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。
(報告及び立入検査)
第二十五条 通商産業大臣は、第六条第一項及び第三項の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、同条第一項の政令で定める業種に属する事業を行う者に対し、その工場における業務の状況に関し報告させることができる。
2 主務大臣は、第十二条の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定事業者に対し、エネルギー管理指定工場における業務の状況に関し報告させ、又はその職員に、エネルギー管理指定工場に立ち入り、エネルギーを消費する設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3 通商産業大臣は、第十九条及び第二十一条の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定機器の製造事業者等に対し、特定機器に係る業務の状況に関し報告させ、又はその職員に、特定機器の製造事業者等の事務所、工場又は倉庫に立ち入り、特定機器、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
4 前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
5 第二項及び第三項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(経過措置の命令への委任)
第二十六条 この法律に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(主務大臣等)
第二十七条 この法律における主務大臣は、通産産業大臣及び当該工場に係る事業を所管する大臣とする。
2 この法律による権限は、政令で定めるところにより、地方支分部局の長に委任することができる。
第六章 罰則
第二十八条 第七条第一項の規定に違反した者は、二十万円以下の罰金に処する。
第二十九条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第十一条の規定に違反して、帳簿を備えず、記録をせず、又は虚偽の記録をした者
二 第二十五条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条第二項若しくは第三項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第三十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
第三十一条 第七条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第八条の規定は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、内外のエネルギー事情その他の経済事情の推移に応じ、この法律の規定に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(熱管理法の廃止)
3 熱管理法(昭和二十六年法律第百四十六号)は、廃止する。
(熱管理法の廃止に伴う経過措置)
4 前項の規定による廃止前の熱管理法第十二条の規定により交付された熱管理士免状は、第八条第一項の規定により交付された熱管理士免状とみなす。
5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(通商産業省設置法の一部改正)
6 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第三十六条の六第十号の次に次の一号を加える。
十の二 エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号)の施行に関すること。
(建設省設置法の一部改正)
7 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条中第二十二号の六を第二十二号の七とし、第二十二号の二から第二十二号の五までを一号ずつ繰り下げ、第二十二号の次に次の一号を加える。
二十二の二 エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第三項中「第二十二号の二から第二十二号の五まで」を「第二十二号の三から第二十二号の六まで」に改め、同条第七項中「同条第十九号に規定する事務、同条第二十号に規定する事務、同条第二十一号、第二十二号、第二十二号の六」を「同条第十九号から第二十二号の二まで、第二十二号の七」に改める。
(大蔵・厚生・農林水産・通商産業・運輸・建設・内閣総理大臣署名)