通信・放送衛星機構法
法律第四十六号(昭五四・六・一二)
目次
第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 設立(第十一条―第十六条)
第三章 管理(第十七条―第二十七条)
第四章 業務(第二十八条・第二十九条)
第五章 財務及び会計(第三十条―第三十八条)
第六章 監督(第三十九条・第四十条)
第七章 補則(第四十一条―第四十三条)
第八章 罰則(第四十四条―第四十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 通信・放送衛星機構は、通信衛星及び放送衛星の位置、姿勢等を制御し、これらの人工衛星に 搭載された無線設備をこれを用いて無線局を開設する者に利用させること等を効率的に行うことにより、宇宙における無線通信の普及発達と電波の有効な利用を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 通信衛星 固定地点からの無線通信を受信して固定地点へその再送信を行うための無線設備及びこれに附属する設備のみを 搭載する人工衛星で次号に掲げるもの以外のものをいう。
二 放送衛星 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第一号に規定する放送を行うための無線設備及びこれに附属する設備のみを 搭載する人工衛星をいう。
三 無線設備 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第二条第四号に規定する設備をいう。
四 無線局 電波法第二条第五号に規定する無線局をいう。
(法人格)
第三条 通信・放送衛星機構(以下「機構」という。)は、法人とする。
(数)
第四条 機構は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第五条 機構の資本金は、その設立に際し、政府及び政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 機構は、必要があるときは、郵政大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
3 政府は、前項の規定により機構がその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、機構に出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第六条 機構は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 機構は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第七条 政府以外の出資者は、機構の承認を得なければ、その持分を譲渡することができない。
2 政府以外の出資者の持分の移転は、譲受け者について第四十一条第二項各号に掲げる事項を出資者原簿に記載した後でなければ、機構その他の第三者に対抗することができない。
(名称)
第八条 機構は、その名称中に通信・放送衛星機構という文字を用いなければならない。
2 機構でない者は、その名称中に通信・放送衛星機構という文字を用いてはならない。
(登記)
第九条 機構は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、機構について準用する。
第二章 設立
(発起人)
第十一条 機構を設立するには、電気通信について識見を有する者七人以上が発起人となることを必要とする。
2 発起人は、定款及び事業計画書を作成し、政府以外の者に対し、機構に対する出資を募集しなければならない。
3 前項の事業計画書に記載すべき事項は、郵政省令で定める。
(設立の認可等)
第十二条 発起人は、前条第二項の募集が終わつたときは、定款及び事業計画書を郵政大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
第十三条 郵政大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 事業の運営が健全に行われ、宇宙における無線通信の普及発達と電波の有効な利用に寄与することが確実であると認められること。
第十四条 郵政大臣は、前条の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、機構の理事長及び監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長及び監事となるべき者は、機構の成立の時において、第二十条第一項の規定により、それぞれ理事長及び監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第十五条 前条第一項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十六条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 機構は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三章 管理
(定款記載事項)
第十七条 機構の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員に関する事項
六 運営評議会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
2 機構の定款の変更は、郵政大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第十八条 機構に、役員として、理事長一人、理事三人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十九条 理事長は、機構を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して機構の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、機構の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は郵政大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第二十条 理事長及び監事は、郵政大臣が任命する。
2 理事は、郵政大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第二十一条 役員の任期は、三年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の解任)
第二十二条 郵政大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
2 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十三条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、郵政大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十四条 機構と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が機構を代表する。
(運営評議会)
第二十五条 機構に、定款の変更、業務方法書の変更、毎事業年度の予算及び事業計画その他機構の運営に関する重要事項を審議する機関として、運営評議会を置く。
2 運営評議会は、運営評議員二十人以内で組織する。
3 運営評議員は、政府以外の出資者(法人の場合は、その代表者)及び機構の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、郵政大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(職員の任命)
第二十六条 機構の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十七条 機構の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四章 業務
(業務)
第二十八条 機構は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 通信衛星及び放送衛星を他に委託して打ち上げること。
二 通信衛星及び放送衛星の位置、姿勢等を制御すること。
三 通信衛星及び放送衛星に 搭載された無線設備をこれを用いて無線局を開設する者に利用させること。
四 前三号に掲げる業務に附帯する業務
五 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 機構は、前項第五号に掲げる業務を行おうとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
(業務方法書)
第二十九条 機構は、業務の開始前に、業務方法書を作成し、郵政大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、郵政省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第三十条 機構の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十一条 機構は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、郵政大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第三十二条 機構は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に郵政大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 機構は、前項の規定により財務諸表を郵政大臣に提出するときは、これに、当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
(書類の送付)
第三十三条 機構は、第三十一条又は前条第一項に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を政府以外の出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十四条 機構は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 機構は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十五条 機構は、資金の借入れ(借換えを含む。)をしようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
(財産の処分等の制限)
第三十六条 機構は、郵政省令で定める重要な財産を貸し付け、譲渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十七条 機構は、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、郵政大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(郵政省令への委任)
第三十八条 この法律に規定するもののほか、機構の財務及び会計に関し必要な事項は、郵政省令で定める。
第六章 監督
(監督命令)
第三十九条 郵政大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十条 郵政大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、機構の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 補則
(出資者原簿)
第四十一条 機構は、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原簿には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び出資金の払込みの年月日又は出資者の持分の譲受けの年月日
三 出資額
3 政府以外の出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第四十二条 機構は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる金額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、機構の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣等との協議)
第四十三条 郵政大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第五条第二項、第二十八条第二項、第二十九条第一項、第三十一条、第三十五条又は第三十六条の規定による認可をしようとするとき。
二 第三十二条第一項又は第三十七条の規定による承認をしようとするとき。
三 第三十六条又は第三十八条の郵政省令を定めようとするとき。
2 郵政大臣は、次の場合には、関係行政機関の長に協議しなければならない。
一 第二十八条第二項又は第二十九条第一項の規定による認可をしようとするとき。
二 第三十一条の規定による認可(事業計画に係る部分に限る。)をしようとするとき。
第八章 罰則
第四十四条 第四十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした機構の役員又は職員は、十万円以下の罰金に処する。
第四十五条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした機構の役員は、十万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により、郵政大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第九条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十八条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十九条の規定による郵政大臣の命令に違反したとき。
第四十六条 第八条第二項の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現にその名称中に通信・放送衛星機構という文字を用いている者については、第八条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第三条 機構の最初の事業年度は、第三十条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
第四条 機構の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十一条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「機構の成立後遅滞なく」とする。
(日本電信電話公社法の一部改正)
第五条 日本電信電話公社法(昭和二十七年法律第二百五十号)の一部を次のように改正する。
第三条の三の見出し中「宇宙開発事業団」を「宇宙開発事業団等」に改め、同条中「宇宙開発事業団」の下に「及び通信・放送衛星機構」を加える。
(放送法の一部改正)
第六条 放送法の一部を次のように改正する。
第九条の三中「宇宙開発事業団」の下に「、通信・放送衛星機構」を加える。
(郵政省設置法の一部改正)
第七条 郵政省設置法(昭和二十三年法律第二百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十二号の十六の次に次の一号を加える。
二十二の十七 法令の定めるところに従い、通信・放送衛星機構を監督すること。
第十条の二第一項第十六号の二の次に次の一号を加える。
十六の三 通信・放送衛星機構に関すること。
(地方税法の一部改正)
第八条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「及び郵便貯金振興会」を「、郵便貯金振興会及び通信・放送衛星機構」に改める。
第五百八十六条第二項第二十七号の二の次に次の一号を加える。
二十七の三 通信・放送衛星機構が通信・放送衛星機構法(昭和五十四年法律第四十六号)第二十八条第一項第二号に規定する業務の用に供する土地で政令で定めるもの
附則第十一条中第十二項を第十三項とし、第十一項の次に次の一項を加える。
12 通信・放送衛星機構が通信・放送衛星機構法第二十八条第一項第二号に規定する業務の用に供する不動産で政令で定めるものを取得した場合における当該不動産の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、当該取得が昭和五十七年三月三十一日までに行われたときに限り、当該不動産の価格の二分の一に相当する額を価格から控除するものとする。
(所得税法の一部改正)
第九条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中中小企業団体中央会の項の次に次のように加える。
通信・放送衛星機構 |
通信・放送衛星機構法(昭和五十四年法律第四十六号) |
(法人税法の一部改正)
第十条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中中小企業団体中央会の項の次に次のように加える。
通信・放送衛星機構 |
通信・放送衛星機構法(昭和五十四年法律第四十六号) |
(大蔵・郵政・自治・内閣総理大臣署名)