小売商業調整特別措置法

法律第百五十五号(昭三四・四・二三)

  


 (目的)

第一条 この法律は、小売商の事業活動の機会を適正に確保し、及び小売商業の正常な秩序を阻害する要因を除去し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (購買会事業を行う者に対する措置命令)

第二条 都道府県知事は、購買会事業(事業者がその従業員の生活に必要な物品を供給する事業(その者がその従業員の生活に必要な物品を加工し、又は修理する事業を含む。)をいう。以下同じ。)を行う者がその従業員(従業員と同一の世帯に属する者を含む。以下同じ。)以外の者に従業員と同一又は類似の条件で購買会事業を利用させることによつて中小小売商の事業活動に影響を及ぼし、その利益を著しく害すると認めるときは、主務省令で定めるところにより、その購買会事業を行う者に対し、従業員以外の者に購買会事業を利用させることを禁止することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による禁止をした場合において、必要があると認めるときは、主務省令で定めるところにより、購買会事業を行う者に対し、次の措置をとるべきことを命ずることができる。

 一 従業員以外の者には購買会事業を利用させない旨を購買会事業を行う場所に明示すること。

 二 従業員であることが不明りようである者に対しては従業員である旨を示す証明書を提示しなければ、購買会事業を利用させないこと。


 (小売市場の許可)

第三条 政令で指定する市(特別区を含む。以下同じ。)の区域(以下「指定地域」という。)内の建物については、都道府県知事の許可を受けた者でなければ、小売市場(一の建物であつて、十以上の小売商(その全部又は一部が政令で定める物品を販売する場合に限る。)の店舗の用に供されるものをいう。以下同じ。)とするため、その建物の全部又は一部をその店舗の用に供する小売商に貸し付け、又は譲り渡してはならない。

2 前項の許可は、一の建物ごとに行う。

3 前二項の規定の適用については、屋根、柱又は壁を共通にする建物及び同一敷地内の二以上の棟をなす建物は、これを一の建物とし、建物に附属建物があるときは、これを合せたものをもつて一の建物とする。

4 都道府県知事は、第一項の現定による処分をしようとするときは、当該建物の所在する市の市長(特別区にあつては区長。以下同じ。)に協議しなければならない。ただし、同項の許可を受けようとする者が当該市長である場合は、この限りでない。


 (許可の申請)

第四条 前条第一項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書をその建物の所在する場所を管轄する都道府県知事に、その建物の所在する市の市長を経由して、提出しなければならない。

 一 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその業務を執行する役員の氏名及び住所

 二 その建物の所在する場所及び小売商に貸し付け、又は譲り渡す床面積

 三 その建物をその店舗の用に供させるため貸し付け、又は譲り渡す小売商の数及びその小売商が主として販売する物品の種類

 四 その建物をその申請に係る許可を受ける日以後にその店舗の用に供させるため貸し付ける小売商から徴するその建物に係る貸付料金の額その他の貸付条件又はその建物をその申請に係る許可を受ける日以後にその店舗の用に供させるため譲り渡す小売商から徴するその建物に係る譲渡代金の額その他の譲渡条件

2 前項の申請書には、その建物の所在する場所を示す図面、その建物の貸付契約書案又は譲渡契約書案その他主務省令で定める書類を添えなければならない。


 (許可の基準)

第五条 都道府県知事は、第三条第一項の許可の申請があつた場合には、その申請が次の各号の一に該当すると認められる場合を除き、同項の許可をしなければならない。

 一 当該小売市場が開設されることにより、当該小売市場内の小売商と周辺の小売市場内の小売商との競争又は当該小売市場内の小売商と周辺の小売商との競争が過度に行なわれることとなりそのため中小小売商の経営が著しく不安定となるおそれがあること。

 二 前条第一項第四号の貸付条件又は譲渡条件が主務省令で定める基準に適合するものでないこと。

 三 申請者がこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終り、又はその執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者であること。

 四 申請者が法人である場合において、その法人の業務を執行する役員の全部又は一部が前号に該当する者であること。

 五 申請者が第十条第一項の規定による許可の取消を受け、その取消の日から一年を経過しない者であること。


 (経過措置)

第六条 次の各号に掲げる建物をその店舗の用に供する小売商に貸し付けている者は、その建物につき、当該各号に掲げる時に、その建物の所在する場所を管轄する都道府県知事から第三条第一項の許可を受けたものとみなす。

 一 一の地域が指定地域となつた際現にその地域内において、小売市場となつている建物 その地域が指定地域となつた時

 二 指定地域内の建物が、第三条第一項の物品を定める政令が制定され又は改廃されたことにより、小売市場とされるときにおけるその建物 その建物が小売市場とされることとなつた時

2 前項の規定により同項各号に掲げる建物につき第三条第一項の許可を受けたものとみなされた者は、その許可を受けたものとみなされた時から起算して一月以内に、次に掲げる事項を記載した届出書を、当該都道府県知事に提出しなければならない。

 一 第四条第一項第一号から第三号までに掲げる事項

 二 その建物をその店舗の用に供させるため貸し付ける小売商から徴するその建物に係る貸付料金の額その他の貸付条件

3 前項の届出書には、その建物の所在する場所を示す図面、その建物の貸付契約書の写その他主務省令で定める書類を添えなければならない。


 (変更の許可等)

第七条 第三条第一項の許可を受けた者及び前条第一項の規定により第三条第一項の許可を受けたものとみなされた者(以下「小売市場開設者」という。)は、次の各号の一に該当する場合には、当該都道府県知事の許可を受けなければならない。

 一 第四条第一項第二号の小売商に貸し付け、又は譲り渡す床面積を増加しようとするとき。

 二 第四条第一項第四号の貸付条件又は譲渡条件を変更しようとするとき(前条第一項の規定により第三条第一項の許可を受けたものとみなされた者にあつては、前条第二項第二号の貸付条件と異なる条件で貸し付けようとするとき。)。

2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合には、その申請に係る変更により、同項第一号に係る申請にあつては第五条第一号に、同項第二号に係る申請にあつては同条第二号に該当することとなると認められる場合を除き、その許可をしなければならない。この場合において、第五条第一号中「当該小売市場が開設されることにより」とあるのは、「申請に係る床面積を増加することにより」と読み替えるものとする。

3 小売市場開設者は、第四条第一項第一号から第三号までの事項に変更があつたとき(第一項第一号に該当する場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

4 第三条第四項の規定は、第一項の規定による処分に準用する。


 (貸付契約等を結ぶ場合の基準)

第八条 小売市場開設者は、第三条第一項の許可に係る建物を小売商にその店舗の用に供させるため貸し付け、又は譲り渡す場合には、第四条第一項第二号及び第四号に掲げる事項(第六条第一項の規定により第三条第一項の許可を受けたものとみなされた者にあつては、第四条第一項第二号に掲げる事項及びその建物を第六条第二項の届出書の提出があつた日以後にその店舗の用に供させるため貸し付ける小売商から徴収するその建物に係る貸付料金の額その他の貸付条件)が第四条第一項の申請書(第六条第一項の規定により第三条第一項の許可を受けたものとみなされた者にあつては、第六条第二項の届出書)に記載した内容(その変更について前条第一項の許可を受けたときは、その許可に係る変更後の内容)に合致するように貸付契約又は譲渡契約を結ばなければならない。貸付契約又は譲渡契約を変更する場合も、同様とする。


 (承継)

第九条 第三条第一項の許可に係る建物の全部又は一部の譲渡、貸付又は返却を受けた者は、政令で定めるところによりその建物の全部又は一部に係る小売市場開設者の地位を承継する。

2 小売市場開設者について相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、政令で定めるところにより当該建物に係る小売市場開設者の地位を承継する。

3 前二項の規定により小売市場開設者の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。


 (許可の取消)

第十条 都道府県知事は、小売市場開設者が正当な理由がないのに第三条第一項の許可に係る建物を十以上の小売商の店舗の用に供させるためこれらの者に貸付又は譲渡をしない期間が引き続き一年以上にわたるときは、その小売市場開設者に係る同項の許可を取り消すことができる。

2 第三条第四項の規定は、前項の規定による処分に準用する。


 (政令への委任)

第十一条 前八条に定めるもののほか、一の地域が指定地域となつた場合及び第三条第一項の物品を定める政令が制定され、又は改廃された場合における必要な経過措置その他同項の許可に関し必要な事項は、政令で定める。


 (請求)

第十二条 都道府県知事は、小売市場で指定地域内にあるものをその店舗の用に供する小売商が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第七項に規定する不公正な取引方法(以下単に「不公正な取引方法」という。)を用いていると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い必要な措置をとるべきことを求めることができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による請求をしたときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に報告しなければならない。

3 前項の主務大臣は、通商産業大臣及び当該請求に係る小売商の事業を所管する大臣とする。


 (公正取引委員会の指示等)

第十三条 公正取引委員会は、小売市場で指定地域内にあるものをその店舗の用に供する小売商が不公正な取引方法を用いていると認めるときは、その小売商に対し、すみやかにその行為を取りやめるべきことを指示することができる。

2 公正取引委員会が前項の規定による指示をした場合において、小売商がその指示に従つたときは、小売商のその指示に係る行為については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第四十八条、第四十九条、第五十三条の三及び第五十四条(違反者に対する勧告、審判手続の開始、審決等)の規定は、適用しない。


 (製造業者等の小売業兼業の届出)

第十四条 政令で指定する物品の製造業者又は卸売業者であつて、政令で指定する地域内において当該物品の小売業を営む者は、主務省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。その小売業を廃止したときも、同様とする。


 (あっせん又は調停)

第十五条 都道府県知事は、次の各号の一に掲げる紛争につき、その紛争の当事者の双方又は一方からあっせん又は調停の申請があつた場合において、物品の流通秩序の適正を期するため必要があると認めるときは、すみやかに、あっせん又は調停を行うものとする。

 一 製造業者がその製造に係る物品について行う一般消費者に対する販売事業に関し、その物品と同種のものを販売する中小小売商とその製造業者との間に生じた紛争

 二 卸売業者がその卸売に係る物品について行う一般消費者に対する販売事業に関し、その物品と同種のものを販売する中小小売商とその卸売業者との間に生じた紛争

 三 前二号に掲げるもののほか、中小小売商以外の者の行う一般消費者に対する物品の販売事業に関し、その者と中小小売商との間に生じた紛争

 四 小売市場で指定地域内にあるものをその店舗の用に供する小売商の販売事業に関し、当該小売市場開設者又はこれらの小売商と当該建物の所在する場所の周辺の地域内の中小小売商との間に生じた紛争


 (調停員等)

第十六条 都道府県知事は、前条の調停を調停員に行わせなければならない。

2 前項の調停員は、一事件ごとに、三人以上五人以内とし、公益を代表する者及び当該紛争の当事者の事業に関し学識経験のある者のうちから都道府県知事が委嘱する。

3 第一項の調停員は、前条の調停を行う場合には、調停案を作成し、これを当事者の双方に示してその受諾を勧告するものとする。

4 都道府県知事は、前項の規定による勧告があつた場合において、物品の流通秩序の適正を期するため必要があると認めるときは、その勧告に係る調停案を理由を附して公表することができる。

5 前各項に定めるもののほか、調停に関し必要な事項は、政令で定める。


 (勧告)

第十七条 都道府県知事は、第十五条各号の一に掲げる紛争(百貨店法(昭和三十一年法律第百十六号)第六条第一項に規定する百貨店業者と中小小売商との間に生じたものを除く。次条第一項において同じ。)が生じた場合(その紛争につき、第十五条のあっせん又は調停が行われている場合を除く。)において、物品の流通秩序の適正を期するため特に必要があると認めるときは、その紛争の当事者の双方又は一方に対し、その紛争を解決するため必要な勧告をすることができる。

第十八条 主務大臣は、第十五条各号の一に掲げる紛争(同条のあっせん又は調停が行われているものを除く。)につき、都道府県知事からの申出があつた場合において、物品の流通秩序の適正を期するため特に必要があると認めるときは、その紛争の当事者の双方又は一方に対し、その紛争を解決するため必要な勧告をすることができる。

2 前項の主務大臣は、その勧告の対象となる者の当該事業を所管する大臣(その勧告の対象となる者が特別の法律によつて設立された組合又は連合会であるときは、その勧告の対象となる者の当該事業を所管する大臣及びその組合又は連合会を所管する大臣)とする。

3 主務大臣は、第一項の規定による勧告をしようとするときは、通商産業大臣に協議しなければならない。


 (報告徴収及び立入検査)

第十九条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、購買会事業を行う者、小売市場開設者若しくは第三条第一項の許可に係る建物内の小売商に対し、必要な事項の報告を求め、又はその職員に、これらの者の事業所若しくは事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。


 (異議の申立)

第二十条 この法律の規定によつてした処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、その処分をした都道府県知事に対し、異議の申立をすることができる。

2 都道府県知事は、前項の異議の申立があつたときは、その異議の申立をした者に対し、相当の期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。

3 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。

4 聴聞に際しては、その異議の申立をした者及び利害関係人に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

5 都道府県知事は、第二項の聴聞を行つた後、文書をもつて決定をし、その写をその異議の申立をした者に送付しなければならない。


 (主務省令)

第二十一条 第二条、第四条第二項、第五条第二号、第六条第三項及び第十四条の主務省令は、大蔵省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令とする。


 (罰則)

第二十二条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項の規定に違反した者

 二 第八条の規定に違反して貸付契約若しくは譲渡契約を結び、又はこれを変更した者

 三 虚偽又は不正の事実に基いて第三条第一項又は第七条第一項の許可を受けた者

第二十三条 次の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

 一 第六条第二項、第七条第三項又は第九条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十九条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十九条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

第二十五条 第二条第一項の規定による禁止に違反し、又は同条第二項の規定による命令に違反した者(法人にあつては、業務を執行する役員)は、一万円以下の過料に処する。


   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。

2 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第七号の次に次の一号を加える。

  七の二 小売商業調整特別措置法(昭和三十四年法律第百五十五号)の施行に関すること。

  第四条第四項中「第六号及び第七号並びに」を「第六号から第七号の二まで及び」に改める。

 (消費生活協同組合法の一部改正)

3 消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)の一部を次のように改正する。

 第十二条に次の四項を加える。

4 当該行政庁は、前項但書の許可の申請があつた場合において、組合がその組合員以外の者に物品の供給事業(物品を加工し、又は修理する事業を含む。以下本条において同じ。)を利用させることによつて中小小売商の事業活動に影響を及ぼし、その利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、同項但書の許可をしてはならない。

5 当該行政庁は、必要があると認めるときは、第三項但書の許可を受けていない組合に対し、次の措置をとるべきことを命ずることができる。

 一 組合員以外の者には物品の供給事業を利用させない旨を物品の供給事業を行う場合に明示すること。

 二 組合員であることが不明りようである者に対しては組合員である旨を示す証明書を提示しなければ、物品の供給事業を利用させないこと。

6 厚生大臣及び通商産業大臣は、必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、前項の措置をとるべきことを指示することができる。

7 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、組合が組合員以外の者に物品の供給事業を利用させている状況に関して必要な報告を求めることができる。

  第百条の次に次の一条を加える。

第百条の二 組合の理事であつて第十二条第五項の規定による命令に違反した者は、これを一万円以下の過料に処する。

(内閣総理・大蔵・厚生・農林・通商産業大臣臨時代理署名) 

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