北海道開発公庫法

法律第九十七号(昭三一・五・一一)

目次

 第一章 総則(第一条―第七条)

 第二章 役員及び職員(第八条―第十八条)

 第三章 業務(第十九条―第二十三条)

 第四章 会計(第二十四条―第三十二条)

 第五章 監督(第三十三条―第三十五条)

 第六章 補則(第三十六条)

 第七章 罰則(第三十七条―第三十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 北海道開発公庫は、北海道における産業の振興開発を促進し、国民経済の発展に寄与するため、長期の資金を供給すること等により、民間の投資及び一般の金融機関が行う金融を補完し、又は奨励することを目的とする。

 (法人格)

第二条 北海道開発公庫(以下「公庫」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第三条 公庫は、主たる事務所を札幌市に置く。

2 公庫は、主務大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第四条 公庫の資本金は、十億円とし、政府が産業投資特別会計からその全額を出資する。

 (登記)

第五条 公庫は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第六条 公庫でない者は、北海道開発公庫という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、公庫について準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第八条 公庫に、役員として、理事長一人、理事三人及び監事二人を置く。

 (役員の職務及び権限)

第九条 理事長は、公庫を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、理事長の定めるところにより、公庫を代表し、理事長を補佐して公庫の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。

3 監事は、公庫の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十条 理事長及び監事は、主務大臣が任命する。

2 理事は、理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。

 (役員の任期)

第十一条 役員の任期は、四年とする。

2 役員は、再任されることができる。

3 役員が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

 (役員の欠格条項)

第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、政府職員(人事院が指定する非常勤の者を除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員

 二 政党の役員

 (役員の兼職禁止)

第十三条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第十四条 公庫と理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が公庫を代表する。

 (代理人の選任)

第十五条 理事長は、公庫の職員のうちから、公庫の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第十六条 公庫の職員は、理事長が任命する。

 (役員及び職員の公務員たる性質)

第十七条 役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (退職手当の支給の基準)

第十八条 公庫は、役員及び職員に対する退職手当の支給の基準を設けようとするときは、あらかじめ、主務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十九条 公庫は、第一条の目的を達成するため、北海道において次に掲げる事業を営む者で当該事業に係る設備(船舶及び車両を含む。)の取得、改良又は補修に伴い長期の資金を必要とするものに対して、当該資金の出資若しくは融通又は当該資金に係る債務保証の業務を行う。

 一 石炭又は可燃性天然ガスの利用度の高い工業

 二 農林畜水産物の加工度の高い工業

 三 鉱業及び製錬業

 四 産業の振興開発に係る交通運輸業

 五 前各号に掲げるもののほか、産業の振興開発のため特に必要な事業で主務大臣の指定するもの

 (業務方法書)

第二十条 公庫は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、政令で定める。

 (出資及び債務保証の限度)

第二十一条 公庫は、第十九条の規定による出資の額の総額と同条の規定による保証に係る債務の現在額の合計額が第四条に規定する資本金の額をこえることとなる場合には、新たに出資又は債務保証をしてはならない。

 (業務の委託)

第二十二条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、金融機関に対し、その業務の一部を委託することができる。

2 前項の規定により公庫の業務の委託を受けた金融機関(以下「受託者」という。)の役員及び職員であつて当該委託業務に従事する者は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (事業計画及び資金計画)

第二十三条 公庫は、四半期ごとの事業計画及び資金計画を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第四章 会計

 (予算及び決算)

第二十四条 公庫の予算及び決算に関しては、公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の定めるところによる。

 (国庫納付金)

第二十五条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の歳入とする。

3 第一項の利益金の計算の方法並びに同項の規定による国庫納付金の納付の手続及びその帰属する会計については、政令で定める。

 (借入金)

第二十六条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、政府から資金の借入をすることができる。

2 政府は、公庫に対し資金の貸付をすることができる。

3 公庫は、第一項に規定する場合を除くほか、資金の借入をしてはならない。

 (債券の発行)

第二十七条 公庫は、資本金の額の二十倍に相当する金額を限度として、北海道開発債券(以下「債券」という。)を発行することができる。ただし、その発行した債券の借換のためには、一時その限度をこえて債券を発行することができる。

2 公庫は、前項の規定により債券を発行しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。

3 第一項の規定による債券の債権者は、公庫の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

4 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。

5 公庫は、主務大臣の認可を受けて、債券の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。

6 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条まで(受託会社の権限及び義務)の規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。

7 前各項に定めるもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。

 (債務保証)

第二十八条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、債券の元本の償還及び利息の支払について保証することができる。

 (余裕金の運用等)

第二十九条 公庫は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 資金運用部への預託

2 公庫は、業務に係る現金を国庫以外に預託してはならない。

 (資金の交付等)

第三十条 公庫は、業務を行うため必要があるときは、受託者に対し貸付に必要な資金を交付することができる。

2 公庫は、業務を行うため必要があるときは、政令で定めるところにより、業務に係る現金を銀行に預け入れることができる。

 (会計帳簿)

第三十一条 公庫は、主務大臣の定めるところにより、業務の性質及び内容並びに事業の運営及び経理の状況を適切に示すため必要な帳簿を備えなければならない。

 (会計検査院の検査)

第三十二条 会計検査院は、必要があると認めるときは、受託者につき、当該委託業務に係る会計を検査することができる。

   第五章 監督

 (監督)

第三十三条 公庫は、主務大臣が監督する。ただし、公庫を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が監督する。

2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫に対して業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (役員の解任)

第三十四条 主務大臣は、公庫の役員が第十二条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 主務大臣は、公庫の役員が次の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

 一 この法律又はこの法律に基く命令に違反したとき。

 二 刑事事件により有罪の言渡を受けたとき。

 三 破産の宣告を受けたとき。

 四 心身の故障により職務を執ることができないとき。

 (報告及び検査)

第三十五条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員に公庫若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 補則

 (主務大臣)

第三十六条 この法律における主務大臣は、内閣総理大臣及び大蔵大臣とする。

   第七章 罰則

 (罰則)

第三十七条 第三十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした公庫の役員若しくは職員又は受託者の役員若しくは職員を三万円以下の罰金に処する。

第三十八条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした公庫の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第五条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第十九条に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 四 第二十九条の規定に違反して業務上の余裕金を運用し、又は現金を国庫以外に預託したとき。

 五 第三十三条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。

第三十九条 第六条の規定に違反して北海道開発公庫という名称又はこれに類する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (設立の手続)

2 主務大臣は、第十条第一項の例により、公庫の理事長又は監事となるべき者を指名する。

3 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、公庫の設立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

4 主務大臣は、設立委員を命じて、公庫の設立に関する事務を処理させる。

5 設立委員は、設立の準備を完了した上、遅滞なく、政府に対して出資金の払込の請求をしなければならない。

6 設立委員は、出資金の払込があつた日(出資金が分割して払い込まれる場合においては第一回の払込があつた日)において、その事務を附則第二項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

7 附則第二項の規定により指名された理事長となるべき者は、前項の引継を受けた日において、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

8 公庫は、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。

 (北海道開発法の改正)

9 北海道開発法(昭和二十五年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第五条を次のように改める。

  (北海道開発庁の所掌事務の範囲及び権限)

 第五条 北海道開発庁の所掌事務の範囲は、次のとおりとし、その権限の行使は、その範囲内で法律(これに基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。

  一 開発計画について調査し、及び立案し、並びにこれに基く事業の実施に関する事務の調整及び推進にあたること。

  二 北海道開発公庫を監督すること。

 (大蔵省設置法の改正)

10 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第一項中第六号の二を第六号の三とし、第六号の次に次の一号を加える。

  六の二 北海道開発公庫を監督すること。

 (登録税法の改正)

11 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条各号列記以外の部分中「第二号ノ六」を「第二号ノ七」に改め、同条中第二号ノ七を第二号ノ八とし、第二号ノ六を第二号ノ七とし、第二号ノ五の次に次の一号を加える。

  二ノ六 北海道開発公庫自己ノ為ニスル登記又ハ登録

 (印紙税法の改正)

12 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第五号ノ四の次に次の一号を加える。

  五ノ四ノ二 北海道開発公庫ノ発スル証書、帳簿

 (所得税法の改正)

13 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第五号中「及び中小企業金融公庫」を「、中小企業金融公庫及び北海道開発公庫」に改める。

 (法人税法の改正)

14 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「中小企業金融公庫」の下に「、北海道開発公庫」を加える。

 (地方税法の改正)

15 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第二号中「中小企業金融公庫」の下に「、北海道開発公庫」を加える。

 (国庫出納金等端数計算法の改正)

16 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「中小企業金融公庫」の下に「、北海道開発公庫」を加える。

 (予算執行職員等の責任に関する法律の改正)

17 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項中「中小企業金融公庫」の下に「、北海道開発公庫」を加える。

 (公庫の予算及び決算に関する法律の改正)

18 公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「及び中小企業金融公庫」を「、中小企業金融公庫及び北海道開発公庫」に改める。

  第五条第二項第二号中「限度額」を「限度額及び北海道開発公庫にあつては北海道開発債券の発行の限度額」に改め、同条第三項中「及び附属雑収入」を「、出資に対する配当金及び債務保証料(北海道開発公庫の場合に限る。)並びに附属雑収入」に改め、「恩給債券」の下に「、北海道開発公庫にあつては北海道開発債券」を、「支払保険金(住宅金融公庫の場合に限る。)」の下に「、債務保証に係る弁済金(北海道開発公庫の場合に限る。)」を加える。

(内閣総理・大蔵大臣署名) 

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