離島振興法
法律第七十二号(昭二八・七・二二)
(目的)
第一条 この法律は、本土より隔絶せる離島の特殊事情よりくる後進性を除去するための基礎条件の改善並びに産業振興に関する対策を樹立し、これに基く事業を迅速且つ強力に実施することによつて、その経済力の培養、島民の生活の安定及び福祉の向上を図り、あわせて国民経済の発展に寄与することを目的とする。
(指定)
第二条 内閣総理大臣は、離島振興対策審議会の意見を聞いて、第一条の目的を達成するために必要と認める離島を、離島振興対策実施地域として指定する。
2 内閣総理大臣は、前項の指定をした場合においては、その旨を公示しなければならない。
(離島振興計画の作成)
第三条 前条の規定により、離島振興対策実施地域の指定があつた場合においては、関係都道府県知事は、当該地域について離島振興計画を作成し、これを内閣総理大臣に報告しなければならない。
2 前項の離島振興計画は、その地域について、国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第七条の二第一項又は第十条第四項に基く総合開発計画がある場合には、これと調和したものでなければならない。
(離島振興計画の内容)
第四条 前条の離島振興計画は、左に掲げる事項を含むものとする。
一 本土と離島及び離島と離島並びに離島内の交通を確保するために必要な海空路、港湾、道路及び通信施設の整備
二 資源開発及び産業の振興を促進するために必要な漁港、林道、農地及び電力施設等の整備
三 水害、風害その他の災害を防除するために必要な国土保全施設の整備
四 住民の福祉向上のため必要な教育、厚生及び文化に関する諸施設の整備
(離島振興計画の設定)
第五条 内閣総理大臣は、第三条第一項の規定による報告があつたときは、離島振興対策審議会の意見を聞いて、離島振興計画を定める。
2 内閣総理大臣は、前項の離島振興計画を定めたときは、これを関係都道府県知事に通知するものとする。
第六条 内閣総理大臣は、毎年度、離島振興計画の実施のために必要な事業計画を作成しなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による事業計画を作成するときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聞かなければならない。
(事業の実施)
第七条 前条第一項の事業計画に基く事業は、この法律に定めるものの外当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(経費の計上)
第八条 国は、第五条第一項の離島振興計画の実施に要する経費については、毎年度、国の財政の許す範囲内において、これを予算に計上しなければならない。
(特別の助成)
第九条 国は、第五条第一項の離島振興計画の事業を行う地方公共団体その他の者に対し、必要な資金を融通し、又はあつ旋し、その他必要と認める措置を講じなければならない。
2 第五条第一項の離島振興計画の事業に要する費用について国が負担し又は補助する割合は、港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第四十二条第一項及び第三項、同法第四十三条第二号及び第三号、漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第二十条第二項及び第三項並びに道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第五十六条の規定(これらの法律に基く命令の規定を含む。)にかかわらず、別表の通りとする。
3 前項の場合において、地方財政平衡交付金法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十条に規定する普通交付金の交付を受けない地方公共団体については、別表で定める国庫の負担割合及び補助割合を減ずることができる。但し、同項に掲げる法律に規定する国庫の負担割合又は補助割合を下ることはできない。
4 政府は、別表に掲げる費用以外の費用についても、これに対し国が補助する割合及び対象を定める政令がある場合においては、第二項の規定に準じ当該政令の特例を設けるものとする。
(離島振興対策審議会の設置及び権限)
第十条 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他離島に関する重要事項を調査審議するために、総理府に離島振興対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、離島振興に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第十一条 審議会は、左に掲げる者につき内閣総理大臣が任命する委員三十人以内で組織する。
一 衆議院議員のうちから衆議院が指名する者 七人
二 参議院議員のうちから参議院が指名する者 四人
三 自治庁次長
四 経済審議庁次長
五 大蔵事務次官
六 文部事務次官
七 厚生事務次官
八 農林事務次官
九 通商産業事務次官
十 運輸事務次官
十一 郵政事務次官
十二 建設事務次官
十三 都道府県知事 三人
十四 市町村長 三人
十五 学識経験のある者 三人
2 前項第十三号から第十五号までに掲げる者につき任命された委員の任期は、二年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 委員は、非常勤とする。
6 前各号に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(政令への委任)
第十二条 この法律の実施のための手続その他必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和三十八年三月三十一日限りその効力を失う。
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中特殊土じよう地帯対策審議会の項の次に次の一項を加える。
離島振興対策審議会 |
離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。 |
4 経済審議庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第十九号に次のように加える。
ホ 離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)
5 農山漁村電気導入促進法(昭和二十七年法律第三百五十八号)の一部を次のように改正する。
第五条中「開拓地」の下に「及び離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第二条の規定による離島振興対策実施地域」を加える。
別表
(一) 港湾法第四十二条第一項及び第三項並びに同法第四十三条第二号及び第三号に規定する費用について
港湾の区分 |
事業の区分 |
事業主体 |
国庫の負担割合又は補助割合 |
特定重要港湾以外の重要港湾 |
水域施設又は外かく施設の建設又は改良(重要な工事に限る。) |
港湾管理者 |
十分の十 |
けい留施設又は臨港交通施設の建設又は改良 |
十分の七・五 |
||
避難港 |
水域施設又は外かく施設の修築 |
港湾管理者 |
百分の百 |
けい留施設の修築 |
百分の七十五 |
||
地方港湾 |
水域施設又は外かく施設の建設又は改良 |
港湾管理者 |
十分の十 |
けい留施設又は臨港交通施設の建設又は改良 |
十分の七・五 |
(二) 漁港法第二十条第二項及び第三項に規定する費用について
漁港の区分 |
事業の区分 |
事業主体 |
国庫の負担割合又は補助割合 |
第一種漁港 第二種漁港 第三種漁港 |
外かく施設又は水域施設の修築 |
国以外の者 |
百分の百 |
けい留施設の修築 |
百分の七十五 |
||
第四種漁港 |
外かく施設又は水域施設の修築 |
国以外の者 |
百分の百 |
けい留施設の修築 |
百分の八十 |
(三) 道路法第五十六条に規定する費用について
道路の区分 |
事業の区分 |
事業主体 |
国庫の補助割合 |
建設大臣の指定する主要な都道府県若しくは市道 |
新設及び改築 |
道路管理者 |
三分の二 |
資源の開発、産業の振興、観光その他国の施策上特に整備する必要のある道路 |
新設及び改築 |
道路管理者 |
三分の二 |
(内閣総理・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・建設大臣署名)