金管理法

法律第六十二号(昭二八・七・一五)

 金管理法(昭和二十五年法律第百二十八号)の全部を改正する。

 (目的)

第一条 この法律は、対外決済の準備に充てるため政府が金を買い上げることとするとともに、金の取引の実態を調査することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「金鉱物」とは、金を含有する鉱物及びその製錬により得られる物(粗金及び金地金を除く。)をいう。

2 この法律において「粗金」とは、金鉱物の製錬又は採取により得られる金を含有する地金(粗銅又は粗鉛からの電解澱物、青化澱物、混汞澱物及び貴鉛を除く。)であつて、金の品位が千分中一以上九百九十九未満のものをいう。

3 この法律において「金地金」とは、粗金の精製により得られる地金であつて、金の品位が千分中九百九十九以上のものをいう。

 (金地金の政府への売却)

第三条 金鉱物の製錬又は採取により、新たに粗金を取得した者は、主務省令で定めるところにより、その取得の日の属する月の末日後三月以内に、その取得に係る粗金のうち、その取得に係る粗金中に含まれる金量のうちで政令で定める金量を得るに必要な粗金を金地金に精製して、これを政府に売却しなければならない。但し、主務省令で定めるところにより、当該粗金を取得した日の属する月の翌々月の末日までに、当該粗金を金地金に精製すべきことを造幣局に委託して、その精製により得られるべき金地金を政府に売却したときは、この限りでない。

2 主務大臣は、災害その他やむを得ない事由があるときは、前項に規定する者の申請により、六月をこえない範囲内において、同項に規定する期限を延長することができる。

 (買入価格)

第四条 前条の規定により政府が金地金を買い入れる場合の価格は、国際通貨基金協定(昭和二十七年条約第十三号)第四条の規定による価格の範囲内で主務大臣が定める。

 (報告及び立入検査)

第五条 主務大臣は、必要があると認めるときは、主務省令で定めるところにより、第三条第一項に規定する者から粗金及び金地金の生産及び受払の状況に関する報告を徴することができる。

2 主務大臣は、必要があると認めるときは、当該職員をして、前項に規定する者の事務所、営業所、工場、倉庫又は金鉱物、粗金若しくは金地金が蔵置されていると認められる場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3 前項の規定により当該職員が立ち入るときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。

4 第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (報告)

第六条 主務大臣は、金の取引の実態を調査するため必要な限度において、主務省令で定めるところにより、第三条第一項に規定する者から粗金又は金地金を買い受けた者から粗金及び金地金の受払及び使用の状況に関する報告を徴することができる。

 (主務大臣及び主務省令)

第七条 第五条第一項及び第二項の規定における主務大臣は、大蔵大臣及び通商産業大臣とし、前条の規定における主務大臣は、大蔵大臣、厚生大臣及び通商産業大臣とし、その他の規定における主務大臣は、大蔵大臣とする。

2 第五条第一項の規定における主務省令は、大蔵省令、通商産業省令とし、前条の規定における主務省令は、大蔵省令、厚生省令、通商産業省令とし、その他の規定における主務省令は、大蔵省令とする。

 (罰則)

第八条 第三条第一項の規定に違反して金地金を政府に売却しなかつた者は、一年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、当該違反行為の目的物の価格の三倍が三十万円をこえるときは、罰金は、当該価格の三倍以下とする。

第九条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項又は第六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 二 第五条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

1 この法律は、昭和二十八年八月一日から施行する。

2 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

3 改正前の金管理法(以下「旧法」という。)第三条から第五条までの規定により金地金(旧法第二条第一項の金地金をいう。)を政府に売却しなければならなかつた者であつて、この法律の施行の日の前日までに当該金地金を政府に売却していない者については、旧法第三条から第六条まで、第二十四条第一号並びに第二十七条及び第二十八条(第二十四条第一号の規定に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。

4 旧法第二十条の規定により輸入税の免除を受けた物品を輸入した金鉱業者については、旧法第二十一条の規定は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。

5 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第四条第五十三号中「金地金の配給、」を削る。

  第十条第十一号及び第十二号を次のように改める。

  十一 金の買取及び売渡並びに輸出入の規制に関すること。

  十二 金地金の政府買入価格の決定に関すること。

  第十五条第一項中第三号を削り、第四号を第三号とし、以下順次一号ずつ繰り上げる。

6 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条中第四十七号を削り、第四十八号を第四十七号とし、第四十八号の二を第四十八号とする。

  第十一条中第十一号を削り、第十二号を第十一号とする。

(大蔵・厚生・通商産業・内閣総理大臣署名) 

法令一覧(年度別)に戻る