港則法

法律第百七十四号(昭二三・七・一五)

第一章 総則

 (法律の目的)

第一条 この法律は、港内における船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的とする。

 (港域)

第二条 港の区域は、別に法律でこれを定める。

 (定義)

第三条 この法律において「雑種船」とは、汽艇、はしけ及び端舟その他ろかいのみをもつて運転し、又は主としてろかいをもつて運転する船舶をいう。

2 この法律において「特定港」とは、きつ水の深い船舶が出入できる港又は外国船舶が常時出入する港であつて、別表に掲げるものをいう。

第二章 入出港及び停泊

 (入出港の届出)

第四条 船舶は、特定港に入港したとき又は特定港を出港しようとするときは、命令の定めるところにより、港長に届け出なければならない。

 (びよう地)

第五条 特定港内に停泊する船舶は、命令の定めるところにより、各々そのトン数又は積載物の種類に従い、当該特定港内の一定の区域内に停泊しなければならない。

2 命令の定める船舶は、命令の定める特定港に入港する際、港長からびよう地の指定を受けなければならない。この場合には、港長は、特別の事情がない限り、前項に規定する一定の区域内においてびよう地を指定しなければならない。

3 前項に規定する特定港以外の特定港でも、港長は、特に必要があると認めるときは、入港船舶に対しびよう地を指定することができる。

4 前二項の規定により、びよう地の指定を受けた船舶は、第一項の規定にかかわらず、当該びよう地に停泊しなければならない。

5 港長は、びよう地を指定するに当つては、けい船浮標、さん橋その他の施設で当該指定に係るものの管理者の意見を聴かなければならない。

 (夜間入港の制限)

第六条 前条第二項の規定によりびよう地の指定を受けなければならない船舶は、港長の許可のある場合又は海難を避けようとする場合その他やむを得ない事由のある場合を除いて、日没から日出までの間は、同項に規定する港に入港してはならない。

 (移動の制限)

第七条 雑種船以外の船舶は、第四条、第八条第一項、第十条及び第二十三条の場合を除いて、港長の許可を受けなければ、第五条第一項の規定により停泊した一定の区域外に移動し、又は港長から指定されたびよう地から移動してはならない。但し、海難を避けようとする場合その他やむを得ない事由のある場合は、この限りでない。

2 前項但書の規定により移動したときは、当該船舶は、遅滞なくその旨を港長に届け出なければならない。

 (修繕及びけい船)

第八条 特定港内においては、雑種船以外の船舶を修繕し、又はけい船しようとする者は、その旨を港長に届け出なければならない。

2 修繕中又はけい船中の船舶は、特定港内においては、港長の指定する場所に停泊しなければならない。

3 港長は、危険を防止するため必要があると認めるときは、修繕中又はけい船中の船舶に対し、必要な員数の船員の乗船を命ずることができる。

 (けい留等の制限)

第九条 雑種船及びいかだは、港内においては、みだりにこれをけい船浮標若しくは他の船舶にけい留し、又は他の船舶の交通の妨となる虞のある場所に停泊させ、若しくは停留させてはならない。

 (移動命令)

第十条 港長は、特に必要があると認めるときは、特定港内に停泊する船舶に対して移動を命ずることができる。

 (停泊の制限)

第十一条 特定港内における船舶の停泊及び停留を禁止する場所又は停泊の方法について必要な事項は、命令でこれを定める。

第三章 航路及び航法

 (航路)

第十二条 雑種船以外の船舶は、特定港に出入し、又は特定港を通過するには、命令の定める航路(以下単に航路という。)によらなければならない。但し、海難を避けようとする場合その他やむを得ない事由のある場合は、この限りでない。

第十三条 船舶は、航路内においては、左の各号の場合を除いては、投びようし、又はえい航している船舶を放してはならない。

一 海難を避けようとするとき。

二 運転の自由を失つたとき。

三 人命又は急迫した危険のある船舶の救助に従事するとき。

四 第三十一条の規定による港長の許可を受けて工事又は作業に従事するとき。

 (航法)

第十四条 航路外から航路に入り、又は航路から航路外に出ようとする船舶は、航路を航行する他の船舶の進路を避けなければならない。

2 船舶は、航路内においては、並列して航行してはならない。

3 船舶は、航路内において、他の船舶と行き会うときは、右側を航行しなければならない。

4 船舶は、航路内においては、他の船舶を追い越してはならない。

5 命令で一定の特定港につき特別の定をした場合には、前二項の規定を適用しない。

第十五条 汽船が港の防波堤の入口又は入口附近で他の汽船と出会う虞のあるときは、入航する汽船は、防波堤の外で出航する汽船の進路を避けなければならない。

第十六条 船舶は、港内及び港の境界附近においては、他の船舶に危険を及ばさないような速力で航行しなければならない。

2 帆船は、港内では、帆を減じ又は引船を用いて航行しなければならない。

第十七条 船舶は、港内においては、防波堤、ふとうその他の工作物の突端又は停泊船舶を右げんに見て航行するときは、できるだけこれに近寄り、左げんに見て航行するときは、できるだけこれに遠ざかつて航行しなければならない。

第十八条 雑種船は、港内においては、汽船及び帆船の進路を避けなければならない。

第十九条 前五条に定めるものの外、運輸大臣は、命令で一定の特定港における航法に関して特別の定をすることができる。

第二十条 この章並びに第十四条第五項及び前条の命令に定めるものの外、港内における航法については、海上衝突予防法(明治二十五年法律第五号)の定めるところによる。

第四章 危険物

第二十一条 爆発物その他の危険物(当該船舶の使用に供するものを除く。以下同じ。)を積載した船舶は、特定港に入港しようとするときは、港の境界外で港長の指揮を受けなければならない。

2 前項の危険物の種類は、命令でこれを定める。

第二十二条 危険物を積載した船舶は、特定港においては、びよう地の指定を受けるべき場合を除いて、港長の指定した場所でなければ停泊し、又は停留してはならない。但し、港長が爆発物以外の危険物を積載した船舶につきその停泊の期間並びに危険物の種類、数量及び保管方法に鑑み差支がないと認めて許可したときは、この限りでない。

第二十三条 船舶は、特定港において危険物の積込、積替又は荷卸をするには、港長の許可を受けなければならない。

2 港長は、前項に規定する作業が特定港内においてされることが不適当であると認めるときは、港の境界外において適当の場所を指定して前項の許可をすることができる。

3 前項の規定により指定された場所に停泊し、又は停留する船舶は、これを港の境界内にある船舶とみなす。

4 船舶は、特定港内又は特定港の境界附近において危険物を運搬しようとするときは、港長の許可を受けなければならない。

第五章 水路の保全

第二十四条 港内その他日本国の水域における水質の汚濁防止については、別に法律でこれを定める。

第二十五条 港内又は港の境界附近において発生した海難に因り他の船舶交通を阻害する状態が生じたときは、当該海難に係る船舶の船長は、遅滞なく標識の設定その他危険予防のため必要な措置をし、且つ、特定港にあつては、その旨を港長に報告しなければならない。

第二十六条 特定港内又は特定港の境界附近における漂流物、沈没物その他の物件が船舶交通を阻害する虞のあるときは、港長は、当該物件の所有者又は占有者に対しその除去を命ずることができる。

第六章 船灯及び信号

第二十七条 海上衝突予防法第七条第一項第三号及び第四号に規定する船舶は、夜間航行中それぞれ同項第三号又は第四号に規定する船灯を掲揚しなければならない。

第二十八条 船舶は、港内においては、みだりに汽笛又は汽角を吹き鳴らしてはならない。

第二十九条 特定港内において使用すべき私設信号を定めようとする者は、港長の許可を受けなければならない。

第三十条 雑種船以外の船舶で信号符字を有するものは、入港しようとするときは、港の境界附近でこれを掲げなければならない。港を通過しようとするときも同様である。

2 前項の船舶は、港内を航行するときは、信号符字を掲揚しなければならない。

第七章 雑則

 (工事等の許可及び進水等の届出)

第三十一条 特定港内又は特定港の境界附近で工事又は作業をしようとする者は、港長の許可を受けなければならない。

2 港長は、前項の許可をするに当り、船舶交通の安全のために必要な措置を命ずることができる。

第三十二条 特定港内において端艇競争その他の行事をしようとする者は、予め港長の許可を受けなければならない。

第三十三条 特定港内において船舶を進水させ、又はドックに出入させようとする者は、その旨を港長に届け出なければならない。

第三十四条 特定港内において竹木材を船舶から水上に卸そうとする者及び特定港内においていかだをけい留し、又は運行しようとする者は、港長の許可を受けなければならない。

2 港長は、前項の許可をするに当り船舶交通安全のために必要な措置を命ずることができる。

 (漁ろうの制限)

第三十五条 船舶交通の妨となる虞のある特定港内の場所においては、みだりに漁ろうをしてはならない。

 (灯火の制限)

第三十六条 何人も、港内又は港の境界附近における船舶交通の妨となる虞のある強力な灯火をみだりに使用してはならない。

2 港長は、特定港内又は特定港の境界附近における船舶交通の妨となる虞のある強力な灯火を使用している者に対し、その灯火の滅光又は被覆を命ずることができる。

 (船舶交通の制限)

第三十七条 港長は、船舶交通の安全のため必要があると認めるときは、特定港内において航路又は区域を指定して、船舶の交通を制限し又は禁止することができる。

2 前項の規定により指定した航路又は区域及び同項の規定による制限又は禁止の期間は、港長がこれを公示する。

第八章 罰則

第三十八条 第二十二条又は第二十三条第一項若しくは第四項の規定に違反したときは、その行為をした者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

第三十九条 左の場合にはその行為をした者は、これを三箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。

一 第五条第一項の規定に違反したとき。

二 第五条第二項の規定による指定を受けないで停泊したとき又は同条第四項のびよう地以外の場所に停泊したとき。

三 第七条第一項、第十二条又は第十三条の規定に違反したとき。

四 第八条第三項、第十条又は第三十七条第一項の規定による処分に違反したとき。

第四十条 第二十五条の規定に違反した者は、これを三箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。

第四十一条 左の各号の一に該当する者は、これを三箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。

一 第二十六条、第三十一条第二項又は第三十六条第二項の規定による処分に違反した者

二 第三十一条第一項の規定に違反した者

第四十二条 第四条、第六条、第八条第二項、第二十一条、第三十条又は第三十五条の規定に違反したときは、その行為をした者は、これを千円以下の罰金又は科料に処する。

第四十三条 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は科料に処する。

一 第八条第一項、第二十九条、第三十二条、第三十三条又は第三十四条第一項の規定に違反した者

二 第三十四条第二項の規定による処分に違反した者

第四十四条 第十一条の規定による命令の規定に違反したときは、その行為をした者は、これを千円以下の罰金又は拘留若しくは科料にする。

第四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して第四十一条又は第四十三条の違反をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても各本条の罰金を科する。

附 則

1 この法律施行の期日は、公布の日から六十日を超えない期間内において、政令でこれを定める。

2 開港港則(明治三十一年勅令第百三十九号)は、これを廃止する。

別 表

稚内

留萌

根室

釧路

小樽

室蘭

函館

青森

八戸

船川

釜石

酒田

塩釜

新潟

京浜

横須賀

清水

伏木東岩瀬

七尾

名古屋

武豊

敦賀

四日市

宮津

舞鶴

和歌山下津

田辺

大阪

神戸

小松島

坂出

高知

新居浜

今治

宇野

浜田

尾道糸崎

広島

岩国

徳山下松

宇部

関門

博多

三池

唐津

住ノ江

佐世保

長崎

口之津

厳原

三角

鹿児島

       

(運輸・内閣総理大臣署名)

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