少年院法
法律第百六十九号(昭二三・七・一五)
第一条 少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された者を収容し、これに矯正教育を授ける施設とする。
第二条 少年院は、初等少年院、中等少年院、特別少年院及び医療少年院とする。
2 初等少年院は、心身に著しい故障のない、おおむね十四歳以上十六歳未満の者を収容する。
3 中等少年院は、心身に著しい故障のない、おおむね十六歳以上二十歳未満の者を収容する。
4 特別少年院は、心身に著しい故障はないが、犯罪的傾向の進んだ、おおむね十八歳以上二十三歳末満の者を収容する。
5 医療少年院は、心身に著しい故障のある、おおむね十四歳以上二十六歳末満の者を収容する。
6 少年院は、収容すべき者の男女の別に従つて、これを設ける。
第三条 少年院は、国立とし、法務総裁がこれを管理する。
2 法務総裁は、少年院を適当に維持し、且つ、完全な監査を行う責任を負う。
第四条 少年院の矯正教育は、在院者を社会生活に適応させるため、その自覚に訴え紀律ある生活のもとに、左に掲げる教科並びに職業の補導、適当な訓練及び医療を授けるものとする。
一 初等少年院においては、小学校及び中学校で必要とする教科
二 中等少年院及び特別少年院においては、初等少年院で必要とする教科、更に必要があれば、高等学校又は大学に準ずる教科
三 医療少年院においては、養護学校その他の特殊教育を行う学校で必要とする教科
2 少年院の長は、在院者を、前項の矯正教育に関係のない労働に従事させてはならない。
第五条 少年院の長は、在院者に対する矯正教育のうち教科に関する事項については、文部大臣の勧告に従わなければならない。
2 少年院の長は、前条各号に掲げる教科を修了した者に対し、修了の事実を証する証明書を発行することができる。
3 前項の証明書は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)により設置された各学校と対応する教科課程について、各学校の長が授与する卒業証書その他の証書と同一の効力を有する。
第六条 在院者の処遇には段階を設け、その改善、進歩等の程度に応じて、順次に向上した取扱をしなければならない。但し、成績が特に不良なものについては、その階段を低下することができる。
第七条 少年院の長は、在院者が善行をなし、成績を向上し、又は一定の技能を習得した場合には、これに賞を与えることができる。
2 前項の賞は、証明書、記章等の賞票又は特別外出等の殊遇とする。但し、少年院の長は、法務総裁の承認を経て、他の賞を与えることができる。
3 ひとたび与えた賞は、いかなる場合にも、これを没取してはならない。
第八条 少年院の長は、紀律に違反した在院者に対して、左に掲げる範囲に限り、懲戒を行うことができる。
一 厳重な訓戒を加えること。
二 成績に対して通常与える点数より減じた点数を与えること。
三 二十日を超えない期間、衛生的な単独室で謹慎させること。但し、十六歳以上のものに限る。
2 懲戒は、本人の心身の状況に注意して、これを行わなければならない。
第九条 少年院の長は、在院者の所持する金銭、衣類その他の物を領置したときは、これを安全に保管し、且つ、在院者に受領証を交付しなければならない。
第十条 少年院の長は、矯正教育の便宜その他の理由により在院者を他の少年院に移送する必要があると認めるときは、その少年院所在地の矯正保護管区長の承認を経て、地方少年保護委員会に対し、移送の認可を求めなければならない。但し、在院者が二十三歳以上の場合には、地方成人保護委員会に対し、移送の認可を求めなければならない。
第十一条 在院者が二十歳に達したときは、少年院の長は、これを退院させなければならない。但し、送致後六月を経過しない場合は、送致の時から六月間に限り、収容を継続することができる。
2 少年院の長は、前項の場合において、在院者の心身に著しい故障があり、又は犯罪的傾向がまだ矯正されていないため少年院から退院させるに不適当であると認めるときは、本人を送致した裁判所に対して、その収容を継続すべき旨の決定の申請をしなければならない。
3 前項の申請を受理した裁判所は、その審理にあたり、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識を有する者及び本人を収容中の少年院の職員の意見をきかなければならない。
4 裁判所は、本人が第二項の状況にあると認めるときは、期間を定めて、収容を継続すベき旨の決定をしなければならない。但し、この期間は二十三歳を超えてはならない。
5 裁判所は、少年院の長の申請に基いて、二十三歳に達する在院者の精神に著しい故障があり公共の福祉のため少年院から退院させるに不適当であると認めるときは、二十六歳を越えない期間を定めて医療少年院に収容を継続すべき旨の決定をしなければならない。
6 第二項から第四項までの規定は、前項の場合にこれを準用する。
7 少年院の長が裁判所に対し、在院者の収容を継続すべき旨の決定の申請をした場合 には、第一項の規定にかかわらず、裁判所から決定の通知があるまで収容を継続することができる。
8 少年院の長は、在院者が裁判所の定めた期間に達したときは、これを退院させなければならない。
第十二条 少年院の長は、在院者に対して矯正の目的を達したと認めるときは、地方少年保護委員会に対し、退院の申請をしなければならない。
2 少年院の長は、在院者が処遇の最高段階に向上し、仮に退院を許すのが相当であると認めるときは、地方少年保護委員会に対し、仮退院の申請をしなければならない。
3 前二項の場合において、在院者が二十三歳以上の場合には、地方成人保護委員会に対して申請をしなければならない。
第十三条 少年院の長は、地方少年保護委員会又は少年を送致した裁判所に対し、少年の心身の状況、家庭、交友関係その他環境の状況等について、調査書の提出その他必要な援助を求めることができる。
2 少年院の長は、警察官、警察吏員、児童福祉司その他の公務員に対し、必要な援助を求めることができる。
3 少年院の長は、その少年院所在地の矯正保護管区長の承認を経て学校、病院、事業所又は学識経験のある者に委嘱して、矯正教育の援助をさせることができる。
4 少年院の長は、事業所又は学識経験のある者に委嘱して少年院以外の施設において在院者に対する職業の補導を援助させる場合には、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定に従うことを要し、且つ、在院者に賞与金が支払われるときは、これを全部本人に支給しなければならない。
第十四条 在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すことができる。
第十五条 この法律で定めるものの外、在院者の処遇に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
2 少年院の長は、法務総裁の認可を受けて、在院者の処遇に関する細則を定めることができる。
第十六条 少年観護所は、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第十七条第一項第二号の規定により送致された者を収容する施設とする。
2 少年観護所は、国立とし、法務総裁がこれを管理する。
3 第九条、第十三条第二項、第三項、第十四条及び第十五条の規定は、少年観護所にこれを準用する。
第十七条 少年観護所に少年鑑別所を附置する。
2 少年鑑別所は、保護処分を適正ならしめるため、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基いて、少年の資質の鑑別を行う。
3 第十三条第二項、第十四条及び第十五条の規定は、少年鑑別所にこれを準用する。
附 則
第十八条 この法律は、昭和二十四年一月一日から、これを施行する。
第十九条 矯正院法(大正十一年法律第四十三号)は、これを廃止する。
第二十条 この法律施行の際現に存する矯正院は、これをこの法律により設置された少年院とみなす。
第二十一条 少年観護所は、昭和二十五年三月三十一日まで、少年院の特に区別した場所を、これに充てることができる。
第二十二条 第十条及び第十三条第三項の規定により矯正保護管区長の行う職権は、矯正保護管区の設置に至るまで、法務総裁がこれを行う。
(法務総裁・文部・内閣総理大臣署名)