地理空間情報活用推進基本法
法律第六十三号(平一九・五・三〇)
目次
第一章 総則(第一条−第八条)
第二章 地理空間情報活用推進基本計画等(第九条・第十条)
第三章 基本的施策
第一節 総則(第十一条−第十五条)
第二節 地理情報システムに係る施策(第十六条−第十九条)
第三節 衛星測位に係る施策(第二十条・第二十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会を実現する上で地理空間情報を高度に活用することを推進することが極めて重要であることにかんがみ、地理空間情報の活用の推進に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、地理空間情報の活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「地理空間情報」とは、第一号の情報又は同号及び第二号の情報からなる情報をいう。
一 空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む。以下「位置情報」という。)
二 前号の情報に関連付けられた情報
2 この法律において「地理情報システム」とは、地理空間情報の地理的な把握又は分析を可能とするため、電磁的方式により記録された地理空間情報を電子計算機を使用して電子地図(電磁的方式により記録された地図をいう。以下同じ。)上で一体的に処理する情報システムをいう。
3 この法律において「基盤地図情報」とは、地理空間情報のうち、電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となる測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画その他の国土交通省令で定めるものの位置情報(国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)であって電磁的方式により記録されたものをいう。
4 この法律において「衛星測位」とは、人工衛星から発射される信号を用いてする位置の決定及び当該位置に係る時刻に関する情報の取得並びにこれらに関連付けられた移動の経路等の情報の取得をいう。
(基本理念)
第三条 地理空間情報の活用の推進は、基盤地図情報、統計情報、測量に係る画像情報等の地理空間情報が国民生活の向上及び国民経済の健全な発展を図るための不可欠な基盤であることにかんがみ、これらの地理空間情報の電磁的方式による正確かつ適切な整備及びその提供、地理情報システム、衛星測位等の技術の利用の推進、人材の育成、国、地方公共団体等の関係機関の連携の強化等必要な体制の整備その他の施策を総合的かつ体系的に行うことを旨として行われなければならない。
2 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、地理情報システムが衛星測位により得られる地理空間情報を活用する上での基盤的な地図を提供し、衛星測位が地理情報システムで用いられる地理空間情報を安定的に提供 するという相互に寄与する関係にあること等にかんがみ、地理情報システムに係る施策、衛星測位に係る施策等が相まって地理空間情報を高度に活用することができる環境を整備 することを旨として講ぜられなければならない。
3 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、衛星測位が正確な位置、時刻、移動の経路等に関する情報の提供を通じて国民生活の向上及び国民経済の健全な発展の基盤となっている現状にかんがみ、信頼性の高い衛星 測位によるサービスを安定的に享受できる環境を確保することを旨として講ぜられなければならない。
4 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、国及び地方公共団体がその事務又は事業の遂行に当たり積極的に取り組んで実施することにより、効果的かつ効率的な公共施設の管理、防災対策の推進等が図られ、もって 国土の利用、整備及び保全の推進並びに国民の生命、身体及び財産の保護に寄与するものでなければならない。
5 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、行政の各分野において必要となる地理空間情報の共用等により、地図作成の重複の是正、施策の総合性、機動性及び透明性の向上等が図られ、もって行政の運営の効率化及 びその機能の高度化に寄与するものでなければならない。
6 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、地理空間情報を活用した多様なサービスの提供が実現されることを通じて、国民の利便性の向上に寄与するものでなければならない。
7 地理空間情報の活用の推進に関する施策は、地理空間情報を活用した多様な事業の創出及び健全な発展、事業活動の効率化及び高度化、環境との調和等が図られ、もって経済社会の活力の向上及び持続的な発展に寄与 するものでなければならない。
8 地理空間情報の活用の推進に関する施策を講ずるに当たっては、民間事業者による地理空間情報の活用のための技術に関する提案及び創意工夫が活用されること等により民間事業者の能力が活用されるように配慮され なければならない。
9 地理空間情報の活用の推進に関する施策を講ずるに当たっては、地理空間情報の流通の拡大に伴い、個人の権利利益、国の安全等が害されることのないように配慮されなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の状況に応じた地理空間情報の活用の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の努力)
第六条 測量、地図の作成又は地理情報システム若しくは衛星測位を活用したサービスの提供の事業を行う者その他の関係事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、良質な地理空間情報の提供等に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する地理空間情報の活用の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(連携の強化)
第七条 国は、国、地方公共団体、関係事業者及び大学等の研究機関が相互に連携を図りながら協力することにより、地理空間情報の活用の効果的な推進が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(法制上の措置等)
第八条 政府は、地理空間情報の活用の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第二章 地理空間情報活用推進基本計画等
(地理空間情報活用推進基本計画の策定等)
第九条 政府は、地理空間情報の活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地理空間情報の活用の推進に関する基本的な計画(以下「地理空間情報活用推進基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 地理空間情報活用推進基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 地理空間情報の活用の推進に関する施策についての基本的な方針
二 地理情報システムに係る施策に関する事項
三 衛星測位に係る施策に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 地理空間情報活用推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。
4 政府は、第一項の規定により地理空間情報活用推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 政府は、適時に、第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
6 第四項の規定は、地理空間情報活用推進基本計画の変更について準用する。
(関係行政機関の協力体制の整備等)
第十条 政府は、地理空間情報活用推進基本計画の策定及びこれに基づく施策の実施に関し、関係行政機関による協力体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
第三章 基本的施策
第一節 総則
(調査及び研究の実施)
第十一条 国は、地理空間情報の活用の推進に関する施策の策定及び適正な実施に必要な調査及び研究を実施するものとする。
(知識の普及等)
第十二条 国は、地理空間情報の活用の重要性に関する国民の理解と関心を深めるよう、地理空間情報の活用に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成)
第十三条 国は、地理空間情報の活用の推進を担う専門的な知識又は技術を有する人材を育成するために必要な施策を講ずるものとする。
(行政における地理空間情報の活用等)
第十四条 国及び地方公共団体は、地理空間情報の活用の推進に関し、国民の利便性の向上を図るとともに、行政の運営の効率化及びその機能の高度化に資するため、その事務及び事業における地理情報システムの利用の拡大並びにこれによる公共分野におけるサービスの多様化及び質の向上その他の必要な施策を講ずるものとする。
(個人情報の保護等)
第十五条 国及び地方公共団体は、国民が地理空間情報を適切にかつ安心して利用することができるよう、個人情報の保護のためのその適正な取扱いの確保、基盤地図情報の信頼性の確保のためのその品質の表示その他の必要な施策を講ずるものとする。
第二節 地理情報システムに係る施策
(基盤地図情報の整備等)
第十六条 国は、基盤地図情報の共用を推進することにより地理情報システムの普及を図るため、基盤地図情報の整備に係る技術上の基準を定めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、同項の技術上の基準に適合した基盤地図情報の整備及び適時の更新その他の必要な施策を講ずるものとする。
(地図関連業務における基盤地図情報の相互活用)
第十七条 国及び地方公共団体は、都市計画、公共施設の管理、農地、森林等の管理、地籍調査、不動産登記、税務、統計その他のその遂行に地図の利用が必要な行政の各分野における事務又は事業を実施するため地図を作成する場合には、当該地図の対象となる区域について既に整備された基盤地図情報の相互の活用に努めるものとする。
(基盤地図情報等の円滑な流通等)
第十八条 国及び地方公共団体は、基盤地図情報等が社会全体において利用されることが地理空間情報の高度な活用に資することにかんがみ、基盤地図情報の積極的な提供、統計情報、測量に係る画像情報等の電磁的方式による整備及びその提供その他の地理空間情報の円滑な流通に必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、その保有する基盤地図情報等を原則としてインターネットを利用して無償で提供するものとする。
3 国は、前二項に定めるもののほか、国民、事業者等による地理空間情報の活用を促進するため、技術的助言、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(地理情報システムに係る研究開発の推進等)
第十九条 国は、地理情報システムの発展を図るため、研究開発の推進、その迅速な評価、その成果の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
第三節 衛星測位に係る施策
(衛星測位に係る連絡調整等)
第二十条 国は、信頼性の高い衛星測位によるサービスを安定的に享受できる環境を効果的に確保することにより地理空間情報の活用を推進するため、地球全体にわたる衛星測位に関するシステムを運営する主体との必要な連絡調整その他の必要な施策を講ずるものとする。
(衛星測位に係る研究開発の推進等)
第二十一条 国は、衛星測位により得られる地理空間情報の活用を推進するため、衛星測位に係る研究開発並びに技術及び利用可能性に関する実証を推進するとともに、その成果を踏まえ、衛星測位の利用の促進を図るために必要な施策を講ずるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(内閣総理・総務・法務・外務臨時代理・財務・文部科学・厚生労働・農林水産臨時代理・経済産業・国土交通・環境・防衛大臣署名)