沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律

法律第六十一号(昭五八・六・一一)

 沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。

 第一条中「推進するための措置」の下に「並びに水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成を計画的かつ効率的に推進するための措置」を加え、「水産動物の育成を図り沿岸漁場としての生産力を増進するための事業を推進する」を「沿岸漁場の安定的な利用関係の確保を図るための措置を講ずる」に改める。

 第六条の前の見出し、同条及び第七条を次のように改める。

 (基本方針)

第六条 農林水産大臣は、沿岸漁場の生産力の増進に資するため、沿岸漁業等振興審議会の意見を聴いて、政令で定めるところにより、水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本的な指針及び指標

 二 水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に係る技術の開発に関する事項

 三 その他水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する重要事項

3 基本方針は、沿岸漁場における水産資源の動向並びに沿岸漁業の生産性の向上及びその生産の増大の見通しに即しつつ、沿岸漁場の総合的な利用の方向及び沿岸漁場整備開発事業の実施の動向に配慮して定めるものとする。

4 農林水産大臣は、基本方針を定めたときは、これを公表しなければならない。

第七条 農林水産大臣は、沿岸漁業に係る漁業事情、経済事情等に変動があつたため必要があるときは、基本方針を変更することができる。

2 前条の規定は、前項の規定による基本方針の変更について準用する。

 第七条の次に次の見出し及び二条を加える。

 (基本計画)

第七条の二 都道府県は、その区域に属する水面(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第八条第三項に規定する内水面を除く。以下同じ。)における沿岸漁場の生産力の増進に資するため、海区漁業調整委員会の意見を聴いて、政令で定めるところにより、水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めることができる。

2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、基本方針の内容と調和するものでなければならない。

 一 水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する指針

 二 その種苗の生産及び放流又はその育成を推進することが適当な水産動物の種類

 三 前号の種類ごとの水産動物の種苗の放流数量の目標

 四 特定水産動物育成事業(特定水産動物(水産動物のうち沿岸漁場整備開発事業で水産動物の育成のために実施されるものに係るもの又は生産された水産動物の種苗の放流に係るものをいう。以下同じ。)の種苗の放流及び当該放流に係る特定水産動物の育成を行う事業その他の特定水産動物の育成を行う事業で、漁業協同組合又は漁業協同組合連合会(以下「漁業協同組合等」という。)が当該事業を効率的に実施するために必要とされる水面(以下「育成水面」という。)の区域内において育成水面の利用に関する規則(以下「育成水面利用規則」という。)で定めるところに従い実施するものをいう。以下同じ。)に関し次に掲げる事項

  イ 第二号の種類のうち特定水産動物育成事業の対象とすべき水産動物が属するもの

  ロ 特定水産動物育成事業に関する指標

  ハ 育成水面の区域を定める基準となるべき事項

 五 水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に係る技術の開発に関する事項

 六 第二号の種類に属する水産動物の放流後の成育、分布及び採捕に係る調査に関する事項

 七 その他水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関し必要な事項

3 基本計画においては、前項に掲げる事項のほか、放流効果実証事業(生産された水産動物の種苗の放流等を行うことにより当該放流に係る水産動物の増殖による漁業生産の増大に係る経済効果を実証するとともにその成果を漁業協同組合等に対し普及する事業をいう。以下同じ。)に関し次に掲げる事項を定めることができる。この場合において、その内容は、基本方針の内容と調和するものでなければならない。

 一 前項第二号の種類のうち放流効果実証事業の対象とすべき水産動物が属するもの

 二 放流効果実証事業に関する指標

4 都道府県は、第二項第四号ハに掲げる事項については、漁場としての水面の利用以外の水面の利用の状況に配慮して基本計画を定めるものとする。

5 国は、都道府県の求めに応じ、基本計画の作成に関し必要な助言又は指導を行うことができる。

6 都道府県は、基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。

第七条の三 都道府県は、沿岸漁業に係る漁業事情、水面の利用の状況等に変動があつたため必要があるときは、基本計画を変更することができる。

2 前条の規定は、前項の規定による基本計画の変更について準用する。

 第八条の前の見出しを「(特定水産動物育成事業の認可等)」に改め、同条第一項中「漁業協同組合又は漁業協同組合連合会(以下「漁業協同組合等」という。)は、特定水産動物を育成水面の区域内において育成水面の利用に関する規則で定めるところに従い育成する事業(以下「特定水産動物育成事業」という。)を行おう」を「漁業協同組合等は、特定水産動物育成事業を実施しよう」に改め、同条第二項第一号中「当該育成水面の区域内において育成すべき」を「特定水産動物育成事業の対象とする」に改め、同項第三号中「特定水産動物を育成する事業」を「特定水産動物育成事業」に改める。

 第九条に見出しとして「(組合員等の同意)」を付する。

 第十条に見出しとして「(特定水産動物育成事業に係る意見の聴取)」を付する。

 第十一条に見出しとして「(特定水産動物育成事業の認可の基準)」を付し、同条中「各号に」を「各号のいずれにも」に改め、同条第一号中「特定水産動物育成基本方針」を「基本計画(第七条の二第二項第一号及び第四号に掲げる事項に係る部分に限る。)」に改め、同条第二号中「を育成する」を「の育成(当該申請に係る特定水産動物育成事業においてその種苗の放流を行う場合にあつては、放流を含む。)を行う」に改める。

 第十二条に見出しとして「(育成水面の区域の変更等)」を付する。

 第十三条に見出しとして「(特定水産動物育成事業の適切な実施等)」を付する。

 第十六条中「及び特定水産動物育成事業」を「、特定水産動物育成事業及び放流効果実証事業」に改め、同条を第二十八条とする。

 第十五条中「特定水産動物育成事業」の下に「及び放流効果実証事業」を加え、同条を第二十七条とする。

 第十四条の次に次の十二条を加える。

 (指定)

第十五条 都道府県知事は、第七条の二第三項の規定により基本計画において放流効果実証事業に関し同項に掲げる事項を定めたときは、その管轄に属する水面において水産動物の種苗の放流を行おうとする者で次に掲げる要件を備えるものを、その申請により、当該都道府県に一を限つて、当該都道府県において放流効果実証事業を実施する者として指定することができる。

 一 申請者が放流効果実証事業の実施を目的とする民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人であること。

 二 申請者が放流効果実証事業を適正かつ確実に実施することができると認められる者であること。

 三 申請者が第二十三条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者でないこと。

2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた法人(以下「指定法人」という。)の名称及び主たる事務所の所在地を公示しなければならない。

3 指定法人は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

 (指定法人の業務)

第十六条 指定法人は、次に掲げる業務を適正かつ確実に実施しなければならない。

 一 第七条の二第三項第一号に規定する水産動物の種類に属する水産動物の生産された種苗の放流を行うこと。

 二 前号の放流に係る水産動物の増殖による漁業生産の増大に係る経済効果を実証すること。

 三 水産動物を採捕する者に対し前号の水産動物の成育を助長するためにその採捕に関し必要な協力を要請すること。

 四 特定水産動物育成事業の実施を促進するため漁業協同組合等に対し第二号に掲げる業務による成果を普及すること。

 (業務実施計画の認可等)

第十七条 指定法人は、その定めるところに従い前条の業務を実施するための計画(以下「業務実施計画」という。)を作成し、都道府県知事の認可を受けなければならない。

2 業務実施計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 一 放流効果実証事業の対象とする水産動物の種類

 二 前号の種類ごとの水産動物の種苗の放流場所、放流時期、放流数量その他の放流の実施に関する事項

 三 前条第二号から第四号までに掲げる業務の実施に関する事項

3 指定法人は、第一項の認可を受けようとするときは、その申請に係る業務実施計画の定めるところに従い実証しようとする前条第二号の経済効果に関する資料その他の農林水産省令で定める書類を申請書に添えて都道府県知事に提出しなければならない。

 (業務実施計画に係る意見の聴取)

第十八条 都道府県知事は、前条第一項の認可の申請があつたときは、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。

 (業務実施計画の認可の基準)

第十九条 都道府県知事は、第十七条第一項の認可の申請に係る業務実施計画が次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、同項の認可をしなければならない。

 一 業務実施計画が基本計画(第七条の二第二項第一号及び第三号並びに第三項に掲げる事項に係る部分に限る。)の内容に適合するものであること。

 二 業務実施計画が第十六条に掲げる業務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること。

 三 業務実施計画が当該都道府県の区域に属する沿岸漁場の総合的な利用の見地からみて適切なものであること。

 四 業務実施計画に係る放流場所において当該業務実施計画に係る第十七条第二項第一号の種類に属する特定水産動物を対象とする特定水産動物育成事業が実施されておらず、かつ、近く実施される見込みがないこと。

 (業務実施計画の変更)

第二十条 指定法人は、その業務実施計画を変更するには、都道府県知事の認可を受けなければならない。ただし、その変更が農林水産省令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。

2 第十七条第三項、第十八条及び前条の規定は、前項の認可について準用する。

 (事業報告書等の提出)

第二十一条 指定法人は、毎事業年度経過後三月以内に、放流効果実証事業に係る事業報告書及び収支決算書(放流効果実証事業に協力する者が任意に拠出した金銭(以下「協力金」という。)を収受したときは、協力金に関する収支の明細を記載した書面を含む。)を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。

 (報告徴収及び改善命令)

第二十二条 都道府県知事は、放流効果実証事業の適正かつ確実な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、その業務に関し必要な報告をさせることができる。

2 都道府県知事は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定法人に対し、その業務の方法の改善に関し必要な措置を採るべきことを命ずることができる。

 一 指定法人が第十五条第三項、第十七条第一項、第二十条第一項又は前条の規定に違反した場合

 二 次に掲げる場合その他指定法人が放流効果実証事業を適正かつ確実に実施していないと認められる場合

  イ 指定法人が第十七条第一項又は第二十条第一項の認可に係る業務実施計画で定めるところに従い第十六条の業務を実施していると認められない場合

  ロ 第十七条第一項又は第二十条第一項の認可に係る業務実施計画が、当該認可後沿岸漁業に係る漁業事情、水面の利用の状況等に変動があつたため、第十九条各号のいずれかに該当しなくなつたと認められる場合

  ハ 指定法人が協力金を放流効果実証事業以外の使途に充てた場合

 (指定の取消し)

第二十三条 都道府県知事は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第十五条第一項の規定による指定を取り消すことができる。

 一 指定法人が解散したとき、その他指定法人が第十五条第一項第一号に規定する法人に該当しなくなつたとき。

 二 指定法人が前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

 三 指定法人が前条第二項の規定による命令に違反したとき。

2 都道府県知事は、前項の規定による指定の取消しをしようとするときは、当該指定の取消しに係る指定法人に弁明する機会を与えなければならない。この場合において、都道府県知事は、当該指定法人に対し、あらかじめ、書面をもつて、弁明をすべき日時、場所及び当該指定の取消しに係る事由を通知しなければならない。

3 都道府県知事は、第十五条第一項の規定による指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

 (漁場利用協定の締結に係る勧告)

第二十四条 漁業協同組合等が次に掲げる団体に対し、又はその団体が漁業協同組合等に対し、漁場(漁業法第八条第三項に規定する内水面に属するものを除く。以下同じ。)の安定的な利用関係の確保に必要な事項で当該協定に掲げられたものの遵守につきそれぞれの団体(漁業協同組合等を含む。)の構成員を指導すべきことを内容とする協定(以下「漁場利用協定」という。)の締結のため交渉をしたい旨の申出を案を示してした場合において、当該申出の相手方が交渉に応じないときは、当該申出をしたものは、当該漁場利用協定に係る漁場の属する水面を管轄する都道府県知事(以下単に「都道府県知事」という。)に対し、当該申出の相手方が当該交渉に応ずべき旨の勧告をするよう申請することができる。締結した漁場利用協定の一方の当事者が他方の当事者に対し案を示してその変更のため交渉をしたい旨の申出をしたときも、同様とする。

 一 その構成員となる資格の主なものを釣りによつて水産動物を採捕する者を船舶により漁場に案内する事業を営む者であることとしている団体

 二 その構成員となる資格の主なものを釣りによつて水産動物を採捕する者であることとしている団体(漁業協同組合等その他その構成員となる資格の主なものを漁業法第二条第二項に規定する漁業者又は漁業従事者であることとしているものを除く。)

2 都道府県知事は、前項の規定による申請があつた場合において、同項の申出に係る漁場が優れた沿岸漁場であり、かつ、当該漁場の安定的な利用関係を確保するため必要があると認めるときは、当該申出の相手方に対し、同項の勧告をすることができる。

 (漁場利用協定の届出)

第二十五条 漁場利用協定を締結した当事者は、農林水産省令で定めるところにより、当該漁場利用協定の内容を都道府県知事に届け出ることができる。これを変更したときも、同様とする。

 (紛争に係るあつせん)

第二十六条 前条の規定による届出のあつた漁場利用協定の遵守につきその当事者間に紛争が生じた場合において、当該当事者がその解決のため努力したにもかかわらず協議が調わないときは、当該当事者の双方又は一方は、都道府県知事に対し、農林水産省令で定めるところにより、その遵守につきあつせんを申請することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による申請があつた場合において、当該申請に係る漁場が優れた沿岸漁場であり、かつ、当該漁場の安定的な利用関係を確保するため必要があると認めるときは、あつせんをすることができる。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。


 (経過措置)

2 この法律の施行の際改正前の第八条第一項又は第十二条第一項の認可を受けて改正前の第八条第一項の特定水産動物育成事業を実施している漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、当該特定水産動物育成事業に係る改正後の第八条第一項の認可を受けたものとみなす。

 (農林水産・内閣総理大臣署名) 

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