動物の保護及び管理に関する法律
法律第百五号(昭四八・一〇・一)
(目的)
第一条 この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の保護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする。
(基本原則)
第二条 何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
(動物愛護週間)
第三条 ひろく国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるようにするため、動物愛護週間を設ける。
2 動物愛護週間は、九月二十日から同月二十六日までとする。
3 国及び地方公共国体は、動物愛護週間には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるように努めなければならない。
(適正な飼養及び保管)
第四条 動物の所有者又は占有者は、その動物を適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。
第五条 地方公共団体は、動物の健康及び安全を保持するため、条例で定めるところにより、動物の飼養及び保管についての指導及び助言に関し必要な措置を講ずることができる。
第六条 地方公共団体は、動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止するため、条例で定めるところにより、動物の所有者又は占有者が動物の飼養又は保管に関し遵守すべき事項を定め、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物の飼養を制限する等動物の飼養及び保管に関し必要な措置を講ずることができる。
(犬及びねこの引取り)
第七条 都道府県又は政令で定める市(以下「都道府県等」という。)は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。この場合において、都道府県知事又は当該政令で定める市の長(以下「都道府県知事等」という。)は、その犬又はねこを引き取るべき場所を指定することができる。
2 前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
3 都道府県知事は、市町村長(第一項の政令で定める市の長を除き、特別区の区長を含む。)に対し、第一項(前項において準用する場合を含む。以下第六項及び第七項において同じ。)の規定による犬又はねこの引取りに関し、必要な協力を求めることができる。
4 都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする公益法人その他の者に犬及びねこの引取りを委託することができる。
5 都道府県等は、第一項の引取りに関し、条例で定めるところにより、手数料を徴収することができる。
6 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項の規定により引取りを求められた場合の措置に関し必要な事項を定めることができる。
7 国は、都道府県等に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、第一項の引取りに関し、費用の一部を補助することができる。
(負傷動物等の発見者の通報措置)
第八条 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、ねこ等の動物又は犬、ねこ等の動物の死体を発見した者は、すみやかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
3 前条第六項の規定は、前項の規定により動物を収容する湯合に準用する。
(犬及びねこの繁殖制限)
第九条 犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。
(動物を殺す場合の方法)
第十条 動物を殺さなければならない湯合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。
2 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し必要な事項を定めることができる。
(動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後措置)
第十一条 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。
2 動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥つている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によつてその動物を処分しなければならない。
3 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項の方法及び前項の措置に関しよるべき基準を定めることができる。
(動物保護審議会)
第十二条 総理府に、附属機関として、動物保護審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、動物の保護及び管理に関する重要事項を調査審議する。
3 内閣総理大臣は、第四条第二項若しくは前項第三項の基準の設定又は第七条第六項(第八条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第十条第二項の定めをしようとするときは、審議会に諮問しなければならない。これらの基準又は定めを変更し、又は廃止しょうとするときも、同様とする。
4 審議会は、動物の保護及び管理に関する重要事項について内閣総理大臣に意見を述べることができる。
5 審議会は、委員十五人以内で組織する。
6 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。ただし、その過半数は、動物に関する専門の学識経験を有する者のうちから任命しなければならない。
7 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
8 委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(罰則)
第十三条 保護動物を虐待し、又は遺棄した者は、三万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項において「保護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で 哺乳類又は鳥類に属するもの
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(軽犯罪法の一部改正)
2 軽犯罪法(昭和二十三年法律第三十九号)の一部を次のように改正する。
第一条第二十一号を次のように改める。
二十一 削除
(総理府設置法の一部改正)
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第六条中第十六号の三の次に次の一号を加える。
十六の四 動物の保護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)の施行に関すること。
第十五条第一項の表中中央交通安全対策会議の項の次に次のように加える。
動物保護審議会 |
動物の保護及び管理に関する法律の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。 |
(狂犬病予防法の一部改正)
4 狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)の一部を次のように改正する。
第五条の二を削る。
(罰則に関する経過措置)
5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(内閣総理・法務・厚生大臣署名)