通算年金通則法

法律第百八十一号(昭三六・一一・一)

 (この法律の趣旨)

第一条 この法律は、各公的年金制度が支給する通算老齢年金又は通算退職年金に関して通則的事項を定めるものとする。

 (通算老齢年金及び通算退職年金)

第二条 この法律において、「通算老齢年金」又は「通算退職年金」とは、各公的年金制度が、当該制度の被保険者又は組合員であつた者で、当該制度において定める老齢年金又は退職年金の支給要件を満たしていないが、各公的年金制度に係る通算対象期間を合算し、若しくは各公的年金制度に係る通算対象期間と国民年金の保険料免除期間とを合算して一定の要件に該当するか、他の公的年金制度に係る通算対象期間が、当該制度において定める老齢・退職年金給付を受けるに必要な資格期間に相当する期間以上であるか、又は他の制度における老齢・退職年金給付を受けることができるものに対して、老齢又は退職を支給事由として行なう年金たる給付をいう。

 (公的年金各法又は公的年金制度)

第三条 この法律において、「公的年金各法」とは、次の各号に掲げる法律をいい、「公的年金制度」とは、これらの法律に定める年金制度をいう。これらの法律において「公的年金各法」又は「公的年金制度」というときも、同様とする。

 一 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)

 二 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)

 三 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)

 四 国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)

 五 市町村職員共済組合法(昭和二十九年法律第二百四号)

 六 私立学校教職員共済組合法(昭和二十八年法律第二百四十五号)

 七 公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)

 八 農林漁業団体職員共済組合法(昭和三十三年法律第九十九号)

 (通算対象期間)

第四条 この法律及び公的年金各法において、「通算対象期間」とは、次の各号に掲げる期間(法令の規定により当該公的年金制度の被保険者又は組合員であつた期間とみなされる期間に係るもの及び法令の規定により当該各号に掲げる期間に算入される期間を含む。)で、当該公的年金制度において定める老齢又は退職を支給事由とする給付の支給要件たる期間の計算の基礎となるものをいう。ただし、第四号から第八号までに掲げる期間については、組合員又は農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員が退職し又はその資格を喪失した場合におけるその退職又は資格喪失の日まで引き続く組合員期間又は組合員若しくは農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員であつた期間で、退職一時金の支給要件たる最短年限に達しないものを除く。

 一 国民年金の保険料納付済期間

 二 厚生年金保険の被保険者期間

 三 船員保険の被保険者であつた期間

 四 国家公務員共済組合の組合員期間

 五 市町村職員共済組合の組合員であつた期間

 六 私立学校教職員共済組合の組合員であつた期間

 七 公共企業体職員等共済組合の組合員期間

 八 農林漁業団体職員共済組合の組合員又は任意継続組合員であつた期間

2 次の各号のいずれかに該当したため国民年金法第七条第二項の規定により国民年金の被保険者とされなかつた期間(同法附則第六条の規定により国民年金の被保険者となつた期間を除く。)がある者については、前項の規定にかかわらず、その被保険者とされなかつた期間もまた、通算対象期間とする。

 一 国民年金以外の公的年金制度の被保険者又は組合員(農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員及び厚生年金保険法附則第二十八条に規定する共済組合の組合員を含む。)の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)

 二 次に掲げる年金たる給付のうち老齢又は退職を支給事由とする給付を受けることができる者の配偶者

  イ 国民年金法以外の公的年金各法(国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法(昭和三十三年法律第百二十九号)を含む。以下同じ。)に基づく年金たる給付。ただし、通算老齢年金及び通算退職年金を除く。

  ロ 恩給法(大正十二年法律第四十八号。他の法律において準用する場合を含む。)に基づく年金たる給付

  ハ 地方公務員の退職年金に関する条例に基づく年金たる給付。ただし、通算退職年金を除く。

  ニ 厚生年金保険法附則第二十八条に規定する共済組合が支給する年金たる給付

  ホ 執達吏規則(明治二十三年法律第五十一号)に基づく年金たる給付

  へ 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法(昭和二十五年法律第二百五十六号)に基づいて国家公務員共済組合連合会が支給する年金たる給付

 三 前号に規定する給付の受給資格要件たる期間を満たしている者の配偶者

 四 第二号イからへまでに掲げる年金たる給付のうち廃疾を支給事由とする給付又は戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)に基づく障害年金を受けることができる者及びその配偶者

 五 第二号イからへまでに掲げる年金たる給付のうち死亡を支給事由とする給付又は戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく遺族年金(遺族給与金を含む。)を受けることができる者

 六 未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)に基づく留守家族手当又は特別手当(同法附則第四十五項に規定する手当を含む。)を受けることができる者


 (老齢・退職年金給付)

第五条 この法律及び公的年金各法において、「老齢・退職年金給付」とは、次に掲げる年金たる給付のうち、老齢又は退職を支給事由とする給付をいう。

 一 公的年金各法に基づく年金たる給付。ただし、通算老齢年金及び通算退職年金並びに国民年金法第二十八条第一項の規定によつて支給される老齢年金及び同法による老齢福祉年金を除く。

 二 前条第二項第二号ロからへまでに掲げる年金たる給付


 (期間の計算)

第六条 通算老齢年金又は通算退職年金の支給に関し、第四条第一項第三号の通算対象期間を計算する場合には、船員保険法の規定によつて計算した期間に三分の四を乗じて得た期間によるものとし、同条第二項の通算対象期間を計算する場合には、その計算は、国民年金の被保険者期間の計算の例によるものとする。

2 通算老齢年金又は通算退職年金の支給に関し、二以上の通算対象期間を合算し、又は通算対象期間と国民年金の保険料免除期間とを合算する場合には、一年に満たない期間(市町村職員共済組合若しくは私立学校教職員共済組合の組合員又は農林漁業団体職員共済組合の組合員若しくは任意継続組合員であつた期間にあつては六箇月に満たない期間、船員保険の被保険者であつた期間にあつては前項の規定による乗算を行なわないで計算して一年に満たない期間とする。)は、算入しない。ただし、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算する場合においては、合算して一年以上となるときは、そのいずれか一方又は双方が一年に満たない場合においても、その一年に満たない保険料納付済期間又は保険料免除期間については、この限りでない。

3 通算老齢年金又は通算退職年金の支給に関し、二以上の通算対象期間を合算し、又は通算対象期間と国民年金の保険料免除期間とを合算する場合において、同一の月が同時に二以上の通算対象期間又は通算対象期間と国民年金の保険料免除期間との計算の基礎となつているときは、その月は、当該通算老齢年金又は通算退職年金の支給に関し最も有利となる一の期間についてのみ、その計算の基礎とする。


 (通算対象期間の確認等)

第七条 一の公的年金制度において他の公的年金制度に係る通算対象期間又は国民年金の保険料免除期間に基づいて通算老齢年金又は通算退職年金を支給すべき場合には、当該通算対象期間又は保険料免除期間については、当該他の公的年金制度における政府、組合その他の管掌機関(第四条第二項の通算対象期間については、国民年金の管掌者たる政府とし、以下単に「管掌機関」という。)の確認したところによる。

2 管掌機関は、前項の規定による確認を行なつたときは、これを当該被保険者若しくは組合員又は被保険者若しくは組合員であつた者に通知しなければならない。

3 被保険者若しくは組合員又は被保険者若しくは組合員であつた者は、通算老齢年金又は通算退職年金を請求するため必要があるときは、当該管掌機関に対し、第一項の規定による確認を請求することができる。

4 第一項の規定による確認に関する処分に不服がある者は、公的年金各法の定めるところにより、当該公的年金各法に定める審査機関に審査を請求することができるものとする。

第八条 一の公的年金制度において他の制度から老齢・退職年金給付を受けることができることを要件として通算老齢年金又は通算退職年金を支給すべき場合には、その支給は、当該老齢・退職年金給付を受ける権利についての裁定又は支給決定をまつて行なう。


 (通算老齢年金又は通算退職年金に関する処分についての不服の理由の制限)

第九条 一の公的年金制度において他の公的年金制度に係る通算対象期間又は国民年金の保険料免除期間に基づいて通算老齢年金又は通算退職年金を支給すべき場合には、当該通算対象期間又は保険料免除期間に係る第七条第一項の規定による確認に関する処分についての不服を、当該通算老齢年金又は通算退職年金に関する処分についての不服の理由とすることができない。

2 前項の規定は、一の公的年金制度において他の制度から老齢・退職年金給付を受けることができることを要件として通算老齢年金又は通算退職年金を支給すべき場合に準用する。この場合において、同項中「当該通算対象期間又は保険料免除期間に係る第七条第一項の規定による確認に関する処分」とあるのは、「当該老齢・退職年金給付に関する処分」と読み替えるものとする。


 (通算老齢年金又は通算退職年金の支払期月)

第十条 通算老齢年金又は通算退職年金は、公的年金各法の規定にかかわらず、毎年六月及び十二月の二期に、それぞれ前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、その支払期月でない月においても、支払うものとする。


 (未支給の通算老齢年金又は通算退職年金)

第十一条 通算老齢年金又は通算退職年金の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、公的年金各法の規定にかかわらず、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

2 前項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。

3 未支給の通算老齢年金又は通算退職年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。

4 未支給の通算老齢年金又は通算退職年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。


 (時効)

第十二条 通算老齢年金又は通算退職年金を受ける権利の消滅時効は、公的年金各法の規定にかかわらず、受給権者が公的年金制度の被保険者又は組合員若しくは農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員である期間は、進行しない。


 (支払)

第十三条 通算老齢年金又は通算退職年金の支払に関する事務は、公的年金各法の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、政令で定める者に行なわせることができる。

    附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行し、昭和三十六年四月一日から適用する。


 (通算対象期間に関する経過措置)

第二条 昭和三十六年四月一日において現に国民年金以外の公的年金制度の被保険者又は組合員若しくは農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員でなかつた者については、その者の同日前の厚生年金保険の被保険者期間(法令の規定により厚生年金保険の被保険者であつた期間とみなされる期間に係るものを含む。)又は船員保険の被保険者であつた期間は、第四条第一項の規定にかかわらず、通算対象期間としない。ただし、その者が同日以後国民年金以外の公的年金制度の被保険者若しくは組合員となり、又は国民年金の保険料納付済期間若しくは保険料免除期間を有するに至つたときは、この限りでない。

2 昭和三十六年四月一日前の第四条第一項第四号から第八号までに掲げる期間(法令の規定により当該組合の組合員であつた期間とみなされる期間に係るもの及び法令の規定により当該各号に掲げる期間に算入される期間を含む。)のうち、同日において同項第四号から第八号までに規定する組合の組合員又は農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員であつた者の同日まで引き続く当該組合の組合員期間又は組合員若しくは農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員であつた期間(法令の規定により当該組合の組合員であつた期間とみなされる期間に係るもの及び法令の規定によりこの期間に算入される期間を含む。)以外のものは、同項の規定にかかわらず、通算対象期間としない。

3 昭和三十六年四月一日前の第四条第二項に規定する期間及び明治四十四年四月一日以前に生まれた者(昭和三十六年四月一日において五十歳をこえる者)の同項に規定する期間は、同項の規定にかかわらず、通算対象期間としない。


 (未支給年金に関する経過措置)

第三条 この法律の施行前にさかのぼつて通算老齢年金又は通算退職年金の受給権を取得したこととなる者でこの法律の施行前に死亡したものに係る未支給の年金につき第十一条第三項の規定によりその年金を受けるべき遺族の順位を定める場合において、先順位者たるべき者(先順位者たるべき者が二人以上あるときは、そのすべての者)がこの法律の施行前に死亡しているときは、この法律の施行の際におけるその次順位者を当該未支給の年金を受けるべき遺族とする。


 (地方公務員等の取扱い)

第四条 地方公共団体の退職年金及び退職一時金に関する条例(以下「退職年金条例」という。)の適用を受ける地方公務員及び法令の規定により恩給法に定める公務員とみなされる地方公務員並びにその配偶者に関しては、当分の間、次条から附則第七条までに定めるところによる。

第五条 地方公共団体は、当該地方公共団体の退職年金条例について、当該条例の適用を受ける地方公務員であつた者で、その条例に定める退職年金を受けるに必要な資格期間を満たさなかつたものに対し、公的年金各法に定める通算退職年金制度に準じ、政令で定める基準に従い、通算退職年金その他の給付を行なうために必要な措置を講じなければならない。

2 地方公共団体が前項に規定する措置を講じた場合においては、当該退職年金条例及び当該条例に定める年金制度は、第三条の規定にかかわらず、それぞれ同条に定める公的年金各法及び公的年金制度とみなす。

3 前項の規定により退職年金条例が公的年金各法とみなされた場合には、当該条例の適用を受ける地方公務員の在職期間(退職年金条例の定めるところにより当該地方公務員の在職期間に通算される期間を含む。)で、その条例に基づく退職を支給事由とする給付の支給要件たる期間の計算の基礎となるものは、第四条第一項の規定にかかわらず、この法律及び公的年金各法において通算対象期間とする。ただし、地方公務員が退職した場合におけるその退職の日まで引き続く在職期間で、退職一時金(退職年金条例に定める恩給法第二条第一項に規定する一時恩給に相当する給付をいう。)の支給要件たる最短年限に達しないものについては、この限りでない。

4 昭和三十六年四月一日前の前項に定める地方公務員の在職期間のうち、同日において地方公務員であつた者の同日まで引き続く期間(退職年金条例の定めるところにより退職を支給事由とする給付に関しこの期間に合算される期間を含む。)以外のものは、前項の規定にかかわらず、通算対象期間としない。

第六条 法令の規定により恩給法に定める公務員とみなされる地方公務員に対する通算老齢年金又は通算退職年金の支給に関しては、同法及び同法に定める年金制度は、第三条の規定にかかわらず、それぞれ同条に定める公的年金各法及び公的年金制度とみなす。

2 前項に規定する地方公務員の在職期間で、恩給法に定める在職年に計算される期間は、第四条第一項の規定にかかわらず、この法律及び公的年金各法において通算対象期間とする。ただし、当該地方公務員が退職した場合におけるその退職の日まで引き続く在職期間で、三年に満たないものについては、この限りでない。

3 昭和三十六年四月一日前の前項に定める地方公務員の在職期間のうち、同日において当該地方公務員であつた者の同日まで引き続く期間以外のものは、同項の規定にかかわらず、通算対象期間としない。

4 第二項の通算対象期間に係る第七条第一項の規定による確認は、政令で定める地方公共団体が行なう。

5 地方公共団体は、政令で定める基準に従い、退職年金条例で、第一項に規定する地方公務員のうち政令で定める者が恩給法第六十七条第一項又は第七十条第一項の規定による一時恩給のうち政令で定める金額を当該地方公共団体に納付した場合に、その者に対し公的年金各法に定める通算退職年金制度に準じ、通算退職年金その他の給付を行なうために必要な措置を講じなければならない。

第七条 退職年金条例の適用を受ける地方公務員又は法令の規定により恩給法に定める公務員とみなされる地方公務員の配偶者であるため国民年金法第七条第二項の規定により国民年金の被保険者とされなかつた期間(同法附則第六条の規定により国民年金の被保険者となつた期間を除く。)がある者については、第四条第一項の規定にかかわらず、その被保険者とされなかつた期間もまた、通算対象期間とする。

2 前項の通算対象期間に係る第七条第一項の規定による確認は、国民年金の管掌者たる政府が行なう。

3 附則第二条第三項の規定は、第一項の期間について準用する。

(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設・自治大臣署名) 

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