繭糸価格安定法の一部を改正する法律

法律第十八号(昭三三・三・二五)

 繭糸価格安定法(昭和二十六年法律第三百十号)の一部を次のように改正する。

 第九条の二第一項中「農林大臣の指定する者」を「日本輸出生糸保管株式会社」に、「その者」を「当該会社」に改め、同条第三項中「第二条の規定による買入」を「第二条若しくは次条第一項の規定による買入、第十二条第一項の規定による買換」に改める。

 第九条の三第一項中「第二条の規定による買入」を「第二条、第九条の二第一項若しくは前条第一項の規定による買入、第十二条第一項の規定による買換」に、「前条第三項」を「第九条の二第三項」に改め、同条を第九条の四とし、第九条の二の次に次の一条を加える。

第九条の三 政府は、輸出適格生糸について、第二条若しくは前条第一項の規定による買入又は第二条の規定による売渡によつては防止することができない異常な価格の変動を防止して、その輸出価格を安定させるため必要があるときは、日本輸出生糸保管株式会社を相手方として、当該会社が農林大臣の定める条件で買い入れて保管する輸出適格生糸のうち、その買入後政令で定める期間を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができる。

2 前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定めるところにより、輸出適格生糸の最低価格にその保管に要する費用の額を加えて得た額を基準とし、海外における生糸及び主要繊維の市価並びに物価その他の経済事情を参しやくして、農林大臣が定める。

3 農林大臣は、日本輸出生糸保管株式会社のする輸出適格生糸の買入及び保管についての第一項の条件として、少くとも左の各号に掲げる事項を定めなければならない。

 一 日本輸出生糸保管株式会社は、当該契約に係る輸出適格生糸については、その保管数量が常時農林大臣の定める数量の範囲内となるように買入をすること。

 二 日本輸出生糸保管株式会社は、当該契約に係る輸出適格生糸を当該会社に売り渡す者との間に、当該生糸の保管期間中においては、その者の請求により、いつでも、当該生糸をその買入価格に相当する額にその保管に要する費用の額を加えて得た額で売りもどす旨の約定をすること。

4 第六条の規定は、第二項の場合に準用する。

 第十二条第一項中「又は新規の用途若しくは販路に向けるために売り渡す」を「新規の用途若しくは販路に向けるために売り渡し、又はその生糸と種類及び繊度を同じくする他の生糸に買い換える」に改め、同条第二項中「前項の場合」を「前項の規定により新規の用途又は販路に向けるために売り渡す場合」に改め、同条に次の一項を加える。

3 第一項の規定による買換のための売渡及び買入は、同時期に行わなければならない。

 第十二条の三各号列記以外の部分中「若しくは第九条の二」を「、第九条の二第一項若しくは第九条の三第一項」に、「又は第十一条第一項」を「、第十一条第一項」に改め、「繭の買入の契約」の下に「又は第十二条第一項の規定による買換のための生糸の買入の契約」を加え、同条第三号中「第九条の二」を「第九条の二第一項」に改め、同条中第六号を第八号とし、第五号を第六号とし、同号の次に次の一号を加える。

 七 第十二条第一項の規定による買換のための生糸の買入契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)

 第十二条の三中第四号を第五号とし、第三号の次に次の一号を加える。

 四 第九条の三第一項の規定による生糸の買入契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)

 第十四条第三項中「関係人の要求があるときは、」を「関係人に」に改め、同条の次に次の十三条を加える。

 (日本輸出生糸保管株式会社の目的)

第十四条の二 日本輸出生糸保管株式会社(以下「会社」という。)は、輸出適格生糸の価格の異常な変動の防止に寄与するため、輸出適格生糸の買入、保管及び売渡の事業を営むことを目的とする株式会社とする。

 (株式)

第十四条の三 会社の株式は、額面株式とする。

2 会社の株式は、記名株式とする。

 (政府の出資)

第十四条の四 政府は、予算の範囲内において、会社に対して出資することができる。

 (商号の使用制限)

第十四条の五 会社以外の者は、その商号中に日本輸出生糸保管株式会社という文字を使用してはならない。

 (取締役及び監査役の選任等の決議)

第十四条の六 会社の取締役、代表取締役及び監査役の選任、選定及び解任の決議は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (代表取締役の兼職制限)

第十四条の七 会社の代表取締役は、他の報酬のある職務又は営業に従事してはならない。ただし、農林大臣の承認を受けたときは、この限りでない。

 (事業の範囲)

第十四条の八 会社は、その目的を達成するため、左の事業を営むものとする。

 一 第九条の二第一項又は第九条の三第一項の規定により契約を締結し、これに基いて輸出適格生糸の買入及び保管を行い、並びに当該契約に係る輸出適格生糸の売渡を行うこと。

 二 前号の事業に附帯する事業

 三 前二号に掲げるものの外、会社の目的を達成するため必要な事業

2 会社は、前項第三号に掲げる事業を営もうとするときは、農林大臣の認可を受けなければならない。

 (社債の募集及び資金の借入)

第十四条の九 会社は、社債を募集し、又は弁済期限が一年をこえる資金を借り入れようとするときは、農林大臣の認可を受けなければならない。

 (定款の変更等)

第十四条の十 会社の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (財産目録等の提出)

第十四条の十一 会社は、毎営業年度終了後二月以内に、その営業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書を農林大臣に提出しなければならない。

 (監督)

第十四条の十二 会社は、農林大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。

2 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (協議)

第十四条の十三 農林大臣は、第十四条の九又は第十四条の十の認可(会社の定款の変更の決議についての第十四条の十の認可については、会社が発行する株式の総数を変更するものに限る。)をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

 (報告及び検査)

第十四条の十四 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社からその業務若しくは経理の状況に関する報告を徴し、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、業務若しくは経理の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 第十四条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

 第十八条第二号中「第十四条第一項」の下に「若しくは第十四条の十四第一項」を加え、「同条第二項」を「第十四条第二項若しくは第十四条の十四第一項」に改める。

 第十九条の次に次の三条を加える。

第二十条 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした会社の取締役は、三十万円以下の過料に処する。

 一 第十四条の九の規定に違反して、社債を募集し、又は資金を借り入れたとき。

 二 第十四条の十一の規定に違反して財産目録、貸借対照表若しくは損益計算書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。

 三 第十四条の十二第二項の規定による命令に違反したとき。

第二十一条 第十四条の八第二項の規定に違反した場合には、その違反行為をした会社の取締役は、五万円以下の過料に処する。

第二十二条 第十四条の五の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第九条の二第一項の改正規定は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。


 (日本輸出生糸保管株式会社の設立)

第二条 農林大臣は、設立委員を命じ、日本輸出生糸保管株式会社(以下「会社」という。)の設立に関して発起人の職務を行わせる。

第三条 設立委員は、定款を作成して、農林大臣の認可を受けなければならない。

2 農林大臣は、前項の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

第四条 政府は、会社の設立に際し、三千万円に相当する株式を額面価額で引き受けるものとする。

第五条 昭和三十年十二月七日に設立された日本輸出生糸保管株式会社(以下「旧会社」という。)は、この法律の施行後二月以内に商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百四十三条(定款変更の決議方法)に規定する株主総会の決議を得て、会社の設立に際し、会社に対してその営業の全部を出資することができる。

2 商法第二百四十五条ノ二本文、第二百四十五条ノ三及び第二百四十五条ノ四(反対株主の株式買取請求)の規定は、前項の場合に準用する。

第六条 旧会社が前条第一項の規定による出資をする場合においては、旧会社の株主は、その所有する株式の数に比例して、会社の株式引受人となる。

第七条 前条の規定により引き受けることとなる会社の株式に一株に満たないものがある者の所有する旧会社の株式については、設立委員は、商法第三百七十九条第一項(端株に関する処置)に規定する処分をすることができる。

第八条 附則第五条第二項において準用する商法第二百四十五条ノ二本文の規定により旧会社の株式の買取の請求をした者が会社の成立後当該株式の代金の支払を受けたときは、その者の有する会社の株式は、会社に移転する。

第九条 附則第五条第一項の規定により旧会社が出資する営業の価格は、臨時に農林省に置く評価審査会が決定する。

2 前項の評価審査会は、委員五人をもつて組織する。

3 前二項に定めるもののほか、第一項の評価審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、農林省令で定める。

第十条 旧会社は、附則第五条第一項の規定による出資をする場合においては、会社の成立の時において、解散するものとし、その権利及び義務は、会社に承継されるものとする。この場合においては、商法第百七十七条第三項(現物出資の給付)の規定は、適用しない。

第十一条 前条の場合において、旧会社の株式を目的とする質権は、附則第六条の規定により旧会社の株主が受けるべき株式又は附則第七条の処分により旧会社の株主に交付すべき金銭の上に存在する。

2 商法第二百九条第四項(質権者の株券の引渡請求)の規定は、前項の質権について準用する。

第十二条 会社の株式申込証には、商法第百七十五条第二項第一号(株式申込証の記載事項)に掲げる事項に代えて、附則第三条第一項の定款の認可の年月日を記載しなければならない。

第十三条 附則第四条及び附則第六条の規定により政府及び旧会社の株主が会社の設立に際して発行する株式の総数を引き受けた場合においても、会社の設立は、募集設立に関する商法の規定によるものとする。

第十四条 商法第百六十七条(定款の認証)、第百八十一条(検査役の調査)及び第百八十五条(変態設立事項の変更)の規定は、会社の設立については、適用しない。

第十五条 会社が設立の登記を受ける場合における登録税は、免除する。ただし、資本の金額のうち政府の出資及び附則第五条第一項の規定による出資に係る部分に限る。

第十六条 附則第二条から前条までに規定するもののほか、会社の設立及び旧会社の解散に関し必要な事項は、政令で定める。

第十七条 附則第十条の規定により旧会社が解散する場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。


 (商号についての経過規定)

第十八条 繭糸価格安定法第十四条の五の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に日本輸出生糸保管株式会社という文字を使用している者については、この法律の施行後六月間は、適用しない。


 (租税特別措置法の改正)

第十九条 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。

  第八十四条第一項中「及び東北開発株式会社」を「、東北開発株式会社及び日本輸出生糸保管株式会社」に改める。

(法務・大蔵・農林・内閣総理大臣署名) 

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