未帰還者留守家族等援護法

法律第百六十一号(昭二八・八・一)

目次

 第一章 総則(第一条―第四条)

 第二章 援護(第五条―第二十八条)

 第三章 調査究明及び未帰還者の帰還促進(第二十九条)

 第四章 雑則(第三十条―第三十六条)

 附則

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、国の責任において、その留守家族に対して手当を支給するとともに、未帰還者が帰還した場合において必要な療養の給付等を行い、もつてこれらの者を援護することを目的とする。

 (未帰還者)

第二条 この法律において「未帰還者」とは、左の各号に掲げる者であつて、日本の国籍を有するものをいう。

 一 もとの陸海軍に属していた者(もとの陸海軍から俸給、給料又はこれに相当する給与を受けていなかつた者を除く。)であつて、まだ復員していないもの(以下「未復員者」という。)

 二 未復員者以外の者であつて、昭和二十年八月九日以後ソビエト社会主義共和国連邦、樺太、千島、北緯三十八度以北の朝鮮、関東州、満洲又は中国本土の地域内において生存していたと認められる資料があり、且つ、まだ帰還していないもの(自己の意思により帰還しないと認められる者及び昭和二十年九月二日以後において、自己の意思により本邦に在つた者を除く。)

2 日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁されている者及び同条に掲げる裁判により本邦以外の地域において拘禁されていた者であつて、その拘禁を解かれまだ帰還していないものは、この法律の適用については、未帰還者とみなす。但し、日本の国籍を有しない者は、この限りでない。

 (帰還)

第三条 この法律において「帰還」とは、本邦以外の地域から居住の目的をもつて、本邦に帰ることをいう。

2 前条第二項の規定により未帰還者とみなされる者であつて、本邦において拘禁されているものが、その拘禁を解かれたときは、帰還したものとみなす。

 (留守家族)

第四条 この法律において「留守家族」とは、未帰還者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫及び祖父母であつて、本邦に住所又は居所を有するものをいう。

2 留守家族は、当該未帰還者が死亡していたことが後に判明した場合においても、その死亡の日にさかのぼつて留守家族でなかつたものとして取り扱われることはない。

   第二章 援護

 (留守家族手当の支給)

第五条 未帰還者の留守家族には、留守家族手当を支給する。

2 留守家族手当の支給は、これを受けようとする者の申請に基いて行う。

 (留守家族の順位)

第六条 留守家族手当の支給を受けることができる留守家族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順序とし、父母については、養父母は実父母に、祖父母については、養父母の父母は実父母の父母に、父母の養父母は父母の実父母に、それぞれ先だつものとする。

2 先順位者たるべき者が、次順位者たるべき者より後に生ずるに至つたときは、前項の規定は、当該次順位者が留守家族手当の支給を受けることができなくなつた後に限り、適用する。

 (留守家族手当の支給条件)

第七条 留守家族手当は、未帰還者が帰還しているとすれば、留守家族が主としてその者の収入によつて生計を維持していると認められる場合であつて、且つ、夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫又は祖父母については、これらの者がそれぞれ左の各号に規定する条件に該当する場合に支給する。

 一 夫については、不具廃疾であること。

 二 子については、十八歳未満であること、又は不具廃疾であること。

 三 父母については、六十歳以上であること、不具廃疾であること、又は配偶者がなく、且つ、その者を扶養することができる直系血族がないこと。

 四 孫については、十八歳未満であること、又は不具廃疾であること。

 五 祖父母については、六十歳以上であること、又は不具廃疾であること。

 (留守家族手当の額)

第八条 留守家族手当の月額は、二千三百円(昭和二十八年十二月三十一日までは二千百円)とする。但し、前条の規定に該当する留守家族が二人以上ある場合においては、二千三百円(昭和二十八年十二月三十一日までは二千百円)にこれらの留守家族のうち一人を除いた者一人につき四百円を加えた額とする。

 (同順位者数人ある場合の支給の申請)

第九条 留守家族手当の支給を受けるべき同順位の者が二人以上あるときは、これらの者は、同順位者全員のために、そのうち一人を選定して留守家族手当の支給の申請をしなければならない。

 (留守家族手当の支給方法)

第十条 留守家族手当は、毎月、その月分を支払うものとする。

 (支給の始期及び終期等)

第十一条 留守家族手当の支給は、留守家族が、留守家族手当の支給の申請をした日の属する月の翌月(留守家族手当の支給を受けていた留守家族が、留守家族手当の支給を受けることができなくなつたことにより、次順位者に転給する場合においては、当該転給の原因たる事由が生じた日の属する月の翌月)から始め、左の各号の一に該当するに至つた日の属する月で終る。

 一 未帰還者が帰還したとき。

 二 厚生大臣によつて未帰還者が自己の意思により帰還しないものと認められたとき。

 三 未帰還者の死亡の事実が判明するに至つたとき。

 四 前各号のほか、留守家族手当の支給を受けていた留守家族が、留守家族手当の支給を受けることができなくなつたとき。

2 留守家族手当の支給を受けている留守家族は、未帰還者が死亡したものと確認するに足りる資料を得た場合又は左に掲げる事実を知るに至つた場合には、厚生省令で定める場合を除き、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 一 未帰還者が帰還したこと。

 二 未帰還者が自己の意思により帰還しない状態にあること。

3 前項第一号に規定する事実について届出があつた場合においては、未帰還者が帰還した日の属する月の翌月以後、当該留守家族がその事実を知るに至つた日までに、すでに支給した留守家族手当は、国庫に返還させないことができる。

4 第一項第二号又は第三号の規定により留守家族手当の支給を終えた場合において、その支給の終了前に当該留守家族が第二項に規定する資料を得、又は同項第二号に掲げる事実を知つていたものであるときは、その資料を得、又はその事実を知るに至つた日の属する月の翌月以後すでに支給した留守家族手当は、国庫に返還させることができる。

 (留守家族手当の額の改定)

第十二条 留守家族手当の支給を受けている留守家族につき、新たに第八条但書の規定により加給すべき留守家族があるに至つた場合における留守家族手当の額の改定は、当該留守家族手当の支給を受けている留守家族の申請により、当該申請のあつた日の属する月の翌月(当該加給の原因となつた事由の生じた日から一箇月以内に申請があつた場合においては、当該事由の生じた日の属する月の翌月)から行う。

2 留守家族手当の支給を受けている留守家族につき、加給の原因となつた留守家族がなくなつた場合又はその数が減じた場合における留守家族手当の額の改定は、当該事由が生じた日の属する月の翌月から行う。

 (留守家族手当の支給をしない場合)

第十三条 この法律の施行後三年を経過した日以後においては、過去七年以内に生存していたと認めるに足りる資料がない未帰還者の留守家族には、留守家族手当を支給しない。

 (恩給法との調整)

第十四条 未帰還者に関し、恩給法(大正十二年法律第四十八号)の規定による普通恩給(地方公共団体において支給するこれに相当する給付を含む。)を受ける権利につき裁定があつた場合においては、当該未帰還者の留守家族には、当該普通恩給の支給額の限度において、留守家族手当を支給しない。

 (帰郷旅費)

第十五条 未帰還者が帰還したときは、厚生省令の定めるところにより、帰郷旅費として、一人につき千円から三千円まで(十八歳未満の者については、五百円から千五百円まで)を支給する。

 (遺骨埋葬経費)

第十六条 未帰還者のうち、未復員者、ソビエト社会主義共和国連邦の地域内の未復員者と同様の実情にある者又は第二条第二項の規定により未帰還者とみなされる者につき、その者の死亡の事実が判明するに至つた場合においては、遺骨の埋葬に要する経費として、その遺族(遺族がない場合においては、葬祭を行う者)に対し、その者の申請により死亡者一人につき三千円を支給する。但し、本邦に住所又は居所を有しない者には、支給しない。

2 前項に規定する遺族の範囲は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とし、その順位は、葬祭を行う遺族があるときはその者を先にし、その者がないときは配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序による。

 (遺骨引取経費)

第十七条 前条第一項に規定する者につき、その者の死亡の事実が判明するに至つた場合においては、遺骨の引取に要する経費として、その遺族に対し、その者の申請により、死亡者一人につき二千七百円を支給する。但し、本邦の住所又は居所を有しない者には、支給しない。

2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。

 (療養の給付)

第十八条 厚生大臣は、第十六条第一項に規定する者が自己の責に帰することのできない事由により負傷し、又は疾病にかかり、帰還後療養を要する場合においては、帰還後三年を限り、その者の申請により、必要な療養の給付を行う。

2 前項の療養の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が同項の規定に該当する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。

3 厚生大臣は、第一項の規定による療養の給付を受けている者が、同項の期間を経過する日において、なお、引き続き療養を要する場合においては、その期間の経過後においても、さらに三年間、その者の申請により、必要な療養の給付を行うことができる。

4 第二項の規定は、前項の場合に準用する。

 (療養の給付の範囲)

第十九条 療養の給付の範囲は、左の通りとする。

 一 診察

 二 薬剤又は治療材料の支給

 三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術

 四 病院又は診療所への収容

 五 看護

 六 移送

 (療養の給付の機関)

第二十条 療養の給付は、厚生大臣の指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)において、行うものとする。

2 前項の規定により指定医療機関へ収容して療養の給付を行う場合において、収容された者が恩給法の規定による増加恩給、傷病年金若しくは傷病賜金又は戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号。以下「遺族援護法」という。)の規定による障害年金を受ける権利を有するとき(傷病賜金については、その支給を受けた場合を含む。)は、政令で定めるところにより、その者からその者に係る収容中の実費の一部に相当する額を一部負担金として徴収するものとする。

 (診療方針及び診療報酬)

第二十一条 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例によるものとする。

2 前項に規定する診療方針及び診療報酬によることができないとき、及びこれによることが適当でないときの診療方針及び診療報酬は、厚生大臣の定めるところによる。

 (医療費の審査)

第二十二条 厚生大臣は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、且つ、指定医療機関が前条の規定によつて請求することのできる診療報酬の額を決定することができる。

2 指定医療機関は、厚生大臣の行う前項の決定に従わなければならない。

3 厚生大臣は、第一項の規定により指定医療機関が請求することのできる診療報酬の額を決定するにあたつては、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会の意見をきかなければならない。

 (報告の請求及び検査)

第二十三条 厚生大臣は、前条第一項の審査のため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして、指定医療機関について、その管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。

2 指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく、前項の報告の求に応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生大臣は、当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。

 (療養費の支給)

第二十四条 厚生大臣は、第十八条の規定により療養の給付を受けることができる者が、緊急その他やむを得ない事由のため、指定医療機関以外の医療機関から療養を受けた場合において、その必要があると認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給することができる。

2 療養費の額は、療養に要する費用(療養費の支給を受けるべき者が医療機関に収容されて療養を受けた場合であつて、且つ、その者が恩給法の規定による増加恩給、傷病年金若しくは傷病賜金又は遺族援護法の規定による障害年金を受ける権利を有するとき(傷病賜金については、その支給を受けた場合を含む。)は療養に要する費用から第二十条第二項の例により算定した一部負担金に相当する額を控除した額)を基準として、厚生大臣が定める。

3 療養に要する費用の額は、指定医療機関が請求することができる診療報酬の額の例による。

 (療養中の死亡者)

第二十五条 第十八条の規定により療養の給付(前条の規定による療養費の支給を含む。以下同じ。)を受けている者が、当該負傷又は疾病につき療養を受けている間に死亡した場合においては、第十六条の規定を準用する。

 (障害一時金)

第二十六条 第十六条第一項に規定する者が、自己の責に帰することのできない事由により負傷し、又は疾病にかかり、帰還の際なおつている場合、帰還後三年(療養の給付を受ける者については、その受けることのできる期間)以内になおつた場合又はなおらないがその期間を経過した場合において、別表中欄に掲げる程度の障害の状態にあるときは、その程度に応じ、その者の申請により、障害一時金として、同表下欄に定める金額を支給する。

 (再給付等の禁止)

第二十七条 障害一時金の支給を受けた者には、同一の事由については、以後療養の給付を行わず、また、重ねて障害一時金を支給しない。

2 同一の事由について、他の法令の規定により障害一時金に相当する給付を受けることができる者には、この法律による療養の給付を行わず、又は障害一時金を支給しない。但し、厚生大臣が必要があると認める場合においては、療養の給付を行うことができる。

3 同一の事由について、他の法令の規定により療養の給付に相当する給付を受けている者には、この法律による療養の給付を行わない。

 (報告の請求)

第二十八条 厚生大臣は、療養の給付及び障害一時金の支給(以下「療養の給付等」という。)に関して必要があると認めるときは、療養の給付等を受ける者その他の関係者に対し、必要な報告を求めることができる。

   第三章 調査究明及び未帰還者の帰還促進

 (調査究明及び帰還促進)

第二十九条 国は、未帰還者の状況について調査究明をするとともに、その帰還の促進に努めなければならない。

   第四章 雑則

 (時効)

第三十条 療養の給付等を受ける権利は、これらの給付事由の生じた日から二年間行わないときは、時効によつて消滅する。

 (譲渡等の禁止)

第三十一条 この法律により援護を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

 (非課税)

第三十二条 この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課することができない。

2 援護に関する書類には、印紙税を課さない。

 (本邦)

第三十三条 この法律において「本邦」には、北緯二十九度以南の南西諸島を含むものとする。

 (権限又は事務の委任)

第三十四条 この法律の施行に関する厚生大臣の権限又は権限に属する事務であつて、政令で定めるものは、政令で定めるところにより、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)に規定する行政機関の長、都道府県知事その他政令で定める者に委任することができる。

 (省令への委任)

第三十五条 この法律に特別の規定がある場合を除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。

 (罰則)

第三十六条 第二十八条の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、昭和二十八年八月一日から施行する。

 (未復員者給与法等の廃止)

2 未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号。以下「旧法」という。)及び特別未帰還者給与法(昭和二十三年法律第二百七十九号)は、廃止する。

 (一般職の職員の給与に関する法律の一部改正)

3 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号。以下「公務員給与法」という。)の一部を次のように改正する。

  附則第三項に次の但書を加える。

   但し、その者が帰還するまでの間は、給与を支給しない。

 (申請主義の特例)

4 この法律の施行の際、現に旧法(特別未帰還者給与法第二条において準用する場合を含む。以下同じ。)又は従前の公務員給与法附則第三項(他の法令において準用し、又は例による場合を含む。以下同じ。)の規定により、俸給又は扶養手当(以下単に「俸給」という。)の支払を受けている者で、この法律の規定により留守家族手当の支給を受けることができるものに対しては、第五条第二項の申請を要しないで、昭和二十八年八月分から留守家族手当を支給する。

 (留守家族手当の始期の特例)

5 この法律の施行後昭和二十八年九月三十日までの間に、留守家族が第七条の規定に該当するに至つた場合において、当該留守家族が、同年十月三十一日までの間に、留守家族手当の支給の申請をしたときは、当該留守家族に対する留守家族手当の支給の始期は、第十一条第一項の規定にかかわらず、当該留守家族が第七条の規定に該当するに至つた日の属する月の翌月とする。

6 この法律の施行後本邦に帰つたことにより留守家族となつた者が、本邦に帰つた日から起算して二箇月以内に第七条の規定に該当するに至つた場合において、本邦に帰つた日から起算して三箇月以内に留守家族手当の支給の申請をしたときも、前項と同様とする。

 (順位の特例)

7 この法律の施行の際、現に旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定により俸給の支払を受けている者が、第七条の規定に該当する留守家族である場合には、その者が後順位者である場合においても、その者を先順位者とみなして、その者及び第六条第一項の規定によりその者と同順位にある者に、留守家族手当を支給する。

8 附則第四項の規定は、前項の者について準用する。

 (特別手当)

9 この法律の施行の際、現に旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定により俸給の支払を受けている者が、この法律による留守家族手当の支給を受けることができない場合には、その者及び従前の例によりその者と同順位にある者に対して、昭和二十八年八月以降、毎月、その俸給の額に相当する額の特別手当を支給する。但し、当該未帰還者につき、他にこの法律による留守家族手当の支給を受けることができる留守家族がある場合には、留守家族手当の支給を受けることができる留守家族がなくなるまでの間、特別手当を支給しない。

10 この法律の施行後留守家族手当の支給を受けることができる留守家族がなくなつた場合において、他に従前の例による扶養親族たる資格を有する者(この法律の施行後その資格を有するに至つた者を除く。)があるときは、その者に対して、その日の属する月の翌月以降、毎月、従前の例により計算した俸給の額に相当する額の特別手当を支給する。

11 前項の場合において、従前の例による扶養親族たる資格を有する者が二人以上であるときは、特別手当は、同項の規定にかかわらず、従前の例による順位により先順位にある者に支給するものとし、同順位者が数人あるときは、その全員に対して支給するものとする。

12 従前の扶養手当の計算の基礎となつた扶養親族のうち、この法律の施行後死亡し、又は従前の例による扶養親族たる資格を欠く者があるに至つたときは、その日の属する月の翌月から特別手当の額を改定するものとし、改定後の額については、従前の例による。

13 第十三条及び第十四条の規定は、特別手当について準用する。

14 特別手当は、当該未帰還者につき、この法律の規定による留守家族手当の支給を受けることができる留守家族があるに至つた場合には、その日の属する月の翌月以降、留守家族手当の支給を受けることができる留守家族がなくなるまでの間、支給しない。

 (額の特例)

15 附則第九項但書又は前項に規定する場合に支給する留守家族手当の額は、第八条の規定にかかわらず、同条に規定する額に、従前の例による扶養親族たる資格を有する者(この法律の施行後その資格を有するに至つた者及び第七条の規定に該当する者を除く。)一人につき四百円を加えた額とする。

16 前項の規定は、この法律の施行の際現に旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定により俸給の支払を受けている者に支給する留守家族手当の額について準用する。

 (差額支給)

17 従前の公務員給与法附則第三項の規定による未帰還職員につき、この法律の規定により支給する留守家族手当について、附則第十五項(前項において準用する場合を含む。)又は第八条に規定する額が、左に掲げる額より少額であるときは、その差額を留守家族手当に加えて支給する。

 一 第二号に規定する留守家族手当以外の留守家族手当については、この法律の施行の際現に旧法及び従前の公務員給与法附則第三項の規定によつて支給している俸給の額

 二 附則第十四項に規定する場合に支給する留守家族手当については、その支給をはじめた際支給していた特別手当の額

18 前項各号に規定する額は、これらの額の計算の基礎となつた扶養親族のうち、留守家族手当の支給開始後死亡し、又は従前の例による扶養親族たる資格を欠く者があるに至つたときは、その日の属する月の翌月から減額するものとし、減ずべき額については、従前の例による。

 (扶養手当の額の改訂)

19 昭和二十八年四月から七月までの間において、旧法の規定により扶養手当の支払を受けた者(未帰還職員に関し、従前の公務員給与法附則第三項の規定により俸給の支払を受けていた者を除く。)に対しては、その者に支払われた同年四月分から七月分までの扶養手当を左の各号に定めるところにより算定した場合の総額からこれらの月分としてすでに支払つた扶養手当の総額を控除した額をとりまとめて支給するものとする。

 一 扶養手当の支給の原因となつた者のうちに妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)及び子があるときは、旧法の規定による扶養手当の月額に三百円を加えた額を扶養手当の月額とする。

 二 前号の場合を除き、扶養手当の支給の原因となつた者のうちに妻又は子があるときは、旧法の規定による扶養手当の月額に五百円を加えた額を扶養手当の月額とする。

 三 前二号の場合を除き、扶養手当の支給の原因となつた者のうちに第七条の規定に該当する留守家族に相当する者があるときは、旧法の規定による扶養手当の月額に七百円を加えた額を扶養手当の月額とする。

 (未支給の給与)

20 旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定による給与であつて、この法律の施行の際まだ支給していないものについては、なお、従前の例による。

 (俸給の返還をさせない場合)

21 旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定により、俸給の支給を受けていた者が、すでに死亡し、又は未復員者、特別未帰還者若しくは未帰還職員でなくなつていたことが判明した場合には、その者が死亡し、又は未復員者、特別未帰還者若しくは未帰還職員でなくなつた日以降の分として、その事実が判明した日までの間に、すでに支給された俸給は、国庫に返還させないことができる。

 (療養の給付)

22 第十八条第一項の規定は、この法律の施行前に帰還した未帰還者についても、適用する。但し、その者が療養の給付を受けることができる期間については、従前の例による。

23 この法律の施行前に、旧法第八条の二第一項若しくは未復員者給与法の一部を改正する法律(昭和二十三年法律第二百七十七号。以下「旧法中改正法」という。)附則第二条第一項又は旧法第八条の二第二項(旧法中改正法附則第二条第二項において準用する場合を含む。)の規定によつて、厚生大臣が療養を要するものと認めた負傷又は疾病については、それぞれ第十八条第二項又は同条第四項において準用する同条第二項の規定による厚生大臣の認定があつたものとみなす。

 (指定医療機関)

24 この法律の施行前に、旧法の規定により厚生大臣の指定した医療機関は、この法律の規定により厚生大臣が指定した医療機関とみなす。

 (指定医療機関以外の医療機関から受けた療養)

25 第二十四条第一項の規定は、この法律の施行前に指定医療機関以外の医療機関から療養を受けた者についても、適用する。

 (再給付の禁止)

26 この法律の施行前、他の法令の規定によりこの法律による障害一時金に相当する給付を受けた者には、同一の事由について、この法律による療養を行わず、又は障害一時金を支給しない。但し、厚生大臣が必要があると認める場合においては、療養の給付を行うことができる。

 (実績の保障)

27 この法律の施行の際、現に旧法の規定による給与の支給を受けている者で、第二条に規定する未帰還者でないものは、当分の間、第十六条第一項に規定する未帰還者とみなして、その者及びその留守家族に対し、この法律による援護を行うことができる。

28 前項の者が、本邦以外の地域から本邦に入国したとき(日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により本邦以外の地域において拘禁され、拘禁のまま本邦に入国したときを除く。)は、この法律の適用については、その者が帰還したものとみなす。前項に掲げる者で、日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により本邦において拘禁されていたものが、拘禁を解かれたときも、同様とする。

 (恩給法との調整)

29 未帰還者が恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第三十条第一項の規定により退職したものとみなされ、同条第二項但書の規定により普通恩給の給与が行われる場合において、当該未帰還者に関し、その退職したものとみなされた日の属する月の翌月分以降、当該普通恩給を受ける権利につき裁定のあつた日の属する月までの分として、留守家族手当又は特別手当が支給されたときは、その支給された額は、政令で定めるところにより、当該普通恩給の内払とみなす。

 (陸軍刑法を廃止する等の政令第七条の改正)

30 陸軍刑法を廃止する等の政令(昭和二十二年政令第五十二号)第七条を次のように改める。

 第七条 もとの陸海軍に属していた者であつて、まだ復員していないものは、復員するまでの間、なお、従前の未復員者としての身分を有するものとする。

 2 前項の未復員者が帰還し、又は自己の意思により帰還しないと認められるときは、厚生大臣は、その者の復員に関して必要な手続をとらなければならない。

 (厚生省設置法の一部改正)

31 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二項第二号中「戦没者遺族等」を「戦没者遺族、未帰還者留守家族等」に改める。

  第五条第六十四号を次のように改める。

  六十四 未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)の定めるところにより、留守家族手当の額を改定し、及び療養の給付の必要の有無を認定すること。

  第十四条の二第八号中「前三号」を「前二号」に改め、同条中第七号を削り、第六号を第七号とし、第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。

  五 未帰還者留守家族等援護法を施行すること。

  第三十九条の五第一項中「第十四条の二第五号、第六号及び第八号」を「第十四条の二第六号から第八号まで」に改める。

  第三十九条の六第二項の表中「広島県船越町」を「広島市」に改める。

  第三十九条の八中「第十四条の二第五号」を「第十四条の二第六号」に改める。

 (引揚援護庁設置令の一部改正)

32 引揚援護庁設置令(昭和二十三年政令第百二十四号)の一部を次のように改正する。

 第二条第二号を次のように改める。

  二 戦傷病者、戦没者遺族等の援護及び未帰還者留守家族等の援護に関する事務を行うこと

  第五条に次の二号を加える。

  八 未帰還者留守家族等の援護に関する調査企画の事務を行うこと

  九 未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)に基く援護の実施に関する事務を行うこと

  第六条中第三号を削り、第三号の二を第三号とする。

 (結核予防法の一部改正)

33 結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。

  第三十四条第一項但書中「未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号)又は特別未帰還者給与法(昭和二十三年法律第二百七十九号)」を「未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)」に改める。

  第三十五条但書中「未復員者給与法又は特別未帰還者給与法」を「未帰還者留守家族等援護法」に改める。

 (社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)

34 社会保険診療報酬支払基金法の一部を次のように改正する。

  第十三条第二項中「又は戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)第十九条第三項」を「、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)第十九条第三項又は未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)第二十二条第三項」に改める。

 (地方自治法の一部改正)

35 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。

  附則第十条第一項中「、その家族等に対する俸給その他の給与に関する事務」及び「並びに特別未帰還者給与法(昭和二十三年法律第二百七十九号)の施行に関する事務」を削る。

 (地方税法の一部改正)

36 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条第六号を次のように改める。

  六 未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)の規定により支給を受ける金品

  第六百七十二条第六号を次のように改める。

  六 未帰還者留守家族等援護法の規定により支給を受ける金品

  第七百四十四条第十一項及び第七百七十七条第四項中「特別未帰還者給与法」を「特別未帰還者給与法、未帰還者留守家族等援護法」に改める。

 (国家公務員災害補償法の一部改正)

37 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「、未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号)に規定する未復員者である職員及び特別未帰還者給与法(昭和二十三年法律第二百七十九号)に規定する特別未帰還者である職員」を「及び未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)第十六条第一項に規定する未帰還者である職員」に改める。

 (戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正)

38 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を次のように改正する。

  第七条第一項第二号中「未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号)第八条の二又は未復員者給与法の一部を改正する法律(昭和二十三年法律第二百七十七号)附則第二条」を「未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)第十八条」に改める。

  第十二条中「又は未復員者給与法」を「若しくは旧未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号)又は未帰還者留守家族等援護法」に改める。

  第二十九条の次に次の一条を加える。

  (遺族年金支給の特例)

 第二十九条の二 軍人軍属又は軍人軍属であつた者の死亡の事実が判明しなかつたため、その親族に対して未帰還者留守家族等援護法第五条の規定による留守家族手当又は同法附則第九項若しくは第十項の規定による特別手当が支給されていた場合においては、当該軍人軍属又は軍人軍属であつた者の遺族に支給すべき遺族年金は、当該留守家族手当又は特別手当が支給されていた期間に係る分は、支給しない。

  第三十四条第三項中「特別未帰還者給与法」を「旧特別未帰還者給与法」に改める。

 (戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関する経過規定)

39 昭和二十七年四月一日以後この法律の施行前に旧法第八条の二又は旧法中改正法附則第二条の規定により療養を受けることができた者であつて、同期間内に負傷又は疾病がなおつたもの又はこれらの規定により療養を受けることができる期間を経過したものに関する不具廃疾の程度の認定及びその者に支給する障害年金の始期については、従前の例による。

別表

障害の程度

障害の状態

金額

第一級

 一 両眼が失明したもの

 二 咀嚼及び言語の機能を廃したもの

 三 精神に著しい障害を残し常に介護を要するもの

 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し常に介護を要するもの

 五 半身不随となつたもの

 六 両上肢をひじ関節以上で失つたもの

 七 両上肢の用を全廃したもの

 八 両下肢をひざ関節以上で失つたもの

 九 両下肢の用を全廃したもの

三八、〇〇〇円

第二級

 一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇二以下に減じたもの

 二 両眼の視力が〇・〇二以下に減じたもの

 三 両上肢を腕関節以上で失つたもの

 四 両下肢を足関節以上で失つたもの

三四、〇〇〇円

第三級

 一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇六以下に減じたもの

 二 咀嚼又は言語の機能を廃したもの

 三 精神に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの

 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの

 五 十指を失つたもの

三〇、〇〇〇円

第四級

 一 両眼の視力が〇・〇六以下に減じたもの

 二 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

 三 鼓膜の全部の欠損その他により両耳の聴力を全く失つたもの

 四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの

 五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの

 六 十指の用を廃したもの

 七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの

二七、〇〇〇円

第五級

 一 一眼が失明し他眼の視力が〇・一以下に減じたもの

 二 一上肢を腕関節以上で失つたもの

 三 一下肢を足関節以上で失つたもの

 四 一上肢の用を全廃したもの

 五 一下肢の用を全廃したもの

 六 両足の指を全部失つたもの

二四、〇〇〇円

第六級

 一 両眼の視力が〇・一以下に減じたもの

 二 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

 三 鼓膜の大部分の欠損その他により両耳の聴力が耳殻に接しなければ大声を解することができないもの

 四 脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの

 五 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

 六 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

 七 一手の五指又はおや指及びひとさし指をあわせ四指を失つたもの

二一、〇〇〇円

第七級

 一 一眼が失明し他眼の視力が〇・六以下に減じたもの

 二 鼓膜の中等度の欠損その他により両耳の聴力が四十センチメートル以上では尋常の話声を解することができないもの

 三 精神に障害を残し軽易な労務のほか服することができないもの

 四 胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務のほか服することができないもの

 五 一手のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指をあわせ三指以上を失つたもの

 六 一手の五指又はおや指及びひとさし指をあわせ四指の用を廃したもの

 七 一足をリスフラン関節以上で失つたもの

 八 両足指全部の用を廃したもの

 九 女子の外貌に著しい醜状を残すもの

一〇 両側の睾丸を失つたもの

一八、〇〇〇円

第八級

 一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下に減じたもの

 二 脊柱に運動障害を残すもの

 三 神経系統の機能に著しい障害を残し軽易な労務のほか服することができないもの

 四 一手のおや指をあわせ二指を失つたもの

 五 一手のおや指及びひとさし指又はおや指若しくはひとさし指をあわせ三指以上の用を廃したもの

 六 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの

 七 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

 八 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

 九 一上肢に仮関節を残すもの

一〇 一下肢に仮関節を残すもの

一一 一足の指の全部を失つたもの

一二 脾臓又は一側の腎臓を失つたもの

一五、〇〇〇円

第九級

 一 両眼の視力が〇・六以下に減じたもの

 二 一眼の視力が〇・〇六以下に減じたもの

 三 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

 四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

 五 鼻を欠損しその機能に著しい障害を残すもの

 六 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

 七 鼓膜全部の欠損その他により一耳の聴力を全く失つたもの

 八 一手のおや指を失つたもの、ひとさし指をあわせ二指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の三指を失つたもの

 九 一手のおや指をあわせ二指の用を廃したもの

一〇 一足の第一指をあわせ二指以上を失つたもの

一一 一足の指の全部の用を廃したもの

一二 生殖器に著しい障害を残すもの

一二、〇〇〇円

第一〇級

 一 一眼の視力が〇・一以下に減じたもの

 二 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

 三 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

 四 鼓膜の大部分の欠損その他により一耳の聴力が耳殻に接しなければ大声を解することができないもの

 五 一手のひとさし指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の二指を失つたもの

 六 一手のおや指の用を廃したもの、ひとさし指をあわせ二指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の三指の用を廃したもの

 七 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの

 八 一足の第一指又は他の四指を失つたもの

 九 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

一〇 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

九、六〇〇円

第一一級

 一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

 二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

 三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

 四 鼓膜の中等度の欠損その他により一耳の聴力が四〇センチメートル以上では尋常の話声を解することができないもの

 五 脊柱に奇形を残すもの

 六 一手のなか指又はくすり指を失つたもの

 七 一手のひとさし指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の二指の用を廃したもの

 八 一足の第一指をあわせ二指以上の用を廃したもの

 九 胸腹部臓器に障害を残すもの

七、二〇〇円

第一二級

 一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

 二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

 三 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

 四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの

 五 鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨又は骨盤骨に著しい奇形を残すもの

 六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

 七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

 八 長管骨に奇形を残すもの

 九 一手のなか指又はくすり指の用を廃したもの

一〇 一足の第二指を失つたもの、第二指をあわせ二指を失つたもの又は第三指以下の三指を失つたもの

一一 一足の第一指又は他の四指の用を廃したもの

一二 局部に強固な神経症状を残すもの

一三 男子の外貌に著しい醜状を残すもの

一四 女子の外貌に醜状を残すもの

四、八〇〇円

第一三級

 一 一眼の視力が〇・六以下に減じたもの

 二 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

 三 両眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつ毛はげを残すもの

 四 一手のこ指を失つたもの

 五 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの

 六 一手のひとさし指の指骨の一部を失つたもの

 七 一手のひとさし指の末関節を屈伸することができなくなつたもの

 八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの

 九 一足の第三指以外の一指又は二指を失つたもの

一〇 一足の第二指の用を廃したもの、第二指をあわせ二指の用を廃したもの又は第三指以下の三指の用を廃したもの

三、二〇〇円

第一四級

 一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつ毛はげを残すもの

 二 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

 三 上肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの

 四 下肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの

 五 一手のこ指の用を廃したもの

 六 一手のおや指及びひとさし指以外の指骨の一部を失つたもの

 七 一手のおや指及びひとさし指以外の指の末関節を屈伸することができなくなったもの

 八 一足の第三指以下の一指又は二指の用を廃したもの

 九 局部に神経症状を残すもの

一〇 男子の外貌に醜状を残すもの

一、六〇〇円

 備考

  一 視力の測定は、万国式視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。

  二 指を失つたものとは、おや指は指関節、その他の指は第一指関節以上を失つたものをいう。

  三 指の用を廃したものとは、指の末関節の半分以上を失い、又は掌指関節若しくは第一指関節(おや指にあつては指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

  四 足指を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。

  五 足指の用を廃したものとは、第一指は末関節の半分以上、その他の指は末関節以上を失つたもの又は蹠趾関節若しくは第一指関節(第一指にあつては足指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設大臣署名) 

昭和28年前半に戻る

昭和28半に戻る