種苗法の一部を改正する法律

法律第四十九号(平一九・五・一八)

 種苗法(平成十年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第三十七条」を「第四十四条」に、「第三十八条−第四十二条」を「第四十五条−第四十九条」に、「第四十三条−第四十八条」を「第五十条−第五十七条」に、「第四十九条−第五十五条」を「第五十八条−第六十六条」に、「第五十六条−第六十二条」を「第六十七条−第七十五条」に改める。

 第六条第二項中「第三十八条第二項」を「第四十五条第二項」に、「第四十七条第二項」を「第五十四条第二項」に改める。

 第十四条第四項中「第四十二条第一項第一号」を「第四十九条第一項第一号」に改め、同条第五項中「第三十六条」の下に「から第三十八条まで及び第四十条から第四十三条まで」を加える。

 第二十二条第一項中「第四十一条第二項」を「第四十八条第二項」に改める。

 第三十四条中第三項を第四項とし、第二項を第三項とし、第一項を第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

  育成者権者又は専用利用権者が故意又は過失により自己の育成者権又は専用利用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した種苗、収穫物又は加工品を譲渡したときは、その譲渡した種苗、収穫物又は加工品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、育成者権者又は専用利用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた種苗、収穫物又は加工品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、育成者権者又は専用利用権者の利用の能力に応じた額を超えない限度において、育成者権者又は専用利用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を育成者権者又は専用利用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

 第六十二条に見出しとして「(名称使用 義務等の違反に対する過料)」を付し、同条を第七十五条とする。

 第六十一条に見出しとして「(命令違反に対する過料)」を付し、同条中「第四十条第三項」を「第四十七条第三項」に、「第五十三条の三」を「第六十四条」に改め、同条を第七十四条とする。

 第六十条に見出しとして「(両罰規定)」を付し、同条各号を次のように改める。

 一 第六十七条又は第七十条第一項 三億円以下の罰金刑

 二 第六十八条又は第六十九条 一億円以下の罰金刑

 三 第七十一条又は前条第一号若しくは第三号 各本条の罰金刑

 第六十条に次の二項を加える。

2 前項の場合において、当該行為者に対してした第七十条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

3 第一項の規定により第六十七条又は第七十条第一項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

 第六十条を第七十三条とする。

 第五十九条に見出しとして「(虚偽届出 等の罪)」を付し、同条第一号中「第四十九条」を「第五十八条」に改め、同条第二号中「第五十三条第一項又は第五十三条の二第一項」を「第六十二条第一項又は第六十三条第一項」に改め、同条第三号中「第五十四条」を「第六十五条」に改め、同条を第七十二条とする。

 第五十八条に見出しとして「(虚偽の表 示をした指定種苗の販売等の罪)」を付し、同条第一号中「第五十条第一項」を「第五十九条第一項」に改め、同条第二号中「第五十一条第一項」を「第六十条第一項」に改め、同条を第七十一条とする。

 第五十七条に見出しとして「(詐欺の行為の罪)」を付し、同条中「一年」を「三年」に、「百万円」を「三百万円」に改め、同条を第六十八条とし、同条の次に次の二条を加える。

 (虚偽表示の罪)

第六十九条 第五十六条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

 (秘密保持命令違反の罪)

第七十条 秘密保持命令に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

3 第一項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。

 第五十六条に見出しとして「(侵害の罪)」を付し、同条中「三年」を「十年」に、「又は三百万円」を「若しくは千万円」に、「処する」を「処し、又はこれを併科する」に改め、同条を第六十七条とする。

 第五十五条第一項中「第五十条第四項、第五十一条、第五十二条第二項及び第三項、第五十三条」を「第五十九条第四項、第六十条、第六十一条第二項及び第三項、第六十二条」に改め、第三章中同条を第六十六条とし、第五十四条を第六十五条とし、第五十三条の三を第六十四条とし、第五十三条の二を第六十三条とし、第四十九条から第五十三条までを九条ずつ繰り下げ、第二章第七節中第四十八条を第五十七条とし、第四十七条を第五十四条とし、同条の次に次の二条を加える。

 (品種登録表示)

第五十五条 登録品種の種苗を業として譲渡する者は、農林水産省令で定めるところにより、その譲渡する登録品種の種苗又はその種苗の包装にその種苗が品種登録に係る旨の表示(以下「品種登録表示」という。)を付するように努めなければならない。

 (虚偽表示の禁止)

第五十六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 登録品種以外の品種の種苗又はその種苗の包装に品種登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為

 二 登録品種以外の品種の種苗であって、その種苗又はその種苗の包装に品種登録表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡又は譲渡のための展示をする行為

 三 登録品種以外の品種の種苗を譲渡するため、広告にその種苗が品種登録に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為

 第四十六条を第五十三条とし、第四十五条を第五十二条とし、第四十四条を第五十一条とする。

 第四十三条中「(平成八年法律第百九号)」を削り、同条を第五十条とする。

 第四十二条第一項第四号中「第三十八条第五項」を「第四十五条第五項」に改め、同項第五号中「第三十八条第七項」を「第四十五条第七項」に改め、同項第六号中「第四十条第一項」を「第四十七条第一項」に改め、同条第四項第三号中「第三十八条第六項」を「第四十五条第六項」に改め、第二章第六節中同条を第四十九条とする。

 第四十一条第一項中「ときは」の下に「、利害関係人の申立てにより又は職権で」を加え、同条を第四十八条とし、第四十条を第四十七条とし、第三十九条を第四十六条とし、第三十八条を第四十五条とし、第二章第五節中第三十七条を第四十四条とする。

 第三十六条の見出しを「(書類の提出等)」に改め、同条中「対し、」の下に「当該侵害の行為について立証するため、又は」を加え、同条に次の三項を加える。

2 裁判所は、前項ただし書に規定する正 当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

3 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

4 前三項の規定は、育成者権又は専用利 用権の侵害に係る訴訟における当該侵害の行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

 第三十六条を第三十七条とし、同条の次に次の六条を加える。

 (損害計算のための鑑定)

第三十八条 育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。

 (相当な損害額の認定)

第三十九条 育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 (秘密保持命令)

第四十条 裁判所は、育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第六項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

 一 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第三十七条第三項の規定により開示された書類又は第四十三条第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

 二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

2 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

 一 秘密保持命令を受けるべき者

 二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

 三 前項各号に掲げる事由に該当する事実

3 秘密保持命令が発せられた場合には、 その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

4 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

5 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 (秘密保持命令の取消し)

第四十一条 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

2 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

3 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

4 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

5 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

 (訴訟記録の閲覧等の請求の通知 等)

第四十二条 秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十二条第一項の決定があった場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。

2 前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行った者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

3 前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。

 (当事者尋問等の公開停止)

第四十三条 育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき育成者権又は専用利用権の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。

3 裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。

4 裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

5 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

 第三十五条の次に次の一条を加える。

 (具体的態様の明示義務)

第三十六条 育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟において、育成者権者又は専用利用権者が侵害の行為を組成したものとして主張する種苗、収穫物又は加工品の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十九年十二月一日から施行する。ただし、附則第六条の規定は、公布の日から施行する。

 (権利侵害に係る規定の適用に関する経 過措置)

第二条 この法律による改正後の種苗法(以下「新法」という。)第二章第五節(新法第十四条第五項において準用する場合を含む。)の規定は、別段の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前の種苗法(以下「旧法」という。)第二章第五節(旧法第十四条第五項において準用する場合を含む。)の規定により生じた効力を妨げない。

第三条 新法第三十四条第一項及び第三十九条の規定は、この法律の施行前に、第二審である高等裁判所又は地方裁判所における口頭弁論が終結した事件及び簡易裁判所の判決又は地方裁判所が第一審としてした判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした事件については、適用しない。

2 新法第四十条から第四十二条までの規定は、この法律の施行前に、訴訟の完結した事件、第二審である高等裁判所又は地方裁判所における口頭弁論が終結した事件及び簡易裁判所の判決又は地方裁判所が第一審としてした判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした事件については、適用しない。

 (施行前に犯した犯罪行為により生じた財産等に関する経過措置)

第四条 この法律の施行の日が犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第▼▼▼号)の施行の日後となった場合には、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第九条第一項から第三項まで、第十条及び第十一条の規定は、この法律の施行前に財産上の不正な利益を得る目的で犯した旧法第五十六条の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば同条の罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産に関してこの法律の施行後にした行為に対しても、適用する。この場合において、これらの財産は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第二条第二項第一号の犯罪収益とみなす。

 (罰則に関する経過措置)

第五条 この法律の施行前に犯した罪の公訴時効の期間については、新法第七十三条第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第六条 附則第二条から前条までに規定す るもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

 (検討)

第七条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (独立行政法人種苗管理センター法及び独立行政法人家畜改良センター法の一部改正)

第八条 次に掲げる法律の規定中「第五十三条の二第一項」を「第六十三条第一項」に改める。

 一 独立行政法人種苗管理センター法(平成十一年法律第百八十四号)第十一条第二項第一号

 二 独立行政法人家畜改良センター法(平成十一年法律第百八十五号)第十一条第二項第二号

(農林水産臨時代理・内閣総理大臣署名) 

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