特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律
法律第六十五号(平一五・六・四)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 特殊開錠用具の所持等の禁止(第三条・第四条)
第三章 特定侵入行為の防止対策の推進(第五条―第十一条)
第四章 雑則(第十二条―第十四条)
第五章 罰則(第十五条―第十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特殊開錠用具の所持等を禁止するとともに、特定侵入行為の防止対策を推進することにより、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建物錠 住宅の玄関その他建物の出入口の戸の施錠の用に供する目的で製作される錠をいう。
二 特殊開錠用具 ピッキング用具(錠に用いられるシリンダーをかぎを用いることなく、かつ、破壊することなく回転させるための器具をいう。)その他の専ら特殊開錠(施錠された状態にある錠を本来の方法によらないで開くことをいう。以下同じ。)を行うための器具であって、建物錠を開くことに用いられるものとして政令で定めるものをいう。
三 指定侵入工具 ドライバー、バールその他の工具(特殊開錠用具に該当するものを除く。)であって、建物錠を破壊するため又は建物の出入口若しくは窓の戸を破るために用いられるもののうち、建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとして政令で定めるものをいう。
四 特定侵入行為 特殊開錠用具又は指定侵入工具(以下「特殊開錠用具等」という。)を用いて建物に侵入する行為をいう。
第二章 特殊開錠用具の所持等の禁止
(特殊開錠用具の所持の禁止)
第三条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊開錠用具を所持してはならない。
(指定侵入工具の携帯の禁止)
第四条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定侵入工具を隠して携帯してはならない。
第三章 特定侵入行為の防止対策の推進
(国及び地方公共団体の施策)
第五条 国及び地方公共団体は、建物錠、建物の出入口若しくは窓の戸又はこれらの部品(以下「建物錠等」という。)の防犯性能(特定侵入行為を防止するために必要とされる性能をいう。以下同じ。)の向上の促進、特定侵入行為の防止に関する啓発及び知識の普及その他の特定侵入行為の防止を図るための施策を講ずるよう努めなければならない。
(建物錠等の防犯性能の向上)
第六条 建物錠等の製造又は輸入を業とする者は、その製造し、又は輸入する建物錠等の防犯性能の向上に努めなければならない。
2 国家公安委員会は、建物錠等の製造又は輸入を業とする者から、その製造し、又は輸入する建物錠等の防犯性能を向上させるため、援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、その者に対し、当該建物錠等に係る特定侵入行為の手口に関する情報の提供、助言、指導その他の必要な援助を行うものとする。
(指定建物錠の防犯性能の表示)
第七条 国家公安委員会は、建物錠(その部品を含む。以下同じ。)のうち、防犯性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるもの(以下「指定建物錠」という。)について、指定建物錠の種類ごとに、次に掲げる事項を定め、これを告示するものとする。
一 指定建物錠の防犯性能に関し建物錠の製造又は輸入を業とする者(以下「製造業者等」という。)が表示すべき事項
二 表示の方法その他防犯性能の表示に際して製造業者等が遵守すべき事項
(表示に関する勧告及び命令)
第八条 国家公安委員会は、製造業者等が指定建物錠について前条の規定により告示されたところに従って防犯性能に関する表示をしていないと認めるときは、当該製造業者等に対し、その製造又は輸入に係る指定建物錠につき、その告示されたところに従って防犯性能に関する表示をすべき旨の勧告をすることができる。
2 国家公安委員会は、前項に規定する勧告を受けた製造業者等が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特殊開錠用具等を用いて当該指定建物錠の特殊開錠を行う手口による建物への侵入が多発するおそれがあると認めるときは、当該製造業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
(緊急時の措置)
第九条 国家公安委員会は、特定の建物錠の特性を利用した特殊開錠を行う手口による建物への侵入が急増するおそれがあると認める場合において、当該侵入の防止を図るため緊急の必要があると認めるときは、必要な限度において、当該建物錠の製造又は輸入を業とする者に対し、当該建物錠の改善その他の当該手口による建物への侵入の防止を図るために必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
2 国家公安委員会は、前項に規定する勧告をした場合において、当該勧告を受けた者が、正当な理由なく、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
(錠取扱業者の責務)
第十条 建物錠の販売、取付け及び特殊開錠を行う営業を営む者(以下「錠取扱業者」という。)は、建物錠を販売する相手方に対して当該建物錠の防犯性能を正確に説明するとともに、顧客の依頼に応じて建物錠の特殊開錠を行うときは、その者の氏名及び住所を確認するよう努めなければならない。
(錠取扱業者の団体への援助)
第十一条 国家公安委員会及び都道府県公安委員会は、錠取扱業者が組織する団体に対し、特定侵入行為の防止を図るため、必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めるものとする。
第四章 雑則
(報告及び立入検査)
第十二条 国家公安委員会は、第八条の規定の施行に必要な限度において、製造業者等に対し、指定建物錠に係る業務の状況に関し報告させ、又は警察庁の職員に、製造業者等の事務所、工場又は倉庫に立ち入り、指定建物錠、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 国家公安委員会は、第九条の規定の施行に必要な限度において、製造業者等に対し、同条第一項の建物錠に係る業務の状況に関し報告させることができる。
3 第一項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(経過措置)
第十三条 この法律の規定に基づき政令又は国家公安委員会規則を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ政令又は国家公安委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(国家公安委員会規則への委任)
第十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
第五章 罰則
第十五条 業務その他正当な理由によることなく所持することの情を知って特殊開錠用具を販売し、又は授与した者は、二年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第十六条 第三条又は第四条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第十七条 第八条第二項の規定による命令に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。
第十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
二 第十二条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第十五条、第十七条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第七条、第八条、第十二条(第二項を除く。)、第十七条、第十八条(第一号に係る部分に限る。)及び第十九条(第十七条及び第十八条第一号に係る部分に限る。)の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(出入国管理及び難民認定法の一部改正)
第二条 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第九号の二中「又は盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)の罪」を「、盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)の罪又は特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成十五年法律第六十五号)第十五条若しくは第十六条の罪」に改める。
第二十四条第四号の二中「又は盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪」を「、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪又は特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪」に改める。
(検討)
第三条 政府は、第七条及び第八条の規定の施行後五年を経過した場合において、第七条及び第八条の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(内閣総理臨時代理・法務大臣署名)