ストーカー行為等の規制等に関する法律

法律第八十一号(平一二・五・二四)

 (目的)

第一条 この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

 一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。

 二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

 四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

 五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。

 六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

 七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。

2 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

 (つきまとい等をして不安を覚えさせることの禁止)

第三条 何人も、つきまとい等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。

 (警告)

第四条 警視総監若しくは都府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、つきまとい等をされたとして当該つきまとい等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。

2 一の警察本部長等が前項の規定による警告(以下「警告」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該警告を受けた者に対し、当該警告に係る前条の規定に違反する行為について警告又は第六条第一項の規定による命令をすることができない。

3 警察本部長等は、警告をしたときは、速やかに、当該警告の内容及び日時その他当該警告に関する事項で国家公安委員会規則で定めるものを都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に報告しなければならない。

4 前三項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び警告の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

 (禁止命令等)

第五条 公安委員会は、警告を受けた者が当該警告に従わずに当該警告に係る第三条の規定に違反する行為をした場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。

 一 更に反復して当該行為をしてはならないこと。

 二 更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項

2 公安委員会は、前項の規定による命令(以下「禁止命令等」という。)をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、禁止命令等の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

 (仮の命令)

第六条 警察本部長等は、第四条第一項の申出を受けた場合において、当該申出に係る第三条の規定に違反する行為(第二条第一項第一号に掲げる行為に係るものに限る。)があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるとともに、当該申出をした者の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、当該行為をした者に対し、行政手続法第十三条第一項の規定にかかわらず、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を命ずることができる。

2 一の警察本部長等が前項の規定による命令(以下「仮の命令」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該仮の命令を受けた者に対し、当該仮の命令に係る第三条の規定に違反する行為について警告又は仮の命令をすることができない。

3 仮の命令の効力は、仮の命令をした日から起算して十五日とする。

4 警察本部長等は、仮の命令をしたときは、直ちに、当該仮の命令の内容及び日時その他当該仮の命令に関する事項で国家公安委員会規則で定めるものを公安委員会に報告しなければならない。

5 公安委員会は、前項の規定による報告を受けたときは、当該報告に係る仮の命令があった日から起算して十五日以内に、意見の聴取を行わなければならない。

6 行政手続法第三章第二節(第二十八条を除く。)の規定は、公安委員会が前項の規定による意見の聴取(以下「意見の聴取」という。)を行う場合について準用する。この場合において、同法第十五条第一項中「聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて」とあるのは、「速やかに」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

7 公安委員会は、仮の命令に係る第三条の規定に違反する行為がある場合において、意見の聴取の結果、当該仮の命令が不当でないと認めるときは、行政手続法第十三条第一項の規定及び前条第二項の規定にかかわらず、聴聞を行わないで禁止命令等をすることができる。

8 前項の規定により禁止命令等をしたときは、仮の命令は、その効力を失う。

9 公安委員会は、第七項に規定する場合を除き、意見の聴取を行った後直ちに、仮の命令の効力を失わせなければならない。

10 仮の命令を受けた者の所在が不明であるため第六項において準用する行政手続法第十五条第三項の規定により意見の聴取の通知を行った場合の当該仮の命令の効力は、第三項の規定にかかわらず、当該仮の命令に係る意見の聴取の期日までとする。

11 前各項に定めるもののほか、仮の命令及び意見の聴取の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

 (警察本部長等の援助等)

第七条 警察本部長等は、ストーカー行為又は第三条の規定に違反する行為(以下「ストーカー行為等」という。)の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。

2 警察本部長等は、前項の援助を行うに当たっては、関係行政機関又は関係のある公私の団体と緊密な連携を図るよう努めなければならない。

3 警察本部長等は、第一項に定めるもののほか、ストーカー行為等に係る被害を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

4 第一項及び第二項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び援助の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

 (国、地方公共団体、関係事業者等の支援)

第八条 国及び地方公共団体は、ストーカー行為等の防止に関する啓発及び知識の普及、ストーカー行為等の相手方に対する支援並びにストーカー行為等の防止に関する活動等を行っている民間の自主的な組織活動の支援に努めなければならない。

2 ストーカー行為等に係る役務の提供を行った関係事業者は、当該ストーカー行為等の相手方からの求めに応じて、当該ストーカー行為等が行われることを防止するための措置を講ずること等に努めるものとする。

3 ストーカー行為等が行われている場合には、当該ストーカー行為等が行われている地域の住民は、当該ストーカー行為等の相手方に対する援助に努めるものとする。

 (報告徴収等)

第九条 警察本部長等は、警告又は仮の命令をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、第四条第一項の申出に係る第三条の規定に違反する行為をしたと認められる者その他の関係者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に当該行為をしたと認められる者その他の関係者に質問させることができる。

2 公安委員会は、禁止命令等をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、警告若しくは仮の命令を受けた者その他の関係者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に警告若しくは仮の命令を受けた者その他の関係者に質問させることができる。

 (禁止命令等を行う公安委員会等)

第十条 この法律における公安委員会は、禁止命令等並びに第五条第二項の聴聞及び意見の聴取に関しては、当該禁止命令等並びに同項の聴聞及び意見の聴取に係る事案に関する第四条第一項の申出をした者の住所地を管轄する公安委員会とする。

2 この法律における警察本部長等は、警告及び仮の命令に関しては、当該警告又は仮の命令に係る第四条第一項の申出をした者の住所地を管轄する警察本部長等とする。

3 公安委員会は、警告又は仮の命令があった場合において、当該警告又は仮の命令に係る第四条第一項の申出をした者がその住所を当該公安委員会の管轄区域内から他の公安委員会の管轄区域内に移転したときは、速やかに、当該警告又は仮の命令の内容及び日時その他当該警告又は仮の命令に関する事項で国家公安委員会規則で定めるものを当該他の公安委員会に通知しなければならない。ただし、当該警告又は仮の命令に係る事案に関する第五条第二項の聴聞又は意見の聴取を終了している場合は、この限りでない。

4 公安委員会は、前項本文に規定する場合において、同項ただし書の聴聞又は意見の聴取を終了しているときは、当該聴聞又は意見の聴取に係る禁止命令等をすることができるものとし、同項の他の公安委員会は、第一項の規定にかかわらず、当該聴聞又は意見の聴取に係る禁止命令等をすることができないものとする。

5 公安委員会は、前項に規定する場合において、第三項ただし書の聴聞に係る禁止命令等をしないときは、速やかに、同項に規定する事項を同項の他の公安委員会に通知しなければならない。

 (方面公安委員会への権限の委任)

第十一条 この法律により道公安委員会の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、方面公安委員会に委任することができる。

 (方面本部長への権限の委任)

第十二条 この法律により道警察本部長の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、方面本部長に行わせることができる。

 (罰則)

第十三条 ストーカー行為をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

第十四条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。

第十五条 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

 (適用上の注意)

第十六条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。

 (条例との関係)

2 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

3 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

 (検討)

4 ストーカー行為等についての規制、その相手方に対する援助等に関する制度については、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。

(内閣総理・法務大臣署名)

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