金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律
法律第三十二号(平一一・四・二一)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 登録(第三条―第八条)
第三章 会計の整理(第九条)
第四章 監督(第十条―第十三条)
第五章 雑則(第十四条―第十七条)
第六章 罰則(第十八条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、金融業者がその貸付業務のために行う社債の発行等による貸付資金の受入れに関し、社債の購入者等の保護に資するため、社債の発行等による貸付資金の受入れをする金融業者について、一定の財産的基礎等を要件とする登録制度を実施するとともに、その貸付状況等を明確に表示するための会計の整理を義務付ける措置を定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融業者」とは、貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号)第二条第二項に規定する貸金業者その他の金銭の貸付け(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付を含む。以下同じ。)を業として行う者で政令で定めるものをいう。
2 この法律において「金融会社等」とは、法人である金融業者をいう。
3 この法律において「特定金融会社等」とは、次条の規定により金融再生委員会の登録を受けた者をいう。
第二章 登録
(登録)
第三条 金融業者は、金融再生委員会の登録を受けた金融会社等でなければ、社債の発行その他の政令で定める方法(以下「社債の発行等」という。)による貸付資金の受入れをしてはならない。
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする金融会社等は、次に掲げる事項を記載した登録申請書を金融再生委員会に提出しなければならない。
一 商号又は名称及び住所
二 資本又は出資の額
三 その他総理府令・大蔵省令で定める事項
2 前項の登録申請書には、登記簿の謄本その他総理府令・大蔵省令で定める書類を添付しなければならない。
(登録の実施)
第五条 金融再生委員会は、第三条の登録の申請があったときは、次条第一項の規定によりその登録を拒否する場合を除き、次に掲げる事項を特定金融会社等登録簿に登録しなければならない。
一 前条第一項各号に掲げる事項
二 登録年月日及び登録番号
2 金融再生委員会は、前項の規定による登録をしたときは、遅滞なく、その旨を登録申請者に通知しなければならない。
3 金融再生委員会は、総理府令・大蔵省令で定めるところにより、特定金融会社等登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
(登録の拒否)
第六条 金融再生委員会は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類に虚偽の記載があり、若しくは記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一 金融会社等に該当しない者
二 資本又は出資の額が政令で定める金額に満たない金融会社等
三 金銭の貸付けに係る業務を政令で定める基準に達しない人的構成により行う金融会社等
四 第十一条第一項の規定により第三条の登録を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない金融会社等
2 金融再生委員会は、前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を登録申請者に通知しなければならない。
(変更の届出)
第七条 特定金融会社等は、第四条第一項各号に掲げる事項に変更があったときは、その日から二週間以内に、その旨を金融再生委員会に届け出なければならない。
2 金融再生委員会は、前項の規定による届出を受理したときは、その届出があった事項を特定金融会社等登録簿に登録しなければならない。
(廃止の届出等)
第八条 特定金融会社等が、第二条第二項に規定する金融会社等に該当しないこととなったとき、又は社債の発行等による貸付資金の受入れをやめたときは、その特定金融会社等であった法人を代表する役員その他の政令で定める者は、その日から三十日以内に、その旨を金融再生委員会に届け出なければならない。
2 特定金融会社等が第二条第二項に規定する金融会社等に該当しないこととなったとき、又は特定金融会社等から社債の発行等による貸付資金の受入れをやめた旨の届出があったときは、当該特定金融会社等の第三条の登録は、その効力を失う。
第三章 会計の整理
第九条 特定金融会社等は、総理府令・大蔵省令で定める勘定科目の分類及び貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する諸表の記載要領に従い、その会計を整理しなければならない。
2 前項に規定する総理府令・大蔵省令で定める勘定科目の分類及び貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する諸表の記載要領は、特定金融会社等の金銭の貸付け及び社債の発行等の状況を明確に表示することとなるものでなければならない。
第四章 監督
(報告の徴収)
第十条 金融再生委員会は、この法律の施行に必要な限度において、特定金融会社等に対し、その業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる。
(登録の取消し等)
第十一条 金融再生委員会は、特定金融会社等が次の各号のいずれかに該当するときは、第三条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて社債の発行等による貸付資金の受入れの停止を命ずることができる。
一 第六条第一項第二号又は第三号のいずれかに該当することとなったとき。
二 不正の手段により第三条の登録を受けたとき。
三 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
四 貸金業の規制等に関する法律その他の法律の規定により金銭の貸付けに係る業務の全部又は一部の停止を命ぜられたとき。
2 金融再生委員会は、特定金融会社等の営業所若しくは事務所の所在地を確知できないとき、又は特定金融会社等を代表する役員の所在を確知できないときは、総理府令・大蔵省令で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該特定金融会社等から申出がないときは、当該特定金融会社等の第三条の登録を取り消すことができる。
3 前項の規定による処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない。
(登録の抹消)
第十二条 金融再生委員会は、第八条第二項の規定により第三条の登録がその効力を失ったとき、又は前条第一項若しくは第二項の規定により第三条の登録を取り消したときは、当該登録を抹消しなければならない。
(監督処分の公告)
第十三条 金融再生委員会は、第十一条第一項又は第二項の規定による処分をしたときは、総理府令・大蔵省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
第五章 雑則
(登録の取消し等に伴う債務の履行の完了等)
第十四条 特定金融会社等について、第八条第二項の規定により第三条の登録が効力を失ったとき、又は第十一条第一項若しくは第二項の規定により第三条の登録が取り消されたときは、当該特定金融会社等であった者又はその一般承継人(政令で定める者を除く。)は、当該特定金融会社等が貸付資金の受入れのために行った社債の発行等に係る債務として政令で定めるものの履行を完了する目的の範囲内においては、なお特定金融会社等とみなす。
(大蔵大臣への資料提出等)
第十五条 大蔵大臣は、金融業者の貸付業務のための社債の発行等に係る制度の調査、企画又は立案をするため必要があると認めるときは、金融再生委員会に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。
2 大蔵大臣は、金融業者の貸付業務のための社債の発行等に係る制度の調査、企画又は立案をするため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、特定金融会社等に対し、資料の提出、説明その他の協力を求めることができる。
(権限の委任)
第十六条 金融再生委員会は、この法律による権限(金融再生委員会規則で定めるものを除く。)を金融監督庁長官に委任する。
2 金融再生委員会は、政令で定めるところにより、この法律による権限(前項の規定により金融監督庁長官に委任されたものを除く。)の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
3 金融監督庁長官は、政令で定めるところにより、第一項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
4 前項の規定により財務局長又は財務支局長に委任された権限に係る事務に関しては、金融監督庁長官が財務局長又は財務支局長を指揮監督する。
(総理府令・大蔵省令への委任)
第十七条 この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、総理府令・大蔵省令で定める。
第六章 罰則
第十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条の規定に違反した者
二 不正の手段により第三条の登録を受けた者
第十九条 第十一条第一項の規定による社債の発行等による貸付資金の受入れの停止の命令に違反して社債の発行等による貸付資金の受入れをした特定金融会社等の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第四条第一項の登録申請書又は同条第二項の書類に虚偽の記載をして提出した者
二 第十条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第二十一条 第七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第二十二条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第十九条 三億円以下の罰金刑
二 第二十条 二億円以下の罰金刑
三 第十八条又は前条 各本条の罰金刑
2 前項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
第二十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
一 第八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第九条第一項の規定に違反した特定金融会社等の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部改正)
第二条 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第二条第二項を次のように改める。
2 前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであつて、次に掲げるものをいう。
一 預金、貯金又は定期積金の受入れ
二 社債、借入金その他何らの名義をもつてするを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの
第二条第三項を削る。
第七条の見出し中「貸付」を「貸付け」に改め、同条中「第二条第三項及び」を削り、「貸付」を「貸付け」に改める。
(罰則の経過措置)
第三条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部改正)
第四条 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第三号ニ中「不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)」の下に「、金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律(平成十一年法律第三十二号)」を加える。
(金融再生委員会設置法の一部改正)
第五条 金融再生委員会設置法(平成十年法律第百三十号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十四号の次に次の一号を加える。
二十四の二 特定金融会社等(金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律(平成十一年法律第三十二号)に規定する特定金融会社等をいう。)の登録及び監督に関すること。
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行状況のほか、金融業者が社債の発行等により貸付資金の受入れをして行っている金銭の貸付けが国民経済に及ぼしている影響等を勘案し、この法律に規定する金融業者の貸付業務のための社債の発行等に係る制度について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(内閣総理・大蔵大臣署名)