金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律

法律第百八号(平一〇・六・一五)

 (目的)

第一条 この法律は、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算についての破産手続等における取扱いを確定することにより、金融機関等が行う特定金融取引の決済の安定性の確保とこれによる特定金融取引の活性化を図り、もって我が国の金融の機能に対する内外の信頼の向上と国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定金融取引」とは、金利、通貨の価格、有価証券市場における相場その他の指標に係る変動、市場間の格差等(以下この項において「金利変動等」という。)に基づいて算出される金銭の授受を約する取引その他の金利変動等を利用して行われる取引のうち、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第八項第三号の二に規定する有価証券店頭デリバティブ取引その他の総理府令・大蔵省令で定めるものをいう。

2 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げる法人をいう。

 一 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行又は長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行

 二 証券取引法第二条第九項に規定する証券会社又は外国証券業者に関する法律(昭和四十六年法律第五号)第二条第二号に掲げる外国証券会社

 三 その他我が国の法令により営業若しくは事業の免許、登録等を受けている法人又は特別の法律により設立された法人であって、自己又は顧客の計算において特定金融取引を相当の規模で行うものとして政令で定めるもの

3 この法律において「破産手続等」とは、破産手続又は更生手続をいう。

4 この法律において「一括清算事由」とは、破産又は更生手続開始の申立てをいう。

5 この法律において「基本契約書」とは、特定金融取引を行おうとする金融機関等とその相手方との間において二以上の特定金融取引を継続して行うために作成される契約書で、契約の当事者間において行われる特定金融取引に係る債務についてその履行の方法その他当該特定金融取引に関する基本的事項を定めるものをいう。

6 この法律において「一括清算」とは、基本契約書に基づき特定金融取引を行っている当事者の一方に一括清算事由が生じた場合には、当該当事者の双方の意思にかかわらず、当該一括清算事由が生じた時において、当該基本契約書に基づいて行われているすべての特定金融取引についてその時における当該特定金融取引のそれぞれにつき総理府令・大蔵省令で定めるところにより算出した評価額を合算して得られる純合計額が、当該当事者間における一の債権又は一の債務となることをいう。

 (一括清算と破産手続等との関係)

第三条 破産宣告又は更生手続開始の決定(以下この条において「破産宣告等」という。)がなされた者が、一括清算の約定をした基本契約書に基づき特定金融取引を行っていた金融機関等又はその相手方である場合には、当該基本契約書に基づいて行われていたすべての特定金融取引についてこれらの者が有する次の各号に掲げる法律に規定する当該各号に定める財産又は債権は、当該破産宣告等に係る一括清算事由が生じたことにより、それぞれ、当該破産宣告等がなされた者が当該約定に基づき有することとなった一の債権又はその相手方が当該約定に基づき有することとなった一の債権とする。

 一 破産法(大正十一年法律第七十一号)破産財団に属する財産又は破産債権

 二 会社更生法(昭和二十七年法律第百七十二号)又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)更生手続開始の時に株式会社若しくは同法第二条第二項に規定する協同組織金融機関に属する財産又は更生債権

   附 則

 この法律は、平成十年十二月一日から施行する。

(内閣総理・大蔵大臣署名) 

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