刑事確定訴訟記録法
法律第六十四号(昭六二・六・二)
(目的)
第一条 この法律は、刑事被告事件に係る訴訟の記録の訴訟終結後における保管、保存及び閲覧に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(訴訟の記録の保管)
第二条 刑事被告事件に係る訴訟の記録は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(以下「保管検察官」という。)が保管するものとする。
2 前項の規定により保管検察官が保管する記録(以下「保管記録」という。)の保管期間は、別表の上欄に掲げる保管記録の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるところによる。
3 保管検察官は、必要があると認めるときは、保管期間を延長することができる。
(再審の手続のための保存)
第三条 保管検察官は、保管記録について、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、保存すべき期間を定めて、その保管期間満了後も、これを再審保存記録として保存するものとする。
2 再審の請求をしようとする者、再審の請求をした者又は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百四十条第一項の規定により選任された弁護人は、保管検察官に対し、保管記録を再審保存記録として保存することを請求することができる。
3 前項の規定による請求があつたときは、保管検察官は、請求に係る保管記録を再審保存記録として保存するかどうかを決定し、請求をした者にその旨を通知しなければならない。ただし、請求に係る保管記録が再審保存記録として保存することとされているものであるときは、その旨の通知をすれば足りる。
4 再審保存記録の保存期間は、延長することができる。この場合においては、前三項の規定を準用する。
(保管記録の閲覧)
第四条 保管検察官は、請求があつたときは、保管記録(刑事訴訟法第五十三条第一項の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第一項ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。
2 保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第五十三条第三項に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第二号の場合にあつては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。
一 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
二 保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。
三 保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。
四 保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更正を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。
五 保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。
3 第一項の規定は、刑事訴訟法第五十三条第一項の訴訟記録以外の保管記録について、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合に準用する。
4 保管検察官は、保管記録を閲覧させる場合において、その保存のため適当と認めるときは、原本の閲覧が必要である場合を除き、その謄本を閲覧させることができる。
(再審保存記録の閲覧)
第五条 保管検察官は、第三条第二項に規定する者から請求があつたときは、再審保存記録を閲覧させなければならない。
2 前条第一項ただし書及び第四項の規定は、前項の請求があつた場合に準用する。
3 保管検察官は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、再審保存記録を閲覧させることができる。この場合においては、前条第四項の規定を準用する。
(閲覧者の義務)
第六条 保管記録又は再審保存記録を閲覧した者は、閲覧により知り得た事項をみだりに用いて、公の秩序若しくは善良の風俗を害し、犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない。
(閲覧の手数料)
第七条 保管記録又は再審保存記録を閲覧する者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(不服申立て)
第八条 第三条第二項の規定により保存の請求をした者(同条第四項において準用する同条第二項の規定により保存期間の延長の請求をした者を含む。)又は第四条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第五条第一項の規定により閲覧の請求をした者であつて、当該請求に基づく保管検察官の保存又は閲覧に関する処分に不服があるものは、その保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。
2 前項の規定による不服申立てに関する手続については、刑事訴訟法第四百三十条第一項に規定する検察官の処分の取消し又は変更の請求に係る手続の例による。
(刑事参考記録の保存及び閲覧)
第九条 法務大臣は、保管記録又は再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間又は保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存するものとする。
2 法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、刑事参考記録を閲覧させることができる。この場合においては、第四条第四項及び第六条の規定を準用する。
3 刑事参考記録について再審の手続のため保存の必要があると認められる場合におけるその保存及び閲覧については、再審保存記録の保存及び閲覧の例による。
4 法務大臣は、法務省令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定に基づく権限を所部の職員に委任することができる。
(法務省令への委任)
第十条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、法務省令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律(以下「本法」という。)は、昭和六十三年一月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 刑事被告事件に係る訴訟であつて本法施行の日(以下「施行日」という。)前に終結したものの記録については、本法施行の際現に保管されているものに限り、本法の規定を適用する。
第三条 前条の場合において、大審院のした裁判の裁判書については、本法施行の際現に保管検察官が原本に代えて保有するその謄本を当該裁判書とみなし、原本は最高裁判所が保存するものとする。
第四条 附則第二条の場合において、施行日から六月を経過する日前に第二条第二項の保管期間が満了することとなる訴訟の記録は、施行日から六月を経過する日まで保管するものとする。この場合において、当該訴訟の記録の閲覧については、第四条第二項第二号の規定は適用しない。
第五条 本法施行の際現に法務大臣が刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料として保存している刑事被告事件に係る訴訟の記録は、第九条の規定による刑事参考記録とみなす。
(略式手続による訴訟の記録等に関する特例)
第六条 刑事訴訟法第六編又は交通事件即決裁判手続法(昭和二十九年法律第百十三号)に定める手続による訴訟の記録であつて法務省令で定めるものに係る本法の規定の適用については、当分の間、第二条第一項中「当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官」とあるのは、「法務省令で定める検察官」とする。
(刑事訴訟法施行法の一部改正)
第七条 刑事訴訟法施行法(昭和二十三年法律第二百四十九号)の一部を次のように改正する。
第十一条を次のように改める。
第十一条 削除
別表(第二条関係)
保管記録の区分 |
保管期間 |
一 裁判書 |
|
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁 錮に処する確定裁判の裁判書 |
百年 |
2 有期の懲役又は禁錮に処する確定裁判の裁判書 |
五十年 |
3 罰金、拘留若しくは科料に処する確定裁判又は刑を免除する確定裁判の裁判書 |
二十年(法務省令で定めるものについては、法務省令で定める期間) |
4 無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの確定裁判の裁判書 |
|
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの |
十五年 |
(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの |
五年 |
(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの |
三年 |
5 控訴又は上告の申立てについての確定裁判(1から4までの確定裁判を除く。)の裁判書 |
控訴又は上告に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて、その裁判の裁判書の保管期間と同じ期間 |
6 その他の裁判の裁判書 |
法務省令で定める期間 |
二 裁判書以外の保管記録 |
|
1 刑に処する裁判により終結した被告事件の保管記録 |
|
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する裁判に係るもの |
五十年 |
(二) 十年以上の有期の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの |
二十年 |
(三) 五年以上十年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの |
十年 |
(四) 五年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの |
五年 |
(五) 罰金、拘留又は科料に処する裁判に係るもの |
三年(法務省令で定めるものについては、法務省令で定める期間) |
2 刑の免除、無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの裁判により終結した被告事件の保管記録 |
|
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの |
十五年 |
(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの |
五年 |
(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの |
三年 |
3 その他の保管記録 |
法務省令で定める期間 |
(法務・内閣総理大臣署名)