民法等の一部を改正する法律
法律第百一号(昭六二・九・二六)
(民法の一部改正)
第一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四款 離縁」を
「 |
第四款 離縁 |
|
第五款 特別養子 |
」 |
に改める。
第七百三十四条に次の一項を加える。
第八百十七条の九の規定によつて親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
第七百三十五条後段中「第七百二十八条」の下に「又は第八百十七条の九」を加える。
第七百九十一条第一項中「許可を得て」の下に「、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて」を加え、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同条第三項中「前二項」を「前三項」に、「従前の氏」を「戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、従前の氏」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。
父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、その父母の氏を称することができる。
第七百九十五条及び第七百九十六条を次のように改める。
第七百九十五条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
第七百九十六条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
第七百九十七条に次の一項を加える。
法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
第八百六条の次に次の二条を加える。
第八百六条の二 第七百九十六条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を知つた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
詐欺又は強迫によつて第七百九十六条の同意をした者は、その縁組の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
第八百六条の三 第七百九十七条第二項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
前条第二項の規定は、詐欺又は強迫によつて第七百九十七条第二項の同意をした者にこれを準用する。
第八百十条に次のただし書を加える。
ただし、婚姻によつて氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
第八百十一条第六項中「養親」を「縁組の当事者の一方」に、「養子」を「生存当事者」に改め、同条の次に次の一条を加える。
第八百十一条の二 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦がともにしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
第八百十三条第一項中「及び第八百十一条」を「、第八百十一条及び第八百十一条の二」に改める。
第八百十四条第一項中「左の」を「次の」に、「訴」を「訴え」に改め、同項第二号中「養子」を「他の一方」に、「明か」を「明らか」に改める。
第八百十六条に次のただし書を加える。
ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
第八百十六条に次の一項を加える。
縁組の日から七年を経過した後に前項の規定によつて縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、離縁の際に称していた氏を称することができる。
第四編第三章第二節に次の一款を加える。
第五款 特別養子
第八百十七条の二 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。
第八百十七条の三 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
第八百十七条の四 二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。
第八百十七条の五 第八百十七条の二に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満であつて六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。
第八百十七条の六 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
第八百十七条の七 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
第八百十七条の八 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
第八百十七条の九 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によつて終了する。ただし、第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
第八百十七条の十 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
第八百十七条の十一 養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によつて終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
(家事審判法の一部改正)
第二条 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項甲類第六号中「第二項」を「第三項」に改め、同項甲類第八号の次に次の一号を加える。
八の二 民法第八百十七条の二及び第八百十七条の十の規定による縁組及び離縁に関する処分
(戸籍法の一部改正)
第三条 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。
第十九条第二項中「第七百九十一条第三項」を「第七百九十一条第四項」に改め、同条第三項中「の規定によつて離婚又は婚姻」を「又は同法第八百十六条第二項(同法第八百八条第二項において準用する場合を含む。)の規定よつて離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組」に、「ときは、その者」を「とき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは、その届出をした者」に改める。
第二十条の二の次に次の一条を加える。
第二十条の三 第六十八条の二の規定によつて縁組の届出があつたときは、まず養子について新戸籍を編製する。ただし、養子が養親の戸籍に在るときは、この限りでない。
第十四条第三項の規定は、前項ただし書の場合に準用する。
第六十七条を次のように改める。
第六十七条 削除
第六十八条の次に次の一条を加える。
第六十八条の二 第六十三条第一項の規定は、縁組の裁判が確定した場合に準用する。
第四章第四節中第六十九条の次に次の一条を加える。
第六十九条の二 第七十三条の二の規定は、民法第八百八条第二項において準用する同法第八百十六条第二項の規定によつて縁組の取消しの際に称していた氏を称しようとする場合に準用する。
第七十二条中「養子」を「生存当事者」に改める。
第七十三条に次の一項を加える。
第七十五条第二項の規定は、検察官が離縁の裁判を請求した場合に準用する。
第四章第五節中第七十三条の次に次の一条を加える。
第七十三条の二 民法第八百十六条第二項の規定によつて離縁の際に称していた氏を称しようとする者は、離縁の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第九十八条中「又は第二項」を「から第三項まで」に改め、同条に次の一項を加える。
民法第七百九十一条第二項の規定によつて父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
第九十九条中「第七百九十一条第三項」を「第七百九十一条第四項」に、「又は第二項」を「から第三項まで」に改め、同条に次の一項を加える。
前項の者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十三年一月一日から施行する。
(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条 改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、次条の規定による場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法の規定によつて生じた効力を妨げない。
(縁組の取消しに関する経過措置)
第三条 新法第八百六条の二及び第八百六条の三の規定は、この法律の施行前にした縁組には適用しない。
(離縁等の場合の氏に関する経過措置)
第四条 この法律の施行前三月以内に離縁をし、又は縁組が取り消された場合における新法第八百十六条第二項(新法第八百八条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、新法第八百十六条第二項中「離縁の日から三箇月以内」とあるのは、「民法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第百一号)の施行の日から三箇月以内」とする。
(法務・内閣総理大臣臨時代理署名)