北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律

法律第百六十二号(昭三六・一〇・三〇)

目次

 第一章 総則(第一条―第九条)

 第二章 協会の役員等(第十条―第二十一条)

 第三章 協会の業務(第二十二条―第二十四条)

 第四章 協会の財務及び会計(第二十五条―第三十二条)

 第五章 協会の監督(第三十三条・第三十四条)

 第六章 雑則(第三十五条―第三十七条)

 第七章 罰則(第三十八条―第四十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、北方地域の施政について存する特殊事情及びこれに基因して北方地域旧漁業権者等の置かれている特殊な地位等にかんがみ、北方地域旧漁業権者等その他の者に対してその営む漁業その他の事業及びその生活に必要な資金を低利で融通することを主たる業務とする北方協会を設立して、これに国が所要の資金の交付を行ない、もつてこれらの者の営む漁業その他の事業の経営とその生活の安定を図り、あわせて北方地域に関する諸問題の解決の促進に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「北方地域」とは、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島をいう。

2 この法律において「北方地域旧漁業権者等」とは、次に掲げる者をいう。

 一 北方地域の一部をその地区の全部若しくは一部としていた旧水産業団体法(昭和十八年法律第四十七号)第一条に規定する漁業会若しくは旧漁業法(明治四十三年法律第五十八号)第四十二条第一項に規定する漁業組合が同法第五条の免許を受けて有していた専用漁業権又はこれを目的とする入漁権に基づき、昭和二十年八月十五日において旧水産業団体法第十三条第二項又は旧漁業法第四十三条第四項の規定により漁業を営む権利を有していた個人

 二 昭和二十年八月十五日において、北方地域の周辺の主務省令で定める海域内に所在する漁場において漁業を営むことにつき旧漁業法第四条若しくは第六条の免許を受け、又は当該免許に係る漁業権の貸付けを受けていた者(その者が法人である場合には、その構成員又は出資者たる個人)

 三 前二号に掲げる者のほか、昭和二十年八月十五日まで引き続き六月以上北方地域に生活の本拠を有していた者

 四 第一号又は第二号に掲げる者が死亡した場合におけるその死亡した者の死亡の当時における配偶者、子及び父母のうち主務省令で定めるもの(当該配偶者、子及び父母のうちに前三号に掲げる者に該当する者がある場合を除く。)

 (法人格)

第三条 北方協会(以下「協会」という。)は、法人とする。

 (国債の交付等)

第四条 政府は、協会に対し、その業務の遂行に必要な資金の財源に充てるための基金として、十億円を国債をもつて交付する。

2 前項の規定により交付するため、政府は、同項に規定する金額に相当する額の国債の発行をすることができる。

3 前項の規定により発行する国債の償還期限は、十年とし、その利率は、年六分とする。

4 前項に規定するもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。

 (事務所)

第五条 協会は、主たる事務所を札幌市に置く。

2 協会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (定款)

第六条 協会は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない.

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 役員及び評議員会に関する事項

 五 業務及びその執行に関する事項

 六 財務及び会計に関する事項

2 定款の変更は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (登記)

第七条 協会は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。

2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第八条 協会でない者は、北方協会という名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、協会に準用する。

   第二章 協会の役員等

 (役員)

第十条 協会に、役員として、会長一人、副会長一人、理事七人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職務及び権限)

第十一条 会長は、協会を代表し、その業務を総理する。

2 副会長は、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠けたときはその職務を行なう。

3 理事は、会長の定めるところにより、会長及び副会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長及び副会長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び副会長が欠けたときはその職務を行なう。

4 監事は、協会の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十二条 役員は、主務大臣が任命する。

 (役員の任期)

第十三条 会長、副会長及び理事の任期は、三年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 役員は、再任されることができる。

 (役員の解任)

第十四条 主務大臣は、役員が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は役員に職務上の義務違反その他役員たるに適しない非行があると認めるときは、その役員を解任することができる。

 (役員の兼職禁止)

第十五条 役員(非常勤の者を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第十六条 協会と会長との利益が相反する事項については、会長は、代表権を有しない。この場合には、監事が協会を代表する。

 (代理人の選任)

第十七条 会長は、副会長、理事又は協会の職員のうちから、協会の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第十八条 協会の職員は、会長が任命する。

 (役員及び職員の地位)

第十九条 協会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (評議員会)

第二十条 協会に評議員会を置く。

2 評議員会は、会長の諮問に応じ、協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。

3 評議員会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。

4 評議員会は、評議員二十五人以内で組織する。

 (評議員)

第二十一条 評議員は、北方地域旧漁業権者等及び協会の業務に関し学識経験を有する者のうちから主務大臣が任命する。

2 評議員の任期は、三年とする。

3 第十三条第一項ただし書及び第二項並びに第十四条の規定は、評議員について準用する。

   第三章 協会の業務

 (業務の範囲)

第二十二条 協会は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。

 一 北方地域旧漁業権者等に対し、その営む漁業その他の事業又はその生活に必要な資金を貸し付けること。

 二 漁業協同組合その他の主務省令で定める法人に対し、当該法人がその構成員たる北方地域旧漁業権者等に対してその営む漁業その他の事業又はその生活に必要な資金を貸し付けるための資金を貸し付けること。

 三 北方地域旧漁業権者等が主たる構成員又は出資者となつている法人として主務省令で定めるものに対し、その営む漁業その他の事業に必要な資金(前号の規定に該当するものを除く。)を貸し付けること。

 四 北方地域旧漁業権者等の福祉の増進を主たる目的とする事業として主務省令で定めるものを施行する市町村に対し、当該事業に必要な資金を貸し付けること。

 五 北方地域に関する諸問題の解決の促進を図るため必要な調査研究及び啓もう宣伝を行なうこと。

 六 前各号の業務に附帯する業務

 (業務の委託等)

第二十三条 協会は、主務大臣の認可を受けて、金融機関に対し、前条第一号から第三号までに掲げる業務の一部を委託することができる。

2 前項の規定により業務の委託を受けた金融機関(以下「受託者」という。)の役員又は職員であつて、当該委託を受けた業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (業務方法書)

第二十四条 協会は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書において定めるべき事項は、主務省令で定める。

   第四章 協会の財務及び会計

 (事業年度)

第二十五条 協会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

 (収入及び支出の予算等の認可)

第二十六条 協会は、毎事業年度、収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (決算)

第二十七条 協会は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。

 (財務諸表等の作成及び提出)

第二十八条 協会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 協会は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添え、かつ、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。

 (利益及び損失の処理)

第二十九条 協会は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 協会は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。


 (借入金)

第三十条 協会は、主務大臣の認可を受けて、一時借入金をすることができる。

2 前項の規定による一時借入金は、一年以内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、主務大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

3 前項ただし書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。


 (余裕金の運用)

第三十一条 協会は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 銀行又は主務大臣の指定するその他の金融機関への預金

 二 国債、地方債又は主務大臣の指定するその他の有価証券の取得

 三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託


 (主務省令への委任)

第三十二条 この法律に規定するもののほか、協会の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。

   第五章 協会の監督


 (監督)

第三十三条 協会は、主務大臣が監督する。

2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会に対して、その業務に関し、監督上必要な命令をすることができる。


 (報告及び検査)

第三十四条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会若しくは受託者に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、協会若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 雑則


 (解散)

第三十五条 協会の解散及びその解散した場合における残余財産の処分については、別に法律で定める。


 (大蔵大臣との協議)

第三十六条 主務大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。

 一 第六条第二項、第二十三条第一項、第二十四条第一項、第二十六条又は第三十条第一項若しくは第二項ただし書の認可をしようとするとき。

 二 第二十八条第一項の承認をしようとするとき。

 三 第三十一条第一号又は第二号の指定をしようとするとき。

 四 第二条第二項第二号若しくは第四号、第二十二条第二号から第四号まで、第二十四条第二項又は第三十二条の主務省令を定めようとするとき。


 (主務大臣等)

第三十七条 この法律において「主務大臣」とあるのは、内閣総理大臣及び農林大臣とする。ただし、第三十四条第一項に規定する主務大臣の権限は、内閣総理大臣又は農林大臣がそれぞれ単独に行使することを妨げない。

2 この法律において「主務省令」とあるのは、総理府令、農林省令とする。

   第七章 罰則

第三十八条 協会又は受託者が、第三十四条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、その違反行為をした協会又は受託者の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。

第三十九条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした協会の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律の規定により主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第七条第一項の政令の規定に違反して、登記をすることを怠つたとき。

 三 第二十二条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。

 四 第三十一条の規定に違反して、業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十三条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。

第四十条 第八条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。


 (協会の設立等)

第二条 主務大臣は、第十二条の例により、協会の会長、副会長、理事又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された会長、副会長、理事又は監事となるべき者は、協会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、副会長、理事又は監事に任命されたものとする。

第三条 主務大臣は、設立委員を命じて、協会の設立に関する事務を処理させる。

第四条 設立委員は、定款を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。

2 設立委員は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。

3 第三十六条の規定は、第一項の認可をしようとする場合について準用する。

第五条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

2 協会は、設立の登記をすることによつて成立する。

第六条 政府は、協会が成立したときは、遅滞なく、協会に対して第四条の国債を交付しなければならない。


 (名称制限に関する経過措置)

第七条、この法律の施行の際現に北方協会という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。

2 第八条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。


 (協会の最初の事業年度に関する経過措置)

第八条 協会の最初の事業年度は、第二十五条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十七年三月三十一日に終わるものとする。

第九条 協会の最初の事業年度の収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画については、第二十六条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「協会の成立後遅滞なく」とする。


 (登録税法の一部改正)

第十条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「南方同胞援護会」の下に「、北方協会」を、「南方同胞援護会法」の下に「、北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律」を加える。


 (印紙税法の一部改正)

第十一条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ九ノ四の次に次の一号を加える。

  六ノ九ノ五 北方協会ガ其ノ業務ニ関シテ発スル証書、帳簿


 (所得税法の一部改正)

第十二条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第十号中「南方同胞援護会」の下に「、北方協会」を加える。


 (法人税法の一部改正)

第十三条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第五条第一項第六号中「南方同胞援護会」の下に「、北方協会」を加える。


 (水産庁設置法の一部改正)

第十四条 水産庁設置法(昭和二十三年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。

  第二条第三号の四の次に次の一号を加える。

  三の五 北方協会に関する事務を処理すること。

  第四条第八号の次に次の一号を加える。

  八の二 北方協会に関する事務を処理すること。


 (総理府設置法の一部改正)

第十五条 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

  第九条に次の一号を加える。

  七 北方協会に関する事務を行なうこと。


 (地方税法の一部改正)

第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。 第七十二条の五第一項第六号中「南方同胞援護会」の下に「、北方協会」を加える。

(内閣総理・大蔵・農林・自治大臣署名) 

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