企業合理化促進法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、技術の向上及び重要産業の機械設備等の急速な近代化を促進すること並びに原材料及び動力の原単位の改善を指導勧奨すること等によつて、企業の合理化を促進し、もつてわが国経済の自立達成に資することを目的とする。
(事業者の定義)
第二条 この法律において「事業者」とは、工業、鉱業、電気事業、ガス事業、運輸業、土木建築業、水産業その他政令で定める事業を営む者をいう。
第二章 技術の向上の促進
(試験研究者に対する補助金の交付等)
第三条 主務大臣は、技術の向上を促進するため必要があると認めるときは、主務省令の定めるところにより、鉱工業等に関する技術の研究、工業化試験又は新規の機械設備等の試作(以下「試験研究」という。)を奨励助長するため、試験研究を行う者(以下「試験研究者」という。)に対し、予算の範囲内において補助金を交付し、又は国の所有に係る機械設備等を国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)の定めるところにより貸与することができる。
(試験研究用機械設備等に対する所得税又は法人税の課税の特例)
第四条 主務大臣及び大蔵大臣は、政令の定めるところにより、試験研究者に対し、その行おうとする試験研究が企業の合理化を促進するため緊急を要するものであり、且つ、その取得し又は製作しようとする機械設備等が当該試験研究のために必要なものである旨の承認をすることができる。
2 試験研究者であつて所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九条第一項第四号に規定する事業を営む個人が前項の規定による承認を受けた場合において、その承認を受けた日から一年以内に、その承認を受けた機械設備等を取得し又は製作してその承認を受けた試験研究(当該個人の営む当該事業と関連を有する試験研究に限る。)の用に供したときは、当該試験研究の用に供された日以後三年内の日を含む各年について、同号に規定する所得の計算上必要な経費に算入する当該機械設備等の減価償却費の額は、同法第十条第二項の規定にかかわらず、当該試験研究の用に供した日以後三年間で、且つ、当該試験研究の用に供している間に限り、当該機械設備等を取得し又は製作するために要した金額の百分の九十に相当する金額に当該各年のうちの当該期間の月数を乗じてこれを三十六で除して計算した金額とする。
3 前項及び本項の規定の適用を受けた個人が死亡した場合において、その相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)が当該個人の行つていた試験研究に関連する事業を承継し、且つ、当該試験研究を継続するときは、当該個人の死亡に因る当該試験研究の用に供する機械設備等の移転については、所得税法第五条の二第一項の規定は、適用しない。この場合においては、相続に因り取得した当該試験研究の用に供する機械設備等については、当該相続人が引き続きこれを有していたものとみなす。
4 試験研究者である法人が第一項の規定による承認を受けた場合において、その承認を受けた日から一年以内に、その承認を受けた機械設備等を取得し又は製作してその承認を受けた試験研究の用に供したときは、当該試験研究の用に供した日以後三年内の日を含む各事業年度について、当該事業年度の法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の規定による所得の計算上損金に算入する同法及び同法に基く命令の規定により計算される当該機械設備等の償却範囲額は、これらの規定にかかわらず、当該試験研究の用に供した日以後三年間で、且つ、当該試験研究の用に供している間に限り、当該機械設備等を取得し又は製作するために要した金額の百分の九十に相当する金額に当該事業年度の月数のうちの当該期間の月数を乗じてこれを三十六で除して計算した金額とする。
5 第二項及び前項の月数は、暦に従いこれを計算し、一月未満の端数を生じたときは、これを一月とする。
6 第二項又は第四項の規定は、所得税法第二十一条、第二十二条、第二十六条、第二十六条の二若しくは第二十九条又は法人税法第十八条から第二十一条までの規定による申告書に第二項の規定により必要な経費に算入する金額又は第四項の規定により損金に算入する償却範囲額のうち損金に算入した金額についてのその算入に関する申告の記載があり、且つ、当該金額の計算に関する明細書の添附がある場合に限り、第三項の規定は、所得税法第二十九条の規定による申告書に同項に規定する事業を承継し、且つ、試験研究を継続する事実の記載がある場合に限り、これを適用する。
(試験研究用機械設備等に対する固定資産税の課税免除及び不均一課税)
第五条 前条第二項又は第四項の規定の適用を受ける機械設備等に対して課する固定資産税については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定の適用があるものとする。
第三章 機械設備等の近代化の促進
(減価償却の特例)
第六条 機械設備等を緊急に近代化する必要のある重要産業に属する事業で政令で定めるものを営む者が機械設備等の近代化のため取得し又は製作した機械設備等については、租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の定めるところにより、特別償却を行うことができる。
(固定資産税の課税免除及び不均一課税)
第七条 前条の規定の適用を受ける機械設備等に対して課する固定資産税については、地方税法第六条の規定の適用があるものとする。
第四章 産業関連施設の整備
第八条 事業者は、主務省令の定めるところにより、企業の合理化に資するため必要な道路、港湾施設又は漁港施設の建設、改良、維持又は復旧を道路、港湾又は漁港の管理者に対して申請することができる。
2 道路、港湾又は漁港の管理者は、前項の規定により申請を受けた場合において、必要があると認めるときは、予算の範囲内において、道路法(大正八年法律第五十八号)、港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)又は漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)の定めるところにより、その工事を行うことができる。この場合においては、事業者にその受益の限度において工事に要する費用の一部を負担させることができる。
3 国は、前項の規定による工事に要する費用については、道路法、港湾法又は漁港法の定めるところにより、予算の範囲内において、その全部若しくは一部を負担し又は補助することができる。
4 国は、必要があると認めるときは、第二項の規定による工事を道路法、港湾法又は漁港法の定めるところにより、自ら行うことができる。この場合においては、事業者にその受益の限度においてその工事に要する費用の一部を負担させることができる。
第五章 原単位の改善
(目標原単位の公表)
第九条 主務大臣は、工場又は事業場における鉱工業品の原材料又は動力の原単位(以下「原単位」という。)の改善を促進するため必要があると認めるときは、目標となるべき原単位を公表することができる。
(原単位に関する報告)
第十条 主務大臣は、企業の合理化を促進するため必要があると認めるときは、主務省令の定めるところにより、事業者に対し、当該事業者の工場又は事業場における原単位に関する報告をさせることができる。
(原単位の改善に関する指導等)
第十一条 主務大臣は、企業の合理化を促進するため必要があると認めるときは、事業者に対し、原単位の改善に関し必要な指導又は勧奨を行うことができる。
第六章 中小企業の診断
(企業診断)
第十二条 地方公共団体は、中小企業の合理化を促進するため、中小企業者の申出に基き、当該企業の経営の状況について調査及び診断を行い、その改善に関する勧告を行うことができる。
(補助金の交付)
第十三条 主務大臣は、前条の調査及び診断並びに勧告を行う地方公共団体に対し、予算の範囲内において、その経費の一部を補助金として交付することができる。
第七章 雑則
(報告及び立入検査等)
第十四条 主務大臣は、この法律の適正且つ円滑な実施を確保するため必要があると認めるときは、試験研究者若しくは事業者に対し、必要な事項の報告を求め、又は当該職員に、試験研究者若しくは事業者の工場、事業場若しくは営業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他必要な物件の検査をさせ、又は関係者に質問をさせることができる。
2 前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者にこれを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第八章 罰則
第十五条 前条第一項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して虚偽の陳述をした者は、三万円以下の罰金に処する。
第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に関し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。
第五条の五第一項中「第五条の七」の下に「及び第五条の九」を加える。
第五条の六第一項中「及び第五条の八」を「、第五条の八及び第五条の十」に改める。
第五条の七から第五条の十一までを二条ずつ繰り下げ、第五条の六の次に、次の二条を加える。
第五条の七 青色申告書を提出する個人で企業合理化促進法(昭和二十七年法律第五号)第六条の規定により政令で定められた事業(以下指定事業という。)を営むものが、昭和二十六年一月一日以後、近代的な機械設備等で命令で定めるもの(以下指定事業用機械という。)のうちその製作後事業の用に供されたことのないものを取得し又は指定事業用機械を製作して、これを当該事業の用に供した場合においては、その事業の用に供した日の属する年における事業所得の計算上当該指定事業用機械の減価償却費として必要な経費に算入する金額は、所得税法第十条第二項の規定にかかわらず、当該指定事業用機械の取得価額の二分の一に相当する金額以下の金額で当該個人が必要な経費として計算した金額とする。但し、当該指定事業用機械の減価償却費として所得税法第十条第二項の規定により必要な経費に算入される金額を下ることはできない。
前項の規定により指定事業用機械の減価償却費として必要な経費に算入された金額が当該指定事業用機械の取得価額の二分の一に相当する金額に満たない場合においては、前項に規定する年の翌年以後二年間の各年において事業所得の計算上当該指定事業用機械の減価償却費として必要な経費に算入する金額は、所得税法第十条第二項の規定にかかわらず、当該指定事業用機械の減価償却費として同条同項の規定により必要な経費に算入される金額にそれぞれ左に掲げる金額を加算した金額とする。
一 前項に規定する年の翌年においては、当該指定事業用機械の取得価額の二分の一に相当する金額から前項の規定により必要な経費に算入された金額を控除した金額以下の金額で当該個人が必要な経費として計算した金額
二 前号に規定する年の翌年においては、当該指定事業用機械の取得価額の二分の一に相当する金額から前項の規定により必要な経費に算入された金額と前号に掲げる金額との合計額を控除した金額以下の金額で当該個人が必要な経費として計算した金額
第五条の五第一項の規定は、指定事業用機械には、これを適用しない。
第一項項又は第二項の規定は、所得税法第二十一条、第二十二条、第二十六条、第二十六条の二又は第二十九条の規定による申告書に第一項又は第二項の規定により必要な経費に算入される金額を必要な経費に算入することの記載があり、且つ、当該申告書に指定事業用機械の減価償却額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、これを適用する。
第五条の八 青色申告書を提出する法人で指定事業を営むものが、昭和二十六年四月一日以後終了する事業年度開始の日以後、指定事業用機械のうちその製作後事業の用に供されたことのないものを取得し又は指定事業用機械を製作して、これを当該事業の用に供した場合においては、その事業の用に供した日を含む事業年度の法人税法及び同法に基く命令の規定により計算される当該指定事業用機械の償却範囲額は、これらの規定にかかわらず、当該指定事業用機械の取得価額の二分の一に相当する金額とする。
第五条の六第一項の規定は、指定事業用機械には、これを適用しない。
第五条の六第三項の規定は、第一項の場合について、これを準用する。
3 改正後の租税特別措置法(以下「法」という。)第五条の七の規定は、昭和二十六年分の所得税から適用する。
4 法第五条の八の規定は、法人の昭和二十七年一月一日以後終了する事業年度分の法人税から適用する。
5 法人が昭和二十六年四月一日以後終了する事業年度開始の日から昭和二十七年一月一日を含む事業年度の直前の事業年度終了の日までの間に法第五条の八の指定事業用機械のうちその製作後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は同条の指定事業用機械を製作して、これを当該事業の用に供した場合において、当該法人がその事業の用に供した事業年度の所得につき法人税法第二十五条第一項の規定による青色申告書を提出したときは、当該法人の昭和二十七年一月一日以後終了する事業年度の所得の計算については、当該指定事業用機械について、その事業の用に供した事業年度において法第五条の八の規定の適用があつたものとして当該事業年度以後昭和二十七年一月一日を含む事業年度直前の事業年度までの各事業年度分の償却範囲額を計算する場合において生ずる各事業年度の償却不足額に相当する金額を、それぞれ各事業年度において生じた償却不足額とみなして当該指定事業用機械の償却範囲額を計算する。
(内閣総理・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸・建設大臣署名)