外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律
法律第九十一号(平九・六・一八)
(目的)
第一条 この法律は、外国人観光旅客が集中する地域以外の地域への外国人観光旅客の来訪を促進することが、我が国固有の文化、歴史等に関する理解及び外国人観光旅客と地域住民との交流を深めることによる我が国に対する理解の増進に資することにかんがみ、外客来訪促進地域の整備及び海外における宣伝、外国人観光旅客の国内における交通、宿泊その他の旅行に要する費用の低廉化、通訳案内その他の外国人観光旅客に対する接遇の向上等の外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するための措置を講ずることにより、国際観光の振興を図り、もって国際相互理解の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「外客来訪促進地域」とは、我が国固有の文化、歴史等に関する外国人観光旅客の理解の増進に資する観光資源を有する観光地及び宿泊拠点地区が存在し、かつ、それらを結ぶ観光経路の設定により外国人観光旅客の来訪を促進する地域をいう。
2 この法律において「宿泊拠点地区」とは、外国人観光旅客の宿泊の拠点となる地区をいう。
(基本方針)
第三条 運輸大臣は、外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するための措置を講ずることによる国際観光の振興に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するための措置を講ずることによる国際観光の振興に関する基本的な事項
二 外客来訪促進地域の整備及び海外における宣伝に関する事項
三 外国人観光旅客の国内における交通、宿泊その他の旅行に要する費用の低廉化に関する事項
四 通訳案内その他の外国人観光旅客に対する接遇の向上に関する事項
五 その他外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するための措置を講ずることによる国際観光の振興に関する重要事項
3 運輸大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
4 運輸大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(外客来訪促進計画)
第四条 都道府県は、単独で又は共同して、次に掲げる事項について、当該都道府県内の外客来訪促進地域への外国人観光旅客の来訪の促進に関する計画(以下「外客来訪促進計画」という。)を定めることができる。
一 外客来訪促進地域の区域
二 宿泊拠点地区の区域
三 外客来訪促進地域における観光経路
四 外国人観光旅客に対する案内施設の整備の方針
五 我が国固有の文化、歴史等に関する外国人観光旅客の理解の増進に資する施設であって宿泊拠点地区においてその整備を図ることが適当と認められる施設として運輸省令で定めるもの(以下この号において「特定施設」という。)の整備を図る場合にあっては、特定施設の種類、位置、規模その他必要な事項
六 外客来訪促進地域の海外における宣伝の方針その他外客来訪促進地域への外国人観光旅客の来訪の促進に関する事項
2 都道府県は、外客来訪促進計画を定めようとするときは、運輸大臣の同意を得なければならない。
3 運輸大臣は、外客来訪促進計画が次の各号に該当するものであると認めるときは、同意をするものとする。
一 その外客来訪促進計画に係る外客来訪促進地域(以下この項において「計画地域」という。)への外国人観光旅客の来訪が、我が国に対する理解の増進に資するものであること。
二 その外客来訪促進計画に係る宿泊拠点地区が、国際観光ホテル整備法(昭和二十四年法律第二百七十九号)第七条第一項の登録ホテル、同法第十八条第二項の登録旅館その他の外国人観光旅客の利用に適する宿泊施設を相当数有し、外国人観光旅客の宿泊の拠点として適当なものであること。
三 計画地域における観光経路が、外国人観光旅客の旅行に適するものであること。
四 計画地域の海外における宣伝の適切な実施及び当該宣伝の実施による外国人観光旅客の来訪の促進が見込まれるものであること。
五 その他その外客来訪促進計画を実施することが計画地域への外国人観光旅客の来訪の促進に資すると認められるものであること。
4 都道府県は、第二項の規定により運輸大臣の同意を得ようとするときは、あらかじめ、関係市町村に協議しなければならない。
5 都道府県は、外客来訪促進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 都道府県は、外客来訪促進計画を変更しようとするときは、運輸大臣の同意を得なければならない。この場合においては、前三項の規定を準用する。
(国の援助等)
第五条 国及び地方公共団体は、外客来訪促進計画の達成に資するため、外客来訪促進計画の実施に必要な事業を行う者に対する必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。
2 地方公共団体が外客来訪促進計画を達成するために行う事業に要する費用に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(海外における宣伝等の措置)
第六条 国際観光振興会(以下「振興会」という。)は、外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するため、外客来訪促進計画に係る外客来訪促進地域について、海外における宣伝を行うほか、これに関連して関係地方公共団体が行う海外における宣伝に関する助言その他の措置を講ずるとともに、必要に応じて、その他の地域の海外における宣伝を行うよう努めなければならない。
(共通乗車船券)
第七条 運送事業者は、当該事業に係る総収入を減少させないと見込まれる範囲内で、外国人観光旅客を対象とする共通乗車船券(二以上の運送事業者が期間、区間その他の条件を定めて共同で発行する証票であって、その証票を提示することにより、当該条件の範囲内で、当該各運送事業者の運送サービスの提供を受けることができるものをいう。以下同じ。)に係る運賃又は料金の割引を行おうとするときは、運輸省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を共同で運輸大臣に届け出ることができる。
2 前項の届出をした者は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第十六条第四項若しくは第三十六条、軌道法(大正十年法律第七十六号)第十一条第二項、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第九条第四項、海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第八条第三項(同法第二十三条の二第二項において準用する場合を含む。)又は航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第百五条第四項(同法第百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定による届出をしたものとみなす。
3 第一項に規定する運輸大臣の権限は、運輸省令で定めるところにより、地方運輸局長に委任することができる。
(旅行に要する費用の低廉化に資するための措置)
第八条 振興会は、外国人観光旅客の国内における交通、宿泊その他の旅行に要する費用の低廉化に資するため、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
一 外国人観光旅客を対象とする共通乗車船券及び外国人観光旅客が低廉な料金で利用することができる宿泊施設、食事施設その他の観光に関する施設(次号において「観光関係施設」という。)に関する情報の提供
二 外国人観光旅客が運送機関又は観光関係施設を利用する際に提示することにより当該利用に係る運賃又は料金の割引を受けることができる証票に関する情報の提供、助言その他の措置
(通訳案内業法の特例)
第九条 都道府県知事は、次に掲げる要件に該当する者について、通訳案内業法(昭和二十四年法律第二百十号)第二条に規定する通訳案内業を営むことができる地域を特定地域(当該地域における通訳案内業者(同法第五条の四第一項に規定する通訳案内業者をいう。以下この条において同じ。)の数が当該地域を訪れる外国人観光旅客の数に比して著しく少ないため、当該地域において通訳案内業者の数の増加を特に促進する必要がある地域として運輸大臣が指定する一又は二以上の都道府県の区域を単位とする地域をいう。以下この条において同じ。)に限定して同法第三条の免許を行うことができる。
一 運輸省令で定める実務の経験を有する者であること。
二 当該特定地域に係る地理及び歴史並びに産業、経済、政治及び文化に関する一般常識に関する運輸大臣の指定する研修の課程を修了した者であること。
三 通訳案内業法第五条第一項第一号及び第五号に掲げる科目についての同法第三条の試験に合格した者であること。
(接遇の向上を図るための措置)
第十条 振興会は、外国人観光旅客に対する接遇の向上を図るため、地方公共団体その他の者に対し、観光案内に関する助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(関係者の協力)
第十一条 運輸大臣、振興会、関係地方公共団体、関係団体及び関係事業者は、外国人観光旅客の来訪地域の多様化を促進するため、外客来訪促進地域の整備及び海外における宣伝、国内における交通、宿泊その他の旅行に要する費用の低廉化並びに通訳案内その他の接遇の向上に関し相互に連携を図りながら協力しなければならない。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(地方税法の一部改正)
第二条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第一号の十九の次に次の一号を加える。
一の二十 外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律(平成九年法律第九十一号)第四条第一項に規定する外客来訪促進計画において定められた同法第二条第二項に規定する宿泊拠点地区において当該外客来訪促進計画に従つて同法第四条第一項第五号に規定する特定施設の用に供する家屋又は構築物のうち政令で定めるものを新築し、又は増築した者で政令で定めるものが当該家屋又は構築物の敷地の用に供する土地
附則第三十二条の三第二十四項中「第二十二項」を「第二十三項」に改め、同項を同条第二十五項とし、同条第二十三項の表中「第二十二項」を「第二十三項」に改め、同項を同条第二十四項とし、同条第二十二項の次に次の一項を加える。
23 指定都市等は、事業所用家屋で外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律第四条第一項に規定する外客来訪促進計画において定められた同法第二条第二項に規定する宿泊拠点地区において当該外客来訪促進計画に従つて整備される同法第四条第一項第五号に規定する特定施設で政令で定めるものに係るものの新築又は増築で当該特定施設に係る事業を行う者が建築主であるものに係る新増設事業所床面積に対しては、当該新築又は増築が平成十一年三月三十一日までに行われたときに限り、第七百一条の三十二第一項の規定にかかわらず、新増設に係る事業所税を課することができない。この場合においては、第七百一条の三十四第九項の規定を準用する。
附則第三十八条第七項及び第三十九条第十一項中「附則第三十二条の三第二十三項」を「附則第三十二条の三第二十四項」に、「第二十二項」を「第二十三項」に改める。
(運輸省設置法の一部改正)
第三条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第三条の二第一項第二十一号の三の次に次の一号を加える。
二十一の四 外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律(平成九年法律第九十一号)の施行に関すること。
第四条第一項第十四号の六の三の次に次の一号を加える。
十四の六の四 外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律の規定に基づき、基本方針を定めること。
(運輸・自治・内閣総理大臣署名)