金融監督庁設置法

法律第百一号(平九・六・二〇)

目次

 第一章 総則(第一条)

 第二章 金融監督庁

  第一節 通則(第二条―第六条)

  第二節 証券取引等監視委員会(第七条―第二十一条)

 第三章 職員(第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、金融監督庁の所掌事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。

   第二章 金融監督庁

    第一節 通則

 (設置)

第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、総理府の外局として、金融監督庁を設置する。

 (任務及び長)

第三条 金融監督庁は、法令の定めるところにより、預金者、保険契約者、有価証券の投資者等を保護するとともに金融及び有価証券の流通の円滑を図るため、銀行業、保険業、証券業その他の金融業を営む民間事業者等の業務の適切な運営又は経営の健全性が確保されるようこれらの民間事業者等について検査その他の監督をし、及び証券取引等の公正が確保されるようその監視をすることを主たる任務とする。

2 金融監督庁の長は、金融監督庁長官とする。

 (所掌事務及び権限)

第四条 金融監督庁の所掌事務は、次に掲げる事務(第一号、第二号、第五号、第八号から第十号まで、第十二号、第十五号及び第十九号に掲げる事務については、そのうち法律に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項に係るものを除く。)とし、その権限の行使は、その所掌事務の範囲内で法律(法律に基づく命令を含む。)に従ってなされなければならない。

 一 銀行業、信託業及び無尽業を営む者の検査その他の監督に関すること。

 二 信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、水産業協同組合、農林中央金庫その他の預金又は貯金の受入れを業とする民間事業者並びに信用保証協会、農業信用基金協会及び漁業信用基金協会の検査その他の監督に関すること。

 三 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)の規定に基づいて、預金保険機構による資金援助に係る金融機関の合併等の適格性の認定等を行うこと。

 四 農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)の規定に基づいて、農水産業協同組合貯金保険機構による資金援助に係る農水産業協同組合の合併等の適格性の認定等を行うこと。

 五 生命保険業及び損害保険業を営む者の検査その他の監督に関すること。

 六 保険業法(平成七年法律第百五号)の規定に基づいて、保険契約者保護基金による資金援助に係る保険契約の移転等の適格性の認定を行うこと。

 七 自動車損害賠償責任共済に関すること。

 八 証券業を営む者、証券金融会社及び証券投資信託の委託会社の検査その他の監督に関すること。

 九 証券取引所の検査その他の監督に関すること。

 十 証券業協会の検査その他の監督に関すること。

 十一 証券投資信託協会の監督に関すること。

 十二 投資顧問業(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和六十一年法律第七十四号)に規定する投資顧問業をいう。)を営む者の登録及び検査その他の監督に関すること。

 十三 証券投資顧問業協会及び全国証券投資顧問業協会連合会の検査その他の監督に関すること。

 十四 金融先物取引業(金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)に規定する金融先物取引業をいう。)を営む者の許可及び検査その他の監督に関すること。

 十五 金融先物取引所の検査その他の監督に関すること。

 十六 金融先物取引業協会の検査その他の監督に関すること。

 十七 貸金業(貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号)に規定する貸金業をいう。)を営む者の登録及び検査その他の監督に関すること。

 十八 抵当証券業(抵当証券業の規制等に関する法律(昭和六十二年法律第百十四号)に規定する抵当証券業をいう。)を営む者の登録及び検査その他の監督に関すること。

 十九 抵当証券保管機構の検査その他の監督に関すること。

 二十 抵当証券業協会の検査その他の監督に関すること。

 二十一 商品投資販売業(商品投資に係る事業の規制に関する法律(平成三年法律第六十六号)に規定する商品投資販売業をいう。)、特定債権等譲受業及び小口債権販売業(特定債権等に係る事業の規制に関する法律(平成四年法律第七十七号)に規定する特定債権等譲受業及び小口債権販売業をいう。)並びに不動産特定共同事業(不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)に規定する不動産特定共同事業をいう。)を営む者の許可及び検査その他の監督に関すること。

 二十二 前払式証票の規制等に関する法律(平成元年法律第九十二号)の適用を受ける前払式証票の規制に関すること。

 二十三 預り金(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)に規定する預り金をいう。)となるべき金銭の受入れについての情報の収集に関すること。

 二十四 証券取引及び金融先物取引に係る犯則事件の調査に関すること。

 二十五 次に掲げる内閣総理大臣の権限に属する事項について内閣総理大臣を補佐すること。

  イ 第一号、第二号、第五号、第八号から第十号まで、第十二号、第十五号及び第十九号に掲げる事務に係る法律(中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)にあっては、信用協同組合及び同法第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会に係る部分に限る。)に基づく事業の免許その他の内閣総理大臣の権限に属する事項

  ロ 次に掲げる法律に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項

   (1) 担保附社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)

   (2) 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)

   (3) 損害保険料率算出団体に関する法律(昭和二十三年法律第百九十三号)

   (4) 船主相互保険組合法(昭和二十五年法律第百七十七号)

   (5) 自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)

   (6) 金融機関の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)

  ハ 中小企業等協同組合法第百十一条第一項(同項第三号に係る部分に限る。)の規定に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項

 二十六 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき金融監督庁に属させられた事務

 (関係行政機関との協力)

第五条 金融監督庁長官(以下「長官」という。)は、金融監督庁の所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 長官及び金融関連業者(金融監督庁の所掌に係る金融業に類似し、又は密接に関連する事業を営む者をいう。)に対する検査を所掌する行政機関の長は、効率的な検査の実施のため、意見の交換を図るとともに、それぞれの求めに応じ、それぞれの職員に協力させることができる。

 (大蔵大臣との連携)

第六条 長官は、金融監督庁の任務を達成するため必要があると認めるときは、大蔵大臣に対して、金融制度又は証券取引制度の企画又は立案についての意見を述べることができる。

2 前項に規定するもののほか、長官及び大蔵大臣は、金融監督庁及び大蔵省の所掌事務を適切に遂行するため、相互に緊密な連絡をとるものとする。

    第二節 証券取引等監視委員会

 (設置及び所掌事務)

第七条 金融監督庁に、証券取引等監視委員会(以下この節において「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、第四条第八号から第十号まで及び第十四号から第十六号までに掲げる事務に係る法律(法律に基づく命令を含む。)に基づきその権限に属させられた事項に係る事務並びに同条第二十四号に掲げる事務をつかさどる。

 (職権の行使)

第八条 委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。

 (組織)

第九条 委員会は、委員長及び委員二人をもって組織する。

2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。

3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (委員長及び委員の任命)

第十条 委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、委員長又は委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。

 (任期)

第十一条 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員長及び委員は、再任されることができる。

3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。

 (身分保障)

第十二条 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。

 一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。

 二 禁錮以上の刑に処せられたとき。

 三 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。

 (罷免)

第十三条 内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

 (会議)

第十四条 委員会は、委員長が招集する。

2 委員会の議事は、出席した委員長又は委員のうち、二人以上の賛成をもってこれを決する。

 (服務)

第十五条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

3 委員長及び委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

 (給与)

第十六条 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。

 (事務局)

第十七条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。

2 事務局に、事務局長及び所要の職員を置く。

3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。

4 事務局の内部組織は、政令で定める。

 (勧告)

第十八条 委員会は、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)その他の法律の規定に基づき、検査又は犯則事件の調査(次条において「証券取引検査等」という。)を行った場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、証券取引又は金融先物取引の公正を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣及び長官又は大蔵大臣に勧告することができる。

2 内閣総理大臣及び長官並びに大蔵大臣は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

3 委員会は、第一項の勧告をした内閣総理大臣及び長官又は大蔵大臣に対し、当該勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができる。

 (建議)

第十九条 委員会は、証券取引検査等の結果に基づき、必要があると認めるときは、証券取引又は金融先物取引の公正を確保するために必要と認められる施策について内閣総理大臣、長官又は大蔵大臣に建議することができる。

 (長官が行う検査についての報告の義務等)

第二十条 長官は、その行う金融及び証券取引に係る金融機関その他の者に対する検査(委員会の所掌に属するものを除く。)で政令で定めるもの(以下この条において「金融機関等検査」という。)に関し、毎年、検査の実施方針その他の基本的事項について委員会に諮り、その意見を聴かなければならない。

2 長官は、四半期ごとに、金融機関等検査の実施状況を委員会に報告しなければならない。

3 委員会は、必要があると認めるときは、金融機関等検査に係る事務の運営その他の施策について長官に建議することができる。

 (公表)

第二十一条 委員会は、毎年、その事務の処理状況を公表しなければならない。

   第三章 職員

 (職員)

第二十二条 前章に規定するものその他別に法律で定めるもののほか、金融監督庁に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところによる。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十年四月一日から同年七月一日までの範囲内において政令で定める日から施行する。

 (証券取引等監視委員会等に関する経過措置)

第二条 従前の大蔵省の証券取引等監視委員会は、金融監督庁の証券取引等監視委員会となり、同一性をもって存続するものとする。

2 この法律の施行の際現に大蔵省の証券取引等監視委員会の委員長又は委員である者は、それぞれこの法律の施行の日に、第十条第一項の規定により、金融監督庁の証券取引等監視委員会の委員長又は委員として任命されたものとみなす。この場合において、その任命されたものとみなされる者の任期は、第十一条第一項の規定にかかわらず、同日における大蔵省の証券取引等監視委員会の委員長又は委員としてのそれぞれの任期の残任期間と同一の期間とする。

3 この法律の施行前に従前の大蔵省の証券取引等監視委員会が大蔵大臣に対してした金融監督庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成九年法律第百二号)第四条の規定による改正前の大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)第十九条第一項の勧告又は同法第二十条若しくは第二十一条第三項の建議については、これを、金融監督庁の証券取引等監視委員会が、この法律の相当規定に基づいて、内閣総理大臣及び長官若しくは大蔵大臣に対してした勧告又は内閣総理大臣、長官若しくは大蔵大臣に対してした建議とみなして、この法律の規定を適用する。

(内閣総理大臣臨時代理署名) 

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