日本郵政株式会社法
法律第九十八号(平一七・一〇・二一)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 業務等(第四条―第十三条)
第三章 雑則(第十四条―第十七条)
第四章 罰則(第十八条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(会社の目的)
第一条 日本郵政株式会社(以下「会社」という。)は、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済株式の総数を保有し、これらの株式会社の経営管理を行うこと並びにこれらの株式会社の業務の支援を行うことを目的とする株式会社とする。
(株式の政府保有)
第二条 政府は、常時、会社の発行済株式(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式を含む。以下この条において同じ。)の総数の三分の一を超える株式を保有していなければならない。
(商号の使用制限)
第三条 会社でない者は、その商号中に日本郵政株式会社という文字を使用してはならない。
第二章 業務等
(業務の範囲)
第四条 会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を行うものとする。
一 郵便事業株式会社及び郵便局株式会社が発行する株式の引受け及び保有
二 郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の経営の基本方針の策定及びその実施の確保
三 前二号に掲げるもののほか、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の株主としての権利の行使
四 前三号に掲げる業務に附帯する業務
2 会社は、前項に規定する業務のほか、総務大臣の認可を受けて、その目的を達成するために必要な業務を行うことができる。
(郵便事業株式会社等の株式の保有)
第五条 会社は、常時、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済株式の総数を保有していなければならない。
(社会・地域貢献資金の交付)
第六条 会社は、郵便事業株式会社に対し、郵便事業株式会社法(平成十七年法律第九十九号)第四条第四項に規定する社会貢献業務計画の定めるところに従い、社会貢献業務(同条第二項に規定する社会貢献業務をいう。以下同じ。)の実施に要する費用に充てるものとして、社会貢献資金を交付するものとする。
2 会社は、郵便局株式会社に対し、郵便局株式会社法(平成十七年法律第百号)第六条第五項に規定する地域貢献業務計画の定めるところに従い、地域貢献業務(同条第三項に規定する地域貢献業務をいう。以下同じ。)の実施に要する費用に充てるものとして、地域貢献資金を交付するものとする。
3 前二項に規定するもののほか、社会貢献資金又は地域貢献資金(以下「社会・地域貢献資金」という。)の交付に関し必要な事項は、総務省令で定める。
(一般担保)
第七条 会社の社債権者は、会社の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(株式)
第八条 会社は、会社法第百九十九条第一項に規定する募集株式(第二十二条第三号において「募集株式」という。)若しくは同法第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権(同号において「募集新株予約権」という。)を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。
2 会社は、新株予約権の行使により株式を交付した後、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
(取締役等の選任等の決議)
第九条 会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(事業計画)
第十条 会社は、毎事業年度の開始前に、総務省令で定めるところにより、その事業年度の事業計画を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(定款の変更等)
第十一条 会社の定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)、合併、会社分割及び解散の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(財務諸表)
第十二条 会社は、毎事業年度終了後三月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び事業報告書を総務大臣に提出しなければならない。
(社会・地域貢献基金)
第十三条 会社は、社会・地域貢献資金の交付の財源をその運用によって得るために社会・地域貢献基金(以下「基金」という。)を設け、次項の規定により積み立てる金額をもってこれに充てるものとする。
2 会社は、毎事業年度の損益計算上の利益金の額のうち、企業一般の配当の動向を考慮して政令で定めるところにより計算した金額を、一兆円に達するまで、基金に積み立てなければならない。
3 基金の運用により生じた収益は、社会・地域貢献資金の交付の財源に充てるほか、当該収益の生じた事業年度中会社の他の支出の財源に充ててはならない。
4 基金は、取り崩してはならない。ただし、基金の運用により生じた収益のみによっては社会・地域貢献資金の交付の財源を確保することができない場合であって、社会・地域貢献資金が交付されないことにより郵便事業株式会社又は郵便局株式会社の経営努力のみによっては社会貢献業務又は地域貢献業務の実施が困難となり、地域社会の安定に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、この限りでない。
5 会社は、基金に係る経理については、総務省令で定めるところにより、その他の経理と区分して整理しなければならない。
6 会社は、総務省令で定めるところにより、確実かつ有利な方法により基金を運用しなければならない。
7 会社は、郵便事業株式会社法第四条第三項又は郵便局株式会社法第六条第四項の規定により提出された申請書を総務大臣に提出するときは、基金の運用により生ずる収益の見通しに関する書類を併せて提出しなければならない。
8 第二項の規定は、一兆円を超えて基金を積み立てることを妨げるものではない。ただし、二兆円に達するまでは、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額をもって積み立てなければならない。
9 前各項に定めるもののほか、基金に関し必要な事項は、総務省令で定める。
第三章 雑則
(監督)
第十四条 会社は、総務大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
2 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第十五条 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(財務大臣との協議)
第十六条 総務大臣は、第八条第一項、第十条又は第十一条(定款の変更の決議に係るものにあっては、会社が発行することができる株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするときは、財務大臣に協議しなければならない。
(課税の特例)
第十七条 会社が各事業年度(会社が連結親法人(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第十二号の七の二に規定する連結親法人をいう。)に該当する場合には、各連結事業年度)において第六条第一項又は第二項の規定に基づき交付する金銭の額は、同法第三十七条第七項(同法第八十一条の六第六項において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額に含まれないものとする。
2 前項に規定する事業年度とは法人税法第十三条及び第十四条に規定する事業年度をいい、同項に規定する連結事業年度とは同法第十五条の二に規定する連結事業年度をいう。
第四章 罰則
第十八条 会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、犯人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第十九条 前条第一項の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十条 第十八条第一項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。
2 前条第一項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。
第二十一条 第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。
第二十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員又は監査役は、百万円以下の過料に処する。
一 第四条第二項の規定に違反して、業務を行ったとき。
二 第五条の規定に違反して、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の株式を処分したとき。
三 第八条第一項の規定に違反して、募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付したとき。
四 第八条第二項の規定に違反して、株式を交付した旨の届出を行わなかったとき。
五 第十条の規定に違反して、事業計画の認可を受けなかったとき。
六 第十二条の規定に違反して、貸借対照表、損益計算書若しくは事業報告書を提出せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたこれらのものを提出したとき。
七 第十四条第二項の規定による命令に違反したとき。
第二十三条 第三条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、郵政民営化法(平成十七年法律第九十七号)第三十六条第九項の政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第三条、第九条、第十一条(定款の変更の決議に係る部分に限る。)及び第二十三条の規定 郵政民営化法附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日
二 次条の規定 郵政民営化法の施行の日
(業務の特例)
第二条 会社は、平成二十四年九月三十日までの間、第四条に規定する業務のほか、次に掲げる業務を行うものとする。
一 次に掲げる施設の譲渡又は廃止
イ 承継計画(郵政民営化法第百六十六条第一項に規定する承継計画をいう。ロにおいて同じ。)において定めるところに従い会社が承継した郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第百二号。ロにおいて「整備法」という。)第二条の規定による廃止前の郵便貯金法(昭和二十二年法律第百四十四号)第四条第一項の施設
ロ 承継計画において定めるところに従い会社が承継した整備法第二条の規定による廃止前の簡易生命保険法(昭和二十四年法律第六十八号)第百一条第一項の施設
二 前号イ又はロに掲げる施設の譲渡又は廃止をするまでの間における当該施設の運営又は管理
三 前二号に掲げる業務に附帯する業務
2 会社は、前項第二号に掲げる業務及びこれに附帯する業務を行うに当たっては、当該業務と同種の業務を営む事業者の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならない。
(政府保有の株式の処分)
第三条 政府は、その保有する会社の株式(第二条に規定する発行済株式をいい、同条の規定により保有していなければならない発行済株式を除く。)については、できる限り早期に処分するよう努めるものとする。
(会社法の施行の日の前日までの間の読替え)
第四条 会社法の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、会社法の施行の日の前日までの間における次の表の上欄に掲げるこの法律の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第二条 |
株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項 |
商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百十一条ノ二第四項に規定する種類の株式を除き、同条第五項 |
第八条第一項 |
会社法第百九十九条第一項に規定する募集株式(第二十二条第三号において「募集株式」という。)若しくは同法第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権(同号において「募集新株予約権」という。)を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。 |
新株、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行し、又は自己の株式を処分しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。ただし、新株予約権が行使されたことにより新株を発行し、又は自己の株式を移転しようとするときは、この限りでない。 |
第八条第二項 |
新株予約権の行使により株式を交付した後 |
前項ただし書の場合においては、当該新株を発行し、又は自己の株式を移転した後 |
第十条 |
事業年度 |
営業年度 |
第十一条 |
剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。) |
利益の処分 |
第十二条 |
事業年度 |
営業年度 |
事業報告書 |
営業報告書 |
|
第十三条第二項及び第三項 |
事業年度 |
営業年度 |
第十八条第一項及び第二十一条 |
執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員) |
執行役 |
第二十二条 |
執行役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員 |
執行役 |
第二十二条第三号 |
募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付したとき |
新株、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行し、又は自己の株式を処分したとき |
第二十二条第六号 |
事業報告書 |
営業報告書 |
(総務・財務・内閣総理大臣署名)