民事法律扶助法

法律第五十五号(平一二・四・二八)

 (目的)

第一条 この法律は、民事法律扶助事業が司法制度の充実に寄与する公共性の高いものであることにかんがみ、その整備及び発展を図るために必要な事項を定め、もって国民がより利用しやすい司法制度の実現に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「民事法律扶助事業」とは、裁判所における民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続(以下「民事裁判等手続」という。)において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等を援助する次に掲げる業務を行うものをいう。

 一 民事裁判等手続の準備及び追行(民事裁判等手続に先立つ和解の交渉で特に必要と認められるものを含む。)のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすること。

 二 依頼又は嘱託を受けて裁判所に提出する書類を作成することを業とすることができる者に対し民事裁判等手続に必要な書類の作成を依頼し又は嘱託して支払うべき報酬及びその作成に必要な実費の立替えをすること。

 三 法律相談を取り扱うことを業とすることができる者による法律相談(刑事に関するものを除く。)を実施すること。

 四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。

 (国の責務等)

第三条 国は、民事法律扶助事業の適正な運営を確保し、その健全な発展を図るため、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行のために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、その周知のために必要な措置を講ずるものとする。

2 地方公共団体は、その地域において行われる民事法律扶助事業に対して必要な協力をすることができる。

 (日本弁護士連合会等の責務)

第四条 日本弁護士連合会及び弁護士会は、民事法律扶助事業の実施に関し、会員である弁護士による協力体制の充実を図る等民事法律扶助事業の適正な運営の確保及び健全な発展のために必要な支援をするよう努めるものとする。

2 弁護士は、その職責にかんがみ、民事法律扶助事業の実施のために必要な協力をするよう努めるものとする。

 (指定等)

第五条 法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その申請により、全国に一を限って、民事法律扶助事業を行う者として指定することができる。

 一 民事法律扶助事業を適正かつ確実に遂行するに足りる知識及び能力並びに経理的基礎を有する者であること。

 二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人であって、その役員及び職員の構成が民事法律扶助事業の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。

 三 民事法律扶助事業以外の事業を行っているときは、その事業を行うことによって民事法律扶助事業の遂行が不公正になるおそれがない者であること。

 四 第十六条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者でないこと。

 五 役員のうちに次のいずれかに該当する者がないこと。

  イ 禁_錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

  ロ この法律の規定に違反したことにより罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

2 法務大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称及び主たる事務所の所在地を公示しなければならない。

3 指定法人は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を法務大臣に届け出なければならない。

4 法務大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を公示しなければならない。

 (指定法人の義務)

第六条 指定法人は、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行の実現に努めるとともに、第二条に規定する国民等が法律相談を簡易に受けられるようにする等民事法律扶助事業が国民等に利用しやすいものとなるよう配慮しなければならない。

 (業務規程)

第七条 指定法人は、民事法律扶助事業の実施に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 業務規程には、民事法律扶助事業の実施に係る援助の申込み及びその審査の方法に関する事項、第二条に規定する立替えに係る報酬及び実費の基準並びにそれらの償還に関する事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。この場合において、当該報酬は、民事法律扶助事業が同条に規定する国民等を広く援助するものであることを考慮した相当な額でなければならない。

3 法務大臣は、第一項の認可をした業務規程が民事法律扶助事業の適正かつ確実な遂行上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

 (事業計画等)

第八条 指定法人は、毎事業年度、法務省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 指定法人は、法務省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、法務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

 (事業の休廃止)

第九条 指定法人は、法務大臣の許可を受けなければ、民事法律扶助事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。

 (区分経理)

第十条 指定法人は、民事法律扶助事業以外の事業を行っているときは、当該事業に係る経理と民事法律扶助事業に係る経理とを区分して整理しなければならない。

 (補助金)

第十一条 国は、予算の範囲内において、指定法人に対し、民事法律扶助事業に要する費用の一部を補助することができる。

 (役員の選任及び解任)

第十二条 指定法人の役員の選任及び解任は、法務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2 法務大臣は、指定法人の役員が、この法律の規定(この法律に基づく命令又は処分を含む。)若しくは第七条第一項の規定により認可を受けた業務規程に違反する行為をしたとき、又は民事法律扶助事業に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定法人に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

 (秘密保持義務)

第十三条 指定法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、指定法人の行う民事法律扶助事業に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 (報告及び検査)

第十四条 法務大臣は、民事法律扶助事業の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、民事法律扶助事業に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に、指定法人の事務所に立ち入り、事業若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (監督命令)

第十五条 法務大臣は、民事法律扶助事業の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、民事法律扶助事業に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (指定の取消し等)

第十六条 法務大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第五条第一項の規定による指定(以下「指定」という。)を取り消し、又は期間を定めて民事法律扶助事業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

 一 民事法律扶助事業を適正かつ確実に遂行することができないと認められるとき。

 二 指定に関し不正の行為があったとき。

 三 この法律の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

 四 第七条第一項の規定により認可を受けた業務規程によらないで民事法律扶助事業を行ったとき。

2 法務大臣は、前項の規定による処分をしたときは、その旨を公示しなければならない。

 (法務省令への委任)

第十七条 この法律に定めるもののほか、指定法人が民事法律扶助事業を行う場合における指定法人の財務及び会計に関する事項その他この法律の実施について必要な事項は、法務省令で定める。

 (罰則)

第十八条 第十三条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第十九条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした指定法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第九条の許可を受けないで民事法律扶助事業の全部を廃止したとき。

 二 第十四条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

第二十条 指定法人の役員又は職員が指定法人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、指定法人に対しても、同条の刑を科する。

   附 則

 この法律は、平成十二年十月一日から施行する。

(法務・内閣総理大臣署名) 

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