株券等の保管及び振替に関する法律
法律第三十号(昭五九・五・一五)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 保管振替機関等(第三条―第十三条)
第三章 株券の保管及び振替並びに預託株券に係る株主の権利の行使に関する商法の特例
第一節 株券の預託及び保管(第十四条―第二十五条)
第二節 預託株券の振替等(第二十六条―第二十八条)
第三節 預託株券に係る株主の権利の行使に関する商法の特例(第二十九条―第三十五条)
第四節 雑則(第三十六条―第三十八条)
第四章 株券以外の有価証券の保管及び振替(第三十九条)
第五章 雑則(第四十条・第四十一条)
第六章 罰則(第四十二条―第四十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、株券その他の有価証券の保管及び受渡しの合理化を図るため、株券その他の有価証券の保管及び振替を行う保管振替機関等に関し必要な事項を定めるとともに、保管振替機関が保管する株券その他の有価証券に表示されるべき権利の譲渡、その株券に係る株主の権利の行使等に関する商法(明治三十二年法律第四十八号)の特例を定め、もつてこれらの有価証券の流通の円滑化に寄与することを目的とする。
(適用有価証券)
第二条 この法律は、証券取引所に上場されている株券その他の有価証券又は流通状況がこれに準ずる株券その他の有価証券で、主務大臣が指定したもの(以下「株券等」という。)について適用する。
2 主務大臣は、前項の指定をしようとするときは、当該有価証券の保管及び受渡しの状況を勘案して、これをしなければならない。
第二章 保管振替機関等
(指定)
第三条 主務大臣は、次の各号に掲げる要件を備える者の申請があつた場合において、その者が次条第一項各号に掲げる業務の全部(以下「保管振替事業」という。)を適正かつ確実に行うことができると認められるときは、この法律の定めるところにより保管振替事業を行う者として、指定することができる。
一 申請者が民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人であること。
二 申請者が第十二条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から起算して五年を経過していない者であること。
三 申請者の役員のうちに、禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないものがないこと。
四 申請者の役員のうちに、禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過していない者がないこと。
2 主務大臣は、前項の指定をしたときは、その指定した者(以下「保管振替機関」という。)の名称、住所及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。
3 保管振替機関は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
4 主務大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を官報で公示しなければならない。
(保管振替機関の業務)
第四条 保管振替機関は、この法律の定めるところにより、次の各号に掲げる業務を行うものとする。
一 株券等の保管に関すること。
二 株券等の振替に関すること。
三 その他この法律により保管振替機関が行うこととされている業務
2 保管振替機関は、主務省令の定めるところにより、その業務の一部を、主務大臣の承認を受けて、他の者に委託することができる。
(業務規程)
第五条 保管振替機関は、保管振替事業の実施に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 業務規程には、保管振替事業において取り扱う株券等その他主務省令で定める事項を定めなければならない。
3 保管振替機関は、保管振替事業において取り扱う株券等について当該株券等を発行した者の同意を得なければならない。
4 主務大臣は、第一項の認可をした業務規程が保管振替事業の適正かつ確実な運営上不適当なものとなつたと認めるときは、その変更を命ずることができる。
(参加者)
第六条 保管振替機関は、業務規程の定めるところにより、次の各号に掲げる者のために、その申出により株券等の保管及び振替を行うための口座を開設しなければならない。
一 証券会社
二 銀行
三 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十三項に規定する証券金融会社
四 その他株券等に関する取引状況が前三号に掲げる者の取引状況に準ずる者で主務大臣の指定したもの
2 前項の申出により保管振替機関が口座を開設した者(以下「参加者」という。)は、この法律の定めるところにより、保管振替機関に株券等を預託することができる。
(事業計画等)
第七条 保管振替機関は、毎事業年度開始前に(第三条第一項の指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後速やかに)、事業計画及び収支予算を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 保管振替機関は、毎事業年度経過後三月以内に、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、主務大臣に提出しなければならない。
(役員の選任及び解任)
第八条 保管振替機関の役員の選任及び解任は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 主務大臣は、保管振替機関の役員が、この法律、この法律に基づく命令若しくは処分若しくは業務規程に違反する行為をしたとき、又はその在任により保管振替機関が第三条第一項第三号若しくは第四号に掲げる要件に適合しなくなるときは、当該保管振替機関に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
(秘密保持義務等)
第九条 保管振替機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、保管振替事業に係る業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 保管振替事業に従事する保管振替機関の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(監督命令)
第十条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、保管振替機関に対し、監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第十一条 主務大臣は、保管振替事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、保管振替機関に対し、その業務に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又はその職員に、保管振替機関の事務所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(指定の取消し)
第十二条 主務大臣は、保管振替機関が次の各号の一に該当するときは、第三条第一項の指定を取り消すことができる。
一 保管振替事業を適正かつ確実に運営することができないと認められるとき。
二 この法律、この法律に基づく命令又は第五条第一項若しくは第七条第一項の規定により認可を受けた事項に違反したとき。
三 第五条第四項、第八条第二項又は第十条の規定による処分に違反したとき。
2 主務大臣は、前項の規定により第三条第一項の指定を取り消そうとするときは、あらかじめ、その相手方にその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
3 主務大臣は、第一項の規定により第三条第一項の指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。
(残務の結了)
第十三条 保管振替機関が解散し、又は前条第一項の規定によりその指定を取り消された場合においては、当該保管振替機関であつた者は、当該保管振替機関が行つた保管振替事業に係る業務を速やかに結了しなければならない。この場合において、当該保管振替機関であつた者は、その保管振替事業に係る業務の結了の目的の範囲内において、なおこれを保管振替機関とみなす。
第三章 株券の保管及び振替並びに預託株券に係る株主の権利の行使に関する商法の特例
第一節 株券の預託及び保管
(保管振替機関への預託)
第十四条 参加者は、自己の有する株券のほか、顧客から預託を受けた株券を保管振替機関に預託することができる。ただし、顧客から預託を受けた株券を預託するには、その承諾を得なければならない。
2 顧客は、参加者に対し、その参加者に預託した株券を保管振替機関に預託することを請求することができる。
3 参加者又は顧客は、質権者として、第一項の規定による預託若しくはその承諾又は第二項の規定による預託の請求をすることができない。
(顧客の株券の預託)
第十五条 顧客から預託を受けた株券を保管振替機関に預託する参加者は、その顧客のために口座を開設し、顧客口座簿を備えなければならない。
2 顧客口座簿には、次に掲げる事項を記載する。
一 顧客の氏名及び住所
二 株式の発行会社(以下「会社」という。)の商号並びに株式の種類及び数
三 保管振替機関に預託した顧客の株券の株式を質権の目的とする口座においては、質権者の氏名及び住所
四 その他の主務省令で定める事項
第十六条 参加者は、顧客から預託を受けた株券を保管振替機関に預託しようとするときは、顧客口座簿に前条第二項第一号、第二号及び第四号に掲げる事項を記載しなければならない。
2 参加者は、前項の規定による記載をしたときは、遅滞なく、顧客が預託したものである旨を明らかにして保管振替機関に株券を提出しなければならない。ただし、第二十八条の規定による請求に基づき交付をするため、その株券を必要とするときは、この限りでない。
3 参加者は、第一項の規定による記載をした株券については、前項の規定による提出をし、又は同項ただし書に規定する交付をするまでの間、他の株券と分別して保管しなければならない。ただし、第二十三条の規定の適用を妨げない。
4 第一項の規定による記載がされた株券については、その記載の時に、保管振替機関に預託されたものとみなす。
(参加者口座簿)
第十七条 保管振替機関は、参加者口座簿を備えなければならない。
2 保管振替機関は、参加者口座簿に、参加者の名称及び住所のほか、第十四条第一項の規定により参加者が預託した株券(以下「預託株券」という。)につき、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 参加者自己分と顧客預託分の別
二 会社の商号並びに株式の種類及び数
三 参加者自己分を質権の目的とする口座においては、質権者の氏名及び住所
四 その他の主務省令で定める事項
(参加者口座簿及び顧客口座簿の記載の変更)
第十八条 保管振替機関又は第十五条第一項の参加者は、参加者口座簿又は顧客口座簿の記載事項につき変更があつたときは、遅滞なくその記載をしなければならない。
(新たに発行された株式に係る株券の預託)
第十九条 預託株券の株式につき、株式の併合、分割若しくは転換(次条第一項の請求によるものを除く。)、会社の合併による株式の発行、株式による配当、商法第二百九十三条ノ三第二項若しくは第二百九十三条ノ三ノ二第一項の規定による株式の発行又は株主に新株の引受権を与えてする株式の発行(新株引受権証書が発行された場合を除く。)があつた場合には、その新たに発行された株式につき、当該株式が発行された時に、第十四条第一項の規定により保管振替機関に株券の預託がされたものとみなす。
(保管振替機関による転換請求)
第二十条 保管振替機関は、預託株券が転換株式に係るものであるときは、参加者自己分については参加者の、顧客預託分については顧客の申出により、その株式の転換の請求をすることができる。
2 顧客は、前項の申出をするには、参加者を経由してしなければならない。
3 前条の規定は、第一項の規定による転換の請求により発行された株式について準用する。
第二十一条 保管振替機関は、参加者が転換株式に係る株券又は転換社債券を提出して、転換により発行される株式に係る株券を預託する旨の申出をしたときは、その株式又は社債の転換の請求をすることができる。
2 顧客は、参加者に対し、その参加者に預託した転換株式に係る株券又は転換社債券につき、前項に規定する申出をすることを請求することができる。
3 参加者は、前項の規定による請求に基づき第一項の申出をするときは、顧客が預託した株券又は社債券である旨を明らかにしてしなければならない。
4 第十九条の規定は、第一項の規定による転換の請求により発行された株式について準用する。
(保管振替機関による新株の引受権の行使)
第二十二条 前条の規定は、参加者が新株引受権証書、新株引受権証券又は新株引受権付社債券及び新株の発行価額の全額を保管振替機関に提出してする株券の預託の申出並びにその申出によつてする新株の引受権の行使について準用する。
(預託株券の混蔵保管)
第二十三条 預託株券は、参加者又は顧客ごとに分別しないで保管する。
(参加者及び顧客の権利推定)
第二十四条 参加者及び顧客は、参加者口座簿及び顧客口座簿に記載された株式の種類ごとに、その株式の数に応じ、預託株券について共有持分を有するものと推定する。
(補てん義務)
第二十五条 預託株券に不足が生じたときは、保管振替機関及び第十五条第一項の参加者は、連帯してこれを補てんしなければならない。ただし、その不足の責めに任ずべき者に対する求償権の行使を妨げない。
2 前項の参加者は、参加者でなくなつた後も、同項の規定による補てんの責任を負う。ただし、参加者でなくなつた時から五年を経過したときは、その責任は消滅する。
第二節 預託株券の振替等
(振替請求)
第二十六条 参加者又は顧客は、その口座の株式につき、他の口座への振替を請求することができる。この場合においては、顧客は、参加者に対して請求しなければならない。
2 前項の規定は、預託株券の株式を質権の目的とする場合の振替について準用する。
3 第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定は、預託株券の株式につき振替を受けた質権者が他の口座への振替を請求する場合について準用する。
(口座簿の記載の効力)
第二十七条 参加者口座簿又は顧客口座簿に記載された者は、その口座の株式の数に応じた株券の占有者とみなす。
2 参加者口座簿及び顧客口座簿の振替の記載は、その記載に係る株式の数に応じた株式を譲渡し、又は質権の目的とする場合において株券の交付があつたのと同一の効力を有する。
(株券の交付請求)
第二十八条 参加者又は顧客は、いつでも、その口座の株式の数に応じた株券の交付を請求することができる。この場合においては、顧客は、参加者に対して請求しなければならない。
2 前項の規定は、商法等の一部を改正する法律(昭和五十六年法律第七十四号)附則第十五条第一項の株式会社が発行する同法附則第十六条第一項に規定する一単位に満たない数の株式(以下「単位未満株式」という。)に係る株券については、適用しない。
3 前二項の規定は、第二十六条第三項の質権者による株券の交付の請求について準用する。
第三節 預託株券に係る株主の権利の行使に関する商法の特例
(保管振替機関の地位)
第二十九条 保管振替機関は、預託株券の保管に際し、自己を株主とする名義書換の請求をすることができる。この場合においては、預託後相当の時期にその請求をしなければならない。
2 保管振替機関は、会社の株主名簿に自己が株主として記載されている株式(以下「保管振替機関名義株式」という。)につき、商法第二百二十六条ノ二第一項の規定による申出をすることができる。
3 保管振替機関は、保管振替機関名義株式につき、株主名簿の記載及び株券に関してのみ、株主として権利を行使することができる。
(実質株主)
第三十条 預託株券の共有者(以下「実質株主」という。)は、株主の権利の行使については、各自その預託株券の株式の数に応じた株式を有するものとみなす。
2 実質株主は、前条第二項の申出及び同条第三項に規定する権利の行使をすることができない。ただし、会社が株主に対してする通知及び商法第二百六十三条第二項の規定による株主名簿の閲覧又は謄写については、この限りでない。
(実質株主の通知)
第三十一条 保管振替機関は、会社が商法第二百二十四条ノ三第一項の規定により一定の期間又は一定の日を定めたときは、会社に対し、その期間が始まる時又はその日の実質株主につき、次に掲げる事項又はその変更(株式の発行によるものを除く。)を速やかに通知しなければならない。会社が同法第二百八十条ノ四第二項(同法第三百四十一条ノ二ノ四第二項(同法第三百四十一条ノ十八において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により一定の日を定めた場合のその日の実質株主についても、同様とする。
一 氏名及び住所
二 前条第一項の規定により有するものとみなされる株式の種類及び数
2 保管振替機関は、第二十条若しくは第二十一条の規定による転換の請求又は第二十二条の規定による新株の引受権の行使をするときは、会社に対し、新たに発行される株式の実質株主となるべき者の氏名及び住所を通知しなければならない。
3 前二項の場合において、保管振替機関は、参加者が自己分として預託し、又は預託することとなるべき株券の株式については当該参加者(主務省令で定める場合において、当該参加者から他の者が実質株主である旨の申出があつたときは、その者)を、参加者が顧客預託分として預託し、又は預託することとなるべき株券の株式については当該参加者が報告した者を実質株主として通知しなければならない。この場合においては、参加者は、顧客(主務省令で定める場合において、当該顧客から他の者が実質株主である旨の申出があつたときは、その者)を実質株主として報告しなければならない。
4 保管振替機関は、前条第一項の規定により単位未満株式のみを有するものとみなされる実質株主については、第一項の規定による通知をすることができない。ただし、既に同項又は第二項の規定による通知をした者(その一般承継人を含み、実質株主でなくなつた旨の通知をした者を除く。)については、この限りでない。
5 保管振替機関は、実質株主による株主の権利の行使があるときその他会社に必要があるときは、会社の請求により、参加者口座簿の記載又は参加者の報告に基づき、速やかに、第一項又は第二項の規定により実質株主として通知をした者が実質株主でなくなつた旨又は第一項第二号の株式の数の減少を通知しなければならない。ただし、商法第二百二十四条ノ三第一項の期間内は、この限りでない。
(実質株主名簿)
第三十二条 会社は、実質株主名簿を本店に備え置かなければならない。
2 保管振替機関名義株式につき、前条第一項の規定による通知を受けたときは、会社は、実質株主名簿に、同項各号に掲げる事項のほか、各実質株主が有するものとみなされる各株式につき同項の規定による通知の年月日を記載をしなければならない。
3 会社は、第十九条又は前条第二項に規定する場合には、株主名簿に新たに発行された株式の株主として保管振替機関を、実質株主名簿にその株式の実質株主に関する同条第一項各号に掲げる事項及び株式取得の年月日を記載し、実質株主名簿に記載した事項を保管振替機関に通知しなければならない。
4 保管振替機関名義株式につき、前条第五項の規定による通知を受けたときは、会社は、同条第一項各号に掲げる事項の変更を実質株主名簿に記載しなければならない。
5 会社は、定款をもつて実質株主名簿について名義書換代理人を置く旨を定めることができる。当該名義書換代理人を置いた場合においては、実質株主名簿を当該名義書換代理人の営業所に備え置くことができる。
6 実質株主、株主、保管振替機関及び会社の債権者は、営業時間内は、いつでも、実質株主名簿の閲覧又は謄写を請求することができる。
(実質株主名簿の記載の効力)
第三十三条 預託株券の株式に関しては、実質株主名簿の記載は、株主名簿の記載と同一の効力を有する。
2 会社は、株主名簿に株主として記載された者と実質株主名簿に実質株主として記載された者とが同一の者であると認められるときは、株主の権利の行使に関しては、株主名簿の株式の数と実質株主名簿の株式の数とを合算しなければならない。
(単位未満株式の買取請求)
第三十四条 実質株主は、その実質株主名簿に記載のある単位未満株式につき、商法等の一部を改正する法律附則第十九条第一項の規定による請求をすることができる。参加者が第十四条第一項の規定により単位未満株式のみに係る株券を預託した場合(第十九条の規定により預託がされたものとみなされる場合を除く。)にあつては、当該参加者に当該株券を預託した顧客たる実質株主で実質株主名簿に記載のないものについても、同様とする。
2 前項の請求は、参加者及び保管振替機関(実質株主が参加者であるときは、保管振替機関)を経由してしなければならない。
3 第一項の請求がされた場合において、保管振替機関は、株式の数が当該単位未満株式の数に相当する株券を会社に提出しなければならない。ただし、保管振替機関名義株式で株券が発行されていないものの数が当該単位未満株式の数以上であるときは、この限りでない。
(実質株主名簿の株式の数を超える保管振替機関名義株式に関する取扱い)
第三十五条 発行済株式の総数の百分の一、百分の三又は十分の一以上に当たる株式を有する株主の権利の行使についての規定の適用及び総会の決議については、実質株主名簿に記載された株式の合計数を超える保管振替機関名義株式の数は、発行済株式の総数に算入しない。
2 実質株主名簿に記載された株式の合計数を超える数の保管振替機関名義株式で預託株券に係るものに関しては、保管振替機関は、株式の併合、分割若しくは転換、会社の合併又は商法第二百九十三条ノ三第二項若しくは第二百九十三条ノ三ノ二第一項の規定による株式の発行について、株主として権利を行使することができる。
第四節 雑則
(口座簿の写しの交付請求)
第三十六条 参加者若しくは顧客又はその預託株券の株式の質権者は、保管振替機関又は参加者に対し、利害関係を有する部分に限り、参加者口座簿及び顧客口座簿の写しの交付を請求することができる。
(信託財産表示)
第三十七条 預託株券については、信託は、信託法(大正十一年法律第六十二号)第三条第二項の規定にかかわらず、参加者口座簿又は顧客口座簿に信託財産である旨を記載することにより、第三者に対抗することができる。
(民事執行)
第三十八条 預託株券に関する強制執行、仮差押え及び仮処分の執行並びに競売に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第四章 株券以外の有価証券の保管及び振替
(株券以外の有価証券)
第三十九条 前章の規定(第十九条から第二十二条まで、第二十八条第二項及び第三節の規定を除く。)は、株券以外の有価証券について準用する。
2 前項に規定する規定のほか、第十九条の規定は株券以外の有価証券のうち外国法人の発行する有価証券で株券の性質を有するものについて、第二十条、第三十一条第二項及び第三項並びに第三十二条第三項の規定は株券以外の有価証券でその表示する権利の行使により株式の発行を受けるべきこととなるものについて準用する。
3 前二項の規定により準用する場合の技術的読替えに関し必要な事項は、主務省令で定める。
第五章 雑則
(主務省令への委任)
第四十条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、主務省令で定める。
(主務大臣及び主務省令)
第四十一条 この法律において、主務大臣は大蔵大臣及び法務大臣とし、主務省令は大蔵省令・法務省令とする。
第六章 罰則
第四十二条 第九条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第四十三条 第十一条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、十万円以下の罰金に処する。
第四十四条 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同条の罰金刑を科する。
第四十五条 保管振替機関の役員又は参加者(その者が法人であるときは、その役員)が次の各号の一に該当するときは、百万円以下の過料に処する。
一 第十六条第一項、第十七条第二項又は第十八条(これらの規定を第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、参加者口座簿又は顧客口座簿に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
二 第十六条第二項(第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、保管振替機関に株券等を提出することを怠つたとき。
三 第十六条第三項(第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、株券等を分別することを怠つたとき。
四 正当の理由がなく、第二十六条(第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定による振替の請求を拒んだとき。
五 正当の理由がなく、第二十八条第一項及び第三項(これらの規定を第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定による交付の請求を拒んだとき。
六 第二十九条第一項後段の規定に違反して、名義書換の請求をすることを怠つたとき。
七 第三十一条第一項、第二項(第三十九条第二項において準用する場合を含む。)又は第五項の規定に違反して、実質株主についての通知をせず、又は虚偽の通知をしたとき。
八 正当の理由がなく、第三十六条(第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定による参加者口座簿又は顧客口座簿の写しの交付を拒み、又は虚偽の写しを交付したとき。
第四十六条 商法第四百九十八条第一項に掲げる者が次の各号の一に該当するときは、百万円以下の過料に処する。
一 第三十二条第一項又は第五項の規定に違反して、実質株主名簿を備え置かなかつたとき。
二 第三十二条第二項、第三項(第三十九条第二項において準用する場合を含む。)又は第四項の規定に違反して、実質株主名簿に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
三 正当の理由がなく、第三十二条第六項の規定による実質株主名簿の閲覧又は謄写の請求を拒んだとき。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(名義書換代理人に関する経過措置)
2 その会社が発行する株券について第二条の規定による指定がされた際現に商法第二百六条第二項に規定する名義書換代理人を置く旨の定めがある会社の定款には、第三十二条第五項に規定する名義書換代理人を置く旨の定めがあるものとみなす。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(法務・大蔵・内閣総理大臣署名)