電力用炭代金精算株式会社法
法律第百四十四号(昭三八・七・一五)
(会社の目的)
第一条 電力用炭代金精算株式会社は、電力用炭の価格の安定に資するためその代金の受渡しに関する事業を行ない、あわせて石炭の流通の合理化に資する事業を行なうことを目的とする株式会社とする。
(株式)
第二条 電力用炭代金精算株式会社(以下「会社」という。)の株式は、額面株式とする。
2 政府は、一億円を限り、会社に対して出資することができる。
3 会社は、新株を発行しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(商号の使用制限)
第三条 会社以外の者は、その商号中に電力用炭代金精算株式会社という文字を使用してはならない。
(取締役及び監査役の人数)
第四条 会社の取締役は、五人以内、監査役は、二人以内とする。
(取締役及び監査役の選任等の決議)
第五条 会社の取締役、代表取締役及び監査役の選任、選定及び解任の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(取締役の兼職制限)
第六条 会社の取締役は、他の報酬のある職務又は営業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(事業の範囲)
第七条 会社は、その目的を達成するため、次の事業を営むものとする。
一 電気事業者であつて政令で定めるもの(以下「電気事業者」という。)が購入した発電の用に供する石炭(以下「電力用炭」という。)の代金の受渡しに関する事業
二 石炭の銘柄の整理及び輸送の共同化についての調査、あつせんその他の事業
三 石炭の販売業者、石炭の購入者その他の関係者から委託を受けて行なう石炭を輸送する船舶の配船の調整
四 他の者から委託又は貸付けを受けて行なう石炭の流通の合理化に必要な設備の管理及び運営
五 前各号の事業に附帯する事業
(事業に関する規程)
第八条 会社は、業務開始の際、その営む事業に関する規程を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の規程で定めるべき事項は、通商産業省令で定める。
(事業計画等)
第九条 会社は、毎営業年度の開始前に、その営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これらを変更しようとするときも、同様とする。
(重要な財産の譲渡等)
第十条 会社は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、担保に供し、又は有償で取得しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(社債及び借入金)
第十一条 会社は、社債を募集し、又は弁済期限が一年をこえる資金を借り入れようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(定款の変更等)
第十二条 会社の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(財産目録等の提出)
第十三条 会社は、毎営業年度経過後三月以内に、その営業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びに営業報告書を通商産業大臣に提出しなければならない。
(電力用炭の代金の受渡しに係る制限)
第十四条 電気事業者(その者が購入した電力用炭の代金に係る債務の引受人その他の承継人を含む。以下この条から第十七条までにおいて同じ。)は、石炭の販売業者(その者が販売した電力用炭の代金に係る債権の譲受人その他の承継人を含む。以下この条から第十七条までにおいて同じ。)に対し、電力用炭の代金に係る債務を弁済し、又は当該債務につき相殺の意思表示をする場合には、会社に対してしなければならない。ただし、通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 石炭の販売業者は、電気事業者から電力用炭の代金に係る債務の弁済を受領する場合には、前項ただし書に規定する場合を除き、会社にこれをさせなければならない。
3 電気事業者が会社に対し第一項に規定する行為をしたときは、その行為は、石炭の販売業者に対してしたものとみなす。
(電力用炭の代金の受渡手続等)
第十五条 会社は、電気事業者から電力用炭の代金に係る債務の弁済の申出を受けたときは、遅滞なく、これを受領し、かつ、その受領した金銭その他の物を当該電力用炭の販売に係る石炭の販売業者に引き渡さなければならない。
2 会社は、電気事業者から電力用炭の代金に係る債務につき相殺の意思表示を受けたときは、遅滞なく、その旨を当該電力用炭の販売に係る石炭の販売業者に通知しなければならない。
(民法の準用)
第十六条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四十四条から第六百四十七条まで(受任者の注意義務等)の規定は、石炭の販売業者のため前条に規定する行為をする会社に準用する。
(電力用炭の代金債権を消滅させる場合等の届出)
第十七条 石炭の販売業者は、更改、代物弁済その他第十四条第二項に規定する事由以外の事由によつて電力用炭の代金に係る債権を消滅させようとする場合、電力用炭の販売に関し電気事業者に割戻金を支払おうとする場合その他通商産業省令で定める場合には、通商産業省令で定めるところにより、あらかじめ、会社に届け出なければならない。
(電力用炭の販売に関する契約書等の送付)
第十八条 石炭の販売業者は、通商産業省令で定めるところにより、電力用炭の販売に関する契約書の写しその他の書類を会社に送付しなければならない。
(通商産業大臣に対する報告)
第十九条 会社は、第七条第一号に掲げる事業を行なうに当たり、電力用炭の販売価格が、その品位に応じ、石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)第五十八条第一項の規定による石炭の販売価格の基準額に準拠して通商産業大臣が電力用炭につき定めた品位別の価格と異なつていることを知つたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に報告しなければならない。
(帳簿の記載)
第二十条 会社は、帳簿を備え、第七条第一号に掲げる事業に関し通商産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(監督)
第二十一条 会社は、通商産業大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(協議)
第二十二条 通商産業大臣は、第二条第三項、第八条第一項、第九条から第十一条まで、又は第十二条(会社の定款の変更の決議に係るものについては、会社が発行する株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(報告及び検査)
第二十三条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(手数料)
第二十四条 電気事業者に電力用炭を販売した石炭の販売業者は、会社に対し、第七条第一号に掲げる事業の執行に必要な費用に充てるため、政令で定めるところにより、当該電力用炭につき政令で定める額の手数料を納めなければならない。
2 前項の政令で定める手数料の額は、当該電力用炭の数量一トンにつき三円をこえてはならない。
(罰則)
第二十五条 会社の取締役、監査役又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、犯人が収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第二十六条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十七条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第一項又は第二項の規定に違反して、債務を弁済し、若しくは相殺の意思表示をし、又は債務の弁済を受領したとき。
二 第十七条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
第二十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
二 第二十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
第二十九条 第十八条の規定に違反して、同条に規定する書類を送付せず、又は不実の記載をした当該書類を送付した者は、三万円以下の罰金に処する。
第三十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第三十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした会社の役員又は職員は、三十万円以下の過料に処する。
一 第二条第三項の規定に違反して、新株を発行したとき。
二 第八条第一項の規定に違反して、事業に関する規程の認可を受けなかつたとき。
三 第九条の規定に違反して、事業計画、資金計画又は収支予算の認可を受けなかつたとき。
四 第十条の規定に違反して、財産を譲渡し、担保に供し、又は有償で取得したとき。
五 第十一条の規定に違反して、社債を募集し、又は資金を借り入れたとき。
六 第十三条の規定に違反して、財産目録、貸借対照表、損益計算書若しくは営業報告書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。
七 第二十条の規定に違反して、同条に規定する事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
八 第二十一条第二項の規定による命令に違反したとき。
第三十二条 第三条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第十四条から第二十条まで(これらの規定に係る罰則を含む。)及び第二十四条の規定は、同日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(廃止)
2 この法律は、昭和四十六年三月三十一日までに廃止するものとする。
(会社の設立)
3 通商産業大臣は、設立委員を命じ、会社の設立に関して発起人の職務を行なわせる。
4 設立委員は、定款を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
5 通商産業大臣は、前項の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
6 設立委員は、附則第四項の認可を受けたときは、遅滞なく、会社の設立に際し発行する株式の総数のうち、政府が引き受けない株式につき、株主を募集しなければならない。
7 株式申込証には、定款の認可の年月日を記載しなければならない。
8 商法第百六十七条、第百八十一条及び第百八十五条の規定は、会社の設立については、適用しない。
(登録税の免除)
9 この法律による会社の設立に伴い必要な登記については、登録税を免除する。ただし、資本の金額のうち政府の出資に係る部分以外の部分については、この限りでない。
(商号についての経過規定)
10 第三条の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に電力用炭代金精算株式会社という文字を使用している者については、この法律の施行の日から起算して六月間は、適用しない。
(事業計画等についての経過規定)
11 会社の成立の日の属する営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第九条中「毎営業年度の開始前に」とあるのは、「会社の成立後遅滞なく」とする。
(大蔵・通商産業・内閣総理大臣署名)